今日観た映画の感想

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細部までこだわったサスペンスホラー「ドント・ブリーズ」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは昨年の年末に公開され、映画ファンの話題をさらった作品、
ドント・ブリーズ』ですよー!
低予算映画ながら、細部までこだわった作りが見事なサスペンスホラー映画でした。

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あらすじと概要

盲目の老人宅に強盗に入った若者たちが、反撃に遭う恐怖を描くスリラー。リメイク版『死霊のはらわた』などのフェデ・アルバレス監督がメガホンを取り、オリジナル版のサム・ライミ監督と、ライミ監督とタッグを組んできたロブ・タパートがプロデュースを手掛けた。目は見えなくとも研ぎ澄まされた聴覚を持つ老人に『アバター』などのスティーヴン・ラングがふんし、リメイク版『死霊のはらわた』などのジェーン・レヴィ、『プリズナーズ』などのディラン・ミネットらが共演する。

トーリー街を出るための資金が必要なロッキーは、恋人マニー、友人アレックスと共に、大金を持っているといううわさの目の見えない老人の家に忍び込む。だが、老人(スティーヴン・ラング)は、驚異的な聴覚を武器に彼らを追い詰める。明かりを消され屋敷に閉じ込められた若者たちは、息を殺して脱出を図るが……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

沈黙のサスペンスホラー

本作を一言で言うなら「ナメてた相手は殺人マシーン」(ギンティ小林氏命名)系譜の作品です。
近年で言うとデンゼル・ワシントンが主演した「イコライザー」なんかが同じ系譜の作品なんですが、デンゼル・ワシントンは殺人マシーンとして少女を救うヒーローだったのに対し、本作でスティーヴン・ラング演じる盲目の老人は超怖いサイコ爺さんなわけですよ。

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タイトルの「ドント・ブリーズ」を翻訳すると「息もできない」という意味になるらしいんですが、盲目の老人と侮ってうっかり彼の“フィールド”に入ってしまった三人の若者が老人に追われ、まさに「息もできない」緊迫感の中で何とか逃げ出そうとするという内容です。
なので、本作ではホラーにつきものの悲鳴も残酷描写も殆どなく、ワッと驚かされるお化け屋敷的な要素もかなり控えめです。
それよりも、若者たちがどうやって老人の家から逃げ出すかという、サスペンスの方に重きを置いている作品だと思いました。

設定が上手い

この老人、盲目だけどその分聴覚は人並み以上で、しかも退役軍人なので超マッチョ。
さらに、過去の悲しい出来事からすっかり心を病んでしまっていて、人を殺すことに全く躊躇がないんですよね。
でも、あくまで「盲目の老人としては」の強さであって、絶対かなわないほどは強くない。超強そうでそこまで強くないけどやっぱり強いっていう、食べるラー油ぐらいの絶妙な感じが観ている方のハラハラ感を煽っていくんですね。

とはいえ、そもそも悪いのはこの老人の家に強盗に入った三人なので、老人に返り討ちにされても自業自得なわけですが、ここで効いてくるのは三人の素性と老人の異常性です。

母親に家庭内暴力を受けて育ったロッキー(ジェーン・レヴィ)は、幼い妹と街を出て人生をやり直すためにお金が要るんですね。

父親が警備会社に勤めているアレックス(ディラン・ミネット)はそんな彼女に絶賛片思い中なので、彼女の頼みを断れず、防犯セキュリティシステムと父親が預かっているお客の家の鍵を使い盗みに協力します。
ロッキーの恋人マニーは……うーん、まぁバカだけど悪い奴ではないんですよね。

いや、盗みなんかしないで働けよって話ですが、ここで更に効いてくるのは本作の舞台がデトロイトだということ。

デトロイトといえば自動車産業で栄えたものの、今では街自体が財政破綻してしまって、仕事もなく子供の6割が貧困生活を強いられていて、ロッキーの母親が夫と分かれたのも、恐らくこの街の問題が絡んでいるんだと思われる。

そうした背景を、序盤物語の中でサラリと観せる手際の良さが素晴らしい。

そして、最初は「被害者」だった老人が中盤のあるシーンをキッカケに、とんだサイコじじいだということが判明し攻守が逆転するわけですが、前述した通り舞台は老人の家の中、つまり老人のフィールドなんですよね。

ただ、老人には盲目というハンデがあるので、そのパワーバランスをトントンにしないと物語にスリルが出ないしリアルじゃなくなってしまう。
そこで登場するのが、老人の飼い犬なんですね。
口から泡状のヨダレを流しながら襲いかかってくる狂犬で、コイツがまた超怖いんですよねー。コイツに噛まれたら一巻の終わりっていう説得力があります。

こうしたキャラクターの設定が上手く、さらにその設定を上手く活かしてサスペンスを生み出すストーリー作りはどこかゲーム的でもあって、その辺のイマドキ感も目新しい感じがしましたねー。

クライマックスで観せる恐怖

で、なんやかんやあって、ロッキーが老人に捕まるクライマックスシーン。
老人の異常性というか狂気がハッキリするシーンなんですが、もうドン引き。

同時に、今までサスペンス要素の強いゲーム的な怖さだった本作が、はっきりホラーになる瞬間です。

でも、そんな老人の行動の奥に彼の悲哀が見え隠れするあたりは、老人と若者のどちらか一方を完全悪として描かないよう、また観客がどちらか一方に肩入れしないように、バランスを考えているんじゃないかと思いました。

それがあるので、物語の結末や観終わったあともどこかモヤモヤした気持ちが残ってしまうんですよね。

殺人鬼に追い回される系のホラーとしては若干パンチに欠けるものの、その分を設定やストーリーの上手さで補って、さらにディテールの描写で物語に説得力を持たせるセンスは素晴らしいし、これから殺人鬼系ホラーの本場はテキサスからデトロイトになるかもしれないなーと思わせる作品でしたよー!

興味のある方は是非!!

