今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

マーゴット・ロビーのコスプレ映画「アニー・イン・ザ・ターミナル」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「スーサイド・スクワッド」(2016)のハーレイ・クイン役で一躍人気を博し、「アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル」(2017)のトーニャ・ハーディング役でアカデミー賞にノミネートされるなど、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのマーゴット・ロビーが制作・主演を務める『アニー・イン・ザ・ターミナル』ですよー!

マーゴット・ロビーと共演するのは、「ミッション:インポッシブル」シリーズのベンジー役でお馴染み、僕の大好きな俳優サイモン・ペグということで「これは観るしかない!」と早速レンタルしてきました!!

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概要

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』などのマーゴット・ロビーが製作と主演を務めたスリラー。ロンドンの街を舞台に、さまざまなトラブルを収束させる美女が仕掛ける復讐(ふくしゅう)劇を映す。監督は『美女と野獣』などに携ってきたヴォーン・スタイン。『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』などのサイモン・ペッグ、『オースティン・パワーズ』シリーズなどのマイク・マイヤーズなど実力派が共演する。マーゴットがダンサー、看護師、ウエイトレス姿を披露している。(シネマトゥディより引用)

感想

マーゴットのコスプレが堪能できる映画

本作のストーリーをザックリ紹介すると、「ロンドンの地下鉄終着駅にある街の24時間営業のダイナーで働くウェイトレス兼殺し屋が主役の復讐劇」です。

街を裏から牛耳る謎の男ミスター・フランクリンの依頼(暗殺)を一手に引き受けたいと申し出たアニー(マーゴット・ロビー)にフランクリンは前任者で2人組の殺し屋、ヴィンス(デクスター・フレッチャー)とアルフレッド(マックス・アイアンズ)を自力で始末することを条件に承認。

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一方、深夜の駅のホームで一人佇む元教師のビル(サイモン・ペグ)は、清掃係の駅員に始発の時間まで24時間営業のダイナーで待つ事を進められます。
彼は、不治の病魔に侵され余命いくばくもないので、電車への飛び込み自殺を考えていたんですね。
ダイナーを訪れたビルは、アニーに自分の事情を話し、どのような最後がいいかを相談します。

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また、ミスター・フランクリンの仲介役として、二人組の男と接触したアニーは、若い男を手玉にとり……。

実はアニーは、“ある男”に復讐を遂げることを目的に、ウェイトレス、ポールダンサー、看護師、黒髪の殺し屋と次々に姿を変えながら、美貌と言葉を武器に関わる男たちを悪夢の世界へと引きずり込んでいく……という物語で、本作は復讐劇であると同時に、ある種のミステリー要素も含む作品になっています。

ただ、まぁ、何ていうか、色んなコスチュームに身を包んだマーゴット・ロビーを堪能出来る以外に、さして見所はない凡庸な作品……というか、個人的には明らかな失敗作とだと思いましたねー。

不思議の国のアリス

本作のベースになっているのは、ルイス・キャロルの児童小説『不思議の国のアリス』です。

ですが、主演のマーゴットはアリス役ではなく、アリスを不思議(悪夢)の世界へと誘うウサギの役。では、アリス役は誰かといえば、彼女と関わる男たちなんですね。

同時に物語が進むと、彼女もまた、ある男によって悪夢の世界へと送り込まれたアリスだった事が明らかになっていきます。

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つまり、男たちの暴力によって悪夢に引きずり込まれたアリスが、復讐のため男たちを悪夢の世界へ引きずり込むべく、ウサギへとジョブチェンジしたわけです。

そう考えると、物語のベースがロリコンで有名なルイス・キャロルの代表作「不思議の国のアリス」ってところも「あー、なるほどねー」という感じ。

そんなアニーの現実離れした妖艶さを演出するため、舞台となる街も駅も、ニコラス・ウィンディング・レフンっぽい原色のライティングで彩られて、あえて現実感のない夢の中のような世界になっているのです。

作劇として破綻してね?

で、本作はなぜアニーが裏稼業に入っていったのかという、種明かしがラストでされます。というかアニーが全部セリフで説明してくれます。

この作品はある種のミステリー要素も含んでいると前述しましたが、前半ではアニーを謎めいた女として見せ、ラストでこの物語の全てが明らかにするという趣向なんですね。

でも、残念ながら本作においてその趣向は完全に失敗してるんですよ。 

だって、事前に何の前フリもないんだもん。

つまり、アニーが、誰になぜ、復讐しようとしているのかっていう目的を匂わせるシーンが一切なくて、完全に相手を追い詰めたところで「実は私は~」と説明を始めるっていう、完全な後出しジャンケン

観ているこっちは完全に(    ゚д゚)ポカーン…ですよ。

 

普通そういうどんでん返し的なミステリー要素って、物語の途中でヒントになりそうな伏線を張っていて最後にネタばらしするから、観客も「あー、あの時のアレはそういう意味だったのか!」と納得するわけですよ。

ところが、この作品ではずっとアニーの妖艶な謎の悪女っぷりを幻想的な雰囲気で見せて、何でもアリな世界観なのかな? と思わせて最後の最後に「実は~」とやる。
でも、そもそも最初から謎が提示されてないんだから、ネタばらしさられたところで「え、そういう話だったの?」と困惑するだけなのです。

あと、本作一番の見せ場である“アニーの秘密”のヒントらしきシーンはちょこちょこ入ってるんだけど、それも時系列入れ替え演出のせいでまったく意味がないっていうね。

つまり、映画としてどうこう以前に、もう作劇からして失敗してると思うんですよね。

というわけで、個人的に本作はマーゴット・ロビーのコスプレ以上の価値は感じませんでした。

興味のある方は是非。

 

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マカヴォイの独壇場「スプリット」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、前回ご紹介した「アンブレイカブル」とともに、現在公開中のM・ナイト・シャマラン最新作「ミスター・ガラス」と世界観を共有するシャマランユニバース三部作の1本『スプリット』ですよー!

この映画、個人的にはシャマラン映画の中で一番好きな作品になりました!(って言っても、ちゃんと観たのは本作を含めて3本だけどw)

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概要

シックス・センス』などの鬼才M・ナイト・シャマランが監督、製作、脚本をこなして放つスリラー。女子高校生たちを連れ去った男が、23もの人格を持つ解離性同一性障害者だったという衝撃的な物語を紡ぐ。複雑なキャラクターを見事に演じ分けたのは、『X-MEN』シリーズなどのジェームズ・マカヴォイ。高校生対23の人格による激しい攻防戦に息詰まる。(シネマトゥデイより引用)

感想

とはいえ、シャマランですからね。
今回も正直どこまで書いていいのかよく分からないんですよねーww
ほら、シャマランと言えばどんでん返し、どんでん返しといえばシャマランじゃないですか。

まぁ、本作と先日ご紹介した「アンブレイカブル」と本作が「ミスター・ガラス」に繋がるというのは公式でも発表されてるので、その辺はもう書いていいと思うんですが。

というわけで一応、ラストの決定的なネタバレだけはしないように感想を書いていくつもりですが、「ネタバレは嫌!」という人は先に本作を観てから、この感想を読んでくださいね。

開始5分で物語は動き始める

本作の内容をざっくり一言で言うと、3人の女子高生が多重人格のジェームズ・マカヴォイに誘拐されるという物語です。(これはネタバレじゃないよ!)

