今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

タランティーノ絶賛の世紀末映画「奪還者」(2015)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、クエンティン・タランティーノが「元祖『マッド・マックス』以来の世紀末映画の最高傑作」と絶賛したオーストラリア映画『奪還者』ですよー!

荒廃した近未来のオーストラリアを舞台に、強盗に愛車を盗まれた男が執拗に強盗を追い詰めるバイオレンスアクション? 映画です。

ちなみに、今回も後半部分でネタバレする予定なので、これから本作を観る予定の方は、映画を先に観てからこの感想を読んでくださいませー。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

『トエンティマン・ブラザーズ』などのガイ・ピアース、『トワイライト』シリーズなどのロバート・パティソンが共演を果たしたバイオレンスムービー。世界経済が崩壊して鉱物資源を狙う荒くれ者がひしめくようになったオーストラリアを舞台に、強盗団に奪われた車を取り戻そうとする男とそのリーダーの弟の関係が描かれる。監督は、『アニマル・キングダム』などのデヴィッド・ミショッド。車の奪還劇に加え、男たちが育む絆をめぐるドラマにも注目。

ストーリー:世界経済が崩壊して10年。オーストラリアでは、鉱物資源を狙った無法者たちが暴虐の限りを尽くしていた。そんな殺伐とした世界で愛車だけを心のよりどころにして生きるエリック(ガイ・ピアース)だったが、その車をヘンリー(スクート・マクネイリー)がリーダーの強盗団に奪われる。彼らを追跡する中、強盗の際に負傷し置き去りにされたヘンリーの弟レイ(ロバート・パティンソン)を見つける。ヘンリーたちの足取りをつかむヒントになると思い、エリックは彼を連れて荒野を旅するが……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

もう一つのマッドマックス?

本作は、本国オーストラリアでは2013年に公開されたバイオレンスアクション? 映画です。
クエンティン・タランティーノが2014年のベスト映画に選び、「とにかく凄ぇ。元祖『マッド・マックス』以来の世紀末映画の最高傑作。『アニマル・キングダム』とこの連打でデヴィッド・ミショッドは、この世代最強の監督だと証明して見せた」と大絶賛し、またカンヌ国際映画祭をはじめ、各国の映画賞で絶賛を浴びた作品だそうで、「そんなに凄いなら観てみっか!」とDVDで遅ればせながら観てみましたよ。

で、荒廃したオーストラリアが舞台という設定は、確かに「マッドマックス」を思わせますが、ド派手なカーチェイスやアクションはほとんどなく、基本淡々と進む映画でした。

世界経済の崩壊から10年後、豊富な鉱物資源を求める労働者たちが世界中から集まり、広大な無法地帯と化したオーストラリア。

冒頭、車から降りた主人公のエリックが、中国の演歌? みたいな曲が流れるレストラン? に入り一休みするところから物語がスタート。

画面変わって、3人の男たちがトラックで爆走しているシーンに移るんですが、足を撃たれたらしい男とほかの二人が揉めているわけです。(どうやらこの三人は強盗らしい)
原因は(多分銃撃戦で倒れた)もうひとりの仲間で、足を打たれた男の弟を救いに戻るかどうか。兄は弟を救いに戻って欲しいし、他のふたりはもう死んでるに決まっているから戻らないと。

言い合いは次第にエスカレートし、後部座席のハゲオヤジが「一人前の男なら潔く死ね!」と言ってははならんことを言っちゃって、それにキレた兄がオッサンに掴みかかったことで、トラックは道端に激突、置いてあった鉄骨やワイヤーにタイヤが 挟まって身動きが取れなくなり、咄嗟に三人は道に止めてあったエリックの車を盗んで逃げるんですね。

それに気づいたエリックは、放置されたトラックに乗り込み、無理やり脱出すると三人に盗まれた愛車を追いかけるが……という物語。

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その途中で、エリックは置き去りにされた弟レイと出会い共に三人を追うことになり、男娼館の少年や上品なおばあちゃんオーナー、雑貨屋、女医、兵隊と出会ったり追われたり。その道すがら徐々にエリックやレイ、劇中の世界観が徐々に明らかになっていくという作りになっています。

ほとんどセリフによる説明がなく、映像で分からせる作りはマッドマックスにかなり近いんですが、本作はマッドマックスのようなカーチェイスや派手なアクション、ヒャッハー感はゼロで、たまに銃撃戦はあるものの、基本は淡々と進んでいく物語なので、正直途中で眠くなってしまいました

この物語通しての謎は、エリックは(愛車を盗まれたとはいえ)犯人の残したトラックがあるのに何故、執拗に愛車を追い掛けるのかという点なのですが、ラストでその理由が分かり、振り返ってそれまでのキャラクターの行動の理由や、その背景がハッキリ分かる、とても練られたドラマに感心してしまいましたねー。

ただ、面白いかといえば正直(´ε`;)ウーン…で、舞台や設定は似ていても、マッドマックスのようなエンターテイメント性はなく、哲学的というか、キャラクターの心の動きに焦点を当てた映画なので、エンタメ映画を期待して観ると、肩透かしを食らってしまうかもしれません。

 

というわけで、ここからネタバレしますよ!

 

 

荒廃の原因

本作の舞台、近未来のオーストラリアはマッドマックスと同じく荒廃していて、人々の心は荒みきっているわけですが、その原因はエネルギー不足ではなく、経済破綻なんですね。

冒頭、エリックが入るレストランや、中盤の列車のコンテナに書かれた漢字を見ると、どうやらアメリカを始めとした西洋諸国が中国経済に負けたのが原因らしい事が分かります。で、オーストラリアは経済的に破綻し、ほぼ無政府状態になり、秩序は破壊され、インフラも行き届かなくなっている様子。

さらに、鉱物資源を狙った無法者たちが入ってきたことで、暴力が横行し、人の命は軽くなり、店屋は客にライフルを突きつけながら商売するようになってしまうわけです。

そんな世界で、農家を営んでいた主人公エリックでしたが、(劇中本人のセリフによれば)奥さんが浮気をして、怒ったエリックは奥さんと浮気相手を殺害。
しかし、警察は彼を逮捕にもこない。
罪を犯しても罰せられない世界にエリックは絶望し、さらにその後共に暮らした「相棒」? がいなくなったことで、(人間として)壊れてしまっているんですね。

強盗たち

そんなエリックの車を盗んだ強盗の4人は、知的障害を持つレイとリーダーでレイの兄ヘンリーほか2名。
彼らはどうやら軍隊のお金を強奪して追われてるっぽいんですよね。

で、多分弟レイは、兄のヘンリー以外の2人にとっては、足でまといと思われ、疎まれてたんだろうなーと。

だから、2人は足を撃たれたヘンリーは助けたものの、腹を撃たれたレイは(生きていると知りながら)見捨てたんでしょうね。

けれど、レイは生きていて軍隊の車を盗んで逃走。
途中で犯行に使ったトラックを見つけて、エリックと出会うわけです。

エリック

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最初、強盗たちに追いつくも銃で頭を殴られ気絶したエリックは、強盗の行方を追うために道沿いの店屋や男娼館で情報を集め、銃を手に入れます。
その前から全てを失い壊れてしまっているエリックでしたが、「たった一つの目的」を強盗に邪魔されたことで完全にタガが外れた彼は、銃の売人を撃ち殺し、復讐にきた仲間も撃ち殺し、(ヘンリーたちを)追ってきた兵士も撃ち殺します。