 

ナメてた相手が殺人マシーン系譜の名作

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賞金稼ぎと賞金首、二人のオッサンの珍道中「ミッドナイトラン」(1988)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、名優 ロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディン主演の傑作アクションコメディー『ミッドナイト・ラン』ですよー!
本作を観るのは多分3回目だと思うんですが、やっぱり何回観ても面白い映画でした!

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あらすじと概要

元警官のバウンティ・ハンターと、彼に捕らえられた横領犯のニューヨークからロスまでの壮絶な大陸横断アクション・コメディ道中記。横領犯を狙うギャングとFBIの追撃によるバイオレンス・シーンとC・グローディンの奇妙なキャラクターが引き起こす笑い、それにデ・ニーロの軽いフットワークの演技が心地よいアンサンブルになっており、ノンストップ・アクション全盛の当時にあっておおらかな正統娯楽活劇の作りが楽しい。(allcinema ONLINE より引用)

 

感想

ざっくりあらすじ紹介

本作は、「ゴッドファーザー」「ディア・ハンター」「タクシードライバー」など、数々の名作に出演してきた名優、ロバート・デ・ニーロが挑むアクションコメディーの傑作です。

元警官の賞金稼ぎジャック・ウォルシュ(デ・ニーロ)は、ニューヨークで捕まえた賞金首で元会計士のジョナサン・マデューカス(グローディン)、通称「デューク(公爵様)」を依頼人に引き渡すためロスに向かいます。

このデュークはギャングのお金を横領し、慈善団体に寄付したためにギャング、FBIに狙われてるんですね。
ジャックは、デュークにお金を貸した保釈金ローン会社の社長の依頼でデュークを捕獲、ロスに連れて行こうとするが……というストーリーなんですね。

賞金稼ぎとは

本作でデ・ニーロが演じている賞金稼ぎという職業、日本で馴染みのない制度なんですが、犯罪大国アメリカでは容疑者の数が多すぎて全ての人を拘束するとすぐに留置所が一杯になってしまうため大半は早々に保釈されるらしいんですね。

そこで、各裁判所の前にはベイルショップと呼ばれる保釈金専門の金融会社(保釈保証業者)が営業していて、容疑者はそこでお金を借りて保釈保証金を裁判所に納めて保釈されるわけですが、容疑者が逃亡して期日までに裁判所に出頭しないと保釈金は裁判所に没収されてしまうわけです。

そうすると金融会社は大損になるので、賞金稼ぎ(バウンティハンター)を雇って雲隠れした容疑者を連れ戻してもらうんですね。

で、会計士のデュークはギャングのお金を横領してるので刑務所に入ると報復で手下に殺されてしまうし、ギャングは報復だけでなく裁判でデュークに裏帳簿の事を証言されると自分たちも逮捕されるので、その前にデュークを始末したい。
FBIはデュークを逮捕してギャングの証言を得たい。
保釈金ローン会社の社長は、期日までにデュークを裁判所に出頭させないと破産してしまう。

というわけで、デュークはギャング、FBI、ローン会社から追われているわけです。

チャールズ・グローディンの好演

本作は、ギャングとFBIに追われながらニューヨークからロスを目指す、ジャックとデュークのロードムービーでもあり、バディ(相棒)ムービーでもあります。

そんな本作の見所は、二人の会話シーンとデューク役のチャールズ・グローディンの好演にあるんじゃないかと思います。

チャールズ・グローディンは俳優・コメディアン・プロデューサーと多彩な人で数々の映画に出演、米国では数々の賞にも輝くベテランなんですが、本作では正義感が強いわりにとぼけたキャラクターで、デ・ニーロを食ってしまうほどの存在感を見せています。

漫才で言えばデュークがボケ役、ジャックがツッコミ役で、映画の序盤はジャックに注目して観ているのに、いつの間にかデュークの方に肩入れしてしまうんですよね。

特に二人の会話やコメディーシーンでは、チャールズ・グローディンがデ・ニーロをリードしているようにも見えましたねー。

お手本のような構成

そして改めて観ると本作の構成はとても良く出来ていて、まさにストーリー作りのお手本というか、教科書的な作品でもあります。

コメディーとアクションとストーリーが全て連動していて、アクションやコメディーシーンでストーリーが止まることがなく、逆にどんどんスイングしていくんですよね。

例えば序盤、ニューヨークでデュークを捉えたジャックが、飛行機でロスまで連行しようとするも、デュークは「飛行機恐怖症」で仕方なく列車で移動するんですね。
で、その行動が結果的にギャングとFBIを出し抜く形になるとか。

一見ノリで作っているいかにもな80年代のドタバタコメディーのようで、実はしっかりと全体の流れが計算されているんだなーと。
ちなみに、本作の脚本は「ビバリーヒルズコップ」の ジョージ・ギャロが担当しています。

バディムービー

ジャックはシカゴの元警官なんですが、一人だけギャングの買収に応じなかったため、仲間が仕掛けた罠にハメられ、家族と職を失い賞金稼ぎに。
一方デュークの方は、会計士としてギャングの裏帳簿を発見し、正義感から裏金を慈善団体に寄付してしまい命を狙われるハメになってしまいます。

性格や行動は正反対ですが、実は二人は似たもの同士なんですね。
本作はそんな二人が、最初は反目しつつも、ストーリーが進むうちに信頼しあっていくという、王道のバディムービーです。

今観るといかにも80年代感溢れる作品ではありますが、前述したようにとても良く出来た物語だし、笑えて泣けてスカっとするエンターテイメント作品で、年代に関係なく楽しめると思いますよ!

興味のある方は是非!!

 

今観ても色褪せない「仁義なき戦い 代理戦争」(1973)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、深作欣二の代表作シリーズ『仁義なき戦い 代理戦争』ですよー!
ぶっちゃけ衝撃度では、一作目の「仁義なき戦い」二作目「仁義なき戦い 広島死闘編」には及ばないものの、今観ても色褪せない面白さでしたー!