で、映画が始まると誘拐される少女3人の1人の誕生パティーが行われるんですが、その中にはクラスに馴染めない問題児の女の子ケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)も呼ばれてるんですね。

で、パーティーの主役だった女の子のお父さんが、ケイシーともう一人の女の子を車で家に送って上げることになります。

先に、三人を車に乗せたお父さんは、誕生日プレゼントをトランクに積んでいる。
その後ろ姿に、カメラがゆっくりと迫っていくんですが、振り向いたお父さんの言葉でそのカメラが何者かの主観映像だった事が分かるんですね。

そこでカメラが車内の三人に切り替わり、乗り込んできたのは坊主頭のマカヴォイ。
後ろの二人が「車を間違えているわよ」と注意すると、男はおもむろにス麻酔らしきスプレーを三人に吹きかけたところで、画面が暗転してタイトルどーん!

うっひょー!☆拍手!!(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\喝采!!☆

もう完璧! 

映像が車内に切り替わってからは、助手席に座ったケイシーの視点に変わり、彼女の感じた違和感を映像で見せながら、徐々に不穏さを盛り上げるという心憎い演出もいい!

やるじゃんシャマラン!( *• ̀ω•́ )b グッ☆

そして、ケイシーが目覚めると、そこにはすでに目が覚めていた二人が怯えていて、観客は彼女たちと同じく何も分からない状況に放り込まれ、物語が進むうち、少しづつ状況や真相を理解していくという作りになっていくわけです。

 一時は、不向きなビックバジェットの映画を手がけた為に、評論家からもファンからも酷評され、迷走してると言われたシャマランですが、2015年の「ヴィジット」を経て本作で完全復活したと言われてるし、僕もそう思いますねー。

僕は熱心なファンではないですが、シャマランはどちらかといえばワンシチュエーションの小作品の方が得意に思えるし、そういう意味で本作は、まさにシャマランにピッタリの題材。

そして「アンブレイカブル」から16年、途中(失敗作も含む)8本の作品を手がけたことで、その強烈な作家性はそのままに、語り口がグッとスマートになって見やすくなっているように思いました。

マカヴォイの独壇場

そんな本作を成功に導いた功労者といえば、数々の作品に引っ張りだこの実力者ジェームズ・マカヴォイ
本作では、なんと23+1重人格者を演じています。
といっても、主にメインで登場する人格は5人。

神経質で潔癖症のデニス。

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画像出典元URL:http://eiga.com 多分デニス。

女性人格のパトリシア
9歳の少年ヘドウィグ

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画像出典元URL:http://eiga.com  ヘドウィグ

リーダー格で社交性のあるバリー
主人格で2014年9月18日から副人格達に乗っ取られていたケビン

それぞれ別の人格である彼(彼女)らが、身体の主導権を握るには“照明”という権利が必要で、それをコントロールしていたのがリーダー格のバリー。
バリーは彼の主治医であるセラピストのカレン・フレッチャー博士との面会の時など対外的なシーンで主に登場します。

他に、オーウェル、ジェイド、ともう一人の計8人 を演じ分けているわけですが、さらに、(姿は直接移りませんが)デニスとパオリシアの会話を一人で演じたり、フレッチャー博士の前でデニスがバリーに成りすますシーンもあったりしするので、バリーを演じるデニスをマカヴォイが演じているという非常に難しい芝居もしてるんですよね。

後半ケイシーの前で、各人格が次から次へと入れ替わるシーンでは、さすがのマカヴォイも「自分が一体誰を演じているのかこんがらがってしまった」と、インタビューで答えていたようです。

アニャ・テイラー=ジョイの存在感

そんなマカヴォイに負けず劣らず、本作で重要な役割なのがアニャ・テイラー=ジョイ演じるヒロインのケイシー

彼女は友人や先生などとも距離を取る、孤独な少女です。
それには、彼女の生い立ちや家庭環境が関係していて、それゆえ他の二人のように、むやみにデニスたちに立ち向かおうとしたり、無計画に彼らから逃げ出そうとはしません。

 しかし、9歳の少年ヘドウィグが表面に出ている時は、言葉巧みにヘドウィグから情報を引き出したり、言葉で丸め込んで逃げる隙を伺ったりするんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com いい味だしてるアニャ・テイラー=ジョイ

ただ、怯え、悲鳴を上げて逃げ惑うだけのヒロインではなく、彼女は頭脳をフル回転させながら、生き残るチャンスを狙っているのです。
そんな難しい役どころをアニャ・テイラー=ジョイは見事に演じてるんですね。

大きな瞳でケイシーの心情を上手く表現し、マカヴォイ演じる複数の人格と対等にわたい合う存在感を表しているのです。

 

というわけで、ここからネタバレ。

どういう物語なのか

前述した通り、本作は「アンブレイカブル」の続編です。

アンブレイカブル」は、ミスター・ガラスことイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)の計略によって不死身の男デヴィッド(ブルース・ウィリス)が能力を覚醒、ヒーロー? になるまでの物語でしたが、本作は23人格のケビン(ジェームズ・マカヴォイ)が、24人目の人格を目覚めさせ、スーパーヴィラン(悪者)として覚醒するまでの物語なんですね。

母親に虐待されていたケヴィン少年は、自分を守るため22の人格を作り出した多重人格者。
大きくなってからは、彼の副人格バリーがリーダーとして、それぞれの人格をコントロールしながら社会生活を送っています。

で、長い間、そんな“彼ら”のカウンセリングをしてきたのがセラピストのカレン・フレッチャー博士。

彼女は女子高生誘拐事件をテレビで知り、さらにケビンの複数人格からメールを受けとったことでケヴィンの副人格が事件に関わっているのでは? と疑いを持ち始めるのです。

ケヴィンの副人格たちは、前述したように“照明”という主導権を握る権利を得て表出してきますが、 デニスとパトリシアはある危険思想を持ち始めたことで、照明の権利をバリーに取り上げられてしまっているのです。

しかし、権利を持っていた9歳のヘドウィグを上手く言いくるめ仲間に引き込んだ二人は、バリーから照明を奪取して封じ込め、女子高生誘拐事件を起こすんですね。

二人はなぜ女子高生を誘拐したのか

デニスとパトリシアは、24番目の人格「ビースト」がいることを確信。
彼を覚醒させるための“生贄”として、3人を誘拐してきたわけです。

彼女たちを(物理的に)食べさせることで「ビースト」は(物理的に)人知を超えた生物に進化する。ということらしいんですね。

ビーストはケヴィンの副人格の中で、最も恐ろしい破壊衝動の塊であり、世界に自分たちを認知させるという、ケヴィンの中の承認欲求が具現化した姿なのです。

そうした超能力者というか進化した人類を、X-MENでプロフェッサーXを演じたマカヴォイに演じさせるんですから、「シャマランの狙ったな?」 と邪推せずにはいられませんw しかも「ビースト」だしねw

一方、ケイシーが学校で問題を起こすのは、家に帰りたくないから。
彼女の父親は、彼女が小さい時に心臓発作で亡くなっていて、以来、ケイシーは叔父に引き取られて暮らしているのですが、彼女は叔父からずっと性的な虐待を受けているのです。