しかし、純粋で子犬のようなレイと時間を重ねるうちに、少しづつ人間性を取り戻していくんですね。

しかし、中盤でエリックがレイに言った言葉が、ラストの大きな悲劇を招いてしまうのです。

レイ

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知的障害を持つレイは、自分や兄の敵であるエリックに敵意を持たず、エリックの言葉を素直に信じてしまうんですね。
しかし、一方で敵である兵士は躊躇なく殺してしまう残酷さも持ち合わせた子供のようなヤツでもあります。
つまり、彼は一度信頼した人間の言うことや指示に素直に従ってしまうわけです。

腹を撃たれ重症の彼は、エリックが(情報を聞き出すため)医者に見せることで救われるのですが、そのことでエリックを信用してしまってるんですよね。
で、エリックはそんなレイを最初邪険に扱かうんですが、彼と接するうちに凍った心が少しづつ溶けていき、レイを憎からず思うようになっていくのです。

女医と祖母

エリックがレイを運び込んだ病院の女医は無償でレイの治療をし、近隣住人から預かった(押し付けられた)犬たちを保護する、一見心優しい女性ですが、でも観ているとどこか違和感を感じてしまうキャラクター。

実はこの女医もまた、どこか壊れているんですね。

完全に崩壊してしまった「セカイ」から彼女は目を背け、「セカイ」と自分を切り離すことで自分を守っているわけです。多分。

本作に登場するもう一人の女性、男娼館のオーナー? のお婆ちゃんもまた、同じような壊れ方をしているんですよね。

どちらも、現実を認識しながらも認めないことで、自分を守っているわけです。

エリックの目的

前述した、エリックのたった「一つの目的」。
それはラストで分かるんですが、彼の愛車のトランクには死んだ愛犬が入っていて、彼は(多分、家を失ってからずっと一緒に旅をしてきた)愛犬を埋葬する事だけを生きる目的にしているんですね。
だから、愛車を取り戻すために、自分の命も顧みずに執拗に強盗たちを追い続けるわけです。(というか自分の命には興味がないんですが)

無口で無表情なエリックが2回動揺するシーンがあって、一つは病院で保護されケージで飼われている犬を見たとき(外に出すと近隣住民に食べられちゃうらしい)。
もう一つは、ついに盗まれた(トランクに愛犬の死体を乗せた)愛車を見つけたときです。

その二つのシーンは、ラストシーンのための伏線になってたんですね。

死んだ犬を埋葬するために、何人も撃ち殺してきたの!? と思われてしまうかもですが、エリックにとって「愛犬を埋葬する」という行為は彼が「人間として生きる」ためのたった一つの目的であり「人間であることの証明」だったわけですね。

ただ、そのためには邪魔者を排除することに一切の躊躇がない。そのバランス感覚のおかしさこそが、彼が「人間として」壊れてしまっている証拠でもあるんですけども。

それは女医も、自分の孫を客に勧めてしまうおばあちゃんも同じで、方向性は違うけど、狂った世界で人間として生きようとするあまり、人間として狂ってしまっているわけです。(上手く言えませんが)その辺が観ていて「あーリアルだなー」って思いました。崩壊した世界で弱者が生き残るには、何か縋るものが必要なんですよね。
でもそれは、自らを壊してしまう諸刃の剣というか。

ちなみに本作の原題は「The Rover」(放浪者)。ラスト、たった一つの目的を成し遂げて全てを失ったエリックが一体これからどうするのかという余韻を残して、この映画は終わります。

そう書くと、絶望しかない映画に思えるかもですが、この過程でいくつかの希望もちゃんと提示されていて、きっとエリックは自分の罪を背負いながら生き続けていくんじゃないかと思いましたねー。

 

かなり観る人を選ぶ作品なので万人にはオススメ出来ないし、僕自身、多分もう二度と観ないとは思いますけども、好きな人には人生オールタイムベストに入る映画なんじゃないかと思います。

興味のある方は是非!

 

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國村隼に翻弄されまくる!「哭声/コクソン」(2017) *ネタバレ有り

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ベテラン俳優の國村隼さんは出演したことで日本でも話題になったサスペンスホラー『哭声/コクソン』ですよー!
結論から言うと、どこに連れて行かれるのか最後まで分からないジェットコースターみたいな映画で、超面白かったです!

で、今回は色々語りたくなっちゃう作品でもあるのでネタバレします
というか事前情報を入れないで観る方が絶対に楽しめる作品なので、これからこの作品を観る予定の方は、映画を見た後にこの感想を読んでくださいませー。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

『アシュラ』などのクァク・ドウォンが主演を飾り、『チェイサー』『哀しき獣』などのナ・ホンジン監督と組んで放つ異色サスペンス。とある田舎の村に一人のよそ者が出現したのをきっかけに凶悪な殺人事件が頻発し、人々が混沌の中に突き落とされるさまを描く。『華麗なるリベンジ』などのファン・ジョンミンをはじめ、日本からベテラン國村隼が参加。

ストーリー:警察官ジョング(クァク・ドウォン)が妻と娘と暮らす平和な村に正体不明のよそ者(國村隼)が住み着いて以来、住人たちは彼のうわさをささやいていた。やがて、村で突然村人が自分の家族を手にかける事件が発生する。犯人には、濁った目と湿疹でただれた肌という共通点があり……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

どこに連れて行かれるのか分からないジェットコースタームービー

まず、本作がどんな映画なのかをザックリ説明すると、韓国の山間の小さな村にある日、國村隼さん演じる謎の日本人がやってくるんですね。
しかもこの日本人、山の中に一軒だけ建っているボロ屋に住み着き、褌一丁で山の中を走り回ったり、鹿や猪の生肉を四つん這いで喰らったりする姿を、村人が目撃? しています。

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画像出典元URL:http://eiga.com /國村隼さん演じる謎の日本人

それとほぼ同時に、平和だった村で家族を手にかける猟奇殺人事件が連続して起こり、犯人はなぜか自分を見失うほど凶暴化してたり、魂が抜けたように惚けていたり。

で、次第に“よそ者”である日本人が疑われ……。

という物語。

そんな事件を捜査するのは、クァク・ドウォン演じる地元の臆病な警察官で婿養子のジョング。

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画像出典元URL:http://eiga.com /主人公ジョング(右)

最初は、噂話など気にもとめない彼ですが、次々起こる怪事件や、謎の日本人の怪しげな行動、謎の女のタレコミ、そして愛する一人娘の様子までおかしくなっていき、ジョングの中で、日本人に対する疑惑が生まれていくわけですね。

最初のうち「ははーん。猟奇殺人の謎を追うミステリーか」と思って観てると、コメディーっぽかったり、パンデミックものかと思わせて、ゾンビになり、エクソシストになり、異能バトルになり…と、予想の遥か斜め上をいく展開の連続で、ラストシーンでは、

( ゚д゚)…え?  (つд⊂)ゴシゴシ ( ゚д゚)ドウイウコト?

