今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

THE・80年代アクション映画風味が楽しい「ザ・プレデター」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「プレデター」シリーズ最新作、『ザ・プレデター』ですよー!
あのショーン・ブラックが監督ということで、無駄に露悪的かつ不謹慎な笑いをたっぷり練りこんだTHE・80年代的な作品に仕上がってましたねーw

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

地球外生命体プレデターと人類の攻防を描いたSFアクション大作。地球に降り立ったプレデターが、人々を恐怖のどん底に落とす。監督は第1作に出演していた『アイアンマン3』などのシェーン・ブラック。ドラマシリーズ「ナルコス」などのボイド・ホルブルック、『ムーンライト』などのトレヴァンテ・ローズ、『X-MEN:アポカリプス』などのオリヴィア・マンらが出演。(シネマトゥディより引用)

感想

まず最初に言っておかなくてはいけないのは、僕はプレデター」シリーズをちゃんと観たことがないってことです。

シュワちゃん主演の1作目はテレビで観たような気がするんですが、内容は殆ど覚えていないし続編シリーズもまったく観ていなくて、辛うじて「エイリアンVSプレデター」を観たくらい。

前にも書いたかもですが、(プレデターがどんな奴かくらいは知ってるものの)僕が一時ハリウッド映画に飽きて離れていた頃に公開された作品なので、まったくといっていいくらい、思い入れがないのです。

つまり、この感想は「ほぼプレデター初心者」が書いたものだということを予めお断りしておきます。

“あの”ショーン・ブラックが監督

本作を監督したのは、「リーサル・ウェポン」(87)で脚本家としてブレイク、「アイアンマン3」(13)「ナイスガイズ!」(16)などを監督したショーン・ブラック

この人の作風をザックリで言うと、“乱暴”なストーリーテリングと下ネタと不謹慎で悪趣味なブラックユーモア満載の作品って感じ。

つまり、80年代後期~90年代の、能天気で乱暴なアクションやホラー映画的な世界観が大好きな、小五男子脳を持った映画監督で、ゆえにファンの好き嫌いがハッキリ別れるんですよね。

そんなショーン・ブラック、俳優としてシュワちゃん主演の1作目「プレデター」に出演。一番最初に惨殺される下ネタ好きな兵隊ホーキンスを演じてます。

その縁があってかどうかは分かりませんが、本作では「ドラキュリアン」(87)で共同脚本を務めた10代からの旧友でボンクラ仲間のフレッド・デッカーと本作の脚本で再度タッグを組み、監督も務めているんですねー。

プレデター1・2」の続編!?

この「ザ・プレデター」は、単体映画として成立してるので本作だけ観ても楽めるわけですが、一応、シュワちゃん主演の1作目と、謎の異星人プレデターの生態を掘り下げた続編「プレデター2」の続編という位置づけ。

と言っても、ストーリー的な繋がりがあるわけではなく「過去に2度プレデターの襲撃を受けて、政府が内密にプレデターを研究している『スターゲイザー』という機関がある世界」が舞台っていう程度の繋がりです。

ストーリーは、宇宙船がもう一隻の宇宙船より攻撃を受け、地球に墜落降下するアバンタイトルからスタート。

アメリカ軍特殊部隊のスナイパーであるクイン・マッケナボイド・ホルブルック)は任務中落下してきた宇宙船と遭遇し、部下二名をプレデターに惨殺されるも辛くも逃げ延び、くすねたプレデターの装備品を証拠品としてこっそり自宅に送ります。

彼は政府に捕まり、プレデターとの交戦を主張するも、プレデターとの遭遇を握り潰したい政府は彼の主張に取り合わず、マッケナを部下殺しの犯人として軍刑務所に輸送。

輸送車には、それぞれ戦争で精神的な傷を負った退役軍人受刑者、ネブラスカ(トレヴァンテ・ローズ)、コイル(キーガン=マイケル・キー)、バクスリー(トーマス・ジェーン)、リンチ(アルフィー・アレン)、ネトルズ(アウグスト・アギレラ)のチーム「ルーニー」と出会うんですね。

一方、進化生物学の科学者ケイシー・ブランケット博士(オリヴィア・マン)は、1987年と1997年の襲来からプレデターを研究している政府の秘密機関『スターゲイザー』の秘密基地へと招かれるも、研究用に捕らえた(マッケナと戦った)フュージティブ・プレデターが突如覚醒し、研究所職員を次々に殺しながら逃走。