当初、彼女がほかの二人の「三人であいつを倒そう」という誘いに乗らないのは、大人の男の恐ろしさが身に染みて分かっていて、かつ、幼少期に父親と行っていた狩りで、力の違い(戦力差)を冷静に見極められるからなのです。

つまり、ケビンとケイシーの二人は同じ境遇を持つ鏡像関係にあり、ケビンが副人格を作りトラウマや怒りを外に向けるのに対して、彼女はずっと内=自分に向けてきたんですね。

本作のラストは賛否両論あるようですが、僕はケイシーのその後に含みを持たせる終わり方は、個人的には好きでしたねー。

そして「ミスター・ガラス」へ

で、ネットでレビューを読んだところ、実はこのケビン「アンブレイカブル」でも登場しているのだとか。
劇中、能力に目覚めたデヴィッドが、人ごみの中で母親から虐待されている少年を“見つける”んですが、どうやらその少年が後のケビンということらしいんですね。

本作の最後でも、事件の報道をレストランのテレビでデヴィッドが見ているというシーンで挿入され、現在公開中の「ミスター・ガラス」に繋がる事がわかります。(これが今回のどんでん返し)
「ミスター・ガラス」の予告を観ると、デヴィッド・イライジャ・ケビンの他に、ケイシーも登場するようで、もうワクワクが止まりません!!

出来れば、この熱量のまま今すぐに「ミスター・ガラス」を観にいきたいんですが、僕の地元では公開してないっていうね。(ノω;)

まぁ、もちろん細かいアラは色々見えるんですが、物語の進みがスムーズなのでノイズというほどは気にならないし、ラストで「ビースト」になったケビンに賛否あるかもですが、「スリラー映画」ではなくて「ヒーロー映画」として観れば、僕的には十分に許容範囲でしたねー!

興味のある方は是非!!!

 

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シャマラン版スーパーマン?「アンブレイカブル」(2001)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、新作が公開されるたびに物議を醸すM・ナイト・シャマラン監督の長編映画アンブレイカブル』ですよー!

実は僕、シャマラン作品って「ヴィジット」(15)くらいしかちゃんと観てないんですが、現在シャマラン最新作「ミスター・ガラス」が公開中で、その作品と世界感を共有している作品ということで、観てみることにしました。

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概要

シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン監督とブルース・ウィリスのコンビによるサスペンス・スリラー。フィラデルフィア。ある日、乗客、乗員131名が死亡するという悲惨な列車追突事故が発生する。かつて有望なフットボールの選手だったデヴィッド・ダンは、その列車事故の唯一の生存者だった。しかも傷一つ負わなかったのである。“なぜ自分だけが奇跡的に助かったのか”と悩むデヴィッドのもとに、ある奇妙なメッセージが届く……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

シャマランの世界的大ヒット作といえば、ブルース・ウィリス主演の「シックス・センス
ところが僕はこの作品と、たまたまテレビでラスト10分のネタあかしのシーンだけを観てしまうという、非常に不幸な出会い方をしてしまったんですよねw

以来、シャマランとは縁がなくて、初めて最初から最後までしっかり観たのは2015年公開の「ヴィジット」だけだったりします。

で、先日Twitterでたまたま彼の新作、「ミスター・ガラス」が公開中だと知り、それがどうやら“ヒーロー映画”らしい事、サミュエル・L・ジャクソンブルース・ウィリスが出ている事、本作と2017年公開の「スプリット」を含めた“シャマランユニバース三部作”完結編らしい事を知って、本作に興味が沸いたんですね。
まぁ、残念ながら僕の地元では「ミスター・ガラス」の公開予定はないっぽいんですけどもw

ざっくりストーリー紹介

ある日、フィラデルフィアで列車の脱線事故という大事故が発生。
この事故で奇跡的に無傷だった中年男のデヴィッド・ダンブルース・ウィリス)以外の乗客は全員死亡してしまう。

そんなデヴィッドの元に、一通の封筒が届くことから物語は動き出す。

送り主は、些細なことでも骨折してしまう骨形成不全症という難病を持って生まれ、クラスメイトから「ミスター・ガラス」というあだ名をつけられたイライジャ・プライスサミュエル・L・ジャクソン
幼少期からコミックを読み続けコミックイラストの画商になった彼は、自分のように先天的に体が異常に弱い人間がいるなら、逆に驚異的に強靭な肉体を持つ人間もいるはずで、それがデヴィッドなのだと言う。
最初は相手にしないデヴィッドだったが……。という物語。

シャマランが描く“ヒーロー映画”

暴力を扱う映画に、ヒーローが暴力で事件を解決する映画と、暴力とは何かを描く映画の2種類がありますよね。
前者は痛快なヒーロー映画やアクション映画で、後者は「アウトレイジ」(10)などのギャング映画やノワール作品ってところでしょうか。

同様に“ヒーロー映画”にもヒーローがヴィラン(悪者)を倒す映画と、ヒーロー(正義)とは何かを描く映画の2種類があって、後者の有名どころで言うと「ウォッチメン」(09)や、「ダークナイト」(08)などが有名。
本作はその系譜にある作品なんですね。

こうしたリアル路線のシリアスでダークなヒーローコミックは、モダンエイジと呼ばれる1980年代以降のアメコミに顕著で、「ウォッチメン」のアラン・ムーアや、「バットマン: ダークナイト・リターンズ」のフランク・ミラーを筆頭に、今もアメコミの主流になっています。

これらの作品で彼らは、「正義とは」「ヒーローとは」といった主題を追求し、実際に起こった戦争等の歴史的事件を絡めながら描いているのです。

本作のインタビューなどでアメコミが好きと答えたシャマラン。本作のアイデアを考えた時に、これらモダンエイジ以降の作品に影響を強く受けたのではないかと、僕は思うんですよねー。

本作は、ヒーロー誕生譚を通して、何者でもなかった二人の男が自分の存在を証明するという映画です。

まぁ、言ってみればヒーロー映画の王道展開ではあるんですが、そこはシャマラン印。
シックス・センス」でも見せた、ラストでのどんでん返しが用意されている、ある種のミステリーホラー仕立てになってるんですねー。

そして、(予算が少なかったのかもですが)とにかく地味。
まぁ、それがリアルっちゃぁリアルなんでしょうけど、派手なアクションや映像は一切出ないし、マーベルのヒーロー映画的なカタルシスも皆無です。

薄暗い画面の中、辛気臭い顔でボソボソ喋るブルース・ウィリスと、変な髪型でずっとうさん臭いサミュエル・L・ジャクソンの問答が延々と続くのです。(´ε`;)ウーン…

なので、ヒーロー映画のエンタメ的カタルシスを求める人が本作を観たら、かなり盛大に肩透かしを食らっちゃうんじゃないでしょうか。

というわけで、ここからほんのりネタバレします。
ネタバレが嫌という人は、映画を観たあとにこの感想を読んでください。

 

イライジャの妄執

上記の通り、サミュエル・L・ジャクソン演じるイライジャは、先天性の病気でちょっとしたことで骨が折れてしまう超虚弱体質。
そんな息子を引きこもりにしないために、母親は彼が外に出るたびに一冊づつヒーローコミックを渡すという作戦に出ます。