ってなりましたよw

だからといって面白くないかと言えばそんなことはなく、156分もあるのに最後までずっと映画に引き込まれてしまいました!

特に本作で最重要とも言える國村隼さん演じる「謎の日本人」の存在感は凄くて、主人公ジョングと一緒に、終始彼に翻弄されまくりでしたねー!

一方で、ラストに至るまで説明らしい説明はなくて、作品の解釈はほぼ観客に丸投げ状態な作品でもあるので、ネット上では様々な解釈や考察が出ています。

というわけで、ここからは僕もビックウェーブに乗って、自分なりの解釈を書いていこうかと思うので、ここからはネタバレしていきますよー!

 

冒頭を見逃すな!

本作は基本、新約聖書に準えて物語が作られています。
まず映画冒頭、『ルカによる福音書 第24章』の文言が出てくるんですが、この冒頭の文言が全ての謎の答えであると受け取っていいんじゃないかなーって思うんですよね。

わたしの手や足を見なさい。まさしくわたしなのだ。さわって見なさい。霊には肉や骨はないが、あなたがたが見るとおり、わたしにはあるのだ

これ、同じことをラストの方で「謎の日本人」も言ってるし、さらに物語全体に流れるテーマでもあるので要チェックです。

新約聖書が元ネタ!?

さらにこの映画では、新約聖書をモチーフにしている(と思われる)シーンも沢山出てきます。僕が分かった分だけザックリ上げると、

・謎の女ムミョン(チョン・ウヒ)は初登場時、ジョングに向けて執拗に小石を投げるわけですが、あれは多分「マグダラのマリア」がモチーフなんだと思います。聖書では娼婦だったマリアが村人に石を投げられるのをキリストに救われる有名なエピソードです。

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画像出典元URL:http://eiga.com /謎の女ムミョン

ここで石を投げられているのは主人公のジョングですが、ムミョン=マグダラのマリアという捉え方も出来るんじゃないかなと。

・ジョングの娘ヒョジン(キム・ファニ)が(多分)日本人と出会ったあと、嫌いだった魚をムシャムシャ食べるシーンがあるんですが、魚はマンガ「聖☆お兄さん」でイエスのTシャツの模様になったりしてますよね。
あれは初期のキリスト教徒の隠れシンボルマークで、イクトゥス(イクテュス)。
ギリシャ語で魚という意味なんですが、同時にイエス、キリスト、神の、子、救世主の頭文字を並べたものでもあるんだそうです。

また、娘のヒョジンが「悪霊(日本人)」に取り憑かれたと思ったジョングたちが、祈祷師のイルグァン(ファン・ジョンミン)に頼み、悪霊を殺す儀式をするシーンで、人形的なものに鉄の釘を打ち込むシーンは、キリストの磔刑を連想させます。

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画像出典元URL:http://eiga.com /祈祷師のイルグァン

・日本人とジョングの通訳を務めるジョングの同僚ソンボク(ソン・カングク)の甥っ子イサム(キム・ドユン)はそのままキリスト教助祭です。で、イサムは韓国語で2・3(だったはず?)という意味で、3という数字はキリスト教ではとても重要な意味を持つ数字です。(三位一体を表す)

・ラストで、死んだと思われていた日本人がイサムに手の平の聖痕を見せるシーンがあるんですが、これは冒頭の文言にも通じるキリストの復活を連想させますよね。
そこからのやり取りはまんま上記の『ルカによる福音書 第24章』の文言と同じです。

・そんな二人のシーンとカットバックするように同時進行する、謎の女ムミョンとジョングの会話で彼女は「鶏が三回鳴く前に家に入ればお前の家族は死ぬ」とジョングに忠告するわけですが、これはイエスがペトロに「鶏が鳴く前に、おまえは三回私のことを知らないと言うだろう」っていう予言のエピソードがモチーフみたいです。

正直僕はキリスト教の事は詳しくないので、これらもウィキペディアや他の人のブログの受け売りですが、詳しい人ならもっと新約聖書との類似点が分かるかもしれません。

國村隼はキリストだった説!(; ・`д・´)ナン…ダッテ!?

つまりこの作品自体が新約聖書に準えた物語になっていて、國村隼さん演じる「謎の日本人」はイエス・キリストだったんじゃないかなーと。
もっと言うなら、日本人、祈祷師、ムミョンはキリストとその弟子たちが降臨していて、人間=ジョングや村人を試しているのかも。

ただ、それにしては國村隼さんの行動が怖すぎるし、謎の連続猟奇事件とか、幻覚キノコとか、謎の湿疹問題とか、ゾンビ作っちゃった問題とか、とにかくおどろおどろしい悪夢的な映像が次々出てくるし、ジョングのあの行動は仕方なくね? とも思うんですが、それらはあくまで村人やジョングの側からの視点なんですよね。

村人は日本人を最初から怪しい“よそ者”と思ってるし、恐ろしいあれやこれやも最初から日本人の仕業ではと疑うんですよね。
で、ジョング自身は最初、そんな偏見や疑惑には否定的なんですが、何度も噂を聞うちに徐々に日本人を怪しむようになり、娘の様子がおかしくなったことをキッカケに完全に日本人が犯人だと思い込んでしまうわけです。

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キリストだってローマ人やユダヤ教の人たちから見れば最初は怪しげなヤツに見えたハズで、キリストの奇跡も悪魔の仕業に見えたんじゃないかなーと思うんですね。

そんな、イエス・キリストを迫害した人々の視点で見た新約聖書のエピソードを(多分)本作は描いているんじゃないかと。

で、現代の世界情勢に起こっている大小様々な「ディスコミュニケーション」を、韓国の田舎町というミニマムな舞台にを通して描いているんでしょう。(多分)

そう考えれば、劇中、謎の中心を「日本人」にしたことも「韓国映画で描くならそれしかない」と納得しやすいんじゃないかと思います。

村に起こっている謎の猟奇殺人の犯人探しっていうミステリーを物語の推進力に、観客を徐々に物語の核心に導いていく(というか引きずり込んでいく)手法は、ツインピークス」を連想したりしましたねー。

もちろんこれは数ある解釈の一つで、正解ってわけではないと思うし、正解はこの作品を観た人の分だけあっていいんでしょう。

ただ、観終わったあと思わずいろんな人の解釈を聞きたく(読みたく)なる(そして語りたくなる)作品だし、そういうのを抜きにしてもこれまでのノワール韓国映画とは一味違う、(ラストのモヤモヤも込みで)超面白い作品でした!

興味のある方は是非!

 

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どん底DC映画を救う女神降臨「ワンダーウーマン」(2017)

ぷらすです。

今朝朝一の回で現在絶賛公開中のDC映画『ワンダーウーマン』を観てきましたよー!
先に一言感想を言うと、かなり面白かったです!!

