今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

原作のダイジェスト版っぽい?「いぬやしき」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アニメ化もされた奥浩哉の同名マンガの実写映画化『いぬやしき』ですよー!
先に書いておくと、僕は原作もアニメも観ていなくて、この映画で初めて「いぬやしき」を観たので、もし先に原作かアニメを観ていれば印象は違ったかもしれません。

あと、出来るだけ結末などには触れないように書くつもりですが、ある程度、後半部分の展開にも触れていくので、これからこの映画を観る予定の人や、ネタバレは嫌って人は、先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

https://eiga.k-img.com/images/movie/86161/photo/97410b6866a1429c.jpg?1518567757

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

映画にもなった「GANTZ」などで知られる奥浩哉の人気漫画を、『GANTZ』シリーズなどの佐藤信介監督が実写映画化。突然の事故をきっかけに、超人的な能力を得た初老のサラリーマンと高校生が、それぞれの目的で強大な力を行使するさまを描く。自分の力を人助けのために生かす主人公を木梨憲武、同じ能力を手に入れるも悪用する大量殺人鬼を、『るろうに剣心』シリーズなどの佐藤健が熱演。本郷奏多二階堂ふみ伊勢谷友介らが脇を固める。(シネマトゥデイより引用)

感想

本作の監督は、同じ奥浩哉の大ヒットマンガ「GANTZ」の実写版も務めた佐藤信介。
GANTZ」の感想でも書きましたけど、アクションやCG描写には力を入れる割に、ストーリーテリングやキャラの描写には、興味がないのかなーっていう印象です。(脚本は別の人なので、そちらに問題があるのかもしれませんけども)

では、本作はというと(読んでないけど)原作マンガのダイジェスト版っぽいなーっていう印象でしたねー。

全10巻の原作を、約2時間にまとめるんだから致し方ないのかもですが、キャラや関係性の描写が足りないので、彼ら(というか主に獅子神)の行動原理が飲み込みずらいし、感情移入も出来ないんですよね。

ざっくりストーリー紹介

うだつが上がらないサラリーマン犬屋敷壱郎 (木梨憲武)は、念願のマイホームを購入したものの、会社や家族から蔑まれ、おまけに末期ガンであることが発覚。

途方にくれて夜の公園でしょぼくれていると、近くのベンチで座っていた獅子神皓 (佐藤健)と共に謎の爆発に巻き込まれ、宇宙人のテクノロジーで兵器ユニットを搭載した機械人間になってしまう。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86161/photo/eab01566b9555198/640.jpg?1520307598

画像出典元URL:http://eiga.com

犬屋敷はその能力で、医者に見放された病人の命を救うことに生き甲斐を見出すが、獅子神は人類に絶望し抹殺する道を選択。やがて相容れない両者の死闘が始まる。

という物語。

序盤は延々と犬屋敷のしょぼくれた日常が続き、機械人間になってからは獅子神の人生の歯車が狂っていく様子を描き、クライマックスでは同じ力を持ちながら相容れない二人の決戦を描いていく構成になっているんですね。

ダイジェスト版っぽい

ただ、観ていると「あー、これ多分(原作を)かなり端折てるんだろうなー」ってのが、原作を知らない僕でも分かるくらいキャラ(特に獅子神)の描写が足りてなくて、なので犬屋敷以外のキャラにまったく感情移入が出来ないんですよね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86161/photo/19ea14d152284f97/640.jpg?1520307655

画像出典元URL:http://eiga.com

例えば犬屋敷の家族は、ただただ嫌な部分だけが強調されて、犬屋敷が何故この家族をそこまで大事にするのかって思うし、獅子神が最初に起こす(後に彼自身が追い詰められるキッカケになる)ある事件も、「え、なんで?」って、あまりに唐突に感じてしまうので、後に起こる悲劇に対しての獅子神の怒りに対しても「いや、全部お前の自業自得だし、ただの八つ当たりじゃん」としか思えないわけです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86161/photo/80c0dc961f74fd4a/640.jpg?1520307611

画像出典元URL:http://eiga.com

ウィキペディアを読むと、獅子神が最初の事件を起こすに至るまでを、段階的に描いているようだし、後半では犬屋敷の家族の再生も描かれているらしいんですが、そこを端折っているので、気は弱いけど善人な犬屋敷と、心に闇を抱える少年 獅子神という、記号的なキャラクターになっているんですよね。

獅子神の親友でいじめられっ子のチョッコーも、犬屋敷をナビゲートするだけの便利キャラぽくなってるし、犬屋敷の息子がカツアゲされてる問題なんか、最後まで放置したままですしね。

アクションシーンについて

で、二人が対決するアクションシーン。
「ハリウッドに比べてCGがショボイ」とか、そういうのは正直どうでもいいんですよ。っていうか、今やCG技術も上がってきてある程度の水準は担保されてますからね。

実際、劇中でも犬屋敷と獅子神の空中でのチェイスなんかは見ごたえがあったし、体のアチコチが開いて武器が出てくるシーンも、個人的にはちょっと上がりました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86161/photo/649f18f7998f6573/640.jpg?1520307609

画像出典元URL:http://eiga.com

ただ、基本的にどういう機能がついてるのかの説明がなくて(セリフで、じゃなく自分で機能を発見していく描写を入れるとか)、なので例えば、単純に物理攻撃だと思ってた指鉄砲が、ネットワークを通してモニター越しの人間を打ち抜くシーンとか「え、どういうこと?」と困惑したし、「それが出来たら、もう何でもアリじゃん」と、鼻白むというか。

あと、クライマックスで犬屋敷が必死で瀕死の娘を救うシーンを2回やるとか、構成的にも上手くないし、タイムリミットサスペンスもまったく機能していない。

そもそも二人にどういう能力(機能)があって、どういう弱点があるのかっていうルールがぼんやりしてて最後の決着もロジックがないので、同じ機能のハズなのにどうしてそうなったか分からないんですよね。(多分こういう事だろうなーってのは何となく分かるけどさ)

