今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

事実は小説より奇なり。超怖いけど笑っちゃうハードコアバイオレンス「全員死刑」(2017)* R-15+

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、大牟田4人殺害事件を元にしたバイオレンス映画『全員死刑』ですよー!

超怖いのに笑っちゃう。しかも実話ベースっていう、何とも凄い映画でしたねー。((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

2004年に福岡県大牟田市で、ある一家らを殺害して死刑判決を下された親子4名の実話を、テレビドラマ「お前はまだグンマを知らない」などの間宮祥太朗主演で描く犯罪ドラマ。金銭トラブルを抱える家族が、近所の一家が脱税によって貯めた現金を強奪しようと、殺人に至るさまを映す。主人公である加害者一家の次男の手記を基にした「我が一家全員死刑 福岡県大牟田市4人殺害事件【死刑囚】獄中手記」を原作に、『孤高の遠吠』などの小林勇貴が監督。一家には間宮のほか毎熊克哉、六平直政入絵加奈子がふんする。(シネマトゥデイより引用)

感想

原作と監督

本作の原作となったのは、2004年に福岡県大牟田市暴力団組長一家4人が、知人だった貸金業者一家3人とその被害者一家の友人1人の計4人を相次いで殺害して死刑判決を受けた組長一家の次男の手記を下に、鈴木智彦が加筆編集したノンフィクション「我が一家全員死刑 福岡県大牟田市4人殺害事件【死刑囚】獄中手記」が原作。

その原作を「孤高の遠吠」など、本当の暴走族やヤンキーをキャスティングした自主制作映画で数々の賞に輝いた小林勇貴が、商業映画デビュー作として監督したのが本作です。

凄惨な殺人事件ながら、犯人一家の行動はとにかく杜撰で行き当たりばったり。
しかも、殺人シーンはまるでコントのようなので「これはさすがに映画オリジナルだろw」と思うんですが、調べてみると実はかなり原作に忠実で、まるでコントのような殺人シーンもほぼ原作通りらしいです。マジか…。

アバンで分かる救いようのなさ

間宮祥太朗演じる次男タカノリが経営する、明らかに違法な「のぞき部屋」で盗撮していたオッサンが、タカノリと従業員にリンチされるアバン(タイトル前のエピソード)から物語はスタートします。
この一連のアバンだけで、タカノリや長男サトシ(毎熊克哉)、その周辺にいる人間たちがどうにも救いようがない人間だということを、観客に分からせてるんですねー。

タカノリとサトシの父親テツジ(六平直政)は暴力団組長で、ふたりももそれぞれ構成員。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 左からサトシ・テツジ・タカノリの極道家族。六平さんの本物感ぇ…

で、付き合いのある組でトラブルが起きたため、タカノリが身代わりとして2年間の服役をしている間に組みの経営は悪化し、多額の借金を抱えてしまいます。

そこでタカノリを除く三人(父・母・長男サトシ)家族会議が開かれ、家族ぐるみで付き合いのある資産家の吉田家にある大金が入った金庫を奪い、家族三人を殺すことに。

しかし、サトシは父親より先に吉田家を襲おうとタカノリに持ちかけ……。という物語なんですね。THE・犯罪映画ですよ。

と・こ・ろ・が! この組長家族ときたら全員バカで、犯行も殺人も常に行き当たりばったり。とにかくやる事なすこと全てがなのです。

しかも、長男サトシは空威張りしてるだけのヘタレだし、父親のテツジは借金苦でちょっとおかしくなってるし、母親のナオミ(入絵加奈子)はヒステリーで情緒不安定なんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ウザ怖い母親ナオミ。

なので、タカノリがいつも殺人を押し付けられるわけですが、コイツはコイツで家族の言いなりになるだけのバカなので、ホントもう、どうにもこうにも救いようがないのです。

原作からの改変

原作というか本当の次男は、相撲部屋に弟子入りするほどの巨漢なんですが、本作では二枚目俳優の間宮祥太朗が演じています。

また、一人目の犠牲者がYoutuberになっているのも映画オリジナルの改変で、本当の被害者は真面目な人だったようですし、たまたま被害者と一緒にいて殺された被害者も劇中みたいなヘンテコなキャラクターではなかったらしいですね。
被害者があまりちゃんとした人だと、悲惨になりすぎるからかな?