というわけでこれから感想を書くんですけど、まだ公開して間もない作品なので(出来る限りネタバレしないように気をつけますが)、これから本作を観に行く予定の方は先に映画を観てから、この感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』にも登場した人気キャラクターで、美女戦士ワンダーウーマンを主人公にしたアクション。女性だけの一族出身で男性を見たこともないプリンセスがたどる運命を描く。ワンダーウーマンを演じるのは『ワイルド・スピード』シリーズなどのガル・ガドット。『スター・トレック』シリーズなどのクリス・パインらが共演し、監督は『モンスター』などのパティ・ジェンキンスが務める。イスラエルでの兵役経験もあるガルの本格的なアクションに期待。

ストーリー:人間社会から孤立した女性のみの一族のプリンセスとして生まれたワンダーウーマン(ガル・ガドット)は、自分が育ってきた世界以外の環境を知らず、さらに男性を見たこともなかった。ある日、彼女は浜辺に不時着したパイロットと遭遇。彼を救出したことをきっかけに、ワンダーウーマンは身分を隠して人間社会で生活していくことにする。(シネマトゥディより引用)

感想

どん底DC映画を救う女神

本作は、スーパーマンバットマンで知られるDCコミックスのヒーロー(ヒロイン?)『ワンダーウーマン』の実写映画作品で、DCヒーローがひとつの世界観の中に存在・共闘する『DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)』シリーズ第4作です。

これまでのDCEU作品と言えば、
2013年公開「マン・オブ・スティール
2016年公開「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
同じく2016年公開「スーサイド・スクワッド

ライバルであるマーベルのヒーロー大集合映画「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」シリーズ(アベンジャーズとか)に比べると(ヒットはするけど)正直失敗続きで、ファンの間でも評価の低い本シリーズでしたが、「バットマンvs~」で初登場した本作の主人公ワンダーウーマンには熱い期待が集まってたんですねー。

とはいえ、三回も期待を裏切られた身としては本作も期待半分、不安半分くらいの感じだったんですが、蓋を開けてみれば世界で大ヒット。映画としての評価も高く、公開早々日本でも大ヒット(そして評価も高い)。
まさに、ワンダーウーマンどん底状態のDCEUを救う女神となったわけです。

ワンダーウーマンって何者?

日本ではあまり馴染みのないワンダーウーマンですが、本国アメリカではスーパーマンバットマンと並ぶ超メジャーなヒーロー。
1941年の『オールスターコミックス』8号に初登場。
1986年に一時連載が中断されたものの、現在もDCコミックスから出版され続け、1975年 ~1979年には元ミス・ワールドアメリカ代表のリンダ・カーター主演でドラマにもなっています。

ワンダーウーマン古代ギリシャ神話をベースに誕生したヒーローで、コミック版では母が粘土をこねて作った赤ん坊に神々が命を吹き込んで誕生したという設定でしたが、2011年に始まったコミックのシリーズからは、ゼウスとヒッポリタ女王の実子(半神)という設定に変更されていて、絶海の孤島に暮らす女性だけの一族、アマゾネスの王女なんですね。

本作では第一次世界対戦中、そんなアマゾネスの島近くの海にアメリカ人スパイのスティーブ・トレバー(クリス・パイン)が墜落、ワンダーウーマンことダイアナ(ガル・ガドット)が助けることから物語が始まります。

こう書くと、なんかディズニーのプリンセス映画っぽいですが、本作はまさにディズニープリンセスのヒーロー版という感じの作品で、「人里離れた理想郷で育った世間知らずの箱入り娘が外の世界(現実)を知る」という物語なんですね。

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第一次世界大戦の時代なので、本作は男尊女卑の世界。ダイアナ自身も軍人のおっさんに「会議の場から女を追い出せ(#`皿´)ノ」とか言われちゃうんですね。
それは、女性だけの島で育ったダイアナにとっては大きなカルチャーショックだったわけです。

さらにドイツ軍との戦いの最前線で傷つき、理不尽な目に遭う人々を目するダイアナですが、彼女は母親に聞かされていたアレスという神が争いを引き起こしていて、アレスを倒せば戦争は終わると思い込んでいるけれど……。という物語で、究極的に言うと「男ってほんとバカ」っていう映画でもあるんですよねw

原作者は嘘発見器の開発者!?

そんなダイアナが持つ武器は、盾と剣と、巻かれると嘘がつけなくなる光の縄。
ちなみに映画評論家の町山智浩さんによると、コミック版「ワンダーウーマン」の原作者ウィリアム・モールトン・マーストンは、今も使われている嘘発見器を発明した精神科医で心理学者なんだそうですね。

そんな彼が女性弁護士だった奥さんにインスパイアされて書いたのが、「ワンダーウーマン」で、なので「ワンダーウーマン」は、女性差別に立ち向かうヒーローでもあるわけです。

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本作では「ワンダーウーマン」のそうした一面を際立たせるために、舞台を原作の第二次世界大戦から第一次世界大戦にしてる部分もあるようです。
古代ギリシャ神話では、アマゾネスはそもそも男たちの奴隷だったそうで、そこから逃げて女性だけの一族を作ったという背景もあるのだとか。

さらに主演のガル・ガドットはイスラエル出身で兵役経験があり、本作の監督 パティ・ジェンキンスは、こうしたビッグバジェット作品では初の女性監督としても話題になっていて、そう考えるとアメコミ映画でありながら女性に人気があるのもよく分かります。

だからといって、主義主張が強い映画かといえばそんな事はなく、エンターエイメントとしてもよく出来た面白い映画ですよ。

残念ポイント

ただ、個人的に(期待値が上がりすぎていたからかもですが)、残念だったポイントもいくつかあって、まず、ちょっと長い。
この作品141分もあるんですよね。最初だから色々説明が必要なのは分かるけど、散らかってるところを整理して120分前後にすればもっと良かったかもと思いました。

あと、これはDC映画全体に言えることなので、監督の問題じゃないのかもですが、メッセージ性(人間とは、正義とはみたいなやつ)が前に出すぎな感じもあり、そのせいでクライマックスのカタルシスがちょっと目減りしてる感じがしました。

最初の一本目ですからね。まずはキャラ紹介も兼ねて「ワンダーウーマン」のカッコ良さだったりヒーロー映画としての気持ちよさをもっと優先したほうが良かった気がしましたねー。

それと、BGMの使い方が正直イマイチだったのも残念でした。
画とBGMがバッチリ合っていないというか、「はいここ!」っていうシーンでワンダーウーマンの超かっこいいテーマがババーンと流れて欲しかったし、全体的に音楽の使い方が上手くない感じがしましたねー。もったいない。

 

まぁ、そんなのは全部ない物ねだりだし、前3作に比べれば本作が断然面白いのは間違いないんですけども。

何と言っても、主演をガル・ガドットに据えた時点で、本作は勝ちですからね。
美人でスタイルも良くて、だけど可愛いくて愛嬌も兼ね備えてて。なのに嫌味のない感じだし、決めシーンでのカッコ良さもバッチリハマってて。

そんな彼女の魅力で、ぶっちゃけ細かいアラはどうでも良くなっちゃうんですよねー(´∀`)

DCEUの前3作品を観て、「(´ε`;)ウーン…今回はどうしようかなー」という人は、絶対映画館で観たほうがいいと思うし、本作は予備知識無しでも観られる作品なので、アメコミやアクションに興味のない女性の方にも是非映画館で観て欲しい作品でした!