っていうか、その前のシーンで死んだと思った獅子神がしれっと復活したので、あれ? こいつ自己修復機能がついてるの? って思って混乱しましたよ。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86161/photo/f6b85e47dbdae2b2/640.jpg?1520307596

画像出典元URL:http://eiga.com

なので結局、どっかで見たようなテンプレの上っ面をただ真似てるだけに見えちゃうのです。

テンプレといえば、獅子神による大量虐殺の引き金になるネット民が引きこもりのデブだったり、サイトも書き込みの言葉使いもあからさまに2ちゃんなのが、(原作通りなのかもですが)まだそれやってるの? って感じでしたねー。

君塚良一かよ! っていう。

むしろ今はTwitterとかフェイスブックなどのSNSや、YouTubeみたいな動画投稿系サイトの方が主流なんじゃないかなーって思ったりしましたねー。

ちなみに、一部で酷評されてる木梨憲武の演技は、個人的に言うほど悪くないって思いました。
演技自体はそんなに上手くないのかもだけど、木梨さんが長年芸能界で培ってきた年輪の重みが犬屋敷に乗っかっていて、説得力のある存在感を出していたように思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

ほぼ完璧な三部作完結編「ちはやふるー結びー」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、実写版「ちはやふる」三部作完結編『ちはやふるー結びー』ですよー!

素晴らしいアイドル映画であり、ほぼ完璧と言っていいシリーズ完結編だと思いましたねー!!

で、今回の感想は、出来るだけネタバレしないように気をつけてはいますが、わりと内容の確信部分に触れてるところもあるので、これから本作を観る予定の人、ネタバレは嫌! という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

https://eiga.k-img.com/images/movie/86988/photo/92f21e0325db9ab8.jpg?1513563548

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

末次由紀のヒットコミックを原作にした青春ドラマの続編。全国大会での激闘から2年後を舞台にして、競技かるたに打ち込む高校生たちのさらなる戦いを活写する。監督の小泉徳宏広瀬すず野村周平新田真剣佑上白石萌音矢本悠馬森永悠希ら前作のスタッフ、キャストが結集。新たなキャストとして、NHK連続テレビ小説あまちゃん」などの優希美青、『くちびるに歌を』などの佐野勇斗、『森山中教習所』などの賀来賢人らが参加する。(シネマトゥディより引用)

感想

まず、「ちはやふる」を知らない人にざっくりとどんな物語かを説明すると、かるたバカの残念美少女 千早広瀬すず)、かるたの天才 新田真剣佑)、二人の幼馴染で才能の差に苦しみながら片思いしている“千早のため”に部長として かるた部を引っ張っていく 太一野村周平)三人の恋の行方と、競技かるたに青春をぶつける高校生たちを描いた大ヒット少女マンガ「ちはやふる」の実写映画です。

第一作となる「~上の句」では、高校で再開した千早と太一が仲間を集めて競技かるた部を作り、全国大会団体戦で優勝するまでを。

続編の「~下の句」では、個人戦に焦点を当て、最年少クイーンの若宮詩暢(松岡茉優)と千早との対戦をクライマックスに、千早、新田の2人が抱える悩みや苦悩を乗り越えていく姿を描いているんですねー。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86988/photo/8090669a31a92a55/640.jpg?1516680274

画像出典元URL:http://eiga.com / 出番は少なかったものの、それぞれにちゃんと見せ場があってよかった。

そして、本作「~結び」はそれから2年後の高校生競技かるた大会を舞台に、高校3年生になった千早や新、そして太一の、青春の終わりと3人の恋の行方にも(一応の)決着をつけるシリーズ完結編なんですねー。

青春映画でありアイドル映画でもある

本シリーズは、競技かるたに情熱をかける若者たちの青春映画であり、同時に広瀬すずを始めとした10代・20代、つまり劇中のキャラとほぼ同世代の若手俳優たちの「今」を切り取るアイドル映画でもあります。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86988/photo/66abd8265a276644/640.jpg?1516680323

画像出典元URL:http://eiga.com / 1年生二人を加えて7人になった瑞沢高校かるた部

上の句・下の句が一気に撮影、ひと月の間をあけて順次公開されてから2年、完結編となる本作が制作・公開されていて、この2年間での劇中のキャラと俳優たちの成長がリンクしているんですね。

劇中ではクイーン戦準決勝で敗れた千早が、クイーンの詩暢と中学3年生の我妻の対戦と、千早・太一・新の師匠である原田先生(國村隼)と、4連覇中の名人周防(賀来賢人)の名人戦勝戦のシーンからスタート。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86988/photo/a69b4e47e75c3adb/640.jpg?1516680280

画像出典元URL:http://eiga.com / コメディーリリーフ的なシーンも多かったけど、決めるところはビシっと決める松岡茉優

この冒頭のシーンで、原作の名人・クイーン戦の件を10分ほどサクッと終わらせ、上の句と同じように高校最後の団体戦を物語の中心に絞ると同時に、クイーン・準クイーンの戦いとネット中継の解説で、人物紹介や競技かるたなど、本作に関する基本的な情報を説明しているんですよ。

この辺の手際の良さは素晴らしいと思ったし、同時に、前作・前々作同様、競技かるたの激しさや迫力、動きの美しさをスローモーションを交えながら伝えているのも良かったですねー。

説明ゼリフの上手さ

その後、千早たちが新入生の部活説明会で新1年生に説明するという体で、観客に対して競技かるたのルールを説明し、古典が大好きな奏(上白石萌音)が物語のキーとなる和歌の内容を解説させるなど、観客が説明ゼリフを説明くさく感じさせないよう、物語に織り込んでいく脚本の上手さを感じました。