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あらすじと概要

 “仁義なき戦い”シリーズの第3弾。ヤクザ組織の抗争の中で展開する欲望と裏切り、そして凄惨な復讐のさまを描く。
トーリー昭和35年、広島。広島最大のヤクザ組織・村岡組のナンバー1杉原が、博奕のもつれから九州のヤクザに殺される。これを機に、村岡組の跡目を巡って熾烈な抗争が勃発。やがて、それは日本を代表する巨大暴力団同士の、広島を舞台とした代理戦争へと発展していく……。(allcinema ONLINEより引用)

 

感想

豪華キャスト総出演の大人気シリーズ第三弾!

仁義なき戦い』を知らない人のためにざっくり説明すると、このシリーズは実在するヤクザ美能幸三が獄中で書き綴った手記をベースに、飯干晃一が1972年に「週刊サンケイ」5月26日号から連載したノンフィクションを、深作欣二監督で映画化した『実録ヤクザ映画』の人気シリーズです。

時代劇、任侠映画で数々のヒット作を出してきたものの、時代の流れと共に斜陽の一途を辿っていた東映が正月映画として制作・公開した一作目が大ヒット。
試写を観当時の社長はヒットを確信し、一作目公開前に続編の製作を決定したそうです。

続く二作目『広島死闘編』は原作が追いつかず、一作目と同時期に起こった広島市の事件を描いた、いわば番外編的作品。

そして三作目となる本作では、一作目の“その後”が描かれています。

驚くべきは、この三作はすべて1973年に公開されているということ。
一作目が1月、二作目が4月、そして本作『~代理戦争』が9月に公開され、その続編『~頂上決戦』が翌年1月という、今では考えられないハイペースで制作・公開されているんですねー。

菅原文太、梅宮辰夫、松方弘樹千葉真一北大路欣也小林旭渡瀬恒彦ら、後の大スターたちが勢ぞろいした、今観ると超豪華な作品でもあります。

とにかく登場人物が多い!

このシリーズの特徴は、テンポの早さと抗争のド迫力、あと、人間関係の複雑さにあります。

とにかく登場人物が多い!w
そして、第三作となる本作では、この人間関係の複雑さが極致に達します。
さらに、前作、前々作で死んだはずの梅宮辰夫や川谷拓三などが、別人として登場するので、初見の人は混乱してしまうかも。

あと、物語となんの脈絡もなく、割と重要だったりそうでもなかったりする人物が次々と死んでいくのも本作の特徴ですが、それは実在の事件をモデル作られた「実録モノ」なので、まぁ仕方ないんですよね。

ただ、観るとき登場人物をすべて覚える必要はなくて、
一作目なら、菅原文太(主人公)、梅宮辰夫(仲良し)、松方弘樹(仲良し→敵)、金子信雄(敵)。

二作目は、千葉真一(敵)と北大路欣也(主人公)。

本作では、菅原文太金子信雄小林旭(仲間→敵)、渡瀬恒彦(子分)、田中邦栄(腰巾着)と、それぞれ重要人物だけ何となく分かれば十分楽しめると思います。

テンポの速い展開と、ド迫力の抗争シーン

そして、本シリーズの見どころは何と言ってもテンポの速い展開と、ド迫力の抗争シーン。
まさにジェットコースタームービーっていう感じで、次から次へと事件や抗争が起こるので退屈する暇がなく、2時間弱があっという間に過ぎてしまいます。
敵対する組員同士の抗争シーンでは、手持ちカメラで抗争をすぐ間近で撮影してるので、自分も抗争に巻き込まれているような気分が味わえますよ!

本作では、広島を牛耳る大親分の引退が発端となり、呉と広島の二大勢力に神戸の巨大組織が絡み、その中での裏切りと謀略をメインに描いているんですが、何と言っても金子信雄加藤武金田一耕助シリーズで「よし、わかった!」って言う警部の人)の二大ヘタレ親分に、菅原文太を始めとした主要人物たちが振り回されて無駄死にしたり失脚したりする様子が見どころです。

戦争、組織のメタファー

本シリーズはヤクザの抗争を描いていますが、これは戦争と組織のメタファーです。
ヤクザ組織という巨大な権力の流れに翻弄され、命を落とす若者たちを描く青春映画としての一作目。

戦争を体験した世代と、していない世代の価値観の違いを描いた二作目。

そして本作では、タイトルの通り、日本を二分する巨大暴力団の抗争に巻き込まれていく主人公を、東西冷戦のメタファーとして描いています。

本シリーズでヤクザ組織という社会の縮図を通して、脚本の笠原 和夫は戦争や組織を描いているんですね。

キャスティングから生まれる化学反応

本作でこれだけの豪華キャストが揃ったのは、映画産業の斜陽によって五社協定(簡単に言うと役者の引き抜きをしないという映画会社同士の約束)が崩れたことにあります。

そうして、今まで共演の考えられなかった若き大スターたちが一同に介し、熱量やプライドのぶつかり合いから化学反応が起こったことが、このシリーズの迫力や緊迫感に繋がり、40年以上経っても尚、色褪せない輝きを放っているんだと思います。

ヤクザものということで食わず嫌いしている人も、一度観たらハマってしまう普遍的な面白さを持つ、邦画の中でも一二を争う傑作中の傑作ですよ!

興味のある方は是非!!

 

▼関連作品感想▼

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世界よこれが五社英雄だ!!「雲霧仁左衛門」(1978)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「鬼龍院花子の生涯」の五社英雄監督が、1978年に名優 仲代達矢主演で制作した時代劇『雲霧仁左衛門』ですよー!

「WOWOWぷらすと」で映画評論家の町山智浩と、時代劇研究家の春日太一さんが紹介していたのを見て、気になったので観てみました。
そしたらこれが、もうね、なんていうか、とにかくスゴイ作品でしたよー!

で、本作に限っては、ネタバレしても面白さに影響はない…というか先にある程度内容を知ってたほうが楽しめる映画だと思うのでネタバレ全開で書いていこうと思います。
なので、内容を知らずに観たいという方は、映画を観てから、この感想を読んでくださいねー!