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画像出典元URL:http://eiga.com /宇宙船でやってきたフュージティブ・プレデター

ヘルメットを遠隔操作して自身の装備品がマッケナの自宅にあることを割り出し、奪われた自身の装備品を回収するためにクインの自宅へと向かうのです。

マッケナの自宅では、サヴァン症候群でいじめられっ子の息子ローリー(ジェイコブ・トレンブレイ)が、届いた装備品をいじり倒して、うっかり新たな(フュージティブ・プレデターを追っていた)アサシン・プレデターまで呼んでしまい……。という内容。

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画像出典元URL:http://eiga.com /サヴァン症候群でいじめられっ子の息子ローリーを演じるのは「ルーム」や「ワンダー 君は太陽」のジェイコブ・トレンブレイ

結果、マッケナ&ケイシー&ルーニーズ&ローリーvs秘密を守りたい「スターゲイザー」vs“最強の人間マッケナ”捕獲したいプレデター三すくみの戦いになっていくんですねー。

ただ、ストーリーの方はかなり乱暴で、何がどうなってるのかよく分からないシーンがいくつもあり、観ていて混乱してしまいました。

映画後半でフュージティブ・プレデターの秘密が明かされるんですが、だったら何で人間を襲ったのか? とか。

辻褄合わせより、面白さとカッコよさ優先

でもまぁ、本作の核となるのはそこじゃなくて、ルーニーズのメンバーは全員、過去の戦争で大きな心の傷を負った退役軍人であり、マッケナは政府の機密を知ってしまったために邪魔者になり刑務所に入れられそうになった男。

全員、国のために戦ったのに、ただ消費された挙句に廃棄された負け犬たちで、つまりは「エクスペンタプルズ」(消耗品)なんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /チーム「ルーニーズ」のみなさん

そんな廃棄品たちが意地を見せて、超強いプレデターやエリート面した「スターゲイザー」のエージェントたちをぶっ殺したら最高じゃね?

っていうのが、ショーン・ブラックが描きたかった事で、そこに彼の大好きな悪趣味で不謹慎な笑いや下ネタをたっぷり振りかけたのが本作。
細かい設定やストーリーの辻褄合わせ、そもそもプレデターすら正直どうでもいいって思ってるんじゃないかと。

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画像出典元URL:http://eiga.com /フュージティブ・プレデターを追ってきたアサシン・プレデター

もうね、旧友でボンクラオタク仲間のフレッド・デッカーと二人で、キャッキャ言いながら脚本を作っている姿が目に浮かぶようでしたよw

まぁ、それだけに「プレデター」を愛するファンや、映画に意味を求める真面目な映画ファンの人達が、本作を受け入れられない気持ちもよく分かりますけどねー。

でもまぁ、本作はそういう映画じゃなくて、「グーニーズ」や「がんばれ!ベアーズ」的な、弱虫のイケてない奴らがいじめっ子グループに勝つっていう、ジュブナイル映画だと思いながら観れば、結構楽めるんじゃないかなーと思ったりしました。
まぁ、主人公たちはオッサンばかりですがw

興味のある方は是非!!

 

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女007誕生の物語「ドラゴンタトゥーの女」(2012)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、みんな大好きデヴィッド・フィンチャー監督の『ドラゴンタトゥーの女』ですよー!

今回久しぶりの鑑賞ですが、結構アチコチ忘れてたので見返して良かったです。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『ミレニアム』3部作として映画にもなったスウェーデンのベストセラー小説をハリウッドで映画化。『ソーシャル・ネットワーク』のデヴィッド・フィンチャーが監督を務め、白夜のスウェーデンを舞台に、数十年に及ぶ血族の因縁と猟奇的ミステリーに彩られた物語が展開する。キャスティング選考も話題になった天才ハッカーのヒロインを演じるのは、『ソーシャル・ネットワーク』のルーニー・マーラ。彼女と協力し合うジャーナリストを、『007』シリーズのダニエル・クレイグが演じる。原作とは異なる衝撃のラストに注目だ。(シネマトゥデイより引用)