逆に、それぞれのキャラクターの心情を表すシーンではセリフを極力排して、映像や構図、カットで、観客に「レンズの外」を想像させる演出をしているんですよね。

例えば、太一に一目惚れしてかるた部に入った花野薫(優希美青)が、女子更衣室で盗み聞きした千早と奏の話を太一に告げ口するシーンでは、太一の顔は一切撮さず背中だけを見せることで、太一の表情を観客に想像させるとか。

セリフに頼らない映画的演出と、説明セリフを違和感なく伝える演出のバランスが、ほんとよく考えられていると関心しました。
前2作でも同じことはやってるけど、本作の脚本と演出のクオリティーは桁違いだと思いましたねー。

和歌の意味が物語のキーになる

上の句・下の句では、どちらかといえば和歌の意味よりも競技としての「かるた」に重心が置かれていた本シリーズ。
しかし、本作では、かるたに書かれた和歌の内容が物語の重要なキーになってきます。

それが、

『ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば
   ただ有明の 月ぞ残れる』

『しのぶれど 色に出でにけり わが恋は
     ものや思ふと 人の問ふまで』

『恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
    人知れずこそ 思ひそめしか』

という、3枚のかるたに書かれた和歌です。

『ほととぎす~』は、色々あって太一が退部したあと、千早が部室の畳の隙間から見つける札で、ほととぎすの鳴き声が聞こえたような気がして振り向いたら、まだ明け方の月が残っていた。という内容。

『しのぶれど~』は、心に秘めた恋心を隠してたつもりが、「恋してるの?」と人に聞かれちゃうくらい、顔や表情に出ていたらしい。という意味で、

『恋すてふ~』は、秘密にしてた恋がバレて噂になっちゃった。という意味らしいです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86988/photo/62f39face02f0cea/640.jpg?1516680269

画像出典元URL:http://eiga.com / 仲間とかるた部を組んで、大会に出場する新

「しのぶれど〜」が太一、「恋すてふ〜」が新の状況をそれぞれ表しているんですが、クライマックスの団体決勝戦、新が率いる福井の藤岡東高校と太一たち都立瑞沢高校の対戦のクライマックスで、この2枚の札は大事な意味を持っているんですね。

しかも、この2枚の札の件では勝敗を左右するロジックだけでなく、新と太一の現状や、千早と詩暢の未来への予感などなど、何重ものメタ的な意味も内包しているのです。

前作から引き続き、青春をかけた競技かるたへの熱量はそのままに、かるたに書かれた和歌の意味を物語に深く絡ませることで、千年前の和歌と現代の若者たちのを“繋ぐ”ことに成功しているのではないかと思ったりしましたねー。

果たして3人の恋の行方は

ネットで「新・太一・千早の恋の決着が曖昧なまま終わった」事が不満だったというレビューをいくつか見かけました。

まぁ、確かに「え?」という感じではあったんですが、個人的には、三人の恋の決着は観客にそれとなく予感させるように、劇中でちゃんと描かれていると思うんですよね。

あえて劇中で白黒ハッキリつけずに、劇中でヒントを見せながら未来を予感させるのもまた、かるたや和歌の世界観とリンクしてる美しい終わり方で、もう最高かよ! って思いました!

本作は、遡って「上の句」「下の句」を再評価してしまうほど三部作完結編としてほぼ完璧で見事な青春映画だし、同時に約2年間に渡る出演俳優たちの成長を切り取ったアイドル映画としても、もちろんマンガ原作の実写作品としても、っていうか近年の邦画の中でも1・2を争う大・傑・作だったと思いますよー!!

興味のある方は是非!!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

これは兎たちのアポカリプトだ!「ピーターラビット」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、イギリス生まれの大人気キャラクターが活躍する映画『ピーターラビット』ですよー!

予告編で観たり、噂には聞いてましたけど、思いのほか殺伐とした世界観でしたねーw

https://eiga.k-img.com/images/movie/87899/photo/15d6fab72aeef5d0.jpg?1520209503

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

世界中で親しまれているビアトリクス・ポターの人気絵本を実写映画化。イギリスの湖水地方を舞台に、いたずら好きなうさぎの日常や恋のエピソードを、実写とCGアニメーションを織り交ぜて描く。ドラマシリーズ「ダメージ」などのローズ・バーン、『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』などのドーナル・グリーソンらが出演するほか、声の出演にジェームズ・コーデン、マーゴット・ロビーデイジー・リドリーら。『ANNIE/アニー』などのウィル・グラックがメガホンを取った。(シネマトゥディより引用)

感想

僕はビアトリクス・ポター原作絵本を読んだことはないんですが、ピーターラビットはもちろん知っていて、なので実写映画化されると聞いたときは、「きっと優しくて可愛らしい映画なのだろう」と思ってたんですね。

しかし、ネットで予告編を観たら予想とは随分違っていて、さらにネット上での評価も賛否が分かれていたので、これは自分の目で確かめなければ! と思い、今回レンタルで観てみましたよ。

思いのほか殺伐とした描写にビックリ

冒頭、雀のミュージカルから始まる本作。

https://eiga.k-img.com/images/movie/87899/photo/2b054882b8f83573/640.jpg?1520828173

画像出典元URL:http://eiga.com

イギリスで最も美しい風景と称えられる、湖水地方の自然豊かな風景をカラフルな映像で捉え、その中をピーターや妹たちや従兄弟、他の動物たちが楽しそうに駆け回るシーンは、まさに頭の中に描いていた「ピーターラビット」の世界そのままでした。
が、父親をパイにして食べてしまったピーターの宿敵、農夫のマグレガー爺さんが心臓麻痺でポックリ逝ったのを皮切りに、遺産相続のためロンドンからやってきた又甥のトーマスは、捕まえたピーターの従兄弟ベンジャミンを麻袋に入れて川に沈めようとするし、トラバサミのような罠をアチコチに配置、さらに門扉が頑丈なものに付け替え、挙句、害獣よけの電気柵や害獣を吹っ飛ばす爆薬まで……。と、
完全に殺る気満々

対するピーターたちも、トーマスの仕掛けた罠を逆利用したり、アレルギーのあるトーマスの口にブラックベリーを放り込み、アナフィラキシーショックを起こさせたりと、まさに生きるか死ぬかのサバイバルバトルが繰り広げられるんですよね。

クライマックスに至っては、スピルバーグの戦争映画「プライベートライアン」を参考にしたと言うんだから驚きです。“あの”プライベートライアン」ですよ!?

