今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

コメディーと思わせて実はゴリゴリのSF「ダウンサイズ」 (2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、折角「オデッセイ」で上がった評価を「グレートウォール」で下げちゃったでお馴染みマット・デイモン主演の『ダウンサイズ』ですよー!

ポスターや予告だけ見て、ドタバタコメディーかなと思ったら、結構ゴリゴリのSF映画でしたねーw

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概要

サイドウェイ』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』などのアレクサンダー・ペインが監督を務めたコメディー。人間を14分の1に縮小する計画に参加する主人公を、『オデッセイ』などのマット・デイモンが演じる。『イングロリアス・バスターズ』などのクリストフ・ヴァルツ、『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』などのクリステン・ウィグらが共演。ペイン監督と『サイドウェイ』でも組んだジム・テイラーが脚本を担当した。(シネマトゥデイより引用)

感想

この映画、日本版予告編だけ見るとドタバタコメディーを連想してしまうと思うし、確かにコメディー映画ではあるんですが、物語は結構ゴリゴリのハードSFだったりします。

ざっくりストーリー紹介

人口増加による環境破壊や資源を巡る紛争やテロなど、様々な問題の解決策としてノルウェーの博士が人間を14分の1のサイズに縮小する実験に成功するところから物語はスタートします。

サイズが小さくなれば相対的に資源や個人の財産が増えるし、環境にも優しい。
また、税金なども優遇されるし庶民でも大金持ちのような豪邸に住んだり、財産はあるから仕事もそれほどしなくてよかったり。
そうすれば心に余裕ができるので犯罪も起こらないという、まさにユートピア状態なわけです。

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それから数年後、マット・デイモン演じる医学療法士のポールと、クリステン・ウィグ演じる妻のオードリーは、働けど働けど楽にならない暮らしを捨て、すべての財産を売っぱらってスモールワールドに移住を決めるんですが、いざポールが小さくなって目が覚めたら奥さんは直前で怖気づいて「やっぱり友達や家族と離れられない!」とか言って逃げ出しちゃって……という奇想天外なストーリー。

物語前半では、そこまでやらなくても…ってくらい、ポールが小さくなるまでの手順を微に入り細に入り描くんですよねw

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結局、二人は離婚。
財産を半分持って行かれたポールはテレフォン・オペレーターをしながら(それでも十分豪華な)アパートで暮らし、パーティーに呼ばれたりシングルマザーと付き合ったりするも、「こんなハズではなかった…」と小さくなった事を後悔する日々を送るわけですが、クリストフ・ヴァルツ演じる胡散臭いアパートの隣人ドゥシャンの部屋の掃除に来ていた義足のベトナム女性ノク・ラン(ホン・チャウ)と出会うことで新たな運命が動き出すんですねー。

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アレクサンダー・ペイン

そんな本作の監督は、アメリカ社会の家族・夫婦関係をテーマにし、風刺やブラック・ユーモアを混ぜる作風が特徴(ウィキペディアより)のアレクサンダー・ペイン

僕はこの人の作品って「ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅」くらいしか観ていないんですが、ドタバタコメディーっていうよりオフビートな笑いとそこはかとない寂しさを込めたちょっといい話を描く監督というイメージ。

でも、彼の根底には様々な問題を抱えながらも必死に生きる人に寄り添うような優しい眼差しがあるような気がします。

本作でも、人間を縮小するという突拍子もない設定に、資本主義や意識高い系人類への皮肉を織り交ぜつつ、主人公が“ 自分の居場所 ”を見つけるまでを描いたある意味でロードムービーな作品になっていて、135分と長尺な作品ながら何処に向かうのか分からないストーリー展開で、最後まで飽きることなく観ることが出来ましたねー。

不満点

とはいえ、ちょっと不満だったのは「ダウンサイズ」の設定がさほど活かされてないというか、例えば「主人公が物価の安いアジアの国に住む事になるも…」という設定に置き換えても物語としては成立しちゃうんですよね。
ダウンサイズ」という設定に主人公が後戻り出来ない状況を作る以上の意味はなくて、そこはもったいないと思ったしあの「ダウンサイズ」工程の執拗なまでの描写は何だったのかと思ったりもしましたw

キャスト陣

本作を底上げしたのは、マット・デイモンを始めとしたキャスト陣の魅力だと思います。
ポールのお人好しでいい人だけど確固たる信念のない「普通の人」という設定と、マット・デイモン自身が常にまとっているボンクラ感(褒め言葉)はピッタリとハマっていたし、胡散臭い男を演じさせたら世界でも5本の指に入るだろうクリストフ・ヴァルツは本作でも見事に胡散臭い男を演じていましたねーw

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そして本作のヒロイン、ノク・ランを演じたホン・チャウは、そんな二人に負けないくらいの存在感を発揮していてとても良かったです。

すごく美人ってわけではないし、背も小さくてスタイルだっていいわけでもなく、(そういう役柄だからかもですが)辿たどしい英語でまくし立てる押しの強い、いかにもアメリカ人がイメージするアジア人って感じなんですけど、物語が進むほどに彼女のちょっとした表情や辿たどしいながらも力強い言葉にドキッとしたり感動してしまうのです。