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

非情な武家組織に追われて盗賊と化した男と、彼に熾烈な闘争を挑む火付盗賊改めの姿を描く、池波正太郎原作の同名小説の映画化。脚本は「影狩り」の池上金男、監督は「暴力街(1974)」の五社英雄、撮影は「愛情の設計」の小杉正雄がそれぞれ担当。(映画.comより引用)

トーリー:享保七年頃、江戸では盗賊の雲霧仁左衛門仲代達矢)率いる雲霧一味によって、豪商富商が次々と襲われ大金を奪われる事件が頻繁に発生していた。
安部式部(松本幸四郎)率いる火付盗賊改めは雲霧一味を捉えようと躍起になるも、雲霧一味はそんな彼らを出し抜き、まんまと大金をせしめていく。
そして、江戸での盗み働きに見切りをつけた仁左衛門は、最後の大仕事として、尾張屈指の呉服商、松屋丹波哲郎)を狙うのだが…。

 

 

感想

池波正太郎の原作を鬼才五社英雄が壊しまくる!

池波正太郎の原作、もしくは中井貴一版テレビドラマで「雲霧仁左衛門」をご存知の方も多いかと思います。
ざっくり簡単に言うと、怪盗団vs火付盗賊改めの出し抜き合戦というか、例えるならルパン一味vs銭形警部率いるインターポールみたいな感じの、ノワール(犯罪)作品(シリアス版)みたいな感じ。

原作とドラマ版での雲霧仁左衛門率いる「雲霧一味」は、ターゲットの豪商富商(大金持ち)に部下を潜入・調査して、ターゲットの金庫にある大金を盗むわけですが、強盗のように殺しはせず、盗まれたほうが気づかないほど一切の証拠を残さずに雲か霧のように消える鮮やかな手口で犯行を行う怪盗団。

そんな雲霧一味を追う安部式部率いる火付盗賊改め(鬼平犯科帳でお馴染みですね)との、知恵比べが見所なんですね。

と・こ・ろ・が、本作で五社監督は原作の醍醐味である知恵比べや出し抜き合いのロジックをバッサリとカット。
かわりに、ビックリするほどの血飛沫ぶっしゃー! 、首がぽーん! 、おっぱいバイーンの、エンタメアクション作品に仕上げたんですねー。

なので、ストーリーはぶっちゃけしっちゃかめっちゃかですが、とにかく映像のインパクトが凄すぎて「なんか凄いもの観た」って思わされる作品でしたねー。( ゚д゚)ナンカスゴイ…

超豪華キャストによる複雑な人間関係

実はこの作品、人間関係はかなり複雑だったりするんですが、その辺の描写をほぼ省いているので何も知らずに観た観客は「??」ってなっちゃうかもしれません。
というわけで、登場人物・グループの相関関係を書こうと思います。

雲霧一味

仲代達矢演じる雲霧仁左衛門によって結成された盗賊集団。
火付盗賊改めを出し抜き、次々と盗みを成功させ名を上げた。

火付盗賊改め

凶悪な組織犯罪に対抗するべく作られ、武力行使も許可されている刑事集団。
若き日の松本幸四郎(当時は先代の市川染五郎だった)演じる安部式部は、当時の長官。雲霧一味を逮捕することに執念を燃やしている。

星一

雲霧一味とは逆に、放火・殺人・強姦などなんでもありの盗賊。
映画冒頭で雲霧一味が狙っていた商家に押し込むも、火付盗賊改めに踏み込まれ壊滅状態に。

尾張藩

十年程前、当時家臣だった仁左衛門らに公金横領の罪をかぶせ、親族一同を殺し、家を焼き払ったうえ、許婚者まで奪った。

辻蔵之助

仁左衛門の兄。仁左衛門とともに尾張藩の追っ手から何とか逃げ延び、以来尾張藩に復讐の機会を狙っている。
演じているのは初代松本白鸚(当時は先代の松本幸四郎

富の市(宍戸錠

辻兄弟抹殺のため、尾張藩から派遣されたものの返り討ちに合う。
それでも何とか生き延びたが盲目になったため、按摩に身を窶し仁左衛門への復讐を誓っている。

大体こんな感じ。
メインは雲霧一味と火付盗賊改の対決ですが、後半では尾張藩仁左衛門の兄、富の市、暁星一味の残党が絡んで物語が進んでいくんですねー。

“権力”への復讐劇

ここで重要なのは、本作が辻伊織(雲霧仁左衛門)と兄の蔵之助、それぞれの復讐劇でもあるということ。
兄は「侍の誇りのために」自分たちを陥れた尾張藩に復讐の機会を狙っていて、弟は「天下の大盗賊」として名を成し、幕府(政府)の信用を落とすことで復讐しているんですね。
そして尾張で二人は出会い、待ちに待った機会が訪れるので一緒に復讐して欲しいと頼む兄に、仁左衛門は侍として死ぬなどバカバカしいと突っぱねる。

そんな二人の立場がラストで逆転するんですが、ここはまさに胸熱な展開なんですよねー!
実はさらにもう一人、密かに尾張藩への復讐を行っている人物が登場するんですが、それは見てのお楽しみ。
尾張藩(権力)に対しての復讐のスタンスが三者三様のアプローチなのが、個人的には「おぉ!」ってなりました。

こまけぇこたぁ、いいんだよ! 

とまぁ、ストーリー的にはこんな感じなんですが、本作の見所はそこではなくって、何と言っても映像のインパクです!