そんな感じで、ところどころ映画オリジナルの改変はあるものの、基本的にはほぼ原作に忠実な作りなのだとか。(それが余計に怖い)

ターゲットの一人が「パトラ」(化粧の感じがクレオパトラっぽいという理由から)にすり鉢で粉にした睡眠薬を「ふりかけ」にして食べさせるのも、最初の被害者が都合2回息を吹き返すのも、最後の被害者が拳銃で撃たれると分かっていながらタカノリに言われるがまま頭を差し出すのも。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 第2の被害者を演じるのは鳥居みゆき

そんな、あまりにも間抜けで行き当たりばったりすぎるタカノリたちや、被害者のおかしな行動に、観ているこっちは思わず笑っちゃうんですが、殺人シーンでオーバーラップして出てくる「タカノリの手記」の芝居がかった言い回しに、背中がザワザワするような怖さも感じてしまうんですよね。

劇中、タカノリのちょっといい奴っぽい描写があったり、「家族のため」とか「愛する女を守るため」とか、ヒロイックな言葉が出てくるんですけど、やってることは殺人だし、結局タカノリは何も考えてなくて、家族に言いなりですからね。

こんなふうに書くと、この家族がまったく常人にはまったく理解できないサイコパスで快楽殺人者っぽいですけど、そういうわけではなくて、彼らは殺人が罪だということは分かっているし、(劇中では)一応良心の呵責みたいのもあるっぽく描かれてはいるんです。

ただ、遵法精神と倫理観が著しく低いんですよ。

だから、「普通の生活」の一部・または地続きで、犯罪や暴力、殺人があるというか。

 いわゆる近くにいるけど一般市民とは住んでる文化圏が違うみたいな感じなんですね。
…そこがまた怖いんですけども。

暴力・殺人描写

基本、本作は暴力や殺人をメインに置いているわけですが、グロ描写自体は比較的少なめだったりします。
最初の殺人で過剰なくらいしっかり描写して、そこから後はタカノリの表情や効果音で、観客に写っていない部分を想像させるという「悪魔のいけにえ」的な手法なんですね。

殺人シーンを極めて不謹慎かつハイテンションに描いてはいるものの、決して露悪的過ぎないスマートなやり方だなーと思いました。

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画像出典元URL:http://eiga.com

あと、音楽の使い方やところどころの演出も独特で、今まで観てきたどの映画とも違う、小林監督だけのオリジナリティーを感じましたねー。

しかもこの作品の製作中、小林監督はまだ26歳!
今後、どんな作品を作っていくのか楽しみな監督だと思いました!

とはいえ、題材が題材なので万人にオススメ出来るタイプの作品ではなく、生々しい暴力描写や残酷シーンが苦手な人は気をつけたほうがいいかもです。(R-15+指定だしね)

興味のある方は是非!!!

 

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おばあちゃんズの青春映画「マルタのやさしい刺繍」(2008)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、Twitterで教えてもらったスイス映画マルタのやさしい刺繍』ですよー!

恥ずかしながらまったくノーチェックでしたが、とても良い映画でしたねー(´∀`)

 

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

スイスの谷間の小さな村を舞台に、80歳のおばあちゃんたちがランジェリーショップを開くために奮闘する様を描いた人間ドラマ。閉鎖的な村人の冷たい視線を浴びながらも、マルタおばあちゃんと3人の女友だちが老いてもなお生きがいを見つけ出していく。スイス気鋭の女性監督ベティナ・オベルリとスイスを代表する大御所女優たちがコラボレートし、年を重ねることや夢を追うことがそう悪いものではないということを教えてくれる。(シネマトゥディより引用)

感想

スイス映画ってあまり観た記憶がないなー」と思って調べてみたら、以前ブログで取り上げたスイス・アーミー・マンが出てきたので「いや、それタイトルだけだろー(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ」Google先生に思わずツッコミを入れてしまいましたw

本作は、2006年の本国公開時に観客動員1位を獲得、日本では2008年に公開され、1週間でミニシアターランキング洋画部門興行収入1位を樹立したそうですね。

ストーリー

元お針子で村で雑貨店を営んでいるマルタ(シュテファニー・グラーザー)は、愛する夫に先立たれ一日も早く天に召されることを願うだけの日々。
そんなある日、彼女は村の合唱団の旗の修復を依頼され、友人たちと共に街まで布地を調達しに行くことになります。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 左からリージ・マルタ・フリーダ・ハンニ

生地屋で観た美しいレースや、アメリカ帰りの友人リージ(ハイジ・マリア・グレスナ-)に誘われて入った下着屋に触発され、マルタは長年忘れていた下着店を開くという夢を思い出すんですね。

忘れていた熱い想いを叶えようと雑貨店を整理し、再び生地やレースを買い込み、昔の勘を取り戻すために失敗を繰り返しながら作り上げた下着を飾り付け、念願の下着店を開くマルタでしたが、牧師の息子や保守的な村の人たちは、そんなマルタの店をハレンチだと白い目を向け……。という物語。

マルタと友人

本作では、主人公マルタと並行して3人の友人たちの物語も語られます。

リージはアメリカ帰りの先進的な女性で娘と2人暮らし。夫の死で人生の生きがいを失ったマルタに夢を叶えることを進め、積極的に協力してくれます。
しかし、彼女の過去にはある秘密があるんですねー。