そんな、見事にハマったキャスティングが突拍子もない物語にリアリティーを与えて、ギリギリ地に足のついた物語にしているのではないかと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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今度はバディームービーだ!「アントマン&ワスプ」(2018)

ぷらすです。

今日、朝一の回で『アントマン&ワスプ』を観てきましたよー!(´∀`)ノ
衝撃だったMCUマーベル・シネマティック・ユニバース)の「アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー」の次の作品だけに、一体どう繋げていくのか期待と不安半々でしたが、「そうくるかー!」って感じでしたねーw

というわけで、今回は公開されたばかりの作品なので出来るだけネタバレしないように気をつけて書きますが、ネタバレは嫌! という人は先に映画を観てからこの感想を読んで下さいねー。

いいですね? 注意はしましたよ?

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概要

マーベルの人気キャラクター・アントマンを実写映画化した『アントマン』の続編。体長1.5センチになれる特殊なスーツを着用した主人公と、さらに進化した新型スーツを身に着けたヒロインが組んで悪に挑む。前作同様ポール・ラッドエヴァンジェリン・リリーマイケル・ダグラスらが出演し、監督のペイトン・リード、製作のケヴィン・ファイギも続投している。(シネマトゥディより引用)

感想

本作はMCUシリーズ20作目となる作品で、「アントマン」が主役の単独作品としては2作目になります。(もうMCUの説明はいいよね?)

アントマンは文字通り、アリのように小さくなったり、逆に巨大化して「ジャイアントマン」になったり出来るヒーロー。

1作目は、窃盗罪で服役し出所後に更生しようとするも上手くいかず、富豪の家に空き巣に入ったスコット・ラング(ポール・ラッド)が成り行きでヒーローになってしまう物語でした。
元S.H.I.E.L.D.(アベンジャーズの母体組織)エージェントのメンバーだった“初代アントマン”のファンク・ピム博士(マイケル・ダグラス)の開発したアントマンスーツを着用することで身長1.5cmに縮んだり、アリを操って敵組織と戦うことが出来るんですね。

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アントマンが他のヒーローたちと違うのは、彼の行動原理が「世界の平和を守るために戦う」のではなく「愛娘の平和を守るために戦う」という点。

つまり、アントマンは「ヒーロー映画」ではなく、あくまで「ファミリー映画」なのです。

ざっくりストーリー紹介

そんなアントマンの2作目となる本作は、「シビル・ウォー キャプテン・アメリカ」(16)から繋がる物語。
アイアンマンとキャプテンアメリカの大喧嘩に巻き込まれて逮捕されてしまったスコットは、FBIに監視され自宅軟禁状態。

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あと3日で自由の身になれるというある日、自分が突如全くの別人と化したような意識に襲われたことをうっかりピム博士に連絡してしまったことから、新たな物語に巻き込まれていく……というストーリーで、時系列的には「シビル・ウォー~」から今年公開された「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」の間を埋める物語になっています。

とはいえ、(意識的に)MCUの他作品との繋がりを薄めているので、前作「アントマン」を観ていれば十分に楽しめる内容になってるし、なんなら本作単体で観ても(アントマンが体の大きさを自由に変えられるという事だけ押さえていれば)楽しめるんじゃないかと思いますよ。

明るく楽しいコメディーアクション

アントマンは、他のヒーロー作品とは違ってコメディー要素がかなり強い作品です。

原作は初代アントマンであるピム博士が主役のシリアスなストーリーが多いらしいんですが、映画版ではピム博士をサポート役に回して(お人好しでちょっと間抜けな)2代目スコット・ラングを主役に据えることで、コメディーアクションとしてMCU作品の中での差別化に成功。

また、体の大きさを変えられるというアントマンの設定を生かした、敵地への潜入というスパイ要素やこれまでにない斬新なアクションシーンは、映像的にも楽しいし物語を引っ張る推進力として機能しています。

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本作では更に、前作でも登場したピム博士の娘ホープエヴァンジェリン・リリー)が、アントマンと同様の能力+空も飛べる“ ワスプ ”となってのアントマンとのコンビネーションプレイや、敵役には幽霊のように物体をすり抜けられる能力を持つ“ゴースト”も登場し、ストーリーを盛り上げます。

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それ以外でも、ピム博士のラボ(ビル)を小さくしてキャリーバックみたいに持ち歩いたり、車の大きさを変えてのカーチェイスなどなど、大きさを自在に操るアクションシーンは見ものだし、コメディー色も前作以上に強く、アントマンスーツの不調で小学校低学年くらいの大きさになってしまったスコットのドタバタシーンや、前作から引き続き登場する仲間、ルイス( マイケル・ペーニャ)と敵組織の「自白剤」を巡るやりとりにも爆笑してしまいましたよw

あと、ピム博士が自らスーツを着込んで……というシーンには、原作ファンにはグッときちゃうんじゃないでしょうか。

しかし不満点も

ただ、全てがサイコーというわけではなく、多少の不満点も。

前作もそうだったんですが、このシリーズって悪役(敵役)がちょっと弱いんですよね。(物理的にじゃなくてキャラ的に)