改良か、それとも改悪か 

この改変っぷりに、原作ファンの人たちを中心に本作はかなり批判されたそうですが、「そりゃぁそうだよなー」と思う一方で、マクレイガー爺さんは、元々ピーターたちの土地だった場所を占拠したうえにピーターの父親をパイにして食べてしまったわけだし、又甥のトーマスも、家の敷地にピーターたちが入れないようにするばかりか、侵入したピーターやベンジャミンを容赦なく殺そうとしてるわけで、ピーター目線で見れば、弱者である自分たちが理不尽に立ち向かい土地を取り戻そうとするのは、ある意味で当然の行動と言えなくもないわけですよ。

https://eiga.k-img.com/images/movie/87899/photo/2b01c69e78bbcb8a/640.jpg?1520209505

画像出典元URL:http://eiga.com

むしろピーターの行動に引いてしまうのは、可愛いピーターラビットが人間を殺そうとするなんて! というショックの方が大きいんじゃないかと思うし、それは、ある意味で人間の傲慢なのではと思ったり?
見た目は可愛いうさぎでも、ピーターは野生で人間と対等な存在なわけですからね。

そういう意味では、一見改悪に見える本作のピーターの行動は原作者ビアトリクス・ポターの精神に沿っていると言えなくもない…かもしれない? とか思ったり。

あと、ピーターたちがラップを歌ったり、映画自体がスラップスティックコメディーになるのは、100年以上昔の物語を現代にアップデートするっていう意味では致し方ないんじゃないかと思いますしね。

微妙な部分も

ただ、本作がピーターラビットの映画化として成功しているかというと、微妙な部分も。

例えば、本作でピーターを始め動物たちの多くは上着を着ていますが、そのことについて人間たちはごくごく当たり前に受け入れてるし、後半ではトーマスはピーターと普通に会話し始めるんですが、本作のヒロインであり、トーマスとピーターの争いを激化させる要因となるビアとは、ピーターは言葉を話さないんですよね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/87899/photo/0838e9c39565ff8e/640.jpg?1520209509

画像出典元URL:http://eiga.com

ちなみに、ピーター側は(多少認識の齟齬はあるけど)人間の言葉を理解しているようで、ということはピーターたちが話す人間を選んでいるのか、それとも人によって言葉が通じたり通じなかったりするのかが、よく分からなくて、その辺の(映画内)リアリティーのルールが明確にされていないのが、引っかかってしまうんですよね。

あと、本作で重要なキャラクターであるはずの、ビアの描き方はハッキリ上手くないって思いました。

https://eiga.k-img.com/images/movie/87899/photo/4d74feeb6759c1eb/640.jpg?1520209507

画像出典元URL:http://eiga.com

原作の設定や世界観を活かしつつ上手く現代風にアップデートすることに成功した作品としては、同じイギリス発の児童文学が原作の「パディントン」がありますが、対する本作は原作のエピソードを入れ込んでファンへの目配せはしているようですけど、アップデートという意味では上手くいってない部分が多いと思いましたねー。

とはいえ、ピーターや動物たちは総じて可愛いし、スラップスティックコメディーとしても楽しい映画でしたよー!

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

ただのコメディーかと思ったら「ゲーム・ナイト」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アメリカのコメディー映画『ゲーム・ナイト』ですよー!

本作は「サボテン・ブラザース」的な勘違いコメディーなんですが、ただ笑わせるだけではなくて、謎解きやアクション、サスペンスなどなど、色々な要素がてんこ盛りの超面白い映画でしたねー!

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/91fJM-apCZL._SL1500_.jpg

画像出典元URL:http://amazon.co.jp

概要

モンスター上司」の監督、「スパイダーマン:ホームカミング」の原案・脚本を務めた ジョン・フランシス・デイリー、ジョナサン・ゴールドスタインコンビによる、「ゲームだと思ったら本当の犯罪に巻き込まれちゃった」系コメディー映画。
ジェイソン・ベイトマン(マックス役)とレイチェル・マクアダムス(アニー役)がゲーム好きの夫婦を演じ、マックスの兄ブルックス役はカイル・チャンドラーが勤める。

感想

ざっくりストーリー紹介

ゲーム大会参加が縁で結婚したマックスとアニーは、週末になると仲間たちとゲームに興じる生粋のゲームマニア夫婦。
しかし、二人は中々子供ができないことに悩み、医師によればマックスのストレスによる精子不活性が原因ではないかとのこと。
その原因は、投資家でお金持ちな兄ブルックスへのコンプレックスや、子供ができることで生活が変わってしまう事への不安だった。

そんなある日、久しぶりに地元に戻ってきたブルックスの家での推理ゲームに招待されたマックス夫妻とその仲間たち。

突然、家に押し入ってきた暴漢二人に連れ去られたブルックスを見送りながら、「リアルな演出」と関心していたメンバーだったが……。

というストーリー。

よく分からないけど、アメリカでは週末に仲間を家に呼んでのゲームをするのが、わりとポピュラーなんですかね?