感想

本作の原作は、スウェーデンのジャーナリスト兼作家のスティーグ・ラーソン原作のミステリー小説「ミレニアム」3部作の第一弾。
この三部作は最初にノオミ・ラパスが主演してスウェーデンで映画化され、その後、第一弾となる本作がデヴィッド・フィンチャーが監督、007シリーズのダニエル・クレイグルーニー・マーラでリメイクされたことで大きな話題になりました。

デヴィッド・フィンチャー

すでにご存知の方も多いでしょうが、ここで一応本作の監督、デヴィッド・フィンチャーの略歴をざっくりとご紹介。

カリフォルニア州マリン郡で育ったフィンチャーは、10代の時にオレゴン州に移り現地の高校を卒業。18歳で8mmカメラを用いて映画製作を始めます。

そして、1980年ジョージ・ルーカスが開設した「ILM」のアニメーターとして働きはじめ1984まで所属。
独立後の1986年、ビデオ製作会社「Propaganda Films」を設立し、マドンナ、ジョージ・マイケルエアロスミスローリング・ストーンズなどのミュージックビデオや、数多くのCMを手掛け1992年に「エイリアン3」で映画監督デビューします。

しかし、この「エイリアン3」は、名作と言われ人気も高かった前作の続編であり、ビックバジェット作品ということもあって企画・脚本段階からモメにモメまくり、監督に抜擢されたものの経験もなく若輩だったため発言権も少なかったフィンチャーにとって苦いデビューとなってしまいます。

この経験で深く傷ついたフィンチャーは、「新たに映画を撮るくらいなら大腸癌で死んだ方がましだ」と、次作に着手するまでの1年半にわたって脚本すら読まなかったそうですよ。

その後、監督した「セブン」(95)ファイトクラブ(99)などの大ヒットで、一躍ヒットメーカーとなったのは、ご存知のとおりです。

ミュージックビデオやCM畑出身だけに映像には並々ならぬセンスとこだわりを持ち、本作のOPでも、レッド・ツェッペリンの「移民の歌」のカバーに乗せた、超カッコイイCG映像は超かっこよかったです。

スウェーデン金田一シリーズ

そんな本作のストーリーをザックリ説明すると、「ミレニアム」誌で大物実業家ヴェンネルストレムの武器密売をスクープするも、名誉毀損で訴えられ裁判で敗訴し全財産を失ってしまったミカエル・ブルムクヴィストダニエル・クレイグ)。

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画像出典元URL:http://eiga.com /裁判で敗訴、窮地に立たされるミカエル

失意に暮れる彼のもとに、「一族の中から姪のハリエットを殺した犯人を見つける見返りに裁判判決を逆転させるような証拠を渡す」という大物実業家からの依頼が。

そこでミカエルは彼に興味を持ったドラゴンの刺青をしたフリーの天才女ハッカーリスベットルーニー・マーラ)とともに捜査を進めるうち、ミカエルは猟奇連続殺人に関わる一族の秘密に辿り着く。という物語。

かつてスウェーデンを牛耳っていた旧家の、第二次世界大戦に絡む因習と謎を、探偵役のミカエルとリスベットが解き明かしていくという展開は、横溝正史の「金田一シリーズ」に少し似てるなーって思ったりしましたねー。

リベンジからアベンジ、そしてヒーロー誕生へ

一方、ミルトン・セキュリティーのフリーの調査員である天才ハッカーのリスベットは、父への殺害未遂“最悪な出来事”を行ったことで精神病院に隔離された過去から、成人後も金銭を後見人に管理されています。
ところが、物語序盤で後見人が脳溢血で倒れ、新たな後見人は金銭を渡す代わりに彼女に性的な“サービス”を要求し、挙句レイプまでするクズ野郎。

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画像出典元URL:http://eiga.com /自分をレイプしたクズ野郎を執拗に追い詰めるリスベット

そんなクズ野郎に、リスベットが行う“復讐”は、その前のレイプシーンがあまりにも酷いだけに、胸のすく思いでしたねー!☆拍手!!(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\喝采!!☆

その後、リスベットはミカエルと合流して捜査を進める事になるんですが、この時のミカエルの誘い文句が「少女殺しの犯人探し」で、リスベットはハリエットに自身を重ね合わせてミカエルと手を組む事を決めるのです。

つまり、自身の生活とクズ男への“リベンジ”(個人的な復讐)に自身の能力を使っていたリスベットが、この瞬間、少女殺しの犯人を見つける“アベンジ”(公共のための復讐)のために能力を使う事を決めるわけですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /「女007」に覚醒したリスベット