こうして、多くのヒーローコミックを読み続けて立派なアメコミオタクになったイライジャは、コミックアーティストの原画を扱う画廊で成功してるんですが、同時にある種の妄執に取り憑かれるようになります。

それは、自分のように先天的に身体の弱い人間がいるなら、逆に先天的な能力を持つコミックヒーローのような人間もいるはずという理論。

そんな彼がついに見つけたのが、乗客が全員死亡する程の列車事故に遭っても無傷だったデヴィッドなんですね。

実は彼、生まれてこの方ただの一度も、病気や怪我をした事がないのが徐々に明らかになっていきます。
若い頃にはアメフトのスター選手でしたが、当時恋人だった奥さんとのデート中の交通事故で足を骨折して選手を引退した……ことになってるんですが、実はこれは嘘。
暴力的なアメフトが大っ嫌いな奥さんと結婚するために、足を折ったと嘘をついてアメフトを引退したんですね。

ただ、その事で奥さんと息子を愛しながらも、どこか心の距離を感じてしまうデヴィッドと、それを察知した奥さんの仲は次第に冷え込み、喧嘩したわけでもないのに離婚寸前。デヴィッドはニューヨークで人生をやり直そうとしていたのです。

そんな彼のもとに現れたイライジャは、自説をデヴィッド父子に披露。
最初はただの妄言だと思っていたデヴィッドですが、まだ小学生の息子の方はすっかり信じ込んでしまい、デヴィッドがいくら「普通の人間だ」と言っても信じず、ついには「パパが超人だということを証明する!」と拳銃を向ける始末。

「やめなさい!」「一発だけ!」っていう、付き合い始めの高校生カップルみたいな言い合いを繰り広げますw

その合間にもイライジャのラブコールは続き、デヴィッドもだんだんその気になってきて、他人に触れると相手の考えが分かる能力を発見したり、180キロ以上のバーベルを持ち上げたりするうちに、どうやら自分はマジでスーパーヒーローの能力があると確信するのです。

そして、自分のスーパー能力を実証するため、デヴィッドはレインコートで正体を隠して駅で悪者を探し、やっつけ、ついにスーパーヒーロー誕生! 
息子や妻との関係も修復できてめでたしめでたし……と思いきや。っていうね。

イライジャは何故スーパーヒーローを探していたのか

とまぁ、デヴィッドの方はそんな感じですが、では何故、イライジャはデヴィッドをスーパーヒーローに覚醒させたのか。
世界を守るため? ヒーローのサイドキック(相棒)になりたかった? ヒーローに守って欲しかった? 違います。

彼がデヴィッドをスーパーヒーローに覚醒させた理由は、スーパーヒーローの存在を証明することが=自分の存在を証明することになるからです。

ラストでヒーローに目覚めたデヴィッドとイライジャは握手を交わします。

体は極弱ですが頭脳明晰なイライジャなので、デヴィッドとの握手の意味を失念していたハズはなく、その結果も当然予測していたハズ。
彼にとっては握手もその結果も全てが計画のうちで、その結果こそがデヴィッドが真のスーパーヒーローになるための最後のスイッチでもあったわけです。

そして、計画を完遂することで彼はデヴィッドと同じく、自らの存在理由を手に入れる事ができるというわけですね。

生まれつき体の弱い彼は、コミックのようなヒーローにはなれない。
だったら……というわけです。

つまり、この映画は孤独な二人の男が“世界に承認されることで世界に居場所を見つける”物語であり、デヴィッドとイライジャの関係はシャマラン版「スーパーマン」なんですね。多分。

「面白かった?」と聞かれると(´ε`;)ウーン…と悩む作品ではありますが、2000年の段階で、リアル路線のダークでシリアスなヒーローものを映画化したシャマランは先進的だったんだなーって思いましたねー!

興味のある方は是非!!

 

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“ロッキー”からの卒業「クリード 炎の宿敵」(2019)

ぷらすです。

公開したら即観に行こうと思ってたのに、中々都合が合わなくて観られなかった『クリード クリード 炎の宿敵』を、やっと観てきました!!

…まぁ、僕も「ロッキー」と共に青春を歩んできた世代ですからね。

そりゃ、こんなん観せられたら泣きますよ!

なので今回、多少の文句を書いたとしても、それは「この映画、最高!」っていう前提の上で、物足りなかった部分に文句を言ってるという事を予めお伝えして感想を書きたいと思います。

あと、まだ劇場公開中の作品ということで、出来るだけネタバレしないよう気をつけて書きますが、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは嫌! って人は、先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

『ロッキー』シリーズでロッキー・バルボアと激闘を繰り広げたアポロ・クリードの息子を主人公に据えた『クリード チャンプを継ぐ男』の続編。父の命を奪ったイワン・ドラゴの息子との戦いを軸に、クリードがさらなる成長を遂げる。監督は短編やテレビシリーズを手掛けてきたスティーヴン・ケイプル・Jr。シルヴェスター・スタローンマイケル・B・ジョーダンらが前作に続いて出演している。(シネマトゥデイより引用)

感想

ちょっとした昔話

ロッキー」第一作を、僕は確かテレビの洋画劇場で観たんだと思います。
内容は、ダメボクサーのロッキーが世界ヘビー級チャンピオンの当て馬として抜擢され、結果(判定で)負けるけど大事なものを手に入れるという物語。
映画解説者、荻昌弘氏の言葉を借りるなら「ロッキー」は「するかしないかで『する』を選んだ勇気ある人たちの物語」なのです。

そして、「ロッキー」の大ヒットを受けて、作られたシリーズ作品は計6作。
完結編として制作された「ロッキー5/最後のドラマ」が大不評に終わり、これでは終われないとスタローンが自ら脚本・監督・主演を務めた「ロッキー・ザ・ファイナル」は、当初の予想を裏切り批評家からもファンからも大絶賛
「ロッキー」シリーズは大団円でその幕を下ろしました。

それだけに2015年公開の前作「クリード/チャンプを継ぐ男」の制作情報が耳に入った時、「ロッキーはあんなに素晴らしい終わり方だったじゃないか! もうやめてくれよスタン!」と、思ったのは僕だけではないハズ。

しかし、いざ蓋を開けてみれば、新進気鋭の映画監督ライアン・クーグラーアドニス役のマイケル・B・ジョーダンのコンビは素晴らしく(二人はその後、MCUの「ブラックパンサー」でもタッグを組むことに)、また老齢に差し掛かったロッキーを演じたスタローンがアカデミー助演男優賞にノミネートされるなど、「クリード/チャンプを継ぐ男」は、世界中のロッキーファンを納得させる作品だったんですね。

そして、昨年公開された本作の情報を見てビックリ。

「ドラゴの息子とアドニスが闘う…だと?(; ・`д・´)」

ロッキー4/炎の友情」は東西冷戦末期に作られた作品で、元世界チャンピオンのアポロ(アドニスの父親)が、ロッキーに挑戦してきたソビエト連邦(現ロシア)のボクサーイワン・ドラゴドルフ・ラングレン)の挑戦を代わりに受け、試合中ドラゴの強烈なパンチを受けて亡くなってしまうんですね。