週末に友達の家でゲーム大会なんてまるで中学生男子みたいですが、この場合のゲームはテレビゲームではなくて、例えばジェスチャー当てとか、ヒントを出してお題を当てるとか、アナログなパーティーゲームなんですよね。

で、マックスの嫌味な兄貴ブルックスが、嫌味たっぷりに高級な自宅で商品付きの推理ゲームを主催。

「参加者の中の誰かが誘拐される」なんて説明してると、ドアをぶち破って二人組が侵入し、兄貴を連れ去ってしまうんですね。

それを合図にゲームを開始するメンバーたちですが、どうやらゲームではなくマジ誘拐だったことや、ブルックスの正体も分かっくるという、まぁ、よくある勘違いコメディー展開になっていくわけです。

で、「あーはいはい、こういうヤツねー」なんて観ていると、そこからさらにもう一捻りふた捻りあってビックリさせられるんですよねー!

しかも、そんなストーリーの合間合間に、登場キャラクターの性格や関係性や笑いもしっかり入れ込んで、アクションもあり、感動もあり、アメコメっぽい有名人ネタや映画ネタもあり、後半ではどんでん返しに次ぐどんでん返しもありという、こうして書いてるだけでお腹いっぱいになりそうな要素盛り沢山映画なのです。

キャラクターの魅力

そんな本作はキャラクターたちも魅力的。

マックス役のジェイソン・ベイトマンは、シリアスからコメディーまで幅広く活躍する俳優で、近年だと「ズートピア」でニックの声も演じた実力派。

奥さんのアニーを演じるレイチェル・マクアダムスは「スポットライト 世紀のスクープ」でアカデミー助演女優賞にノミネートされた実力派ながら、本作での美人でキュートな奥さんをノリノリで演じていて「お前、こんなカワイイ嫁さん貰った時点で勝ち組だろ! (´・ω・)つ)3゚)∵」と、ウジウジしてるマックスを殴りつける勢いですよ!

マックスの兄貴ブルックスは、幼少期からマックスにコンプレックスを植え付けてるいけすかない兄貴なんですが、実は……というキャラで、演じているカイル・チャンドラーは、名前は分からなくても、洋画好きの人なら彼の顔を見れば「あーこの人ね」って分かるんじゃないでしょうか。

そんな二人のゲーム仲間は、ずっと奥さんの浮気を疑ってるケヴィンとミシェルの黒人夫婦。そのミシェルの浮気相手というのがまさかの!? っていうw

そして、筋肉バカのライアンと、ライアンがゲームに勝つためにスカウトしてきた少しとうが立ってるけどインテリ美女のサラ。

あと、奥さんと別れてから仲間はずれにされている、ちょっと不気味な警官のゲイリーと、それぞれキャラが立っていて、みんな何か憎めないんですよねw
物語の進展に合わせて、それぞれの関係が少しづつ変わっていくのもいいんですよね。

映像

冒頭や中版で、マックスの家周辺をミニチュアぽく見えるように撮影したり、カーチェイスはまるでレーシングゲームのような感じで撮影したりと、違和感を感じる演出なんですが、これ自体が映画全体の伏線になっていて、それはEDまで観ていると「あ! そういうことだったのか!」って分かる仕掛けになってたりします。

それ自体は別に上手い仕掛けではないし、下手にやるといやらしい感じになってしまいがちですが、本作の場合はビックリさせるというより、最後のオマケ的な感じで使っているのでイヤミな感じはしませんでした。

っていうか、全体的に特別目新しい仕掛けはないんですが、情報を整理するのが上手くて、観ている間ストレスを感じる部分がなかったのが一番素晴らしいって思いました。

有名人や映画ネタは分からない部分もあるけど、それ自体はただのジョークなので分からなくても問題ないですしね。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

僕が求めているバットマンとは違うけど「ニンジャバットマン」(2018)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは初? の日本製バットマンとして話題になった『ニンジャバットマン』ですよー!

何ていうか、心底やりたい放題って感じで、アメコミヒーローを使ったジャパニメーションでしたねーw

で、この作品は多分、ネタバレしても面白さは1mmも減らないタイプのイベント映画だと思うので、今回はネタバレを気にせずに感想を書きたいと思います。

なので「ネタバレは嫌!」って人は、映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

https://eiga.k-img.com/images/movie/88226/photo/6a361322ef44e1a8.jpg?1521167700

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

アメリカの人気ヒーローたちと悪党のバトルを活写するSFアクションアニメ。戦国時代の日本を舞台に、現代から迷い込んだバットマンたちとジョーカーたちが死闘を繰り広げる。監督はテレビアニメ「ジョジョの奇妙な冒険」のオープニングを手掛けた水崎淳平バットマンの声をベテランの山寺宏一が担当し、歴史を塗り替えようとする悪党を高木渉らが好演している。(シネマトゥデイより引用)

感想

DC公認!?  ジャパニメーションの文脈で描かれたバットマンストーリー

本作は、「ジョジョの奇妙な冒険」OPを手がけた水崎淳平が監督(神風動画)、「天元突破グレンラガン」の中島かずきが脚本、「アフロサムライ」の岡崎能士がキャラクターデザインを担当した純日本製「バットマンです。

しかもこの作品、DCコミック公認で、ワーナー・ブラザーズ・ジャパン制作なんですね。

ストーリーは、バットマンのキャラクターが戦闘中の事故で日本の戦国時代にタイムスリップするという内容。
ヴィラン(悪役)のジョーカーは織田信長、ペンギンは武田信玄、ポイズン・アイビーは上杉謙信、デスストローク伊達政宗トゥーフェイス直江兼続と、それぞれが武将に成り代わって国取り合戦を始めるのを、バットマンやロビンが阻止しようと奮闘するっていう、とにかく何でもアリのやりたい放題な内容なのです。

さらに、それぞれの城がトランスフォームするわ、合体するわ、忍術をマスターしたバットマンが巨大化するわっていう、まさにグレンラガン」や「キルラキル」で見せた中島かずきの世界観が全開だなーと思いましたねー。