これこそが、本作でフィンチャーが描きたかった部分で、つまり本作は女007リスベット誕生の物語であり、相棒のミカエルはボンドガールなのです。

そんなミカエルに現役ボンド役のダニエル・クレイグを配役するところは、さすがフィンチャーだなーって思いましたねーw

もちろんこれらの要素は原作やスウェーデン版でも描かれていますが、フィンチャー版はもう一つの軸であるミステリー要素より、明らかにリスベットの物語を見せることに比重を置いた描き方をしていますしね。(犯人のアイツなんか、登場した瞬間からずっと企んでる顔してますしねw)

同時にリスベットは、これまでフィンチャーが描いてきた主人公像を踏襲したキャラクターでもあります。

フィンチャーが作品を超えて描き続けているテーマは、乱暴に言えば「ぼんやりしてると巨大な権力に飼いならされ、気が付けば踏み潰されてしまうぞ! お前ら目を覚ませ!」で、それは多分「エイリアン3」のトラウマが関係してると思うんですが、本作のリスベットは小柄で痩せっぽっちな体で巨大な権力に立ち向かう、まさにフィンチャーが思い描く理想のヒーローなのです。

タバコ

本作序盤、失意のどん底だったミカエルは、タバコと一緒にライターを購入します。
これは、ミカエルが今まで禁煙していた事を示していて、以降、事件に関わっている間の彼は事あるごとにタバコを吸っているんですね。

それはリスベットも同じで、彼女はヘビースモーカーとして描かれていますし、ミカエルとタッグを組み、セックスをした後なんかは一本のタバコを回し飲みしたりします。

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画像出典元URL:http://eiga.com /アウトローはタバコを吸う

つまり本作でのタバコは、アウトロー、つまり“支配から解き放たれた者”を表すアイコンであり、“アチラとコチラ”を分けるアイテムなのです。

なのでタバコや喫煙に注目して、本作を観るのも面白いのではないでしょうか。

興味のある方は是非!!!

 

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映画仙人イーストウッドの手腕「15時17分、パリ行き」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、クリント・イーストウッド監督『15時17分、パリ行き』ですよー!

アムステルダムからパリに向かう列車で実際に起きたテロ事件の顛末を、巻き込まれた本人たち主演で映画化したという超変テコな映画で、観終わった直後は正直、一体どう判断すればいいのか、困惑しましたねーw

あ、ちなみに今回はほぼ実話なのでネタバレは気にせずに書きます。
なので、「ネタバレは嫌!」という人は、先に映画を観てから、この感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

クリント・イーストウッド監督が、2015年8月に高速鉄道で起きた無差別テロ事件を映画化。列車に乗り合わせていた3人のアメリカ人青年がテロリストに立ち向かう姿を描く。事件の当事者であるアンソニー・サドラー、アレク・スカラトス、スペンサー・ストーンを主演俳優に起用し、当時列車に居合わせた乗客も出演。撮影も実際に事件が起きた場所で行われた。(シネマトゥデイより引用)

感想

まぁ、結構前に公開されレンタルも始まっていた作品で、「評判もいいし、イーストウッド監督なんだからある一定の面白さは保証されてるんだろう」とは思いつつも、正直、中々気が乗らずにずっと先送りにしていた作品なんですよね。

実話ベースの物語をまったくの素人である本人たち主演で映画化ってところが、何かこう、大丈夫なのか? っていう感じで。

で、今回意を決して観たら、想像してた以上に変テコな映画でした。

タリス銃乱射事件とは

2015年8月21日、乗客554名を乗せたアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリス車内で起こったテロ事件です。

トイレに入ろうとしたフランス人男性が、イスラム過激派の男がトイレ内で自動小銃AK-47の装填音に気づき、出てきたところを取り押さえようとするも男は自動小銃を発砲。フランス系アメリカ人の乗客が被弾し重傷を負います。

しかし、この列車にたまたま乗り合わせていたアメリカ軍人のアレク・スカラトススペンサー・ストーンアメリカ人大学生のアンソニー・サドラーの幼馴染3人と、フランス在住ビジネスマンのクリス・ノーマンが男を取り押さえ、スペンサーが犯人にカッターナイフで切り付けられ、首と手を負傷しつつも犯人を制圧。大事には至らなかったという事件です。