興味のある方は是非!!!

 

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note.mu

大人も子供も楽しめる映画「ナイトミュージアム」(2007)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは2007年公開のファンタジーコメディー『ナイトミュージアム』ですよー!

いつか観ようと思ってたまますっかり忘れてて、今回やっとレンタルで観ました。
「夜になると博物館の展示物が動き出す」というアイデア一発の映画ながら、大人も子供も楽しめる映画でしたよー(´∀`)ノ

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あらすじと概要

真夜中の自然史博物館を舞台に、そこで働く夜間警備員の男が体験する不可思議な現象を描いた爆笑コメディ。『ピンク・パンサー』のショーン・レヴィが監督を務め、魔法で次々と動き出す博物館の展示物を止めようとする主人公の奔走をテンポよく演出。夜間警備員に『ミート・ザ・ペアレンツ』のベン・スティラー、人形のアメリカ大統領セオドア・ルーズベルトロビン・ウィリアムズがふんし、新旧実力派コメディアンが絶妙な掛け合いを見せる。恐竜が闊歩し、かつての英雄たちが動き出す映像も必見。

ストーリー:ニューヨークで暮らす失業中のラリー(ベン・スティラー)は前妻が(キム・レイヴァー)が再婚すると知り動揺する。愛する息子ニッキー(ジェイク・チェリー)とのきずなを保つために、ラリーは自然史博物館の深夜勤務の夜警員の仕事を引き受け、真夜中に警備を始める。ある夜、展示物が魔法を使ったように生き返り、ローマのグラディエーターやカウボーイたちがジオラマから飛び出して戦いを始め……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

ワンアイデアに肉付けしたコメディー映画

本作は「博物館の展示物が夜中になると動き出す」というワンアイデアに、親子の再生と負け犬の復活劇という肉付けをして(当時の)最新CGを使って描いたファンタジーコメディです。

どんな仕事も長続きせず、妻と離婚し10歳の一人息子とは週二回しか会えないダメ男ラリーが、息子ニッキーとの絆を手放すまいと一念発起。
見つけた仕事はNYの自然史博物館の夜警だったが、実はその博物館の展示物たちは、夜中になると動き出し……。という物語。

ベン・スティラー演じる主人公ラリーは、それまでどんな仕事の長続きせず、何度もアパートを追い出されているダメ男。
当然、奥さん( キム・レイヴァー)とは離婚、愛する一人息子ニッキー( ジェイク・チェリー)とも週二回しか会うことが出来ないうえに、奥さんの再婚相手は株トレーダーで設けていて、息子も新しいパパに懐いてて、逆にダメなパパのラリーとはギクシャクしている状態なんですね。

で、指パッチンでスイッチをON・OFF出来るライトで起業するもやっぱり失敗し、奥さんはもう、ニッキとラリーを会わせたくないと思ってるわけです。

そんなある日、奥さんに言われた一言で一念発起した彼は博物館の夜警の仕事につくわけですが、エジプトの王・アクメンラーの最も貴重な遺品『アクメンラーの石版』の魔法の力によって、この博物館の展示物たちは夜な夜な生き返って(蘇る?)大騒ぎする、トンデモ博物館だったわけですねー。

ラリーの仕事は、ワンコみたいなTレックスや、ガムを欲しがるモアイ像、いたずら好きなサルの剥製に、いがみ合う西部開拓民とローマ帝国兵士のミニチュアたち、そして、インディアンの娘に恋するルーズベルト大統領(ロビン・ウィリアムス)が大騒ぎする夜の博物館に誰も入れず、“誰も出さないこと”。というわけです。

ベン・スティラーロビン・ウィリアムス、新旧コメディー俳優の共演

主演のベン・スティラーは両親共に有名コメディー俳優というサラブレットで、コメディアンの登竜門的テレビ番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演し、1990年代の始めには、MTVで『ザ・ベン・スティラー・ショー』という看板番組を持つ人気コメディアンで、俳優としても人気ドラマ『エリーに首ったけ』や映画『LIFE!』などで高い評価を得ています。

一方ロビン・ウイリアムスもスタンダップ・コメディアンとしてデビューし、1980年にロバート・アルトマン監督の『ポパイ』で映画デビュー。
『グッドモーニング, ベトナム』『いまを生きる』『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』など、数々の映画に出演していますが、残念ながら2014年に亡くなっています。

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共にコメディアン出身ということもあり、二人の掛け合いはテンポもよくて楽しく、本作の物語を引っ張っていくんですね。

また、ラリーの前任者として博物館に勤めていた三人の労警備員として、ミッキー・ルーニー、 ビル・コッブス、 ディック・ヴァン・ダイクという往年の名優も出演。物語に深く関わる重要な役を演じているし、ベン・スティラーの実母アン・メアラや、親友のオーウェン・ウィルソンもチョイ役で出演したりもしています。

父親になれなかった負け犬が本当の父親になる物語

本作のラリーは、起業しては失敗ばかり繰り返す典型的な「夢追い人」で大人になりきれない父親不適合者。ですが、息子のことは愛していて立派な父親でありたいとは思ってるんですね。

本作ではそんなラリーが、博物館での3日間の試練を乗り越えることで、本当の父親になるという物語になっています。

そんな彼を導く、いわば父親的存在としての役割担うのがルーズベルト大統領(テディ)ですが、しかし彼はあくまで大統領を模した蝋人形(偽物)でしかなく、ある意味ラリーと同じ、鏡合わせの存在でもあるわけです。

物語の中では、3日目に起こる“ある事件”を乗り越えることで、何者でもなかった(偽物だった)二人が成長し「本物」になる物語でもあるんですね。

アトラクション的なエンターテイメントで、物語自体はツッコミどころも満載ではあるんですが、この二人の物語とそれを演じるベン・スティラーロビン・ウィリアムスの演技が本作に一本筋を通しているんだなと思いました。

あと、何も知らなくても楽しい映画ですけど、世界史を知ってた方がより笑えたり、深く楽しめる映画なのかもしれないとも思いましたねー。

ハリウッドコメディーは過激なシーンやセリフが出てくる作品もありますが、本作は子供さんでも安心して楽しめる作品なので、家族で観るのがいいかもしれません。

興味のある方は是非!

 

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ライアン・ゴズリング&ラッセル・クロウのコンビが送る最高すぎるアクションコメディー「ナイスガイズ!」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日本では今年の始めに公開されたアクションコメディー映画『ナイスガイズ!』ですよー!

ラ・ラ・ランド」で女性のハートを鷲掴みにしたライアン・ゴズリングと「レ・ミゼラブル」など多くの作品に出演している名優ラッセル・クロウがW主演しています。

先に一言感想を書くなら、

 

とにかく最高すぎる作品でしたー!!(*」゚∀゚)」YEAH!

 

だからみんな観て! 面白いから!