映画版バットマンの新作というよりアニメ版バットマンの系譜

で、映画版のバットマンが好きでこの作品を観た人は、「お前誰やねん!」っていうキャラクターが結構いたんじゃないでしょうか?

https://eiga.k-img.com/images/movie/88226/photo/24cfb6dcd5e22053/640.jpg?1528937344

 

バットマン勢はバットマンキャットウーマン、アルフレッドという映画でもお馴染みのキャラクターの他に、

ナイトウィング(初代ロビン)、レッドフード(2代目ロビン)、レッドロビン(三代目ロビン)、ロビンバットマンの実子ダミアン・ウェインで、5代目ロビン)が登場。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88226/photo/b03fe4d7007c7c54/640.jpg?1526948297

 

ヴィラン勢は、お馴染みジョーカー&ハーレイ・クインジャスティスリーグ」の最後にちょこっと出てきたデスストロークティム・バートンの「バットマンリターンズ」に登場したペンギン、ダークナイト」に登場したトゥーフェイスバットマン & ロビン Mr.フリーズ」に登場したポイズン・アイビー の他に、

ゴリラ・グロッド(科学者のゴリラで、本作の発端となったタイムマシンを作った)も登場します。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88226/photo/6f63c56cb3a2afa7/640.jpg?1528937350

 

つまり、本作は映画版バットマンの系譜にある作品というより、ワーナー・ブラザース・アニメーションが制作しているOAVのアニメ版バットマンの系譜にある作品なんですよね。(キャラクターデザインもそちらに寄せている)

じゃぁ、アニメ版バットマンを観ないと内容が分からないのかといえば、そんな事はなくて、上記したようにストーリーの方は完全に独立した、いわば番外編なのでプリキュアオールスターズ」的な感覚で観てもらえば問題なく楽しめると思いますよw

僕が求めているバットマンとは違うけど

ただ、上述したように合体ロボットやら巨大化やらは、バットマンの世界観が好きという人には賛否が分かれるかもと思いました。

いや、動きは凄いし、絵もカッコイイんですよ。
ただ、個人的に僕がバットマンに求めているのはコレジャナイというか。

僕の好きなバットマンは、やっぱアメコミヒーローのバットマンなので、「グレンラガン」や「キルラキル」的な、勢いで物語を進める70年代的熱血ジャパニメーションのパロディーは求めてないんですよね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/88226/photo/4f43e0f3b11c01b9/640.jpg?1529627422

 

いかにも「OH、クレイジー…だけどクールだぜジャパン!」と海外のオタクを喜ばせようという意図が透けて見える展開は、正直乗れないっていうか。

ただ、それでも個人的にこの作品が憎めないのは、バットマンと宿敵ジョーカーの関係性はブレずにしっかり描いてるからなんですよね。

正反対のようで鏡像関係の二人の関係と、両者の決定的な違いがブレちゃうと、バットマンではなくなっちゃうので、そこが担保されてたのは良かったし、穿った観方かもですが、本作のジョーカー(の動き)は、アニメ版と映画版全てのジョーカーが合体したような雰囲気があって、クライマックスでバットマンと一騎打ちするジョーカーの動きは、おそらく「ダークナイト」のヒース・レジャー版ジョーカーを意識してるんじゃないかと思うんですよね。

www.youtube.com

それが観れただけで、個人的には満足でした。

ちなみに、手描きっぽく見えるけど、本作はCGアニメです。
けど、いかにもCGっぽく見えるシーンがあまりないのも良かったですねー。

興味のある方は是非!!

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

res-c.blog.jp

リベンジ映画化と思ったらマンハント映画だった「狼よさらば」(1974)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「うーんマンダム」である世代にお馴染みのチャールズ・ブロンソン主演作『狼よさらば』ですよー!

現在ブルース・ウィリス主演で公開中の「デス・ウィッシュ」の元ネタだと聞いたので、久しぶりに観返してみました。

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/91gS-uc08cL._SL1500_.jpg

画像出典元URL:http://amazon.co.jp

あらすじ

ニューヨークの会社員ポール。ある日、彼のもとに1本の電話が入る。それは、妻と娘が病院に運び込まれたという信じられない知らせだった。そしてポールが病院へ駆けつけた時には、妻は死亡していた。そこで、妻が何者かに襲われた挙げ句に殺され、娘も暴行されたことを聞かされたポールは憤り、悲しみに打ちひしがれる。そんな時、ひょんなことから銃を手に入れたポール。彼はその銃を密かに携え、公園で襲いかかってきたチンピラを射殺。これをきっかけに沈鬱な状態が吹っ切れ、以来、次々とチンピラたちを仕留めていくポールだが…。(allcinema ONLINE より引用)

感想

狼よさらば」は多分、小学生の時にテレビ洋画劇場で観たっきりで、てっきり奥さんを殺された男が犯人に復讐するストーリーだと思い込んでいたんですが、久しぶりに観返してみたら全然違って、チャールズ・ブロンソン、まったく復讐してなかったです。

本作をざっくり一言で説明するなら、平和主義者だった男が拳銃を手に入れて殺人鬼になるという物語なんですね。

時代背景

本作の原作「デス・ウィッシュ」(死の願望)は、1972年にブライアン・ガーフィールドが発表した小説です。

その当時のニューヨークは非常に治安が悪く、特に貧困層が多かったハーレム地区は世界一危険な街みたいな感じで言われていたんですね。
この当時、僕はまだ子供でしたがテレビなんかでも、いかにニューヨークが危険か みたいな特集をよくやってたのを覚えています。

というのも、富裕層が危険で住みにくいニューヨークから、郊外の町に移り住んだことでニューヨークの税収が落ち、警官の給料は下がり、また予算削減のため人員削減までされたせいで、警察が機能しなくなっていたんだそうです。