特に本作の敵ゴーストは、(物語の設定上仕方がない部分もあるけど)悪役という感じではなくてヒーローアクションとして観るとクライマックスのカタルシスがどうしても弱く感じちゃうんですよね。

(多分)それを補うために、武器商人のグループやFBIも加えているんだけど、逆に物語がバタついてる感じもなきにしもあらずかなーと。

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あと今回はピム一家が物語の主軸なので、スコットがサポート役に回っている感じがするのも多少の物足りなさを感じたりしましたねー。

まぁ、MCU作品の一本として「アベンジャーズ4(仮題)」に繋げなきゃならないから仕方ない部分もあるんでしょうけども。

とはいえ、全体的に見れば楽しいしMCU本編でシリアス度がインフレし続けるのを一旦クールダウンさせる役割も担っている「アントマン」シリーズとして、(ラストも含めて)上手いバランスで見せてくれてるなーと思いましたねー!

興味のある方は是非!!!

 

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歌と踊りに持っていかれる「グレイテスト・ショーマン」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好きヒュー・ジャックマンがサーカスの生みの親P・T・バーナムを演じたミュージカル映画グレイテスト・ショーマン』ですよー!

「LOGAN/ローガン」を最後にウルヴァリンを卒業したヒュー・ジャックマンが挑戦した、(映画では)自身2度目となるミュージカルです!

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概要

19世紀に活躍した伝説のエンターテイナー、P・T・バーナムを『X-MEN』シリーズや『レ・ミゼラブル』などのヒュー・ジャックマンが演じるミュージカル。空想家の主人公が卓越したアイデアと野心で世界中を熱狂させるさまと、ロマンチックな愛の物語が描かれる。監督はマイケル・グレイシー。ミシェル・ウィリアムズザック・エフロンらが共演。『ラ・ラ・ランド』で第89回アカデミー賞歌曲賞を受賞した、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが音楽を担当している。(シネマトゥデイより引用)

感想

P・T・バーナムとは

本作でヒュー・ジャックマンが演じるのは、19世紀にアメリカで活躍した実業家のP・T・バーナム。と言っても日本では(僕を含め)知らない人の方が多いですよね。

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新聞社を創業したり、興行師、政治家など数々の顔を持つ彼は、サーカスの生みの親としてアメリカでは超有名人。なんですが、決して善人というわけではなかったようで、今なら一発アウトな問題行動も数々起こしていたらしいです。

本作では、そんな彼の行動力や何夢追い人的なプラス面だけをピックアップして描かれたことから、アメリカ本国では批判も多かったみたいですね。

ざっくりストーリー紹介

子供の頃から貧乏だったバーナムは、上流階級の娘チャリティ( ミシェル・ウィリアムズ)と結婚。二人の娘を授かるも勤めていた会社が倒産。
そこで、詐欺まがい(というか完全に詐欺)の方法で銀行から融資を受けて、世界中のあらゆる奇妙なものを展示した「バーナム博物館」をオープンするも客足は振るわず。
そんな時、娘の一言をヒントに、見た目で差別され世間から隠れるようにして生きていた“ ユニーク ”な人を集め、フリーク・ショー(見世物小屋)のサーカスをスタートします。

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これが大当たりしてショーは連日大盛況。バーナムは大金持ちになるも批評家には酷評され、市民の中には「街の恥さらし」と激しい抗議活動をする者も現れ……。というストーリー。

ぶっちゃけストーリーや人物描写だけ追えば、この映画はテーマに対してかなり薄っぺらいし作りも雑です。
監督のマイケル・グレイシーは元々CMやMV畑の人で、長編映画の監督は本作が初めて。映像作家なのでストーリーにはあまり興味がないと思し、脚本担当のジェニー・ビックスとビル・コンドンも、ミュージカルということもあって、シンプルかつ一本径の物語に仕上げたのだと思います。

歌と踊りに持っていかれる

ただ、楽曲の方は『ラ・ラ・ランド』で第89回アカデミー賞歌曲賞を受賞した、ベンジ・パセックとジャスティン・ポールが担当しているだけあって、耳に残る曲ばかりで、ミュージカルパートになるとグッと持っていかれてしまうんですよね。

特に髭女のレティを演じたキアラ・セトルが歌う「ディス・イズ・ミー」は、楽曲と彼女の力強い歌声も相まって素晴らしいし、世間の偏見や差別に戦いを挑むような力強い振り付けには痺れてしまいます。

また、「スパイダーマン/ホームカミング」でMJを演じたゼンデイヤが演じるアンと、 ザック・エフロン演じるフィリップの「リライト・ザ・スターズ」は、歌だけでなくロープを使って宙を舞うアクロバティックなダンス(しかもスタントなし!)が新鮮で美しく、思わず目を奪われてしまいました。