で、ロッキーはアポロの仇を取るため特訓の末にソビエトに乗り込んでドラゴとの死闘の末に見事勝利するという物語。

当時若く、スタローン信者だった僕はもちろん大興奮でしたが、シリーズを重ねるごと徐々に人気が衰えて、しかも当時、スタローンの生み出した人気キャラ、ロッキーとランボーソ連を相手に闘うというタカ派的内容も手伝って、その年のクソ映画を決める「ラジー賞」4部門にノミネートされるなど、興業的には大ヒットながら評価の方は散々だったんですよね。

まさか、大ヒットした「クリード/チャンプを継ぐ男」の続編に、その「ロッキー4」を絡めてくるとは……。

しかも本作は、監督がライアン・クーグラーではなく、発表されていたスタローンでもなく、本作が長編二本目の新鋭ティーヴン・ケープル・Jrだって言うし、これはあまり期待し過ぎない方がいいのかな…なんて思ってたわけです。

しかし、蓋を開ければそんな心配はまったくの杞憂で、本作は「ロッキー4」&「クリード~」の続編として実に見事な作品でした!(;//́Д/̀/)'`ァ'`ァ

ロッキー2~4までを一気に駆け抜ける

前作は、アポロ・クリードの非嫡出子ながら、正妻メアリー・アンに引き取られ不自由のない生活を送り立派な青年に成長したが、ボクサーの夢を捨てきれないアドニス(以降ドニー)が、ロッキーとともに猛特訓。

クリードのネームバリュー目当てで、チャンピオンの当て馬として抜擢され、試合には判定負けするも大切なものを手に入れるという内容。
いわば次世代の若者が「ロッキー」一作目をなぞるような物語だったと言えたと思います。

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で、その続編となる本作では、ロッキーの指導のもと序盤でサクッと世界チャンピオンになったドニーに、イワン・ドラゴドルフ・ラングレン)の息子ヴィクター(フローリアン・ムンテアヌ)が挑戦状を叩きつけ……という物語。

つまり、「ロッキー2~4」までの要素を一本の作品に全部乗っけたような作品なんですよね。

ヴィクターとドニーの戦いを縦軸に、ドニーの恋人で進行性難聴のシンガー ビアンカテッサ・トンプソン)との結婚・妊娠・出産、ロッキーに敗北して以降30年間のドラゴ父子の物語、ロッキーと息子ロバート(マイロ・ヴィンティミリア)の物語など、3つのサイドストーリーが織り込まれています。

前作では、正妻の子ではなく直接は父親を知らないという出自ゆえに、“自分”を支える土台がなく、自分を確立するために父の盟友でもあったロッキーの手を借りて戦いに挑むというドニーの成長譚でした。

対して本作でのドニーは、同じ立場に立ったことでアポロとロッキー、二人の“強さ”を知り、偉大な“二人の父”を乗り越えるために闘うんですね。

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(些か変形的ではあるけど)本作は「父殺し」の物語で、つまりドニーが親離れをして自立するまでの物語なのです。

一方、本作はイワンとヴィクターのドラゴ親子の物語でもあります。
30年前、ロッキーと戦ったソビエトでの一戦で、金、名誉、妻。全てを失ったイワンは、ただ一つ残ったボクシングを息子ヴィクターに叩き込みます。

自分から全てを奪ったロッキーに復讐するために。

そして、父譲りの豪腕と強靭な肉体、スピードを併せ持つヴィクターは、父から全てを奪った男が育てたドニーから全てを奪うために野獣のごとく襲いかかるのです。

この辺、「ロッキー4」をリアルタイムで見ていた世代としては、ついついドラゴ親子の方に感情移入してしまうんですよねーw

普段は安いホラーやアクション映画で、省エネ演技をして小遣い稼ぎをしているドルフ・ラングレン久しぶりの熱の入った演技も素晴らしかったし、ヴィクターを演じたルーマニアのボクサー フロリアンムンテアヌもまだまだ荒削りではあるけど、説得力のある肉体と風貌は良かったです。

そもそも、ドルフ・ラングレンも元空手のチャンピオンで演技はほぼ素人、長編映画は「ロッキー4」が2本目だったんですよね。

不満点

とまぁ、色んな要素がてんこ盛りな本作ゆえ長尺で、特にドニーがうだうだうだうだ悩む中盤はあまりにもテンポが悪く感じたし、肝心の試合シーンも前作のような長回しもなく、試合自体も端折りすぎでカタルシスは弱め。
何より、後半の一番盛り上がるところでのBGMが「アイ・オブ・ザ・タイガー」じゃないんかい!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッ と。(「ロッキー4」を観てない人には分からない文章)

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いや、ヴィクター戦に向けて、ドニーを鍛え直すためにロッキーが、カリフォルニア州デスバレーにある“ボクサーの虎の穴”ことパーガトリア・エル・ボックスに連れて行って特訓するシーンはアガりましたけどねー。

“ロッキー”から“クリード”へ

前述したように、本作はクリードがロッキーの手を離れて自立する物語で、劇中ロッキーが「お前の時代だ」と言うシーンがあるんですが、これはつまり「ロッキー」のスピンオフの「クリード」は本作で終わり、以降は無印の「クリード」になりますよ。という宣言だと思うんですね。(スタローンも本作でロッキーを引退と言ってるらしいし)

前作・本作は、「ロッキー」シリーズを推進力に大ヒットしたわけですが、次回作以降は(恐らく)ロッキー=スタローンの力を借りずに、ドニーの自立したシリーズになるのでしょう。多分。

そもそも、映画「ロッキー」シリーズは、スタローン自身の人生とリンクした作品であり、そんなスタローンの元に、前作の監督だったライアン・クーグラーがスピンオフの企画を持って現れたことで「クリード」がスタートしたというのも、そのまま前作の内容とリンクしているわけですしね。

そして、本作で「ロッキー」のスッピリッツを伝承し終え、またドラゴの人生にも決着をつけた事でスタローンは身を引き、これからは次世代の若者が「クリード」という新たなヒーローの物語を紡いでいくのでしょう。

それは僕らのようなロッキー世代にとって寂しくもあるけど、「クリード」自体がボーナストラック的な感じもあったので、これでいいんだと思います。

多分、本作でロッキーの音楽がほぼ使われなかったのも、「ロッキー」からの卒業を意識したんじゃないかと思います。

本作は「ロッキー4/炎の友情」や前作「クリード チャンプを継ぐ男」を観ていなくても楽しめるように作られているので、安心して劇場に足を運んでください。(両作、またはどちらかを観ておくとより楽しめるとは思いますがw)

興味のある方は是非!!!

 

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今も色褪せないゾンビコメディーの傑作「バタリアン」(1986)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「エイリアン」(79)で脚本を担当したダン・オバノンの長編デビュー作『バタリアン』ですよー!

ゾンビ映画の父ジョージ・A・ロメロの長編デビュー作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」のパロディーとして、ホラーながら思いっきりコメディーに振り切ったゾンビ映画初期の傑作です!