ハンニ(モニカ・グブザー)は、体の悪い夫と二人暮らしで最初はマルタの店に反対していました。
しかし、息子で保守派政党員のフリッツが、車椅子の父親を施設に入れ、ハンニもその近くに部屋を借りて住めばいいと言い出したのに怒り、車の教習所に通い免許を取得。マルタの下着の配達を担当してくれます。

フリーダ(アンネマリー・デューリンガー)は、老人の施設に入居している気の強い女性。
最初は、マルタが下着店を始める事に否定的でしたが、マルタを馬鹿にするフリッツや村の連中に腹を立て、インターネットを勉強。マルタの下着をネットで販売してくれます。

旧態然とした村の男社会に、たった4人のおばあちゃんズが革命を起こす本作のストーリーは、以前紹介した「ドリーム」にも通じるんじゃないかと思いました。

まぁ、本作の敵はボンクラ息子たちなんですけどねw

二つの物語とテーマ

本作にはざっくり二つのストーリーが入っています。

一つは、上記のように旧態然とした男社会を自立した女性が変えていくという物語。

小さな村の出来ごとを通して、世界的な女性差別問題を「世界がもし100人の村だったら」的な切り口で見せているんですね。
それを、それを長年村の価値観の中で生きてきた おばあちゃんズを主人公に見せるのが絶妙だなーと思いました。

もう一つは、お年寄りの幸せとは何かという物語。

これも、現在の高齢化社会でお年寄りが幸せに生きるには? という、切実なテーマをコメディータッチで軽やかに描いています。

「老人は老人らしく」という子供世代や周囲からの圧力や常識?に、本作はハッキリとNOを突きつけ、幾つになっても夢を追いかけても恋をしてもいいじゃない。と、4人のおばあちゃんズを通して描いているのです。

最初は、夫に先立たれてしょんぼりしていたマルタおばあちゃんや、それぞれ事情を抱えた3人が、目標を持ってどんどん生き生きした表情に変わっていく様子や笑顔に、見ているコッチも勇気を貰えるんですよね。

昔取った杵柄で下着制作を始めるも、最初から上手くいくのではなく、徐々に勘を取り戻していく描写や、最後に村人全員が分かり合うのではなく分かり合えない人たちも一定数いる終わり方は、寓話的な物語にちゃんとリアルを入れ込んでいて素晴らしいと思いました。

マルタおばあちゃんの息子ヴァルターとハンニの息子フリッツについては、劇中でやった事に対しての罰が少ないように感じましたが、そうは言っても息子ですからね。
あまりヒドイ目に合わせるのは、おばあちゃんズにとっても本意ではないでしょうし、本作の主題は復讐ではなく彼女たちの夢が叶うことなので、あれはあれで良いのかもしれません。

ただ、敢えて言うならフリッツよりヴァルターの方が罪が深い感じがしたし、彼の奥さんにもう少しフォローがあってもよかったかも。

タイトルやパッケージから、観る前は何となく「おばあちゃんたちが主人公のふんわりした映画なのかな」なんて思ったけど、骨太で社会派なテーマを寓話的なコメディーとして昇華した良い映画でしたよー!

興味のある方は是非!!!

 

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アメリカ人はマッチョとゴリラが好きだよね「ランペイジ 巨獣大乱闘」(2018) *そこそこネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、タイトル以上でも以下でもない映画『ランペイジ 巨獣大乱闘』ですよー!

実はギリギリまで「ピーターラビット」と本作のどちらを観るか迷った末に、結局コッチを選んでしまいました。何故ならロック様が主演だからー!

正直、この作品はネタバレしても面白さはほぼ変わらない映画だと思うので、今回そこそこネタバレしています。
なので、ネタバレ嫌な人は、先に映画を見てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンを主演に迎え、1986年に発売されたアーケードゲームを実写映画化したパニックアクション。巨大化した動物たちが、大都会で暴れ回り街を破壊していくさまを描く。『ムーンライト』などのナオミ・ハリス、『ウォッチメン』などのマリン・アッカーマン、『女神の見えざる手』などのジェイク・レイシーらが共演。『カリフォルニア・ダウン』でもドウェインと組んだブラッド・ペイトンがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

原作はアーケードゲーム

本作は、1986年にアメリカでリリースされたミッドウェイゲームズのアーケードゲーム「RAMPAGE」が原作だそうで、詳しくは分かりませんが巨大化した動物になってひたすらビルを壊すゲームらしいです。
つまり、この映画は原作にかなり忠実ってことですねw

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そんな本作の監督は「センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島」「カリフォルニア・ダウン」に続き主演のロック様ことドウェイン・ジョンソンと三度タッグを組むことになった ブラッド・ペイトン

僕は「カリフォルニア~」を観たんですが、「なんか色々雑だなーw」って思った記憶がw 
でも嫌いじゃないのはツッコミどころ満載すぎる内容をねじ伏せる圧倒的なロック様の存在感とヌケのいいバカっぽさがツボにハマったからなんですよねー。

そんなある意味黄金コンビの二人が怪獣?映画でタッグを組むとなれば、僕みたいなボンクラ映画ファンは期待せずにはいられないのです!