主人公の半生を“そのまま”描く

本作の原作は、事件の当事者でもあるスペンサー、アンソニー、アレクのインタビューを元に、映画監督でもあるジェフリー・E・スターンがまとめた同タイトルのノンフィクション本。

その本を読んだイーストウッドが、本作の主演でもある実写化のオファーを出し、さらにスペンサー、アンソニー、アレクが“いい顔”だったので、三人に出演をオファーをしたんだそうです。

そんな本作は、3部構成になっていて、
第一部は3人の少年時代。
第二部はスペンサーが軍に入隊してからのエピソード。
そして第三部は三人がヨーロッパ各地を旅行する様子から、事件に遭遇・解決し、フランソワ・オランドフランス大統領から勲章を授与され、地元サクラメントに凱旋するまでを描いているんですね。

第一部の少年時代は子役を使っての劇映画仕立てになっていて、
三人それぞれが学校の問題児扱いされていた事。

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画像出典元URL:http://eiga.com /迷彩左アレク、迷彩右スペンサー、右アンソニーの出会い。

キリスト教系の小学校だったため、シングルマザーだったスペンサーとアレクの母親は先生から不当な? 偏見を持たれれていた事。
スペンサーがミリオタのボンクラ少年だった事。(迷彩シャツを着てサバゲーばかりしていた)
親の都合で、三人が離れ離れになった事などが描かれています。(大きくなってからも三人は友人関係を続けていますが)

この第一部は劇映画らしい劇映画で、イーストウッド版「スタンド・バイ・ミー」という感じでしたねー。

続く第二部は、スペンサーの学生時代からスタート。
アルバイト先での海兵隊兵士との会話で、スペンサーは「自分も誰かを救いたい」アメリカ空軍のパラレスキュー隊に入隊する事を決意。
アンソニーに「お前、これまで何もやり通した事が無いじゃん」と言われたことで一念発起した太っちょの彼は、生まれて初めて猛特訓を重ねて体筋骨隆々のマッチョボディーへ。

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画像出典元URL:http://eiga.com /スペンサー「俺、空軍に入隊すっから」アンソニー「お前何やっても続かなかったじゃん」

優秀な成績でアメリカ空軍への入隊を決めるスペンサーでしたが、視覚の「奥行きの検査」に引っかかってしまい、志望したパラレスキュー隊を断念

SERE指導教官という職種を選ぶも、努力が実らなかったことで訓練に身が入らず、寝坊して遅刻したり、課題を雑にこなしたりして落第。救護兵となり、勤務地のポルトガルで趣味の柔術に明け暮れるんですね。

一方、幼馴染のアレクも軍人になり、アフガニスタンに派遣されていますが、想像よりも平穏で退屈な日々。

スペンサーは、大学生だったアンソニーも誘って、三人でヨーロッパ旅行を決めるんですね。

そして第三部、幼馴染三人がヨーロッパの名所をキャッキャと旅行する様子を延々観せられるシークエンスでは最初「俺は一体何を見せられているんだ…という気分になりましたよw

イタリアでコロッセオに感動したり、女の子をナンパしたり、酒場で出会ったオッサンの勧めでアムステルダムに行って、クラブでポールダンスに興じて大いに楽しんだり。

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画像出典元URL:http://eiga.com /「アムスがええぞー。おねえちゃんもカワエエぞー」というオッサンの言葉に食いつくスペンサーとアンソニー

オッサンに勧められて行った、アムステルダムのクラブで大盛り上がりのシーンを観てて、「お、これは泥酔して目が覚めたら、廃工場的な場所で拷問される展開か!?」(「ホステル」)なんて一瞬期待したものの、もちろんそんな事はなく、三人は旅先でいろいろな人に止められたパリに向かうべく、15時17分、アムステルダムからパリに向かう高速列車タリス号に乗り込むのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com /それまでのボンクラフェイスが嘘のような凛々しい顔つき!