で、TSUTAYAでもまだ新作の棚に並んでいる本作なので、今回も出来る限りネタバレはしないよう気をつけますが、もしこれから観る予定の方は先に本作を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

 

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あらすじと概要

リーサル・ウェポン』の製作・脚本コンビ、ジョエル・シルヴァーシェーン・ブラックがタッグを組んだバディムービー。ラッセル・クロウライアン・ゴズリングが主演を務めた、暴れん坊の示談屋とさえない私立探偵が、ある事件を捜査するうちに国家を揺るがすとてつもない陰謀に巻き込まれる物語。共演には、アンガーリー・ライスとマーガレット・クアリー、『マジック・マイク』シリーズなどのマット・ボマー、『L.A.コンフィデンシャル』などのキム・ベイシンガーらが名を連ねる。

ストーリー:1970年代のロサンゼルス。シングルファーザーの私立探偵マーチ(ライアン・ゴズリング)は腕っ節の強い示談屋ヒーリー(ラッセル・クロウ)に無理やりコンビを組まされ、行方不明になった少女捜しを手伝うハメに。さらにマーチの13歳の娘ホリー(アンガーリー・ライス)も加わり捜査を進めていくが、簡単に終わるはずだったその仕事は、とある映画にまつわる連続不審死事件、さらには国家を揺るがす陰謀へとつながっていき……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

あのライアン・ゴズリングが子持ちのへっぽこ探偵に!?

本作をざっくり言うなら、腕力バカの示談屋と子持ちで酒浸りのへっぽこ探偵巨悪に立ち向かうという内容のアクションコメディーです。
そんな、へっぽこ探偵を演じるのは「ドライブ」や「ラ・ラ・ランド」で影のある二枚目を演じて、多くの女性を虜にしたライアン・ゴズリング

本作ではそんな彼が、これでもかと全力で笑いを取りにいってますw
裏声で奇声を上げ、股間を雑誌で隠しながらトイレのドアをバタンバタンさせ、腕を折られればキャーーーー!!と悲鳴を上げてその後シクシク泣き、トランクスとランニングで水槽の中を泳ぎまわり、娘の前で情けなくベロベロ泣くダメダメ探偵マーチ。

そんなマーチと行き掛かり上バディを組む腕力バカの示談屋ヒーリーを演じるのは、ハリウッドのむっつりおじさんこと、ラッセル・クロウ

彼はこの映画の役作り? で大幅に体重を増やしていて、髭面も相まってクマみたいになってましたねー。

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さらに、生意気だけどカワイイ本作の良心、マーチの娘ホリーをオーストラリアの女優アンガーリー・ライスが演じています。

この三人のバランスや掛け合いが絶妙で、もうずっとコイツらを見ていたい多幸感に溢れる作品になっていましたー!

アクション映画黄金時代を作り上げた監督と製作

そんな本作を作り上げたのが、「リーサル・ウェポン」の製作・脚本コンビ、ジョエル・シルヴァーシェーン・ブラック

今回監督を務めたシェーン・ブラックは他にも「ラスト・ボーイスカウト」「ラスト・アクション・ヒーロー」などの脚本も担当。

まさに1980~90年代にかけてのアクション映画黄金時代を裏から支えてきた一人で、「キスキス・バンバン」「アイアンマン3」では監督も務めています。

アクション映画黄金期作品といえば、「リーサル・ウェポン」の様に最初は相容れないデコボココンビが銃撃戦やカーチェイスの最中にどうでもいい口喧嘩をしながら、徐々に信頼し合って相棒になっていくという作品が多く作られました。

本作では、そんな80~90年代のアクション映画のテイストと、さらに劇中の時代設定でもある70年代アクション映画オマージュがふんだんに盛り込まれています。

またシェーン・ブラックは子役使いも上手くて、本作でも子役を効果的に配置していました。彼の描く子供達は素直で良い子は一人もいなくて、むしろダメな大人と対等に渡り合う生意気でこまっしゃくれた子供が多くて、それがまた小気味いいんですよねw

ざっくりストーリー

では、本作はどんな物語かというと、舞台は1970年代のロスアンゼルス
有名ポルノ女優が事故死するところから物語はスタートします。

この冒頭のシーンも最高で、夜中にいびきをかいて寝ているオヤジのベッドの下からエロ本を盗み出してこっそり読んでいるマセガキの家に、突然車が突っ込んできます。

この家は崖下にあって、マセガキがニヤニヤしながらエロ本を読んでいる後ろの窓に、崖上の崖を落ちてくる車だけが見えるんですね。(音はなし)

で、家を突き抜けてひっくり返った車から放り出されたほぼ全裸の女が瀕死の状態で、しかもその彼女はマセガキが見ていたグラビアに載っているポルノ女優というわけです。

宇多丸師匠もラジオで言ってましたが、この時に見せるマセガキの行動が本作のカラーや方向性を端的に表しているんですねー。

で、ライアン・ゴスリング演じるマーチとラッセル・クロウ演じるヒーリーはそれぞれ、このポルノ女優の死に関わる別々の依頼で最悪の出会いをし、そこから行き掛かり上バディを組んで“ある人物”の捜索をするうち、陰謀に巻き込まれたり殺し屋に狙われるという物語。

ヒーリーの方は、まじめでいい人間でありたいと願いながらも口より先に手が出る腕力バカで、マーチの方は娘も呆れるほど弱っちくて姑息でセコイ探偵。

そんなダメダメな負け犬二人が事件に巻き込まれてドタバタしながら、真相にたどり着いて……。というのが本作の見どころになっています。

不謹慎・今時!?なギャグが満載。でも…

上記したように、本作はとにかく笑いが満載で、とくにライアン・ゴズリング裏声芸小ボケの数々は、観ながらずっと笑いっぱなしでした。
しかも演じている彼自身、ノリノリで超楽しそうなんですよねーw

上記以外でも、出来る探偵風にドアの小窓を布を巻いた手で割って建物に侵入しようとしたら大惨事になったり、酔っ払って美女とふざけててベランダから転げ落ちたり、銃を突きつけられてるのに、ラッセル・クロウとどうでもいい言い合いしたり。
80年代的なオフビートな外し演技を随所に盛り込まれています。

そうかと思うと、急に切れ者っぽいことを言ってみたり、心の傷をチラ見せしたりするギャップがまたいいんですよね。
そして終盤では、ホテルを舞台に上へ下へのアクションシーンを見せるんですが、敵の銃を奪おうと格闘中に誤射された銃弾で後ろの関係ない人が打たれて死んだり、二人で死体を投げ捨てたのが人ん家の庭(しかもパーティー中)だったり。

そんな不謹慎なギャグや、「え、今時!?」 と思っちゃうようなベタベタなギャグ(滑って転んで失神とか)や、ストーリーとまったく関係のないギャグシーンなどなど、一歩間違えたら観客が不快になりそうな内容にも関わらず、脚本の軽妙な語り口と、社会的には最低な二人の心の底にある「正しさ」をちゃんと作品に反映させているから観客も楽める作品になってるんだと思います。

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で、さらに「正しさ」を体現するアンガーリー・ライス演じるマーチの娘ホリーの存在が、本作ではかなり重要になっていると思いました。

っていうか、この子が超カワイイんですよねー。
生意気でマセてるけど、でもちゃんと子供らしさもあって、反抗的だけど根は優しくてパパが大好きで。

そんなホリーが人の道から外れそうになりがちなマーチとヒーリーの轡(たずな)をしっかり握っていることで物語が上手く回っていくし、観客は二人に感情移入出来るんです。

 

そんな感じで、僕のようなボンクラ映画ファンにとっては(懐かしさも込みで)「そうそう、こんな映画が観たかった!」って思える最高の一本だったし、続編が観たくなる映画でした!