その後、1990年代にルドルフ・ジュリアーニ市長の改革によって、治安が回復し徐々に安全な街になったらしいんですね。

本作は、そんな最も危険だった1970年代のニューヨークが舞台になっています。

ビジランテ

ビジランテは日本語で「自警団」という意味です。
つまり、警察などの公的機関とは別に、自分たちの安全を自分たちの手で守るための組織で、西部劇を観れば分かるように、アメリカでは開拓時代からずっと、このビジランテ精神が根付いているんですよね。(アメリカが銃社会なのもそのため)

マーベルやDCのスーパーヒーローたちも、基本、全員ビジランテです。

で、本作でチャールズ・ブロンソン演じるポール・カージーは、字幕では「アマチュア刑事」と書かれてますが、英語ではハッキリ「ビジランテ」と呼ばれているんですね。

ビジランテ? いえいえマン・ハンターです

暴漢どもに奥さんを殺され、娘を嬲りもの(彼女はそのショックで精神病に)にされてしまった平和主義者のポール・カージーですが、この時点ではまだ復讐などは考えていなくて、自分の身を守るために靴下に25セント硬貨を沢山入れた武器を携帯。

金目当てに近づいてきた強盗をこれでぶん殴ります。

この時、強盗相手とはいえ暴力をふるってしまった自分に強いショックを受けたカージーですが、同時に、この時に彼の中に “ある衝動” が目覚めるんですね。

その後、出張先のアリゾナで取引先の社長から銃を貰ったカージーは、衝動が抑えられずに銃を隠し持ち、夜の街をうろうろします。

そして、人目のない場所で現れた強盗を射殺したことで、彼の中のタガが外れるんですねー。

カージーの父親はハンターで、彼自身小さな頃から銃の扱いを仕込まれていたんですが、狩猟中に父親が鹿と間違えられて射殺されてから銃を憎むようになり、朝鮮戦争でも良心的兵役拒否として医療班に従事していた平和主義者。

しかし、愛する奥さんを殺され娘を嬲りものにされた事、自警・自衛という建前と、拳銃というチカラを行使する快感によって、彼は「人を狩るマン・ハンター」として狂気に目覚めてしまうのです。

そこからカージーは、夜な夜な危険な場所に出かけては、チンピラどもを処刑して周り、彼の行為は結果的にニューヨークの犯罪率を引き下げ、市民の中には「アマチュア刑事」に習って強盗に立ち向かう者まで出る始末。

英雄のように祭り上げられた彼は、すっかり気持ちよくなって、西部劇のヒーロー気取りでマン・ハントを繰り返すようになるのです。

メッセージを180度取り違えられる

少なくとも原作者は作品を通して、チカラに取り憑かれた男=銃社会の危険性をテーマに書いていて、本作を見る限り、そのテーマや社会へのエクスキューズは踏襲しているように見えます。

しかし公開時アメリカでは「銃や私刑を賞賛する映画」として批判も多かったのだとか。

まぁ、そう言われればそう見えなくもない……っていうか主演が「荒野の七人」のチャールズ・ブロンソンですからね。そう思われても仕方ない……のかなー?

ブロンソン自身、オファーを受けて「カージーダスティン・ホフマンみたいな(優男の)俳優が演じるべき役なのでは?」とかなり悩んだそうですしね。

皮肉なことにブロンソンが危惧したとおり、彼が演じたポール・カージーは、世界中の(僕みたいな)ボンクラどもからヒーロー扱いされて大ヒット。
全5作にも及ぶ人気シリーズになってしまったんですねー。

いやー、だって最後の “カージーポーズ” を決めるブロンソンは、今見てもカッコイイもんなーww

その後に公開されたタクシードライバー」のトラビスもカージーと同じ運命を辿るんですよねー

作品のテーマが、キャラクターの魅力に食われちゃうんですよね。

途中から死んだ奥さんや娘のことはそっちのけで、チンピラ処刑にどハマりするカージーに、復讐しないんかーい!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ というモヤモヤは残るし、全体的に歪でヘンテコな映画ですけど目が離せない魅力のある映画でしたねー。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

現代のドン・キホーテは実在の人物だった!?「オレの獲物はビンラディン」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ニコラス・ケイジ主演のコメディー映画『オレの獲物はビンラディン』ですよー!

コロラド州の田舎に住む中年男が“神の啓示”を受け、9.11テロの首謀者と言われるオサマ・ビンラディンを生け捕りにするために、単身パキスタンに乗り込むというブッ飛んだ内容なんですが、コレ、実話を元にした映画で、主人公は実在の人物なんだそうですよ!

https://eiga.k-img.com/images/movie/86244/photo/46a138e44527baaf.jpg?1505371491

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

祖国を愛するあまりたった一人でオサマ・ビンラディン捕獲に挑み、2010年にパキスタン当局に拘束されたアメリカ人男性の実話に基づくコメディー。ビンラディンを捕まえよと神から啓示を受け使命感に燃える主人公を、ニコラス・ケイジが熱演する。共演は『ベッドタイム・ストーリー』などのラッセル・ブランド、ドラマシリーズ「それいけ!ゴールドバーグ家」などのウェンディ・マクレンドン=コーヴィら。『ブルーノ』などのラリー・チャールズがメガホンを取った。(シネマトゥデイ より引用)

感想

実在の人物をニコラス・ケイジが怪演

本作でニコラス・ケイジが演じる主人公 ゲイリー・フォークナーは、2010年にパキスタン当局に拘束され、全世界的に有名になった人物(らしい)です。

何故かというと、彼の目的は9.11テロの首謀者と言われるオサマ・ビンラディンを捕まえることだったからです。

といっても、ゲイリーさんは別に軍人でもCIAでもなく、コロラドの片田舎に住むただの便利屋で、2004年のある日 “神の啓示” を受けて、ビンラディンを自らの手で捕まえる事を決意。なんと7回もパキスタンに単独で乗り込んだらしいんですね。