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っていうか、今回のキャスト陣はオペラ歌手役のレベッカ・ファーガソン以外、ヒュー・ジャックマンを始め全員歌って踊れる人ばかりだし、元々MV畑の監督マイケル・グレイシーだけに歌や踊りを格好良く見せる映像演出はお手の物。
曲やリズムに合わせてカットを切り替えたり、リズムに合わせて素早くカメラをパンさせたりしながら、ミュージカルシーンを盛り上げているんですよね。

また、テンポの速いヒップホップ調の楽曲や踊り、サーカスを意識した原色の多い衣装やセットの色使いなど、リアルさや時代考証に囚われず今の時代に合わせた工夫がされていて、その華やかでどこか絵本のような映像にどんどん引き込まれてしまうのです。

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つまり、本作は「伝記映画」ではなく「伝奇映画」で、P・T・バーナムを始め、実在の人物をモデルにはしているけど、あくまでオリジナルキャラによるフィクションだと思って観るのが正しいんだと思います。(「銀魂」見て「史実と違う!」って怒る人はいないでしょ?)

まぁ、見終わって思い返すと「んん??」ってとこもあるけど、少なくとも観ている間は十二分に楽しめる映画だと思いますよー!

興味のある方は是非!!

 

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ハードボイルドな日常系バディムービー「2バッドガイズ」(2018/日本ではビデオスルー?)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、『2バッドガイズ』ですよー!

よほど観ている人が少ないのか、ネット上にほとんど情報も感想も上がってない本作。

タイトル的に「80~90年代のお気楽アクションコメディ」かな(「バットボーイズ2バット的」な)と思って観たら、後半でいきなり70年代のハードボイルドアクション映画っぽい感じに急ハンドルを切るっていう、ある意味ジェットコースタームービーでしたねー。

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あらすじ

15年従軍したのち、夢だった総合格闘技の道場を開くも経営に行き詰まって借金の取り立て屋の仕事を始めたフレンチ(スコット・アドキンス)が、先輩でベテランのスー(ルイス・マンディロア)と組んで取り立てをする。

感想

僕は一応、映画の感想を書くときは、書いた情報が間違ってないかネットで情報を調べたり、ほかの人の感想をチェックしたりするんですね。
ところがこの映画、キャストも監督もスタッフもネット上に全然情報が上がってないし、感想もほとんど上がってないんですよねw

なので、これから書く感想は情報に間違いがあるかもですが、大目に見てくださいw

おっさん二人の日常系バディムービー?

この映画を「アクション多めの日常系映画」と評したのは、メエメエ博士というレビュアーさんで、僕も「なるほど確かに!」と大いに納得してしまいました。
もうね、こちらのブログに書いてあることが全てと言っても過言じゃないです。

www.meemeecinema.tokyo

っていうか、Yahoo!や映画.comみたいな映画紹介サイトのレビューも量が少ないし、ちゃんんとブログでのレビューがメエメエ博士オンリーって、どんだけ観られてないんだって話ですがw

そんな本作で主人公の一人フレンチを演じるスコット・アドキンスはイギリス出身の俳優でスタントマン。
10代のころから各種格闘技や体操を学び、「ウルヴァリン: X-MEN ZERO」ではライアン・レイノルズのスタントを努め、「ニンジャ・アベンジャーズ」では主人公としてケイン・コスギと戦い、「エクスペンダブルズ2」にも出演しているという、その筋ではまぁまぁの有名人。

もう一人の主役スーを演じたルイス・マンディロアはオーストラリア出身の俳優で、B旧映画を中心に活躍している人らしいです。

監督のジェシー・V・ジョンソンはイギリス生まれの映画監督でアクションコーディネーターもやってるらしく、映画監督になる前はスタントマンとして活躍していたんだとか。
なので、この映画はスコット・アドキンスの格闘シーンがメインの座組なんでしょう。

で、どんな映画かといえば、あらすじで書いた通り。
前半は総合格闘技を駆使するフレンチと、元ボクサーのスーがバディを組んで債権者を殴ったり殴られたりしながら取り立てをして、後半はそんな二人がある陰謀(ってほどでもないけど)に巻き込まれていく……的な?

ただ、アクション映画というわりにはアクションの見せ方が単調だし、ストーリーに活きてくるわけでもないので、アクションとストーリーが分離している感じでしたねー。

むしろ真面目なフレンチといい加減なスーの会話シーンで、マッチョなおっさん二人がキャッキャ言い合いながら、バディになっていくブロマンス感が一番の見せ場って感じでした。まぁ、バディムービーですしね。

その辺は80~90年代のコメディーアクション的な感じではあるんですが、でもコメディーだと思って観ていると差し込まれる謎の牛映像のせいで、何かノリきれないんですよね。

牛映像の謎

この映画、シーンの切り替えで使われる牛映像がとにかく邪魔です。

これが、フレンチの心情を映像的に表してるんだとしたら、お前メンタル弱すぎだろ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ って話で、お前、まだ3日くらいしか仕事してないから! すぐ仕事辞めちゃう今時の若者か! っていうね。

そもそも前半では、フレンチが傷つくような「汚れ仕事」感はほとんどなくて、ふたりのドタバタや格闘アクションがメインなので、観ているこっちには牛映像の意味が伝わらないんですよ。

もしくは、二人の未来を暗示したイメージ映像なのかもですが、だとしたらクライマックスシーンと噛み合ってないし、ラストで取ってつけたみたいな親子の会話に繋がっていかないし。

っていうか牛映像が差し込まれることで、いちいち物語の流れがぶった切れて、リセットされる感じなんですよね。ほんと、何で入れたんだろう。

アレかな?「悪の法則」っぽいのをやりたかったんだろうか?