興味のある方は是非!!!!

 

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子供たちがゾンビになって先生をムシャムシャ食べちゃう!?「ゾンビスクール!」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは「ロード・オブ・ザ・リング」でフロド・バギンズを演じたイライジャ・ウッドが総指揮と主演を務めたゾンビコメディー『ゾンビスクール!』ですよー!

チキンナゲットが原因でゾンビになった小学生たちが、先生や親をムシャムシャ食べちゃう悪趣味(褒め言葉)な映画です。

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あらすじと概要

『ソウ』『インシディアス』シリーズなどに携ってきたリー・ワネルが、脚本と製作総指揮を務めた異色のゾンビコメディー。小学校を舞台に、食べるとゾンビ化するチキンナゲットを口にした子供たちと教師たちの死闘を活写する。『ブラック・ハッカー』などのイライジャ・ウッド、『スノーピアサー』などのアリソン・ピルらが顔をそろえる。随所に笑いがちりばめられているが、ゾンビ化した子供たちの襲撃と容赦ない流血描写にはゾッとする。

ストーリー:小説家になるべくニューヨークに行ったものの、夢に破れて母校の小学校で臨時職員となったクリント(イライジャ・ウッド)。勤務初日に子供たちから見くびられ、クセモノぞろいの同僚教師に面食らい、クリントは早くも自信を失いそうに。そんな中、給食で出されたチキンナゲットを食べた女生徒がゾンビと化してしまう。彼女に襲われたほかの生徒もゾンビとなり、校内は一気に阿鼻(あび)叫喚の地獄と化す。クリントらは学校を閉鎖して激闘を繰り広げるが……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

2016年版「ザ・チャイルド」!?

純粋な子供たちが突如大人を襲い始める映画と言えば、1976年に公開された「ザ・チャイルド」が有名です。

スペインの小島にやってきた生物学者とその妻が島の子供たちに襲われるというホラー映画で、その島の大人たちは既に子供たちによって全滅させられていたっていう作品。

今だったら大問題になりそうな映画ですが、僕が子供の頃はゴールデンタイムの洋画劇場で普通に放送してたんですよねーw

そんな「ザ・チャイルド」を彷彿とさせるのが本作「ゾンビスクール!」です。

いわゆるゾンビコメディー映画で、チキンナゲットに混入したウィルスが原因で子供たちがゾンビ化。先生をムシャムシャ食べちゃうという映画です。

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ざっくりストーリー

本作はいきなりオープニングで養鶏場の鶏が絞められ、工場でチキンナゲットになって学校給食で女の子が食べるところまでを一気に見せます。

で、その途中でどうもこのナゲットにはヤバ気な何かが混入していることが分かるという、(ゾンビ映画としては)非常にスマートな作り。

で、そんな小学校に非常勤教師としてやってきたのは、イライジャ・ウッド演じる主人公クリント。
彼は、小説家を夢見てNYに行くものの、夢敗れて地元に戻ってきてるわけです。

で、彼の務める学校は変わり者の先生と、担任するクラスは二人のいじめっ子を筆頭に可愛げのないクソガキばかりで、クリントは早速ナメられちゃうんですねー。
しかも、クラスには最初の感染者も。

で、その子から学校中に感染が広がり、あとは先生たちが追い詰められるというお約束通りのゾンビ映画になっていくわけですね。

全体的にユルい作り。

とはいえ、ゾンビ役の子供たちは基本10歳前後の小学生ばかり。
そんな子供ゾンビたちが先生に襲いかかって残酷に殺したりムシャムシャ食べちゃうシーンは、正直「これって大丈夫なのか??」と観ているコッチが心配になっちゃうくらいで、さらに先生の腸で縄跳びしたり、目玉でビリヤードしたり、手や頭で遊んだりとかなり悪趣味(褒め言葉)満載です

このへんの描写に子供の無邪気さゆえの怖さが出ていて「ザ・チャイルド」を思い起こさせるんですよね。

ただ、流石にゾンビとは言え子供を惨殺するシーンはマズイと見えて、舞台を銃の所持を規制しているイリノイ州の片田舎という設定にしたり、子供が直接殺したり殺されたりするようなシーンは撮さないよう、色々気を使った描写になっていて、なのでゾンビ映画の残酷描写としては少々ユルめ。(というか直接見せないことで逆に想像させる手法で、そこはかなり成功しています)

ただ、コメディー映画にしたことで、そのユルさが逆にプラスに働いているのは製作者の計算通りなのかもです。

ゾンビ映画としてはちゃんとしてる

じゃぁ、コメディーだし適当な作りかというとそんな事はなく、実はゾンビ映画としての“お約束”はしっかり踏襲してたりするんですよね。

クリントたち先生が気づかないうちに被害が拡大していくところだったり、学校をショッピングモールに見立てているところ、上記のようにまず感染経路をしっかり最初に見せているところなどなど。
非常に上手い作りになっていて感心してしまいました。

もちろん、おかしな部分もないわけじゃないんですが、そこはコメディー映画ということで許容できる範囲ですしね。

あと、ゾンビ映画では定番の、主人公たちが立てこもりからの本音を言い合うシーンでは、「あー、アメリカでも教師は色々大変なんだなー」と思わされたりしましたねーw

ちなみに本作の脚本を担当したのは「ソウ SAW」の リー・ワネルと、テレビドラマ「glee/グリー」のイアン・ブレナン。ちなみにリー・ワネルがちょっとマッドなダグ役で登場してます。
そしてジェームズ・ガン監督がガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の前に監督したスーパー!」で主演したレイン・ウィルソンがハチャメチャな体育教師ウェイド役だったりと、何気にスタッフ・キャストも豪華なんですよねー。

ラスボスはクラスのクソガキ!?

で、本作のラスボスは、クリントのクラスのいじめっ子のクソガキでして。
最初に感染した女の子をいじめて食いつかれゾンビになるわけですが、コイツがゾンビになった後も何かと憎たらしいんですよねーw

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で、ラストの方でクリントとこのクソガキの対決があるんですが、不謹慎とは思いながらコイツが殺られるシーンは胸のすく思いでしたねーw(←ネタバレ)

そう思わせるくらい、この子の演技が上手いってことなんでしょうけどもw

 

そんな感じで僕は非常に楽しめましたが、人によっては嫌悪感がある作品だと思うし、万人にオススメ出来る作品ではないです。
っていうか、かなりボンクラ指数が高くないと楽しめない映画かもw

興味のある方は是非!