冒頭、多分誰もが「なんで!?」と驚くオープニングの後、商家に忍び込んだ暁星一味がとにかく犯す殺すの大暴れ。そこに火付盗賊改登場なんですが、馬に乗ったまま扉を突き破って馬に乗ったまま屋敷の中に突入し星一味を斬りまくるっていう衝撃的なスタートは、観ている誰もが「何が起こってるんだ!?」と混乱すること間違いなし!
っていうか、馬から降りたほうが絶対戦いやすいと思うし、馬の頭は木の扉を突き破るほどは固くないよ! っていうw

そして、岩下志麻演じる七化けの千代が超エロい
尾張の豪商、丹波哲郎演じる松屋と屋形船の中で濃厚な濡れ場があるんですが、ここでの岩下志麻は超色っぽいし、丹波哲郎とのキスシーンがとにかく濃厚です!
おっぱいも出てくるけど、ここは本人じゃなくて吹き替えだそうですが。
でも、誰のであれ、おっぱいには変わりありませんからねー!( ゚∀゚)o彡

あと全体的に、血しぶきの量が半端ない!
切られるたびにビックリするくらい大量の血しぶきがぶっしゃーで、
観てて思わず笑っちゃうくらいですw

中盤、尾張で雲霧一味の狙いを掴んだものの出張中の火付盗賊改に捕まり、司法取引でその情報を江戸の安部式部に話すため搬送される、櫓の福右衛門(成田三樹夫)を始末するため、仁左衛門自ら出陣するんですが、刀で籠を一刀両断、籠に乗っていた護衛(影武者だった)の首が真上にぽーんと飛ぶっていう、物理法則無視のド派手なシーンは、本作最大の見所かもしれませんw

ちなみに、雲霧仁左衛門の表の職業はストリップ小屋の経営者なんですが、そのストリップでかかる音楽がズンドコズンドコっていうアフリカの音楽っぽいw
そんな中、ストリップ嬢がポールダンスさながらにロウソクたての棒を掴みながらズンドコズンドコ髪を振り乱して腰を振るシーンは最高です!( ゚∀゚)o彡オッパイ( ゚∀゚)o彡オッパイ

しかし、何より最高なのは何と言っても、雲霧仁左衛門を演じる仲代達矢のカッコ良さ! 佇まいや話し方、声のトーン、目力。
荒っぽさがなく知的で、どこか実在感のない雰囲気はまさに雲霧仁左衛門といった感じ。でも「怒らせたらヤバイ」オーラはビンビン伝わってくるんですよねー!
さすがは名優 仲代達矢です。

そしてラスト、亡き兄の代わりに、兄の名を名乗って名古屋城に単身乗り込む時の、忍者装束と鎧の中間のような衣装姿が超カッコイイんですよねー!
そしてここで初めて怒りを顕にするですが、その時の迫力はそれまでの抑えた演技を一気に開放したようなド迫力でした!

殺陣もカッコイイし、背も高くてスタイルもいいし、さらにあのギョロっとした目で周りを見回す時の殺気には痺れました!

あと、劇中仲代さんは瞬きしないんですよね。
そこがまた、実在感のなさや迫力に繋がってるんじゃないかと。

あ、あと最後の最後に梅宮辰夫がいきなり出てきてあっという間に死にます。

とまぁ、こんな感じでとにかく見どころも突っ込みどころ満載の本作ですが、
うるせー! こまけぇこたぁいいんだよ! 面白ければそれでいいんだ!」という五社英雄監督のサービス精神が炸裂してる感じがして、約2時間半もある作品なのに、観ていて全然退屈しないんですよねー!

よく「過ぎたるは及ばざるが如し」なんて言いますけど、こと映画においては過ぎてる方が面白いに決まってますからねー。

そういう意味でも本作は、五社英雄作品に興味のある人なら必見の作品だと思いますよ!

興味のある方は是非!

 

 

ヨーロッパ映画の香り「六月の蛇」(2002)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは2002年の塚本晋也監督作品、『六月の蛇』ですよー!
僕がこれまで観た塚本作品は「鉄男」「鉄男 THE BULLET MAN」「野火」くらいだったんですが(あと悪夢探偵も)、少しづつ過去作を観ていこうかなと思い、今回選んだのが本作です。

個人的に好きな作品だったんですが、いざ感想を書こうと思うと言いたいことを上手くまとまらなくてかなり難航しましたよw(書いてるとどんどん言いたいことが湧いてくる感じ)

なので、全然的外れな事を書いてるかもですが、ご容赦くださいねーw

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あらすじと概要

“都市と肉体”をテーマに作品を撮り続けてきた鬼才・塚本晋也監督が放つ、2002年ベネチア国際映画祭審査員特別大賞に輝いた愛とエロスの物語。見知らぬ男からの脅迫をきっかけに、秘めた欲望を露わにしていく人妻の姿を通し、生を実感できない現代人の孤独、心の渇きを描く。主演は『愛について、東京』の黒沢あすか潔癖症の夫役にコラムニストの神足裕司、ストーカー役を塚本監督自身が怪演。降りしきる雨や青みがかったモノクロ映像が鮮烈な印象を残す。

トーリー:梅雨の東京。潔癖性の夫と暮らす電話カウンセラー・りん子(黒沢あすか)のもとに、彼女の自慰行為の盗撮写真と携帯電話が届く。彼女の言葉で自殺を思いとどまった道郎(塚本晋也)からの脅迫だった。その日から、りん子の恥辱と恐怖に満ちた日々が始まる。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

ヨーロッパの映画の香り

本作を観ながら、僕は「なんかヨーロッパ映画みたい」と思いましたねー。
恥ずかしながら黒沢あすかさん、神足裕司のことを知らなかった(神足さんは役者さんじゃないんですね)のも、邦画感を感じなかった理由の一つですが、青いフィルターをかけたモノクロのような美しい映像と、アブノーマルな性愛の形をソリッドな映像で描く塚本監督独特の乾いた“湿度”を感じさせない表現に、昔観たヨーロッパポルノ文学の映画化作品の香りを感じたのかもしれません。

主人公のりん子(黒沢あすか)は「心の健康センター」で電話相談を受けるカウンセラーで、潔癖症の夫 重彦(神足裕司)と二人暮らし。
セックスレスだけど、真面目で「優しい」夫とゆとりのある平穏な暮らしに表面上満足しているものの、心の奥底では夫に女として見られない不満や孤独を感じているわけです。
そこに、以前カウンセリングで自殺を思いとどまらせた末期ガンのカメラマン道郎(塚本晋也)が、盗撮した彼女の自慰写真を送りつけてきたことで、物語が動き出します。