クライマックスは60~70年代のアクション映画風味

で、色々飲み込みづらい展開があって、二人は正義に目覚めてヒーロー的な行動に出るわけですが、ここから急激にハードボイルドチックな展開になっていくのです。

そこには二人が抱える背景が関係してるんですが、そこを映像じゃなく全部セリフで言っちゃってるから全然感情移入出来ないんですよねーw

また、80~90年代のお気楽アクション映画だと思って見てたら、クライマックスで突然60~70年代のハードボイルドタッチになる温度差が激しすぎる。

っていうか、それまでずっと格闘アクションで見せてきたのに、なぜ突然ガンアクション? アパートの1フロアとか絶対格闘アクション向きの舞台だと思うけどなー。

まぁ、やりたいことは分からないじゃないけど、全体的に描写が雑すぎて全然上手くいってない感じなんですよね。

ただまぁ、前半部分のおっさん二人の掛け合いはそれなりに楽しいし、ルイス・マンディロアの愛嬌があって憎めない感じとかは良かったと思うし、映像は全体的に70年代のアクション映画っぽい感じのトーンにまとめられてるのは良かったです。

総合的に、ツッコミどころが多いダメな映画ではあるけど、個人的にはそこまで嫌いになれない感じでしたねー。

興味のある方は是非!

 

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子供の幸せとは何か「gifted/ギフテッド」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、我らがキャプテンアメリカの中の人ことクリス・エヴァンスが、超教育BBAから姪っ子を守る映画『gifted/ギフテッド』ですよー!

監督は「500日のサマー」「アメイジングスパイダーマン1・2」を手がけたマーク・ウェヴです。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

(500)日のサマー』や『アメイジングスパイダーマン』シリーズなどのマーク・ウェブ監督が手掛けたヒューマンドラマ。7歳の少女の特殊な才能が発覚したことから、ささやかな幸せが揺らぎ始める。『キャプテン・アメリカ』シリーズなどのクリス・エヴァンス、子役のマッケンナ・グレイス、『ウィークエンドはパリで』などのリンゼイ・ダンカン、オスカー女優のオクタヴィア・スペンサーらが出演。(シネマトゥデイより引用)

感想

ざっくりストーリー紹介

7歳のメアリー(マッケンナ・グレイス)は、片目の猫フレッド、叔父のフランク(クリス・エヴァンス)と共にフロリダの小さな町で平穏に生活していました。

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画像出典元URL:http://eiga.com 本当の親子みたいな2人

ちょっと生意気だけど元気で明るい、どこにでもいる子供に見えるメアリーでしたが、実は彼女の母親は天才数学者で、母の才能を受け継いだ彼女もまた、超難しい数学の問題をスラスラ解いてしまう天才児。

フランクは今は亡き姉(メアリーの母)の意思に従い、メアリーに普通の生活をさせようとしますが、小学校にあがったメアリーはその才能がバレてしまい、母を自殺に追い込んだ超教育祖母のエブリン(リンゼイ・ダンカン)が現れます。
そして、メアリーの育て方を巡って対立したフランクとエブリンは、メアリーの親権を巡って裁判で激突するのだった…。
という物語です。

子供の才能を伸ばすべきか、それとも普通の暮らしをさせるべきか

アメリカでは、学力の高い子は年齢に関わらず学力に応じた教育を受けられる「飛び級」というシステムがありますよね。

本作のメアリーは、こと数学においては学者の書いた専門書を読み解き、どんな難問も鼻歌交じりでスラスラ解いてしまう超のつく天才少女。
そんな彼女が小学校1年生の1+1=2なんて算数の初歩の初歩をやらされたら、そりゃあキレます。

というわけで、入学早々サクッとその才能を見抜かれてしまったメアリーの元に現れたのは、彼女の母を天才数学者に育て上げた超教育祖母のエブリン。

彼女はメアリーの親権を巡って訴訟を起こしたり、メアリーに最新のマックブックや数学書をプレゼントしたりとあの手この手でフランクとメアリーを引き離し、彼女に相応しい教育を受けさせようとするんですね。

対するフレッド、そんな母親が原因で姉が自殺してしまったので、メアリーには同じ轍を踏ませまいと真っ向から対抗。友達と遊んだり恋人を作ったりという普通の生活をさせようと(それが自分のエゴではないかと悩みながらも)頑張るわけです。

そこにあるのは、メアリーの母親を死なせてしまった事への後悔で、祖母エブリンは才能という母親の財産を引き継いだメアリーの才能を伸ばそうと考え、叔父フランクは母親が手に入れられなかった「普通の生活」をメアリーに体験して欲しいと願っています。