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概要

ゾンビ映画の元祖「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生」で描かれた事が実際にあったという前提で作られた間接的な続編。ロスにある科学資料庫の地下で発見された謎のタンク。そこから吹き出した特殊なガスには死者を蘇らせる作用があった……。(allcinema ONLINE より引用)

感想

バタリアン制作の経緯

バタリアン」の原題は「リターン・オブ・ザ・リビングデッド

実は本作はロメロの長編デビュー作であり、元祖ゾンビ映画ナイト・オブ・ザ・リビングデッド“正式な続編”だったりします。

その経緯を箇条書きで説明するとこんな感じ。

ロメロが故郷ピッツバーグで制作した16ミリフィルムの長編デビュー作「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」が大ヒット。→

しかし、ピッツバーグのインディー監督だったロメロは、新作を作るお金がない。→

「そうだ! 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の続編を作る権利をメジャー映画会社に売ろう!」→

メジャーの映画会社MGMが大金でその権利を購入→

大金を手に入れたロメロは「ナイトライダーズ」、「クレイジーズ」、「マーティン」などのインディー映画を作り、その後ハリウッドに進出して制作した「ゾンビ」(79)が大ヒット→

権利上「ゾンビ」は「ナイト・オブ~」の続編ではないが、誰が見ても「ナイト・オブ~」の続編→

MGM「ι(`ロ´)ノムキー」

・MGMは「エイリアン」「スペースバンパイア」の脚本家、ダン・オバノンを監督に招き、「ゾンビ」とは別に「ナイト・オブ~」の続編として「バタリアン(原題:リターン・オブ・ザ・リビングデッド)」を作ることに。

というわけです。

なので、本作は契約上は「ナイト・オブ~」の正式な続編というわけなんですねー。

で、ダン・オバマンが「ナイトオブ~」の脚本家ジョン・ルッソ、ルディ・リッチ、ラッセル・スタイナーの“原案”を大胆に脚色し、ホラーコメディーとなった本作は世界的大ヒットとなるのです。

日本では「オバタリアン」というマンガタイトルのネタ元で、その後「オバタリアン」という言葉は流行語になったりもしました。

ざっくりストーリー紹介

映画冒頭、「この映画は実話である」「従って登場する固有名詞は全て実名である」というテロップからスタート。

本作では、「ナイト・オブ~」は現実にあった事を映画にしたという前提になっているんですね。

アメリカ合衆国ケンタッキー州ルイビルにあるユニーダ医療会社で、倉庫係として働くこととなったフレディ(トム・マシューズ)は先輩の社員のフランク(ジェームズ・カレン)から仕事を教わっています。

この会社、白骨標本(本物)やら、犬の縦割り標本やら、冷凍庫に保存した“新鮮な死体”などを軍や医療機関に研究・実験や解剖用に卸す会社なのです。

一息ついたところでフランクがフレディに、会社の地下室にある死体の話をし始めます。

曰く、軍と製薬会社が、死体を蘇らせるガスを開発。
そのガスが漏れ出して、大事になったが軍は秘密裏に事態を収束し、研究用としてタンクに入れた「ゾンビ」を製薬会社に送るも、なんの手違いかこの会社に送られてから14年放置されている。のだと。

フランクは「見せてやる」とフレディを連れて地下室に。
二人がタンクの中のゾンビを見ていると、突然ガスが吹き出し二人に直撃。
気を失った二人が目を覚ますと、会社中にはダクトを通してガスが充満し、会社中の死体が蘇っている状態。困り果てた二人は社長を呼び出します。
そして3人は、蘇った冷凍庫の新鮮な遺体をバラバラにして、近所の葬儀屋アーニー(ドン・カルファ)に頼んで火葬。

一方そのころ、フレディの友人たちが車で迎えにくるも、仕事終わりの10時まで時間を潰す為に、会社向かいの墓地で大騒ぎしてるんですね。

その時、葬儀屋の煙突から火葬した死体の煙がモウモウと上がっている最中に、突然大雨が降り出し、雨に溶けた灰が墓地に降り注ぎ……。という物語。

最強のゾンビ

で、本作に登場するゾンビ、実は最強な上に超タチが悪い

まず、ロメロが提唱したゾンビの基本「頭を破壊or頭を落とされると死ぬ」というルールが通じず、首を切られようが頭を破壊されようがゾンビは動きまくります。

これにフレディは「映画は嘘だったのかよー!」とメタ的なセリフを叫んでひと笑い取ったり。
で、3人は蘇った冷凍庫の新鮮な死体をバラバラにして火葬しようとするわけですね。

しかし火葬しても、雨が降ると灰が地面に染み込んで墓地の死体が次々に蘇るので、“殺せないゾンビ”は延々増え続けるわけです。

そして、本作のゾンビは知能があって会話も出来ます
ガスを浴びて具合が悪くなったフレディとフランクを搬送するために読んだ救急車の救命退院を美味しく頂いたゾンビたちは、救急車の無線で「もう一台呼んでくれ」と要請。到着した救急隊員も美味しく頂き、送っても送っても連絡が途絶える救急隊員を不審に思い駆けつけた警察官も美味しく頂き、今度はパトカーの無線で応援を要請し……。ってな具合で、次々おかわりを要請しては美味しく頂いてしまうんですねーw

ちなみに、“彼ら”は脳みそしか食べません。
社長とアーニーが上半身だけのゾンビ、“オバンバ”を捕まえて尋問したところ、「死の痛みを癒せるのは生きた人間の脳みそだけ」と言うんですね。

つまり脳みそ以外(肉体)は残っているので、ゾンビに食べられた人間は100%ゾンビになるわけです。

さらに、本作のゾンビは走ります。

走るゾンビといえばダニー・ボイル監督の「28日後」(02)が最初だと思われがちですが、実は元祖走るゾンビは本作なんですね。
100%の確率で増え続け、何をしても死なず(焼いても灰で仲間を増やし)、知能があって走るゾンビって、これもう最強でしょ。

これは多分、ダン・オバノン監督のアイデアだと思うんですが、「リビング・オブ~」の続編(パロディ)をコメディーにするにあたり、ゾンビの弱点(人間の勝機)を片っ端から潰したんだと思うんですよねー。

一方、同時進行で、死体復活ガスを浴びてしまったフレディとフランクはどんどん具合が悪くなり、救急隊が到着して様態を見ると、心拍数0、血圧0、体温21度(室温)で、完全に死んでるわけですが、でも本人たちは会話も出来てるわけです。
この件はコメディ演出にはなってますが、実は彼らもまた刻一刻とゾンビに近づいているんですね。

そして、ゾンビ化したフレディは彼女に襲いかかり、フランクは“人間として死ぬために”自ら火葬炉に入って火をつけます。
外した結婚指輪にキスをしてフックに掛けてから、自ら焼却炉に入っていくシーンは思わずグッときてしまうんですが……よくよく考えたら全てはこのオッサンが原因なんですよねーw

また、何とかゾンビ化したフレディから逃げた彼女と葬儀屋のアーニーは天井裏に逃げ込むんですが、フレディが迫る中怯える彼女を抱きしめるアーニーの手に拳銃が握られているアップになるわけです。
これは、フレディに脳を食べられてゾンビにされるくらいなら、彼女と自分を銃で撃って死のうという、アーニーの考えが観客には分かるようになってるわけですね。

一見、ふざけ倒してる本作ですが、こういった細かい描写でダン・オバノンはしっかりロメロの「ナイト・オブ~」にリスペクトを捧げているし、脚本家出身の彼だけにストーリーはしっかり作りこんでいるのです。

あと、この映画はある衝撃的なラストを迎えるんですが、このラストは、キューブリック監督「博士の異常な愛情~」のオマージュですよね。多分。

SFXの到達点

本作が公開された1986年は、まだ映画にCGは使われておらず、上半身だけの「オバンバ」も、コールタール?をダラダラ流しながら迫り来る「タールマン」も、全部SFX(特撮)で撮影されています。(CGなど、撮影後のフィルムや映像データーを加工するのはVFX)
スピルバーグの「ジュラシック・パーク」以降、ハリウッドの特殊撮影はSFXからVFXへと舵を切っていくんですが、本作を含めた80年代~90年代のホラー映画は、アニマトロニクス(動物や生き物型のラジコン)などの技術がある種頂点に達した時代でもあり、(映画全体的には古臭さを感じるものの)本作のこうした特殊技術のシーンは、今見ても十分見ごたえがあるんですよねー。

特にタールマンのシーンは素晴らしいので、ゾンビ好きな人は必見ですよー!