前半は弱みを握られたりん子が、道郎の電話での指示に従ってミニスカートにノーパンで歩かされたり、大人のおもちゃを買わされたり、それを入れて街を歩かされたりというSM展開になっていくんですが、その行為がそれまで緩やかに鬱屈していた彼女の心を開放し、中盤からは立場が逆転していきます。
この二人は最後まで、電話でのやりとりとカメラのレンズを通しての「見る」「見られる」だけの関係で、直接的な接触はないんですが、カメラマンである道郎と、夫から見て(向き合って)貰えない事に孤独を感じるりん子にとって、この行為はセックスと同義なんですね。

一方の夫 重彦は、優しくて真面目で一見申し分ない夫に見えて、実は幼稚で神経質で弱い男だということが、次第に明らかになっていきます。
その弱さゆえ、りん子に発した“ある言葉”がその後に起こる取り返しのつかない事態を引き起こす引き金となってしまうんですね。

「性」と「死」を通して「生」を描く物語

アブノーマルでエロチックな描写が多い作品でもあるので、本作は一見「性」を描いた作品に思えるし、実際それも本作の一面ではあるんですが、本作が描いているテーマは大きく二つの軸があると思います。
「人は死を意識して初めて生を実感んできる」ってことが一つ、もう一つは「コミュニケーションについて」

カメラマンの道郎は、それまでブツ取り(静物)専門のカメラマンで他者とのコミュニケーションから逃げていた男です。
しかし、末期ガンであることが分かり、一度は捨て鉢になって自殺を考えるも「心の健康センター」で電話相談で「やりたいことをやれ」とりん子に励まされ(ガンのことをりん子は知らなかった)、りん子を盗撮。目前に迫る死を前にして、初めて生を実感するわけです。(相当ねじ曲がってますけどもw)

多分最初は、りん子(人間)を撮影したかっただけなのかもですが、そこでりん子の秘密を知った道郎は、(強制的に)りん子が心の奥に隠していた本当の欲求を開放します。

それは別にりん子が羞恥プレイに憧れてたとかではなく、「女として見られたい」、もっと言えば「自分を見て(認識して)欲しい」という欲求なんですね。

道郎は「死」に直面することで、りん子は「性」を開放される事で、初めて「生」を実感し、「生」とコミュニケーションは密接な関係があるというか。人は他者に認識されなければ「生」を実感することは出来ない的な?

中盤の山場での、道郎のカメラのシャッター音とフラッシュの中でのりん子の絶頂の叫びは多分、人として女として、互いに初めて認識しあった二人の「産声」なんだと思います。

そしてここでもう一人の登場人物である重彦ですが、彼は根本的には道郎と同種の人間で、「生」と向き合う事から逃げ続けてるんですね。
だから母親の最後にも立ち会わないし、ひとつ屋根の下で暮らすりん子とも向き合うことが出来ませんし、自分の暮らしから有機的な痕跡を異常なまでに排除しようとします。
そんな重彦に擬似的な「死」を体験させることで、道郎は(強制的に)重彦の目をりん子に向けさせようするんですね。

それは、道郎が恋した女の「本当の望み」を叶えてやったとも取れるし、自分と同種の人間、重彦というアバターを使って自分の「最後の望み」を叶えたとも取れるし、あるいは両方なのかもしれません。
また、最終的にこの三人の間にコミュニケーションが成立したのかどうかも人によって解釈が異なるところだと思います。

そこを明言せずに、りん子と重彦の絶頂の叫び(産声)でスパっと物語の幕を引く塚本監督の切れ味はさすがだなーと。

とはいえ、特に冒頭部分は人によって(特に女性にとって)は、不快に思うかもですし、ハッキリと結論が出ない物語が苦手という人にはあまりオススメ出来ない作品ではあります。

ただ、映像は綺麗だし時間も77分と短いので、観たことはないけど塚本作品が気になってる人の入口としては最適な一本なんじゃないかと思いますよー。

興味のある方は是非!!

 

豪華キャストがフルスロットルの演技「GONIN」(1995)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、映画関係者→漫画家→脚本家→映画監督という異例の経歴を持つ石井 隆監督が描いたバイオレンス映画『GONIN』ですよー!

僕は公開後、レンタルビデオで観たはずなので今回が2回目の鑑賞なんですが、内容を殆ど忘れてたので、今回初見みたいな気持ちで観ましたよw

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画像出典元URL:https://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

暴力団の金庫から現金強奪を企てた5人の男たちの顛末を描いたバイオレンス・アクション。バブル崩壊により暴力団・大越組に多額の借金を抱えてしまったディスコのオーナー万代。彼はさまざまな出会いにより知り合った4人の男たちと共に、大越組事務所からの現金強奪を実行する。しかし、それも些細なミスから大越組に知れ、彼らは命を狙われることになる……。(allcinema ONLINEより引用)

 

 

感想

「GONIN」とは

ざっくり言うと、ヤクザのお金を奪った人生どん詰まりの五人の男が、ヤクザに報復されるというバイオレンス映画で、ニューヨークでタランティーノの「レザボア・ドッグス」を観た盟友、竹中直人から大筋だけを聞いて石井監督が想像で作ったのが本作ということらしいです。(そしてタランティーノは本作のファンなんだとか)

それ以外でも本作では、竹中直人がお金や役者集めなど色々サポートしているらしいですね。

で、そんな本作に登場する5人はというと、

・元々は音楽をやってて、バブル期にディスコ経営で時代の寵児となったものの、バブルが弾けてヤクザからの借金で首が回らないナルシスト男 万代樹木彦 (佐藤浩市

・男娼のフリをしてかかった客を脅して金を巻き上げる美青年で、実はゲイ? の三屋純一 (本木雅弘

暴力団のチクリによって汚職がバレてクビになった元刑事の氷頭要 (根津甚八

・家のローンを抱えているのにリストラされたサラリーマン荻原昌平 (竹中直人

・パンチドランカーの元・ボクサーで、タイ人の恋人がいるジミー(椎名桔平

そんな五人に報復のため送り込まれたヒットマン役がビートたけし木村一八で、ビートたけしはこの時バイク事故から復活したばかりで、片目の眼帯は役作りじゃなくてまだ治ってなかったらしいです。