ストーリー

本作の物語は単純明快で、違法な遺伝子操作の研究をしていた極悪会社のミスで、ゴリラとオオカミとワニ(とロック様)が超巨大化&特殊能力を得てシカゴで大暴れするという、「メガ・シャーク」的なトンデモストーリー。

普通、この手の映画だと人間は基本無力で、怪獣プロレスを呆然と見守るだけになりがちですが、本作ではそこにひと工夫を加えていて、最終的にゴリラのジョージとロック様の熱いバディームービーになってるんですねー!

アメリカ人って、ほんとマッチョとゴリラが好きだよねw

ロック様無双

そんな本作でロック様が演じるのは、アメリカの動物保護地区でゴリラの専門家として働く霊長類学者デイビス・オコイエ。
学者というにはあまりにもマッチョすぎると思ったら、彼は元特殊部隊所属で密猟者から動物を守る任務についていたということが中盤の独白で明らかになります。

で、密猟者どもをぶっ殺して守ったのが、まだ子供だったアルビノのゴリラ ジョージ。
その後、ジョージは動物保護区でゴリラたちのボスとなり、ロック様と教えられた下品な手話でジョークを飛ばし合いながら平和に暮らしてたんですね。

そんなある日、クレア( マリン・アッカーマン)とブレット( ジェイク・レイシー)のワイデン姉弟が経営する会社が、宇宙ステーションで秘密裏に行っていた遺伝子実験が失敗、ヤバげなウィルスが入ったカプセルが動物保護区に落っこちて、漏れ出たガス状のウィルスをジョージとオオカミが吸い込み、ワニはカプセルごと食べちゃったからさぁ大変。

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そのウィルスは、色んな動物の遺伝子を掛け合せまくって出来ていて、シロナガスクジラなみの巨大化、カブトムシなみの強靭さ、トゲマウスの細胞修復能力を始め、なんか色んな能力を促進してしまい、しかも動物たちを凶暴化させてモンスターにしちゃうという、小学校五年生男子が遊びで作ったような迷惑なウィルスなんですね。

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これにはさすがのロック様もアワアワしてしまうんですが、そんな彼のもとに現れたのが、病気の弟を治療するためにこのウィルスの元を作ったケイト・コールドウェル博士 (ナオミ・ハリス)と、政府組織に属する謎の男ハーベイ・ラッセル (ジェフリー・ディーン・モーガン)なんですね。

で、この会社があるのがシカゴのど真ん中で、「どうしようバレたら逮捕される~」なんてオロオロしてるボンクラな弟に、いろんな意味でキレ者っぽい姉のクレアが「本社ビルのアンテナから電波を出して三頭を引き寄せ、軍隊に退治させるのよ!」とか、よく分からない提案をしたり、「あの兄弟なら解毒剤を作ってるはずよ!」というナオミ・ハリスの推測に乗っかって、ロック様もまったくのノープランでシカゴに向かいます。
っていうか、こいつら本当に学者や政府やCEOなのか!? ってくらい、何もかもが行き当たりばったりなんですよねーww

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そのあとはもう、お察しのとおりドッタンバッタン大騒ぎ。
そんな中、ロック様はカリフォルニア・ダウン」の時以上の強運と強靭な肉体で、ビルの倒壊に巻き込まれても、乗ってるヘリや飛行機が墜落しても、クレアに拳銃で打たれても平気な顔で、“親友”のジョージを助けるために無双状態の活躍を見せるのです。
さすが我らがロック様やでー。

80年代のバディムービー

もう、ここまでの展開で十分お腹いっぱいになるんですけど、この映画はこれだけでは終わりません。
色々あって終盤、正気に戻ったジョージとロック様がタッグを組んでクライマックスではオオカミと巨大ワニと戦うというバディ(相棒)モノになります。

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っていうか、相棒が超でかいゴリラってことを除けば、キャラクターも展開も、コントみたいに人がサクサク死ぬのも、80年代のバディアクションムービーそのものなんですよねw

まぁ、冷静になって考えれば、小学五年生男子が授業中に考えたような雑なストーリーなんですが、そこは「カリフォルニア・ダウン」同様、ぶっ壊しと爆発が連発の超ド派手な映像、ロック様の顔面力と筋肉で、有無を言わせず押し切っちゃうパワーがあるので楽しく観られるし、ワニ、オオカミ、ゴリラがビルが立ち並ぶ大都市で暴れる様子は、無条件でワクワクしました!