興味のある方は是非!!

 

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サム・ライミが自らの代表作をセルフパロディー「死霊のはらわたⅡ」(1987)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ダークマン」(90)「スパイダーマン」(02)などでお馴染みのサム・ライミ監督長編デビュー作「死霊のはらわた」(85)。
その続編…というかセルフリメイク作品『死霊のはらわた』ですよー!

実は僕は「死霊のはらわた」は何度も観たし、本作の続編「キャプテン・スーパーマーケット」(93)も随分前に観ているんですが、何故か本作だけはずっと見逃していたんですよね。

で、TSUTAYAでその事を思い出して、この機会にレンタルしてきました!

ちなみに今回は30年以上も前の作品なので、ネタバレ気にせず書いていきます。
なので、「ネタバレは嫌!」という人は、ネット配信かレンタルで本作を観てから、この感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

より充実したSFXと、S・ライミの特徴とも言える完成されたカメラワークでグレード・アップされた続編、ではなくリメイクに近い第2弾。前作の荒削りだがエキサイティングなスタイルは若干薄らいだものの、映画的にはかなりまとまっている。クライマックスからラストにかけての新たなるシリーズ目指しての大幅な変更は、この作品を一気にスプラッター・ホラーから伝奇SFへと変貌させた。(allcinema ONLINEより引用)

感想

死霊のはらわた」誕生まで

死霊のはらわた」はサム・ライミ監督の長編デビュー作にして、30年以上経った今もカルト的人気を博す代表作の一本です。

当時、ミシガン州立大学の学生だったライミは映画製作のため大学を中途退学。
ドライブインシアターでのホラー映画を調査・研究して脚本を書き上げると、初めに製作者の関心を引くであろう短編映画を1600ドルで製作。
友人の弁護士の助言を得て、主演のブルース・キャンベル、ロバート・タパートと共に資金集めに奔走し、「死霊のはらわた」製作にこぎ着けたんですねー。

資金が尽きは制作を一旦中断。資金集めを行って撮影再開なんてことも一度や二度ではなかったようです。

そうした苦労の末完成した「死霊のはらわた」は、スプラッタホラーのカルト的古典として今もファンに愛され、続編(セルフリメイク)となる本作、その続編「キャプテン・スーパーマーケット」、一作目のリメイク版「死霊のはらわた 」を経て、2015年には、ブルース・キャンベル主演で本作から約30年後の物語を描くドラマシリーズ「死霊のはらわた リターンズ」が放映されるなど、今もその勢いはとどまりません。

ざっくりストーリー紹介

死霊のはらわた」が日本で公開された当時は、まさにスプラッタホラー全盛期
ジェイソン、フレディー、チャッキーなど、次々と現れるスプラッタスターが映画館やテレビの洋画劇場で血みどろの惨劇を巻き起こしていた時代です。
そんなスプラッタホラーの決定版として放映されたのが「死霊のはらわた
週末を楽しもうと山小屋に訪れた若者たちが、地下室で見つけた“死霊の書”とテープレコーダー。
うっかり、死霊復活の呪文が録音されたテープを再生してしまったため、仲間たちが次々死霊化して主人公アッシュたちに襲いかかるという内容です。

超恐ろしい死霊たちの特殊メイクや、やり過ぎとも思えるスプラッタシーン、数々のホラー映画を研究して作られたという息もつかせぬ恐怖&ビックリシーンの連続、そしてライミの特徴でもあるブラックユーモアが、これでもかと続く85分はもうね、マジで超怖かったですよ。

で、そんな「死霊のはらわた」の続編として作られた本作は、実質セルフリメイクでして、内容はほぼ一緒なんですが仲間たちはいなくて、主人公アッシュとガールフレンドのリンダ(デニス・ビクスラー)がドライブ中に無断で入り込んだ山小屋で、見つけたテープレコーダーを再生したら……という内容なんですが、ライミがノリノリでブラックユーモアをぶっ込みまくった結果、なんと本作はスプラッタコメディーになってしまったんですねー。

当時の宣伝文句も、「今度はコメディーだ」的な売り出し方だったように思います。(うろ覚え)

映画冒頭、山小屋のピアノを弾くアッシュと、ピアノに合わせて下着で踊るリンダのカップぶりは、他の作品だったら一番最初に惨殺されるパターンですよ。
しかし、復活の呪文が録音されたテープレコーダーをうっかり再生したせいで、リンダが死霊化。アッシュに襲い掛かり――という展開は前作同様なんですが、前作では恋人リンダをナイフで刺し、チェーンソーで首を落とそうとする(首を切ると復活しない)も逡巡し、結局そのまま土葬するアッシュ(その後復活して襲いかかってきたリンダの首をスコップで切る)でしたが、本作では割とサクッと首を切り落とすんですよね。

しかも、それでも復活したリンダがアッシュに襲い掛かり、切り落とした頭だけで右手に噛み付く始末。(とにかくしつこいw)

さらにその後、リンダに噛まれた右手が死霊化
自分の右手と戦うアッシュの一人芝居がわりと長尺で展開されたりするんですが、この辺から本作は完全にコントになっていくんですねー。
で、結局自分の手を切り落としてやっつけたアッシュは、失った手の代わりにチェーンソーを装着し、襲い来る死霊と戦う事になるのです。

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その後合流した、テープレコーダーの吹き込み主(考古学博士)の娘アニー(サラ・ベリー)、そのボーイフレンド、道案内の男とその恋人が加わって、ホラーともコントともつかないドタバタ劇が繰り広げられるんですね。

ぶっちゃけ怖さは半減以下。でもストーリーとしては1作目よりもまとまっていて、すったもんだの末に瀕死のアニーが、封印の呪文で開いた異界に死霊が吸い込まれて一件落着。
かと思ったら、呪文の途中でアニーが意識を失ってしまい、開きっぱなしの異界にアッシュも吸い込まれてしまうんですよねーw(その後、意識を取り戻したアニーが呪文を言い切って異界への門が閉じる)

そしてアッシュは、死者の書に書かれた中世へタイムスリップ。
続編「キャプテン・スーパーマーケット」へ続く――という終わり方。
実は、死者の書”に書かれた伝説の勇者がアッシュだったというオチなんですね。

ちなみに、「キャプテン~」では、アッシュが元の時代に戻るために、アーサー王をぶん殴ったり、(アッシュが)テキトーな呪文を唱えたせいで復活した資料軍団と戦うために共闘するという、ダーク・コメディー・ファンタジー?になっています。