他にも、鶴見辰吾、永島敏行など、豪華キャストたちがリミッターなしのフルスロットルで熱演。今でもカルト的人気を誇っている名作で、それから19年後の2015年に公開された「GONINサーガ」へと繋がっていくんですね。

今観れば色々思うところはあるけれど

とはいえ、約20年前の作品ですからね。
今観れば、画面の古さや、バブルの残り香満載のファッションや音楽、時代を感じさせるオーバーアクト、ケレン味たっぷりなアブノーマル設定、説明台詞など、「あー昔っぽいなー」と思うのは致し方なしです。
しかし、その後隆盛を極める韓国ノワール映画のような荒れた空気感だったり、バイオレンスを際立たせるカメラワーク、思いもよらない展開など、多分、その後に続く日本のバイオレンス映画に、多大な影響を与えた作品なのだろうと推測させるインパクト抜群の映画であることは間違いありません。

一旦は成功したかと思われた強奪計画が、ある男の行動によるほんの小さな綻びから破綻、その後の目も当てられない惨劇に発展していく展開には、見ているこちらも手に汗を握ってしまうし、その途中にあっと驚く「真相」を挟み込む上手さは、さすがだなーと思いました。

このシーンがスゴイ

中でも今観ても衝撃的だったのは、計画がバレて、引き込み役となる椎名桔平演じるジミーが、横山めぐみ演じるタイ人の恋人のナミィーと共にヤクザの拷問を受けるシーンは、裸で椅子に縛り付けられ拷問されるジミーとチンピラたちに陵辱されるナミィーを、引きの画で同じ画面に収めているんですが、それによって陰惨さが増してるんですよね。
しかもその後、ジミーがナミィのワンピースを着て組長に復讐しようとするシーンでの、椎名桔平の鬼気迫る演技は凄かったですねー。

あと、金を手にした荻原が家に戻ってからのシーンは中々のホラー展開で、真相が分かった瞬間に、遡って「あれはそういう事か!」と衝撃を受けました。
まさに、竹中直人の真骨頂といった凄みのある恐ろしいシーンです。
そこに踏み込んできた、ヒットマン二人の関係が明らかになるのも衝撃的でしたねー。
お前もかーい!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ っていうね。

ヤクザの事務所を襲撃するシーンでのモッくんの身のこなしは、思わず目を奪われる見事な中二アクションで、超かっこよかったですよ!(;゚∀゚)=3ハァハァ

残念だったシーン

ただ、やっぱり残念なシーンが多いのも確かで、特に全体的に無駄な説明セリフが多いのは気になりました。
ゴチャゴチャ言わないでキスするだけで良くない? とか、そこは表情と行動で分かるのになんでセリフで言っちゃうかなーとか、芝居がかったリアクションとか。
その辺は、時代もあるのかもしれませんけど。(観客に分かりやすくするための説明セリフは常識だった)

あと、基本登場人物が全員トリッキーと言うか、特に、竹中直人、モッくん、永島敏行の三人は“芝居しすぎ”な感じがしました。
キャラ的に仕方ない部分もあるんですが、演技がオーバー過ぎてちょっと引いちゃうし、嘘っぽく見えちゃうんですよね。

根津甚八が(キャラ的にも)抑えた演技で物語のトーンを引き締めているので、そこまで気にならずに済んでるものの、やりすぎのオーバーアクトで、物語のリアリティーやキャラクターの実在感が薄れてる部分が多いのがもったいないなーと。

トーリー自体が突拍子もない話なので、キャラクターやセリフでリアリティーを出していたら、もっと引き込まれたかもとは思いました。
まぁ、それも今の感覚で観てるからなんだと思うんですけども。

ともあれ、とても面白い映画だったのは間違いがないし、「GONINサーガ」を観てみようと思うなら、予習の意味でも先に本作をチェックしていたほうがいいと思いましたよ。

興味のある方は是非!

 

 

ついにコングは王(キング)からゴッド(神)に! 「キングコング 髑髏島の巨神」(2017)

ぷらすです。

今日の朝一番で『キングコング 髑髏島の巨神』を2D字幕版で観てきましたー!
先に書いちゃうと、これはアレですよ。
大画面大音響で観ないとダメなヤツです!!(;゚∀゚)=3ハァハァ

というわけで、まだ公開したばかりの作品なので出来るだけネタバレしないように気をつけて書きますが、これから本作を観に行く予定の方は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね!
あと、一つだけ注意なんですが、本作はEDロールが始まっても席を立たずに最後まで観たほうがいいですよ!

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

キングコングを神話上の謎の島に君臨する巨大な神として描いたアドベンチャー大作。島に潜入した調査隊が正体不明の巨大生物と遭遇し、壮絶な死闘を繰り広げる。監督は、主にテレビシリーズに携ってきたジョーダン・ヴォート=ロバーツ。調査遠征隊のリーダーを『マイティ・ソー』シリーズなどのトム・ヒドルストンが演じるほか、『ルーム』などのブリー・ラーソンサミュエル・L・ジャクソンらが共演。巨大な体でリアルな造形のキングコングの迫力に圧倒される。

トーリーコンラッドトム・ヒドルストン)率いる調査遠征隊が、未知の生物を探すべく、神話上の存在とされてきた謎の島に潜入する。しかし、その島は人間が足を踏み入れるべきではない“髑髏島”だった。島には骸骨が散乱しており、さらに岩壁には巨大な手の形をした血の跡を目撃する。そして彼らの前に、神なる存在であるキングコングが出現。人間は、凶暴なキングコングに立ち向かうすべがなく……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

東宝キングコング!?

米国の「キングコング」は1933年の初出以来、同年に続編の「コングの復讐」、1976年にリメイク版「キングコング」、1986年に76年版の続編「キングコング2」、2005年にリメイクされた「キングコング」、そして本作と計6本が製作されています。
また、東宝が、1962年に「キングコング対ゴジラ」、1967年に「キングコングの逆襲」を製作・公開している人気のモンスターです。
僕が観たのは、多分1976版「キングコング」と86年の「キングコング2」の2本じゃないかな?