ただし、この映画は多分、劇場の大画面じゃないと面白さが半減してしまうことは間違いないので、気になっている人は劇場で鑑賞することを強くオススメしますよ!

興味のある方は是非!!

 

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Res-Cに「宮崎駿作品を語ってみる」の記事を書きましたー!
宮崎駿監督作品について1作づつ語る企画第7弾は「もののけ姫」ですよー!(´∀`)ノ
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宮崎作品の廉価版「メアリと魔女の花」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、スタジオジブリ退社後、プロデューサーの西村義明と米林宏昌監督が設立した「スタジオポノック」製作第一弾作品『メアリと魔法の花』ですよー!

アニメーターとして多くのジブリ作品に参加、「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の2本を監督した米林監督が、独り立ちして初めての監督作ということで注目はしてたものの、予告編を見る限り期待半分不安半分という感じだったのですが……。

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概要

借りぐらしのアリエッティ』などの米林宏昌監督がスタジオジブリ退社後、プロデューサーの西村義明が設立したスタジオポノックで制作したアニメ。メアリー・スチュアートの児童文学を基に、魔女の国から盗み出された禁断の花を見つけた少女の冒険を描く。少女メアリの声を務めるのは、『湯を沸かすほどの熱い愛』やNHK連続テレビ小説とと姉ちゃん」などの杉咲花。脚本を『かぐや姫の物語』などの坂口理子、音楽を『思い出のマーニー』などの村松崇継が手掛ける。(シネマトゥデイより引用)

感想

3.11以降の日本

2016年は、7月に庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」、8月に新海誠監督の「君の名は。」。そして11月には片渕須直監督の「この世界の片隅に」がそれぞれ公開され、大いに話題になりました。同時に、この3作は3.11を強く意識した作品でもあります。

それから約1年後に公開された本作もまた、明らかに3・11以降の日本を描いた作品になってましたねー。

ストーリー

本作はイギリスの女性作家メアリー・スチュアートが1971年に発表した『The Little Broomstick』(邦題は「小さな魔法のほうき」)が原作。

昔、1人の赤毛の魔女が魔女の国から「夜間飛行」という花の種を盗み出すが、逃走中に力尽きて乗っていた箒と共に種を森に落としてしまうところから物語はスタート。

それから数十年後、11歳の少女メアリ・スミスは大叔母シャーロットが住む赤い館に引っ越して来たものの、友達もなく、テレビもゲームもない退屈な日々。

そんなある日、彼女は黒ネコのティブに導かれるように、森の中で青く光る不思議な花と木の蔓に覆われた一本の箒を見つけ……。という物語。

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コンプレックスの赤毛を近所に住む少年ピーターにからかわれ、大叔母の家の手伝いをすれば失敗ばかりのメアリは、理想の自分になりたいという変身願望を持っている思春期の入口に立った女の子で、そんな彼女が「夜間飛行」の力で魔女の力を得て冒険を繰り広げるという、設定だけ聞くといかにも面白そうなストーリー。
なんですが、一言で言うなら圧倒的に物足りなさが残る作品でしたねー(´・ω・`)。。。

宮崎駿の廉価版

米林監督はジブリの生え抜きで、原画マンとして数々のジブリ作品を支え、宮崎さんの仕事を一番近くで見てきた愛弟子だし、本作のストーリー的にもジブリ(というか宮崎駿)感が出てしまうのは仕方がないと思うんです。(多分、スポンサーや僕を含めた観客にも求められている部分もあるだろうし)

それを踏まえたうえで、あえて嫌な言い方をするなら、この作品は宮崎駿の廉価版」という印象を受けました。

ジブリ時代に監督した「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の2本は、(好き嫌いは分かれるかもだけど)米林監督のカラーが出ていたと思うし、当時の米林監督が抱えた諸々の複雑な思いを作品に込めようという熱量を感じたんですよ。

ところが本作にはそれが全く感じられず、何ていうかこう、求められているものを無難にまとめようとしてる感が透けて見えるんですよね。

物凄くオブラートに包んで言うなら、今までジブリで培ってきた表現方法を随所で駆使しているわけですが、そういう事じゃないよ! と。
劇中で描かれている3.11以降の日本と子供達というテーマすら、なんか薄っぺらく感じてしまいました。「え、それ本当にそう思ってる?」っていう。
もちろん宮崎さんっぽく作ること自体はいいけど、それならそれで宮崎駿超えを目指してくれよ! って思いましたねー。