ホラーとコメディは紙一重を証明

よく、「恐怖と笑いは紙一重」と言われますが、本作はその言説を証明した作品になっています。

一作目を撮り終えたあと、コーエン兄弟と組んだ「XYZマーダーズ」(86)を経て、ライミは(おそらく)意識的に、本作をコメディー仕立てにリメイクしたのだと思います。

むしろそれは、セルフリメイクというよりセルフパロディーに近くて、全てにおいてやり過ぎてるんですよね。

埋葬から復活したリンダの様子は、モーションアニメになってるんですが、リンダが自分の首を放り投げながら踊る姿は、ティム・バートンの「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」を連想させるし、鏡に映った自分とやり合うとか、家具が死霊化して笑いながら動き回るとか、アッシュやアニーが浴びる血の量もとにかくアホみたいに大量とか。
とにかく全てがやり過ぎで、観ていて思わず笑っちゃうのです。

続く「キャプテン~」も含め、サム・ライミは世間一般のサム・ライミ=ホラー監督というイメージを払拭しちょうとしたんじゃないかと思いますねー。

興味のある方は是非!!

 

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ゾンビの皮を被ったファミリー映画「デッド・シャック~僕たちゾンビ・バスターズ~」(2017/日本はビデオスルー)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、カナダのゾンビ映画『デッド・シャック~僕たちゾンビバスターズ~』ですよー!

何度かスルーしてたんですが、ジャケットの溶接マスクやトゲトゲの武装の写真が気になってレンタルしてしまいました。

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あらすじ

週末、家族同然に良くしてもらっているスレイド一家と山小屋に行った14歳の少年ジェイソン。
スレイド家長女でジェイソンが密かに思いを寄せているサマー、その弟で親友のコリンと森を探検中にお隣の家を発見した3人は、セクシーな女とバカっぽい男2人が家に入っていくのを見て、「3Pが始まるかも」と家を覗き見。

すると女は二人に毒入りワインを飲ませ、動けなくなった二人をゾンビに食わせていているのを見てしまう。しかも3人は女に発見されてしまった! 

感想

カナダ製作のホラー映画といえば、何と言ってもデビッド・クローネンバーグ監督の「スキャナーズ」が有名でしょうか。

僕ももちろん「スキャナーズ」は好きなんですが、個人的にはクエンティン・タランティーノロバート・ロドリゲスの二本立て映画『グラインドハウス』の嘘予告から長編映画になったホーボー・ウィズ・ショットガン」(2011)が印象深かったりします。

映画自体はしっちゃかめっちゃかなんですが、後半に何の前振りもなく登場する「地獄の使者1号・2号」超カッコイイんですよねー。

で、確かそいつらのどちらかが被っていたのが、溶接マスクだったと思うんですが、何かこう、溶接マスクって中二心をくすぐりませんか? くすぐらないですか、そうですか。

ともあれ、そんな訳で本作のジャケットで、溶接マスクを被っているキャラが超気になってはいたんですが、でも地雷臭もあって3・4回はスルーしてたんですね。
でも、レンタルしたい他作品がほぼ借りられていたので、思い切ってレンタルしたら……見事にハズレを引いてしまったんですよねー。(´ε`;)ウーン…

ゾンビ映画……なのか?

本作を一言で言えば、週末人里離れた山小屋に遊びに行ったティーンが、ゾンビに遭遇するという物語なんですが、……え、…これ、ゾンビなのか? という疑問が。

ネタバレ気味に言うなら、ここに登場するゾンビは、セクシーな女の家族でしてね。
女はこのゾンビ一家のお母さんなのです。

まぁ、この時点で何故お母さんだけ人間なのかという疑問が沸きますが、その辺の説明は最後まで一切ありません。

お母さんは、家族のために町のダイナーで、美貌を武器に適当な男を引っ掛けては、毒入りワインを飲ませて家族のご飯にしているわけですねー。

一方、主人公ジェイソンは家庭が上手くいってなくて、同級生で親友のコリンの一家に家族同然に接してもらっているのです。

学級委員長的な性格のお姉ちゃんサマー、バカな中学生を絵に書いたようなコリン、下品なオヤジギャグを連発して場を凍らせるお父さんのロジャー(コリンは確実にお父さん似)、そしてお父さんの恋人でアジア系のリサ(コリンとサマーはリサの事が気に入っていない)。

ダメな父親とグータラな恋人の結婚話に、リサとコリンは思春期らしく大反対。

序盤はそんな2つの家族の様子が説明されるんですが、この件がどうも長いなーと思いました。

その分、ジェイソン、コリン、サマーの三人が事件を発見してからはサクサクとストーリーは進むんですが、撮り方もあまり上手くないし、ストーリーテリングもヘタなのでホラー的怖さはまったく感じませんでした。

ゾンビ映画の皮を被ったファミリー映画?

この作品は、いわゆるゾンビ映画の体を取ってはいますが、本質的には「家族」を描いた物語。

無神経な父親や明らかに母親向きではない恋人の結婚話に、思春期ゆえ反抗してしまうサマーは、しかし内心ではそんな父親を愛している事を、ゾンビ一家との戦いを通して確認するんですね。

一方、ゾンビ家族にご飯を調達し続けるお母さん。
クライマックスでその心情を激白します。

「ずっと“ご飯”を用意しても、感謝されたことなんか一回もないのよー!!」(意訳)

まさに、世のお母さんたちの心情を代弁するかのような絶叫
個人的に、このシーンが一番心に残りましたねー。

本作はゾンビ映画ではありますが、いわゆる世間一般的な、両親が離婚した家族と、一見幸せだけどお母さんが犠牲になっている家族のメタファーになってるんですよね。

うん、分かるよ。やりたいことは重々分かる。でも、上手くはない。っていう

志の割に映像もストーリーも色々雑だなーとも思いました。

クライマックスに向けたシーンで、ジェイソンがいきなり家庭の事情を話し始めたりね。今かよ!(。・д・)ノ)´Д`)ビシッっていう。

あと、コメディーとは言えお父さんがビタイチ役に立たないとか、ゆっくりゾンビ(しかも数が少ない)相手なので3人でも全然渡り合えるのはいいとして、明らかに制作の都合でゾンビの数が増えたり減ったりするしね。

いかにも伏線っぽいユニコーンも放りっぱなしだし(お母さんの病んだ心の象徴?)、ラストもなんかスッキリしないし、一応、通少年少女の過儀礼的な結果的な側面もあるけど、誰ひとり成長した描写もないし。

一番の問題は、お母さんの溶接マスクが見た目以外一切活かされてないトコですかね!(←そこ!?)
っていうか、この手の映画にチェーンソーは必須でしょうがー!

あ、あと死んだ人がゾンビになるルールも明確じゃないのは、“ゾンビ映画”としては大問題だと思いました。

 

僕はてっきり、最後の最後にロジャーがゾンビ化すると思ってたんですけどね。(重大なネタバレ)

まぁ、正直お金出してまで観るような映画ではなく、例えばアマゾンプライムの月額見放題で無料で観れるとか、午後ローでたまたまやってたから観るくらいが丁度いいんじゃないでしょうか。

興味のある方は是非。

 

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