この事件は全米でたちまち話題となり、ゲイリーさんは瞬く間に有名人に。
映画化が決まると、ニコラス・ケイジと監督のラリー・チャールズは、ラスベガスに住んでいた本人に長時間インタビューをして、彼の話をもとに映画の脚本を書いたそうです。

アカデミー賞俳優ニコラス・ケイジ、ブッ飛びオヤジを完コピ

さらにニコラス・ケイジは白髪の長髪にヒゲを伸ばし、体重を増やして、インタビュー中、高い声でマシンガンのように喋り続けていたゲイリーさんを完コピ

https://eiga.k-img.com/images/movie/86244/photo/b55fe44aeae95824/640.jpg?1506920811

画像出典元URL:http://eiga.com

その完成度の高さは、エンドロールで登場する本人を見れば一発で分かると思います。

劇場では見かけないけど、レンタル屋の棚にはいつも新作が並んでいるでお馴染みのニコラス・ケイジ主演作。
以前も書いたかもですが、個人的に彼はシリアスな役よりコメディーの方が絶対向いてるって思うんですよね。
超シリアスな役を演じていても、どこか可笑しみや愛嬌があるし、コメディーセンスも抜群。そんなニコラス・ケイジにとって、ブッ飛びオヤジが暴れまわる本作は、まさにうってつけの作品なんじゃないかと思いました。

ざっくりストーリー紹介

ゲイリー・フォークナーは、敬虔なクリスチャンであり強烈な愛国主義者。
糖尿病で腎臓を患って週2回の透析をしながら、便利屋をしているんですね。

とにかくテンションが高く、場所・相手構わず甲高い大声でずーーーーーーっと喋り続けているかなりの迷惑オヤジです。

愛国心が強すぎて、ホームセンターで他国の商品を買おうとする人に片っ端から文句をつけまくり、ビンラディン関連のニュースを見ては大声でアレコレ言うものだから、バーで海兵隊に詰め寄られたり。

たまたま再開した高校時代の同級生マーシ・ミッチェル(ウェンディ・マクレンドン=コーヴィ)に、「高校時代は君を想って、ティッシュ100箱は使ったよ!」とかサイテーな事を悪気なく言っちゃうんですよね。(そして二人は何故か付き合うことに)

https://eiga.k-img.com/images/movie/86244/photo/b3d090d980ed0a5e/640.jpg?1510131251

画像出典元URL:http://eiga.com

そんな彼が透析中、なんと神様が現れて「お前がビンラディンを生け捕りにするのだー」とお告げをもらってしまったからさぁ大変。

彼はヨットでパキスタンに行くため、ラスベガスのカジノでギャンブルしたり(そして負ける)、かかりつけの医師に嘘をついて1000ドル借りたりして中古のヨットを購入し、(今まで触ったこともない)ヨットで船出するも、あっという間に転覆してメキシコに打ち上げられます。

しかし懲りないゲイリーは、イスラエルからハンググライダーパキスタン入国を試みるも墜落。(そして骨折)

それでも諦めない彼は、深夜のテレビショッピングで日本刀を購入し、飛行機でパキスタンに入国します。(税関でひと悶着)

https://eiga.k-img.com/images/movie/86244/photo/2d74ce68d96ca988/640.jpg?1510131249

画像出典元URL:http://eiga.com

しかしパキスタンに来たとは言っても、ビンラディンの居場所など分かるはずもなく、ただただ腰に日本刀をぶら下げてパキスタンをうろうろし、現地の人達と仲良くなり、心が折れそうになると神様の叱咤激励を貰い、結果、パキスタンの山で倒れているところをパキスタン当局に保護されるんですねー。

まぁ、傍から見れば明らかにアレな人なんですが、それでも何故か友達や高校時代の同級生マーシには嫌われませんw

というのも、マーシに対しては弱みを見せるし、メキシコに漂着しても、ハンググライダーで墜落しても、ちゃんとマーシと彼女が育てている姪っ子ちゃんにお土産を買ってくるというチャーミングさがあるのです。

本作の彼は、別に狂っているわけでも英雄でもなく、幼少期からのコンプレックスをハイテンションキャラとして覆い隠し、強い信仰と愛国心、そして病気のせいで、たまに妄想を見る変わり者で、ただの人騒がせな困ったオッサンというバランスで描かれているのです。

そこに、ニコラス・ケイジの可笑しみや愛嬌が加わって、近くにいたら嫌すぎるけど、そっと離れた場所から見ていたい愛すべきキャラになっているんですね。

ただ、まぁ、コメディー映画として観たときに「はたしてこれは笑っていいのか悪いのか」と、ちょっと悩んでしまう部分もあったりしますけどw

現代版ドン・キホーテ

本作を観た、多くの人が恐らく最初に頭に思い浮かべるのはスペインの物語ドン・キホーテじゃないでしょうか。

https://eiga.k-img.com/images/movie/86244/photo/7d14a6cb29380a9c/640.jpg?1508830218

画像出典元URL:http://eiga.com

それは、製作陣も間違いなく意識していて、人から笑われながらもビンラディン捕獲という無謀を通り越して突拍子もない目的に向かって突き進むゲイリーさんを、現代版ドン・キホーテとして描いているんですよね。(妄想癖があり、本人の証言が当てにならない部分も含めて)

その一方で、他国にまったく興味のないアメリカ人を揶揄する象徴として描かれているし、彼を通して保守派に傾倒するホワイトラッシュ(貧乏白人)に対する皮肉もそれとなく(ハッキリと?)盛り込まれていて、その辺の攻めっぷりはさすが『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』や『レリジュラス ~世界宗教おちょくりツアー~』を監督しているラリー・チャールズだなーという感じでしたねー。

内容的には正直微妙だったけど、キレッキレなニコラス・ケイジを愛でたい人には、サイコーの映画なんじゃないでしょうか。

興味のある方は是非!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com