演出に問題あり

本作の場合、ストーリーの方は極めてシンプルな分そこまで悪くなくて、むしろ米林監督の演出の方に明らかに問題があると感じました。

メアリが初めて見る魔法の世界に驚くシーン。
多分、本作で一番の見せ場です。

ここで魔女の国や「エンドア大学」を観客に「あっ」と言わせるくらい魅力的に描くことで、後半とのギャップが活きる大事なシーンじゃないですか。

なのに、魔法の世界が全然魅力的に見えないのです。

なんかこうスッカスカというか、書き割りっぽいというか、奥行きや広がりが感じられないっていうか。

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そこから先はひたすら、「どこかで見たような」展開が続きます。

いや、「どこかで見たような」展開自体が悪いわけではないんですよ。

ただ、「あ、これは千と千尋だな」とか「お、ここはポニョだな」とか「アリエッティーかよ」とか、まるでマッド動画みたいに見覚えのある表現やキャラクターが釣瓶打ちなのに“元ネタ”を超える驚きが一つもないんですね。

少なくとも、僕がこの作品に求めていたのは「宮崎駿チルドレンだった米林監督のその先」なのに、出来上がった作品はジブリの二番煎じで米林監督のオリジナリティーというか作家性みたいなものが全然見えてこないわけですよ。

しかもなまじ上手いもんだから、観てる分には普通に観られるのが余計にタチが悪いっていうね。

ポスト宮崎駿という呪い

ここ何年もの間、ポスト宮崎駿を探そうとスポンサーたちは必死ですよね。
何人ものアニメ監督が槍玉に挙げられて、上手くかわした人もいれば、かわしきれなかった人もいますけど。

で、米林監督も槍玉に挙げられた一人(というか最有力)で、しかも、ジブリで2本も監督しているわけですから、かかる期待もプレッシャーも半端ないのは想像に難くありませんし、観客側も知らず知らずの内に米林監督に宮崎駿の影を求めてしまってると思うんですね。

斯く言う僕も、この感想で米林監督と宮崎さんを比べて文句言ってるわけだし。

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それについては米林監督には申し訳ない気持ちだし、気の毒だとも思うんですが、正直これは米林監督がアニメを作り続ける以上、背負わざるを得ない十字架であると同時に、ある種のアドバンテージでもあるんじゃないかと思うんです。

出来れば次作では、もっと強かにアドバンテージをフル活用して「これが米林宏昌だ!」という作品を観せて欲しいです。

興味のある方は是非!!

 

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宮崎駿作品を語ってみる-6「紅の豚」(1992)

ぷらすです。

僕が火曜日を担当しているブログマガジン「Res-C」に記事をアップしましたー!

res-c.blog.jp

宮崎駿監督の、劇場アニメを1作づつ語っています。
興味のある方は是非ご一読くださーい!(´∀`)ノ

ある平凡な男の一週間を淡々と描く「パターソン」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「デッドマン」で知られるジム・ジャームッシュ監督の話題作『パターソン』ですよー!

スターウォーズ新三部作でカイロ・レンを演じ、世間に一躍名前を知られたアダム・ドライバー演じる平凡なバスの運転手の一週間を淡々と追った地味な作品ながら、観終わったあとは何だか幸せな気持ちになる、しみじみ良い作品でしたねー。

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概要

ブロークン・フラワーズ』などのジム・ジャームッシュが監督を務め、『沈黙 -サイレンス-』などのアダム・ドライヴァーが主人公を演じたドラマ。詩をつづるバスの運転手の日常を映し出す。共演は『彼女が消えた浜辺』などのゴルシフテ・ファラハニや、ジャームッシュ監督作『ミステリー・トレイン』にも出演した『光』などの永瀬正敏ら。アメリカの詩人ロン・パジェットによる詩の数々が、作品に趣を与えている。(シネマトゥディより引用)

感想

気になってウィキペディアジム・ジャームッシュ監督の過去作を調べてみたんですが、僕、多分どの作品も観てない(もしくは観たけど記憶にない)と思うので、本作がジム・ジャームッシュ初体験なのかも。

本作をざっくり一言で言えば「『ある男の視点』で描いた物語」なのではないかと。
これネタバレになるかもですが、本作は基本何も起こりません。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ちょっと変わった奥さん(ゴルシフテ・ファラハニ)だけど二人はラブラブなのです。

ニュージャージー州パターソンでバスの運転手をしているパターソン(アダム・ドライバー)の代わり映えのしない一週間を“彼の視点”で描いた映画なんですね。

朝起きて→仕事に行って→奥さんとの夕食後→犬の散歩の途中で行きつけのバーでビールを一杯飲んで→寝る。

そんなパターソンのルーティーンのような代わり映えしない毎日に彩りを添えるのが、彼が趣味で書いている「詩」なのです。

彼が詩を書く時のイマジネーションとなるのが、毎日の中で出会った人や、馴染みの仲間や奥さんとの会話、仕事中に聴こえてくる乗客同士の会話など。
それらを一遍の詩に落とし込むことで、何てことない田舎町の景色や彼の平凡な日常が、キラキラした世界に見えてくるんですねー。

ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ

本作はニュージャージー州で町医者で詩人のウィリアム・カーロス・ウィリアムズや、ニューヨーク派の詩人ロン・パジェットへのオマージュになっているそうです。

特にウィリアム・カーロス・ウィリアムズはパターソンの町全体を擬人化し、様々な形態の詩をまとめた一冊が、全体で一つの詩になっている「パターソン」が代表作で、本作は彼の詩集「パターソン」にイマジネーションを得て作られているんですね。

西洋の詩(や小説などの文章全般?)は、文章で韻を踏むのが基本だそうで、例えば一節の文章の次の一節の頭・中間・おしりのどこかに同じ母音の言葉を使って言葉にリズムを作っていくラップ的な感じらしいんですが、本作ではその形式を踏襲していて、月曜から次の月曜までを曜日ごとに分けて、それぞれの曜日で映像的な韻を踏んだりしているんですね。

同じように見えて少しづつ違う毎日

上記のように、主役のパターソンの毎日はルーティーン的です。
しかし、例えば起きる時間が少しづつ違うとか、同じベットで眠る奥さんが下着?姿だったり裸だったり、パターソンの通勤路を毎日撮影の角度を毎回変えていたり、やたら意味ありげにちょいちょい双子が登場したり。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 何か意味ありげに登場する双子

まったく同じように見えて、曜日ごとに少しづつ違うということを映像で説明しているんですね。

劇中、何度か大きな変化はあるものの、その出来ごとで平凡だった毎日が壊れるみたいな展開はなく、変化はあくまでパターソンの心の中で起こり、彼の詩の題材になっていくわけです。

しかし、登場人物がすぐ鉄砲で撃ち合ったり、大麻やコカインでラリったり、カンフーで戦ったり、地球が破壊されかけたり侵略されかけたりするような映画ばかり見ている自他ともに認めるボンクラ映画ファンの僕ですからね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /愛犬マーヴィン役のネリー(♀)は“パルムドッグ賞”を受賞

劇中で何か事が起こるたびに主演のアダム・ドライバーが「テロリストにバスに爆弾が仕掛けられたんじゃないか」とか「ワンコを殺したギャングを殺し屋スキルを発揮して皆殺しにするのでは」とか「雪に閉ざされたホテルで奥さんを追い回すのでは」とか「キレて、十字ライトサーベルで部屋を壊しまくるんじゃないか」と思ってヒヤヒヤしてしまいましたw

もちろんそんな事は起こりませんでしたけどねw

永瀬正敏も出演

物語後半、ある事件が起きて大切なものを失ってしまったパターソン。
彼がいつも昼食を食べながら詩を書いているグレートフォールズの前で落ち込んでいると、ある日本人の詩人が話しかけてくるんですが、その日本人を演じているのがジム・ジャームッシュ監督の「ミステリー・トレイン」にも出演している永瀬正敏です。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 永瀬正敏も出演しますよ A-HA?

僕はほとんど事前情報を入れずに本作を観たので、彼がイキナリ登場してビックリしましたよ。

この日本人との会話と“あるプレゼント”が、どん底のパターソンの心に灯りを灯す事になるんですね。

 

そんな感じで、ビックリするくらい何も起こらない作品なんですが、全然退屈せずに最後まで観られて、なおかつ観終わったあとに心が温まる気持ちにさせてくれる良作でしたし、視点一つで世界の見え方はこんなにも美しいと教えられましたねー。

興味のある方は是非!! A-HA?

 

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映画レビューランキング

 

ジャック・タチが残した脚本をシルヴァン・ショメ監督がアニメ化「イリュージョニスト」(2011)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ベルヴィル・ランデブー」のシルヴァン・ショメ監督2010年の作品イリュージョニストですよー!

「ベルヴィル~」とは真逆の、切なくも美しい作品でしたねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『ぼくの伯父さん』シリーズで名をはせたジャック・タチが娘のために書いた幻の脚本を基に、長編デビュー作『ベルヴィル・ランデブー』で独特のセンスを発揮したシルヴァン・ショメが映画化したアニメーション。昔ながらの手品を披露する老人が純粋な少女と出会い、言葉が通じないながらも心を通わせる姿を温かく描く。1950年代のスコットランドを映像化したノスタルジックな情景が美しく、不器用な老手品師の姿やシーンの中にタチへのオマージュがささげられている。(シネマトゥディより引用)

感想

先日、このブログでも感想を書いた同監督の「ベルヴィル・ランデブー」がツボだったので、TSUTAYAでレンタルしてきました。

印象としては、デフォルメやダイナミズムを活かした「ベルヴィル~」とは真逆の、リアリティーに振った作品で、叙情的で切ない物語でしたねー。

 