劇中では、どうしてもエブリンの方が悪役に見えてしまうけど、二人ともメアリーに対しての愛情はちゃんとあって、「幸せの定義」に対する考え方の違いで対立しているわけですね。

マッケンナ・グレイスが素晴らしい

そんな本作で、悩んだり間違えたりするフランク役にクリス・エヴァンスはピッタリだったし、超ムカつくけどその背後に孤独や悲しみが見えるエブリン役のリンゼイ・ダンカンは流石の風格。

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近所に住むおせっかいな大家のロバータを演じるオクタヴィア・スペンサーも、フランクとうっかりやらかしちゃうメアリーの担任教師ボニー役の ジェニー・スレイトも、フランク側の弁護士役の グレン・プラマーもキャスト陣はみんな素晴らしかったです。

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画像出典元URL:http://eiga.com いかにメアリーが愛されて生まれたかを教える感動のシーン

しかし、本作で特筆すべきはやっぱりメアリー役のマッケンナ・グレイスです。
公開時が11歳なので撮影時は9歳か10歳くらい(丁度生え変わりで前歯がなかった)だと思いますが、未熟な子供らしさと成熟した大人のような雰囲気を併せ持った少女で、彼女の喜怒哀楽にあわせて観ているこちらの感情も揺さぶられるし、画面を支配する華やかさもあって、ほんと素晴らしいと思いましたねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com 

オクタヴィア・スペンサーと2人で歌うシーンなんかはホントに楽しそうで、観ているこっちまで幸せな気分になりましたよ。

 

子供の親権を巡って裁判で争う映画は他にも結構ありますが、本作はフランクとエブリンどちらかに焦点をあてる=一方が単なる悪役になるのではなく、双方の考え方に理があるようにバランスが取られているし、ラストの着地も良くて、誰にでも安心してオススメ出来る美しい物語でしたよ。

興味のある方は是非!!

 

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ブルース・ウィリス最新作(主役とは言ってない)「アクト・オブ・バイオレンス」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ブルース・ウィリス“ 最新作 ”『アクト・オブ・バイオレンス』ですよー!

元軍人の男が、誘拐された弟の婚約者を救い出すため人身売買組織を相手に戦うというアクション映画です!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ブルース・ウィリスが人質を救出するために奮闘するベテラン捜査官を演じるクライムアクション。大切な女性を奪われた男たちと捜査官が、巨大な闇の組織を追い詰める。出演はブルースのほか、『タイガーランド』などのコール・ハウザーや『X-MEN』シリーズなどのショーン・アシュモアら。製作・出演の『スピーク』のほか、監督作もあるブレット・ドノフーがメガホンを取る。(シネマトゥディより引用)

感想

えー、いきなりネタバレしますけど、この映画の主役はブルース・ウィリスではありません。

ポスターや予告では、いかにもウィリス主演みたいな感じですけど、本作の主役はコール・ハウザーで、ウィリスはハウザー演じる元兵士の三兄弟をサポートするベテラン捜査官役。なんですが、最後の美味しいところだけはちゃっかり持って行ってました。
さすがはウィリスw

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ざっくりストーリー紹介

冒頭、ウィリス演じるベテラン捜査官エイヴリーと女性捜査官が女性を誘拐し売りさばく人身売買組織のアジトに踏み込むところからスタート。
すったもんだアクションシーンの末に、ビルから落ちそうになっている敵を見殺しにするところから、エイヴリーがこの組織をいかに憎んでいるかがわかります。

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画像出典元URL:http://eiga.com  女性捜査官に「落としたの?」と聞かれ「まさか」とシラを切るウィリス

一方、PTSDで平和な生活に馴染めない退役軍人のデクラン(コール・ハウザー)と、結婚して幸せいっぱいの退役軍人ブランドン(ショーン・アシュモア)は、人身売買組織に誘拐された弟ローマン(アシュトン・ホームズ)の婚約者を救おうと銃撃戦を展開するも救出失敗。

「警察なんぞに任せておけない」と三兄弟は武装して人身売買組織を相手にドンパチを繰り広げるのだが……。というストーリーでした。

「ローリング・サンダー」+「ダーティーハリー」?

デクランとブランドンは、子供の頃に弟と婚約者(婚約者は幼馴染)を追いかけるいじめっ子をフルボッコにする正義感の強い兄弟で、当然のように兵役につき(多分)湾岸戦争帰りの元軍人。

ブランドンの方はその後美人の嫁さんと結婚して幸せになったものの、デクランの方ははPTSDで苦しみ、平和な生活に溶け込めずにいるんですね。

そんな時、バチェラーパーティー(結婚前夜にハメを外すパーティー)中に誘拐された、弟ローマンの婚約者を救おうと人身売買組織と銃撃戦になったデクラン。
ここで火が付いたデクランは、渋るブランドンを説き伏せ、弟ローマンに即席の訓練をして、兄弟3人で人身売買組織相手に「戦争」を始めるわけです。