そこで前述のタリス銃乱射事件に遭遇し、得意の柔術でサクっと犯人を取り押さえ、重症だった男性を次の駅までプロの技で救護し続ける――という内容。

あまりにも、事件のシーンがアッサリ終わって、観終わったあと思わず( ゚д゚)ポカーンですよw 「え、終わり…?」 みたいなw

英語なので、主演の三人や実際犯人に撃たれて重症を負った乗客男性とその奥さん(こちらも本人が出演)の演技が上手いのか下手なのかは分かりませんが、まさか三人以外も実際に事件に巻き込まれ(しかも重症を負った)た人たちを起用してるとは思わなかったので、ネットで調べてビックリしました。

しかし、実際に事件に巻き込まれた人たちが、実際に走る実際の列車の中で事件のシーンを再現してみせることで、セットや役者では出せない生々しいリアリティーイーストウッドは狙っていたのかもしれないし、事実、クライマックスシーンは本人ならではのドキュメントタッチな生々しさがあったように思いました。

映画仙人イーストウッドの手腕が炸裂

そんな本作は一見、本人出演による再現ドラマのような作りで、フィクションというよりはドキュメンタリーに近いわけですが、そこは今や映画仙人の域に達しているイーストウッド

実は本作が劇映画としてギリギリ成立するように、細部の見せ方をしっかり計算した演出をしているんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /大量の銃器と弾丸を持っていたテロリスト。早い段階でスペンサーが止めていなかったら大惨事になっていたかも。((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

冒頭で一度、この映画のクライマックスで起こる事の前段を見せることで、三人が列車に乗り込んだあとに、Wi-Fi環境のある一等車に映るエピソードで、事件が起こる車両と関係者の位置関係を観客が「あ、そういうことか」と解るようにしてたり。

落ちこぼれだった少年時代から、スペンサーの軍隊での挫折とその後の展開、ヨーロッパでキャッキャとハメを外す三人の様子を、一見、無造作に繋ぎ合わせただけのように見せつつ、全てのエピソードがクライマックスのテロ阻止のシーンの伏線として、また、スペンサーとアンソニーのお母さんの子育てが報われるラストの表彰シーンやパレードへの布石に綿密に計算されているわけです。

それでいて、観客に作為を悟られないように劇映画的なドラマ演出を極限まで削って淡々と見せていく手腕は、さすがイーストウッドだなーと思いましたねー。

ちなみに、原作本ではテロの犯人の背景についても詳しく描かれているようですが、本作ではサクッとオミットしています。

多分、今までのイーストウッドなら、犯人と三人の過去を対比させるように描いていたかもですが、本作の主題はそこではないという事なんでしょう。

本作でイーストウッドが訴えたかったのは、「ヒーローとは特別な人間じゃなく、なすべき瞬間に、なすべきことを出来る人間なんだ」という、シンプルなテーマで、もっと言うと「人生に無駄はなく、苦い経験も別の形で活かせる時がある」という、イーストウッドから観客へのメッセージなのかもしれません。

とはいえ、まぁ、本作がイーストウッドの映画史上でも相当変テコな映画なのは間違いないし、結構好き嫌いは分かれそうな映画だとは思いますが。

興味のある方は是非!!

 

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note.mu

地味だけど面白い!「特捜部Q 檻の中の女」(2013)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、前々から気になっていたけど、タイミングが合わなくて中々手を出せなかった映画『特捜部Q 檻の中の女』ですよー!

デンマークの作家J・エーズラ・オールスン原作の同名小説シリーズを、北欧版?「ドラゴンタトゥーの女」のスタッフが実写映画化し大ヒットした「特捜部Q」シリーズ第一弾です!

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画像出典元:http://eiga.com

概要

デンマークの作家J・エーズラ・オールスン原作の『特捜部Q』シリーズを映画化したサスペンスドラマ。未解決事件を扱う窓際部署所属刑事の活躍が、スリルあふれる描写で綴られる。捜査ミスにより部下を殉職させ、自身も重傷を負った経験を持つ殺人課の刑事・カール。新設部署である特捜部Qへ配属されることになったが、そこは未解決事件の残務整理を主な業務とする閑職部署だった。仕事をしていく中で、カールは5年前に起きた女性議員の失踪事件に興味を持つ。議員のミレーデが、船から姿を消した後自殺として処理されていたのだ。助手アサドの力を借りながら、カールは再調査に挑むのだが…。(allcinema ONLINEより引用)

感想

僕はこれまで、「ぼくのエリ 200歳の少女」(2010)と「ミレニアム」シリーズ3部作など、北欧映画に詳しいわけではないけどそれなりに縁があったりします。
なので本作も前々から気になってはいたんですが、タイミングが中々合わなくて今まで観れてなかったんですね。