フランスの喜劇王ジャック・タチが残した脚本をアニメ化

本作の脚本を執筆したのはフランスの喜劇俳優・監督で「ぼくの伯父さん」で第31回アカデミー賞外国語映画賞を受賞したジャック・タチが生前に書いた未映像化脚本を、シルヴァン・ショメが脚色・監督したアニメ作品です。

本作の主人公、手品師のタチシェフはジャック・タチ自身の姿をモデルにしていて、アニメーターはタチの映画を参考に主人公の老手品師の立ち姿や動きを作り上げたんだそうですよ。

ストーリー

映画は1950年代のパリからスタート。
ロックンロールやTVが台頭し、人気が凋落した初老の手品師タチシェフは場末の劇場を回り時代遅れの手品を披露して口糊を凌ぐ日々。
そして、たどり着いたスコットランドの離島で出会った貧しい少女アリスに、新品の靴をプレゼントした事でアリスはタチシェフを魔法使いと信じ込み、島を離れる彼についてきて二人はエジンバラで暮らし始めるのだが……。という物語。

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画像出典元URL:http://eiga.com

第2次大戦で軍役に入る以前、タチは舞台で作家コレットからも熱烈な讃辞を贈られるほどの人気を博した寄席芸人で、本作はそんな彼の自伝的な挿話をベースに書かれた物語なのだとか。

本作には、時代の波に押されて居場所を失う芸人たちの姿が、タチシェフとアリスの物語と共に描かれます。

大都会パリやロンドンではロックバンドが大人気で、出番を奪われるタチシェフですが、娯楽の少ないスコットランドの離島では歓迎され、彼の手品はバーの客たちに大いにウケます。
しかし、タチシェフの出番が終わると、彼が演じていた場所にジュークボックスが引っ張り出され、人々がロックを楽しむというギャグシーンがあり、近い未来に彼の「居場所」がどこにもなくなる事が示唆されるんですね。

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ジャック・タチ主演作

実は、本作の主人公の“タチシェフ”という名前は、ジャック・タチの本名なんだそうです。さらに、タチシェフの私服は「ぼくの伯父さん」シリーズでタチが演じるユロ氏と一緒だし、立ち姿や動きもタチの動きをほぼ完コピしています。

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つまり、シルヴァン・ショメ監督は本作を単なるジャック・タチのオマージュではなく、ジャック・タチ最新作としてアニメーションで作り上げたのです。

だから本作では「ベルヴィル~」のようなキャラクターのデフォルメやカメラワークなどアニメ的なケレンは極力抑えて、背景美術も含め実写映画的でリアルな作りにしています。
日本のアニメや米国の3Dアニメに慣れている僕なんかは、固定カメラで引きの絵が多い本作のカメラワークに最初は違和感を感じましたが、これもジャック・タチ映画の手法らしいんですね。

また、時代遅れの男の物語を、3Dではなく味わいのある2Dアニメで制作している(作画労力を減らすため3DCGを使っている部分もあるけど)のも、気が利いてるなーと思いました。

劇中タチシェフが入った映画館で、スクリーンのユロ氏と目が合うなんてメタ的なシーンもあったりして、全体的にショメ監督のジャック・タチに対する愛情が溢れてるんですよねー。

なぜ「イリュージョニスト」なのか

で、ふと疑問に思ったのは本作のタイトルは、なぜ「マジシャン」ではなくて「イリュージョニスト」なのか。

個人的に、マジシャンはトランプやコインを使ったテーブルマジックをする人で、イリュージョニストは人体消失などの大仕掛けのマジックをする人というイメージがあるんですね。

本作のタチシェフは明らかに前者なので「イリュージョニスト」というタイトルに違和感を感じてしまったんですね。

で、ネットである人のレビューで「マジック=魔法」「イリュージョン=錯覚・幻想」のような意味があり、本作でタチシェフがアリスに見せたのはマジックではなくイリュージョンだったのではないかというような事が書かれていて、「なるほど確かに!」と納得しました。

本作のメインはタチシェフとアリスの擬似親子関係の物語で、タチシェフはアリスに故郷に残してきた娘の姿を重ね、アリスはタチシェフに父親の姿を見ていたんだと思うんですね。

タチシェフがアリスを受け入れて望みを叶えようとするのは、実の娘に対しての贖罪でもあるし、二人は互いに家族の幻影を見ていたとも言えるのかもしれません。

同時に二人の出会いから別れまでの物語は、劇中に登場する時代遅れの芸人がそっと消えていく姿ともリンクしていて、トータルで時代の移り変わりという本作全体の流れを、多層構造的に描いているんですね。

「ベルヴィル~」とは違ってぱっと見地味な作品だし、(僕も含めて)ジャック・タチを知らない人にはピンと来ない部分もあると思いますが、苦いラストシーンも含め、観終わったあとにじんわりと心に染みる良作でしたねー。

興味のある方は是非!!

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com