基本ストーリーは、未知の孤島で王として君臨していた大きなゴリラが、見世物としてニューヨークに連れてこられるも、大暴れの末に殺されるという悲劇でして、コングと美女とのロマンス? が入るのもお約束。

植民地制作が盛んだった1930年代の物語なので、キングコングは奴隷として欧米に連れてこられた黒人の暗喩であると言われ、差別的な物語として批判もされたりしていたようです。

対して本作は、2014年ハリウッド版「GODZILLA ゴジラ」を作ったレジェンダリー・ピクチャーズ制作で、怪獣映画を同一世界観のクロスオーバー作品として扱う「モンスターバースシリーズ」第2作目(一作目がゴジラ)。

つまり怪獣版「アベンジャーズ」みたいなシリーズで、初代ハリウッド版「キングコング」を踏襲しつつ、東宝版「キングコング対ゴジラ」の流れにある作品なんですね。

舞台はベトナム戦争時の「髑髏島」

なので過去作品とは時代設定も変わり、本作はベトナム戦争が終了した直後の1973年、衛星写真に映った知られざる孤島「髑髏島」に米国の秘密研究機関モナークに派遣された調査団が、キングコングや巨大生物と遭遇するという物語になっています。

この辺の基本的な物語の骨格は1933年版「キングコング」を踏襲しているわけですが「地獄の黙示録」よろしく、プレストン・パッカード大佐率いる米軍が軍事ヘリで島に乗り込んで行くんですね。

で、“地質調査”と称して、ヘリに搭載したスピーカーからゴキゲンなロックを流しながら島のあちこちに爆弾を落とすヒャッハーぶり。

そりゃ、コングじゃなくても怒るわw

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画像出典元URL:http://eiga.com 怒りのキングコング

で、案の定キングコングの怒りを買った調査団のみなさんは、ボッコボコにされてバラバラに不時着。
こりゃヤバイと脱出を図るも、この島の驚異はキングコングだけではなく……。という物語です。

個性派派俳優陣と“怪獣”たち

本作では、個性豊かな俳優陣が大集結。

SAS大尉で、ベトナムでは米軍の仕事を請け負うフリーランスの傭兵で、サバイバル術を買われて調査団に動向することになる主役のジェームズ・コンラッドを演じるのは、「アベンジャーズ」で悪役のロキを演じたトム・ヒドルストン

ベトナムで活動していた反戦カメラマンで、髑髏島の調査ミッションに陰謀の匂いを感じて、コネを駆使して調査団に潜り込むヒロインメイソン・ウィーバーを演じるのは「ルーム」で長年監禁された母親役を演じたメイソン・ウィーバー

太平洋戦争中、交戦していた日本軍の戦闘機と共に墜落し、島に取り残された老人ハンク・マーロウ役にはピクサーの「シュガー・ラッシュ」でラルフを演じたジョン・C・ライリー

全ての元凶となる「モナーク」のメンバー、ビル・ランダを演じるのは、「10 クローバーフィールド・レーン」でシェルターの主を怪演したジョン・グッドマン

そして、調査団の護衛としてやってきたプレストン・パッカード大佐役は、みんな大好きサミュエル・L・ジャクソンですよー!

そんな人間たちを迎え撃つのが、超でかいクモやタコや水牛、ナナフシ、コウモリ(翼竜?)、そして凶暴な巨大トカゲスカルクローラー

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画像出典元URL:http://eiga.com / こいつにだけは出くわしたくないスカルクローラー

そんな巨大“怪獣”+サミュエル・L・ジャクソンを相手に、過去最大の31.6メートル(東宝版は除く)のキングコングがドッカンドッカン大暴れするんですから、そりゃぁもう大迫力ですよ!(;゚∀゚)=3ハァハァ

これはもう、出来る限り大画面と大音響で観た方がいいに決まってるのです!

キング(王)からゴッド(神)に

東宝版を除けばこれまでのキングコングの扱いは、あくまで「超巨大なゴリラ」であり、だからキング(王)コングだったわけです。
しかし、本作のキングコングはただデカイだけじゃなく、髑髏島最強の「神」として崇められています。

軍事ヘリを片手でなぎ払い、爆弾や炎を物ともせず、ドラミングからの咆哮、巨大で凶暴なタコやらスカルクローラーにも打ち勝つ姿はまさに神の風格で、人間に捕まってニューヨークに連れてこられる悲劇の主人公ではありません。

日本でゴジラガメラを始めとした“怪獣”は、災害のメタファーであると同時に、妖怪や神の系譜にある生物として描かれてきました。
一方キングコングを始めとしたハリウッドのモンスターはあくまで“巨大生物”だったんですが、本作でついに巨大生物から怪獣になり、キング(王)じゃなくゴッド(神)=怪獣として描かれているんですね。

これは、前述した「モンスターバースシリーズ」の流れもあるし、若干32才で本作に抜擢されたジョーダン・ボート=ロバーツ監督やハリウッド版ゴジラのギャレスエドワード監督など、日本の特撮やアニメに馴染みのある世代に「怪獣」という概念が根付いてきたという部分もあるんじゃないかと思うんですよね。

僕らが子供の頃に観ていた、東宝の怪獣シリーズが時を超えてついに、ハリウッドのビッグバジェットで復活するなんて夢のようだし、日本生まれのゴジラとアメリカ生まれのキングコングの、「二大怪獣」がこれから同じスクリーンに登場するなんて、考えただけでもワクワクしますよー!

そして、そんな“怪獣”キングコングを相手にメンチを切り合うサミュエル・L・ジャクソンは、もはや人間の怪獣といっても過言じゃないですし、ファンなら「あのセリフ」が飛び出すかどうかも気になるトコロじゃないでしょうか!

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画像出典元URL:http://eiga.com / キングコングVSサミュエル・L・ジャクソン

その辺も含めて、絶対に映画館で観るべき映画なのは間違いありません!

興味のある方は是非!!

そして、しつこいようですがEDロールが始まっても、最後まで席を立っちゃダメですよー!

 

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