で、先日、にっきにっきさんのレビューを読んで、俄然興味が湧いたので早速TSUTAYAでレンタルしてきましたよ。

usnk.hateblo.jp

 

地味だけど丁寧

まず、本作のストーリーをざっくり説明すると、

殺人課のエースながら独断的なカール(ニコライ・リー・カース)は捜査中に応援を待たずに現場に突入、部下を殉職・重症を負わせ、自身も重傷を負ってしまう。

3ヶ月後復職したものの、彼と組みたがる刑事はおらず、彼は新設部署「特捜部Q」に転属させられてしまう。
新設部署といえば聞こえはいいが、そこは過去20年分の未解決事件の資料整理を行う窓際部署で、カールは事実上左遷されてしまったのだ。

そんな彼の相棒はアラブ系のアサド(ファレス・ファレス)。
カールにとって都落ちである特捜部Qも「二年間倉庫でスタンプばかり押していた」彼にとっては栄転だった。

アサドはカールを「ボス」と呼び、壁に貼った事件の資料を見せ、どれから始めるか尋ね、カールは5年前の女性議員の自殺事件に目を留めて――という物語。

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画像出典元:http://eiga.com /カール(左)とアサド(右)

最初はギクシャクしていた二人が事件の再捜査を通してお互いを認め合うようになっていくっていう典型的なバディもので、一言で言うと北欧版「相棒」みたいな映画でした。

ド派手なアクションがあるわけではなく、ヒゲ面のオッサン二人がアッチコッチ行って聞き込みをする絵面が映画の3分の2を占めるという実に地味な映画

なのに、シッカリ面白いんですよ!

というのも、脚本、キャラ造形や配置、構成や見せ方が、一つ一つ丁寧で、目新しい事は殆どしてないんだけど、観客に飽きさせずに見せる工夫が随所に施されているっていう非常に好感の持てる作品だったんですね。

あまりにも雑な捜査と結論に違和感を感じたカールとアサドは事件の再捜査を始めるんですが、その過程で少しづつ犯人に近づいていく様子と、実は生きていたミレーデが犯人に加圧室に閉じ込められ、1年ごとに1気圧下げられるという壮絶な拷問を受け、それでも生き伸びるため必死に正気を保とうとする様子が交互に描かれていきます。

そして、後半部分では犯人の目的と衝撃の動機が明らかになっていくという正統派のミステリーサスペンスなのです。

キャラ萌え映画

そんな本作のメインキャラは、短気でワンマンだけど事件の真相に迫るカンの良さと行動力があるカールと、(恐らく人種差別で)ずっと窓際部署にいて、けれど腐らず、穏やかで優しい性格でカールをフォローするアサドという正反対の二人。

二人共ヒゲ面のオッサンなんですが、何ていうか、物語が進むうち、この二人の関係性に萌えてくるんですよねw

最初はアサドの名前を間違えたり、アサドの淹れる濃すぎるコーヒーに文句を言ったりしてるカールですが、一緒に捜査を進めるうち次第にアサドの能力を認めるように。
後半、店のコーヒーを飲んで「お前の淹れる濃すぎるコーヒーの方よりまずい」(意訳)とボソっと呟くカールには、思わずツンデレかよ! (。・д・)ノ)´Д`)ビシッとツッコんでしまいましたよw

頑固者のカールですが、根は悪い奴じゃなくて、暴走もルール違反も全ては事件を解決するためなんですよね。

自分の独断のせいで、全身麻痺になってしまった部下の見舞いに行って、恨み言を言われて傷ついたり、励まされて元気になったり、カールは基本単純でいい奴なのです。

一方のアサドは、むしろ年上のカールよりもずっと大人で、ついつい先を焦って突っ走るカールには出来ない事を地道に補いながら、事件を解決に導くヒントを得ていきます。

アサドいい奴! 友達にしたい男ナンバー1

そんな二人のキャラ萌え映画としても、本作はしっかりツボを押さえてて「こいつらをもっと見ていたい」って気持ちにさせるのです。

北欧映画ならでは

「ぼくのエリ 200歳の少女」(2010)と「ミレニアム」シリーズもそうなんですけど、いわゆる北欧映画って、ハリウッド映画やイギリスやフランスなどのヨーロッパ映画、はたまた中国や韓国などのアジア映画とも違う、独特なエグさがある気がします。

それは多分、歴史や文化や風土の違いからくるものなんでしょうけど、撃たれたり、斬られたり、刺されたりして血がドビューの「ギャー!」っていうグロさとは違う、地味に心を抉ってくるっていうか、残酷さの種類が違うっていうか。(いつも上手く言えないんですよねー)

本作でも、犯人はある過去の復讐のためにミレーデを誘拐。
加圧機の中に閉じ込めて、一年に1気圧ずつ下げていくっていう、「普通そんなの思いつかないよ!」っていう気の長い拷問を5年間も続けるわけです。
5年ですよ!?