 

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海に選ばれた少女と半神半人のバディムービー「モアナと伝説の海」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ディズニー最新作『モアナと伝説の海』ですよー!
「アナ雪」「ベイマクッス」「ズートピア」とヒット作が続いた後のハードルが上がりきった状況だけに、本作には少し不安もあったんですが、個人的に映像もキャラクターも音楽も大好きな作品でしたねー。

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あらすじと概要

『アラジン』『ヘラクレス』などのロン・クレメンツとジョン・マスカー監督が再びタッグを組み、南太平洋に伝わる不思議な伝説を基に描くアニメーション。幼少時のある出来事をきっかけに海と強い絆で結ばれた、16歳のヒロインの大冒険を描写する。新人のアウリイ・クラヴァーリョがヒロインに抜てきされた。南太平洋を舞台につづられる少女のアドベンチャーと、その歌声に魅せられる。

ストーリー誰よりも海を愛する少女モアナは島の外へ行くことを禁止されていたが、幼少時に海とある出会いを果たしたことで運命が決定する。モアナは愛する者たちの救済のため、命をつかさどる女神テ・フィティの盗まれた心を見つけ出して再び平和な世界を取り戻そうとする。未知の大海原へと向かったモアナは伝説の英雄マウイと出会い、冒険を共にする。(シネマトゥディより引用)

 

感想

今度のヒロインは島の娘

本作の監督は「リトルマーメイド」(1989)「アラジン」(1992)「ヘラクレス」(1997)「トレジャー・プラネット」(2002)「プリンセスと魔法のキス 」(2009)と、ディズニーでプリンセスものを数多く手がけたベテラン、ロン・クレメンツとジョン・マスカーのコンビ。

本作も一応はプリンセスものの系譜にあたる作品なんですが、近年ディズニーの「意志の強いヒロイン」の流れも同時に汲んでいます。
そして本作の舞台はポリネシアに浮かぶ架空の島モトゥヌイで、主人公は村長の娘モアナ(アウリイ・クラヴァーリョ)なんですね。

劇中、共に海を渡る半神半人のマウイに「お姫様」と言われたモアナが「お姫様じゃないわ。村長の娘よ」と返すんですが、このセリフで、この映画は今までの(伝統的な)プリンセス映画とは違うという事を示しています。

そしてこのセリフの通り、モアナはこれまでのディズニーヒロインの中で一番逞しいヒロインでしたねー。
相棒マウイと共に、体を張って冒険し世界を救うヒーローでした。

1000年前、卓越した航海術で海を渡ってポリネシア各地の島に移住したラピタ人の末裔であるモトゥヌイの人々は、航海を止めて楽園のような島で幸せに暮らしているという設定なんですが、大航海によって太平洋の島々に渡ってきたラピタ人がなぜ航海をやめて定住するようになったのかという両監督の疑問が本作の原点になっているそうです。

ざっくりストーリー解説

モアナの祖母タラ(レイチェル・ハウス)が子供たちに、世界の成り立ちを語るシーンから映画はスタート。
曰く、「1000年前、女神テ・フィティの『心』には命を創り出す力があり、海しかなかったこの世界に島、植物、動物を誕生させたが、半神半人のマウイドウェイン・ジョンソンが彼女の心を盗んだことで世界は闇に包まれ始める。
しかし、世界が闇に覆われる前に、海に選ばれし者が珊瑚礁を超えてマウイと共にテ・フィティの元へ心を返しに行けば世界が救われる」というもの。

で、その海に選ばれたのがモアナで、彼女は幼い頃から珊瑚礁の向こうに強い憧れを抱くようになるんですね。

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しかし、若い頃に珊瑚礁を超えたことで親友を失った村長の父トゥイ(テムエラ・モリソン)は、モアナが外洋に出ることに大反対。
生活に必要なものは全てこの島が与えてくれるのだから、将来の村長として島のことだけを考えて欲しいと願います。

自分の思いと父親の願いの間で揺れ動くモアナでしたが、ある日、伝承通りに島の作物が枯れはじめ、魚も捕れなくなり、そしてタラに教えられ自分のルーツ(大航海をしていたラピタ人の子孫だった)を知ったモアナは……。というストーリー。

つまり、本作は「アイデンティティ」の物語なのです。

徹底した取材と起用で描くポリネシアの精神

本作を作るにあたって、両監督やスタッフは実際にタヒチニュージーランドなどで現地の人々に徹底した取材を行い、キャストやスタッフも出来る限りポリネシア系の人々を起用。ポリネシアの島々に暮らす人々の文化や精神を映画に反映させています。

つまり、劇中歌や美しい島の映像に乗せて、「彼らの暮らしや自然と共に生き自然に生かされているという彼らの精神」を、ディズニーミュージカルのテンプレートに乗せて描いているわけですね。

物語を作るにあたって、現地の人達にディテールやセリフをチェックしてもらっているからというのもあるのかもですが、「外国人がイメージするポリネシア」ではなく、作品に描かれる彼らは(少なくとも僕には)とても「リアル」に感じました。

音楽

本作で特に素晴らしいのは劇中で使われる音楽だと思います。
ポリネシアンミュージックグループテ・ヴァカメンバーのオペタイア・フォアッイ
数多くの映画音楽を担当したベテラン、マーク・マンシーナ
トニー賞グラミー賞を受賞したリン=マニュエル・ミランが担当したBGMや劇中歌はどれもキャッチーでありながら、ポリネシアンテイストもしっかり入っていて良かったですねー。

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モアナ役を務めた、ハワイ出身で16歳のアウリイ・クラヴァーリョの力強くて伸びのある歌声も素晴らしいし、アクション俳優として有名なマウイ役のロック様ことドウェイン・ジョンソンも見事な歌声を聴かせてくれますよ。(しかもラップも)

やるじゃんロック様!

映像とキャラクター

ジョン・ラセターがディズニーアニメーション部門を指揮するようになって以降、CGとストーリーが素晴らしいのは今や当たり前という感じですが、本作でも自然や海の描写は当然素晴らしいです。

CMで見た人もいると思いますが、マウイの刺青に描かれている小さなマウイは、意思を持って刺青内を動き回るんですね。

で、そのリトルマウイを担当したのが、「アラジン」のランプの精・ジーニーを手がけた伝説のアニメーター、エリック・ゴールドバーグ。
3DCGキャラの体を2Dの手描きキャラが動き回るという非常に面白い映像になっていて、とても新鮮でした。

あと、これもCMで流れているのでネタバレにはならないと思うんですが、本作の重要キャラクターとして「海」がいます。
いざという時はモアナを助けてくれる頼もしい仲間ですが、まさか海をカワイイと思う日が来るとは思いませんでしたよ。恐るべしディズニーw

あと、コメディーリリーフとして登場する、鶏のヘイヘイ(アラン・テュディック)も個人的にはツボでしたねーw

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画像出典元URL:http://eiga.com 役立たずで「海」さえもイラつかせるヘイヘイ(右)

そして、何と言ってもモアナのお婆ちゃんタラがね、超良かった!

おばあちゃん子だった僕としては、タラとモアナのシーンだけで5億点でしたよ!

 

前3作と比べると、もしかしたら本作はオーソドックスで少し古いな印象を受けてしまうかもですが、本作は(アメリカ人の価値観ではなく)ポリネシアンの人々の精神や価値観で作品を描いた事が凄いし、それでいてディズニーアニメとして破綻していないバランス感覚も素晴らしいと思いました。

そして、個人的に主人公モアナは近年のディズニーヒロインの中では一番好きでしたよー!

興味のある方は是非!!!

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