敵と戦うデクランは非常に生き生きしていて、婚約者を救いたいっていうよりも、“戦争の理由”が出来てイケイケドンドンヒャッハー状態心なしか嬉しそうにさえ見えます。

「こんな映画どこかで…」と思い返したら、ちょっとだけ「ローリング・サンダー」に似てるんですよね。

ちなみに映画「ローリング・サンダー」は、

ベトナム戦争で過酷な捕虜生活を体験した男が、帰国後、平和の中で自分の居場所を失ってしまうが、メキシコから来た強盗集団に妻子を殺され自身も片腕を失うという理不尽な暴力に遭ったことで、復讐という闘争の中にカタルシスを求める。(ウィキペディアより)

という内容。

もしかして、本作の監督ブレット・ドノフーは、本作で現代版「ローリング・サンダー」がやりたかったんじゃないかって思ったりしました。

主人公が全てを失うことで強盗集団相手に戦争を始める「ローリング~」とは逆に、本作ではデクランが始めた「戦争」によって大きな代償を支払うことになるっていうオチも中々良かったです。

一方、デクランに「わしら警察が彼女取り戻しちゃるけ、お前らは家で大人しくしとりんさいや」と大見得を切ったウィリスは、警察上層部の圧力で敵組織に手出しが出来ない状態に。そこで、こっそり三兄弟をサポートするも……となり、結局警察に愛想を尽かして辞めちゃったりします。

こっちはなんかこう、ほんのりダーティー・ハリー風味って感じでしたよw

まぁ、(低予算だからかもしれませんが)、全体的にテレビ映画っぽいなーって思ったし、途中若干ゴチャゴチャしてる部分もあったけど、銃撃シーンもど派手で90分と程よい長さなので、(ウィリス主演ではないけど)アクション映画として、まぁまぁ楽しめましたねー。

興味のある方は是非!

 

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岩井俊二の名作ドラマをアニメ化「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年夏に公開された劇場版アニメ『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』ですよー!

前年に公開された「君の名は。」を空前の大ヒットに導いた川村元気が企画・プロデュースということで話題の本作でしたが、評判はイマイチっていうかむしろ酷評が多かった印象。

なので僕も観るのを躊躇してたんですが、今回思い切って観てみることにしましたよー。

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概要

リップヴァンウィンクルの花嫁』などの岩井俊二監督の同名ドラマを基に、『物語』シリーズなどの新房昭之が総監督を務めたアニメ。現代の要素を入れながら長編として再構築し、夏休みを過ごす中学生の男女を主人公に、何度も繰り返されるある1日を描く。脚本を、『モテキ』シリーズや『バクマン。』などの大根仁が担当。『ちはやふる』シリーズなどの広瀬すず、『共喰い』などの菅田将暉、人気声優の宮野真守らがボイスキャストとして出演する。(シネマトゥディより引用)

感想

「二匹目のドジョウ」を狙い磐石の布陣で挑むも…。

前年、新海誠監督の劇場アニメ「君の名は。」が興行収入250億円もの大ヒットとなり、一躍時の人となった川村元気プロデューサー。

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そして翌年の2017年、『リップヴァンウィンクルの花嫁』などの岩井俊二監督の同名テレビドラマ(後に劇場公開もされた)を原作に、「モテ期」の大根仁脚本、「魔法少女まどかマギカ」や「化物語」などの新房昭之率いるシャフトがアニメーション製作(監督は武内宣之)、主演の二人には菅田将暉広瀬すずを迎え、主題歌は DAOKO×米津玄師という磐石の布陣で「よっしゃ、もう一発当てたるでー!(*゚∀゚)=3」と鼻息荒く挑んだものの、興行的には15億円台と振るわず、結果だけ見れば大惨敗といっていい成績に終わってしまいました。

その理由として「邦画の当たり年だった昨年の反動」とか「内容が難しい」などが挙げられてましたが、個人的には本作の座組に問題があったのではないかって思うんですよね。

脚本(脚色?)の大根仁に関しては、岩井俊二自身が映画化の条件として出していたそうだし、ぶっちゃけストーリーだけ追えば「君の名は。」よりもよく出来ていたんじゃないかと思います。(要所要所に大根仁感が溢れてましたけど)

ただ、正直シャフトはどうかなー? と。

君の名は。」は、新海誠監督自身が元々持っている乙女チックというか繊細さみたいな部分にピントを合わせつつ、分かりやすさやハッピーエンドなど多くの人にウケる要素を盛り込んだ川村元気チューニング”が上手くハマったのが異例の大ヒットを生んだ一因だと思うんですけど、本作はそもそもシャフトのオリジナル企画ではなく、岩井俊二のオリジナルを大根仁が脚色した、シャフトにとっては請負仕事なんですね。

っていうか、そもそもシャフトって基本的に本作で求められる「一般受けする分かりやすさ」とはぶっちゃけ対極にある、アニメリテラシーの高い人(つまりはオタク)に好まれる作風の会社です。

そんな会社に「君の名は。」と同じことを要求するのは、手足を縛って海の中へ放り込むようなものわけで、もちろんプロとして本作ではしっかり要求に応えているわけですが、それはファンがシャフトに求めるものではないし、逆に「君の名は。」を望んで観に来た観客にとっては「普通のアニメじゃん!」って感じになったんじゃないかと。

むしろこの映画こそ、岩井俊二と作家性が近い新海誠監督で作ったほうが良かったのでは? と思ったし、元も子もない事を言えばそもそもアニメにする必要があったのかな? と。

だってオリジナル版は、少女と女性の間で揺れ動く当時14歳の奥菜恵の一瞬の輝きを切り取った(演技の拙さも含んだ)セミドキュメンタリー的な「アイドル映画」(ドラマ)だったわけで、だから奥菜恵と同世代だった少年少女の共感を得て、カルト的な人気の作品になったわけですしね。

それをアニメにした時点で、オリジナル版とはまったく別物になってしまうわけです。
何故なら、アニメは実写と違って映像やストーリー全てが作為的に作られるわけで「偶然性」はないですから。

 一本の劇場版アニメとしては面白い

ただし、岩井俊二のオリジナル云々を抜きにすれば、一本の劇場アニメ作品としてはちゃんと面白いんですよ。
ストーリーはオリジナル版を活かしつつ、後半でアニメならではの表現を盛り込みダイナミズムやエモーションを盛り上げているし、映像もとても綺麗。
ストーリーもしっかりしてるし、登場人物の感情の動きをセリフに頼らず動きや表情、背景描写によって映像的に表現しようとしているのも好感が持てます。

オリジナル版は「ifもしも」というオムニバスドラマの一篇として製作され、母親の都合で引越しをすることになったヒロインなずなと、彼女に密かに想いを寄せている主人公の典道、親友の祐介の淡い初恋の物語です。

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プールでなずなへの告白を掛けて競争をする少年二人。
結局、勝った祐介になずなは二人で花火大会に行こうと持ちかけるも、祐介は典道になずなを押し付ける形で逃げてしまう。

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その結果、“かけおち”をしようと家を出ていたなずなは母親に見つかり無理やり連れ帰られてしまうんですね。

その場に居合わせた典道は、やり場のない怒りから祐介を殴りつけ「もしあの時自分が勝っていれば」と願うと、時間が巻き戻り……。という物語で、いわゆるループものなんですが、本作ではそこに、なずなが海辺で拾った不思議なガラス玉? のパワーという一応の理由がつけられ、ループもオリジナル版は一回ですが、本作では3回に増やされて、ループを繰り返す過程で典道となずなの距離が縮めていく過程が描かれます。

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そして後半では、実写のオリジナル版では出来なかったアニメならではのファンタジックな表現が繰り広げられ、ラストもオリジナル版とは変えられていて、主題こそ多少ズレたものの、その分物語性の強いエンターテイメントになっているんですね。

そんな本作の感想をいくつか読んでみると、「物語が難しい」「キャラクターに感情移入出来ない」という意見をいくつか見かけました。

本作、難しいのか? 感情移入出来ないのか?

本作は典道が「あの時こうすれば」と願うとそのシーンまで時間が巻き戻るいわゆる「ループもの」ですが、実はこれ、単に時間が巻き戻っているのではなく典道が望む世界、いわゆる「パラレルワールド」に移動しているという設定なんですよね。多分。

でも特にその辺の説明はないので、単に「時間が巻き戻った」と思いながら観ている人は世界そのものが変わってってしまう事に混乱してしまうかもです。

さらに、ラストシーンは、解釈を観客に委ねる形になっていて、ハッキリしたハッピーエンドではないのです。

また、本作のキャラクターは中学一年という設定。(オリジナル版は小学生)
大人と子供の間で揺れ動く、思春期の少年少女特有の不安定さとゆえの煌きを描くことが主題で、一夜の冒険を通してなずなは先に大人の世界に旅立ち、典道は大人の入口に立つみたいな物語なんですよ。(中一くらいだと女の子の方が大人っぽいでしょ)

なので、なずなは劇中で恋の駆け引きの真似事をしたり、そうかと思うと子供っぽ異振る舞いをしたりして典道を翻弄すんですね。(ここはオリジナルと同じ)

なずなが典道に“ かけおち ”を持ちかけるのも、なずな自身、まだ子供の自分たちがそんなことは出来ない事を重々承知してるけど、せめて一夜だけ親の都合から逃れて自由になりたい=もし自分が大人だったらという願望からで、彼女は最初から「物語の終わり」を見据えているわけです。

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つまり、本作の主題は思春期の少年少女の心の機微を描いたジュブナイルストーリーで、なので「君の名は。」のようなラブストーリーだと思って本作を観た人は、難しいと感じてしまうし、キャラクター(特になずな)の言動に感情移入出来ないのではないかと思うんですよね。

まぁ、その辺は勘違いさせるような宣伝に問題があったと思いますけども。

個人的な結論としては、この作品自体は劇場版アニメとしてはレベルが高いし十分面白い作品だけど、「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」をアニメ化したのは失敗だったと思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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