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画像出典元:http://eiga.com 加圧室に5年も閉じ込められるミレーデ

食事の入ったバケツと排便用のバケツを毎日取り替え、ミレーデが歯痛になったら、ペンチを差し入れて自分で歯を抜かせる(中々のトラウマシーンでした)など、東洋とも西洋とも種類の違う残酷さと、独特な陰湿さや粘り強さのようなものを感じるんですよね。あと、ほんのちょっとの横溝正史感も。

それが(特に冬のシーンなどでの)クリアな映像と相まって、北欧映画でしか出せない空気感を醸し出しているんだと思います。

ともあれあと3本シリーズが出てるので、これから引き続き観ていこうって思いましたねー!

興味のある方は是非!!!

 

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マーゴット・ロビーのコスプレ映画「アニー・イン・ザ・ターミナル」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「スーサイド・スクワッド」(2016)のハーレイ・クイン役で一躍人気を博し、「アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル」(2017)のトーニャ・ハーディング役でアカデミー賞にノミネートされるなど、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのマーゴット・ロビーが制作・主演を務める『アニー・イン・ザ・ターミナル』ですよー!

マーゴット・ロビーと共演するのは、「ミッション:インポッシブル」シリーズのベンジー役でお馴染み、僕の大好きな俳優サイモン・ペグということで「これは観るしかない!」と早速レンタルしてきました!!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』などのマーゴット・ロビーが製作と主演を務めたスリラー。ロンドンの街を舞台に、さまざまなトラブルを収束させる美女が仕掛ける復讐(ふくしゅう)劇を映す。監督は『美女と野獣』などに携ってきたヴォーン・スタイン。『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』などのサイモン・ペッグ、『オースティン・パワーズ』シリーズなどのマイク・マイヤーズなど実力派が共演する。マーゴットがダンサー、看護師、ウエイトレス姿を披露している。(シネマトゥディより引用)

感想

マーゴットのコスプレが堪能できる映画

本作のストーリーをザックリ紹介すると、「ロンドンの地下鉄終着駅にある街の24時間営業のダイナーで働くウェイトレス兼殺し屋が主役の復讐劇」です。

街を裏から牛耳る謎の男ミスター・フランクリンの依頼(暗殺)を一手に引き受けたいと申し出たアニー(マーゴット・ロビー)にフランクリンは前任者で2人組の殺し屋、ヴィンス(デクスター・フレッチャー)とアルフレッド(マックス・アイアンズ)を自力で始末することを条件に承認。

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画像出典元URL:http://eiga.com

一方、深夜の駅のホームで一人佇む元教師のビル(サイモン・ペグ)は、清掃係の駅員に始発の時間まで24時間営業のダイナーで待つ事を進められます。
彼は、不治の病魔に侵され余命いくばくもないので、電車への飛び込み自殺を考えていたんですね。
ダイナーを訪れたビルは、アニーに自分の事情を話し、どのような最後がいいかを相談します。

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画像出典元URL:http://eiga.com

また、ミスター・フランクリンの仲介役として、二人組の男と接触したアニーは、若い男を手玉にとり……。

実はアニーは、“ある男”に復讐を遂げることを目的に、ウェイトレス、ポールダンサー、看護師、黒髪の殺し屋と次々に姿を変えながら、美貌と言葉を武器に関わる男たちを悪夢の世界へと引きずり込んでいく……という物語で、本作は復讐劇であると同時に、ある種のミステリー要素も含む作品になっています。

ただ、まぁ、何ていうか、色んなコスチュームに身を包んだマーゴット・ロビーを堪能出来る以外に、さして見所はない凡庸な作品……というか、個人的には明らかな失敗作とだと思いましたねー。

不思議の国のアリス

本作のベースになっているのは、ルイス・キャロルの児童小説『不思議の国のアリス』です。

ですが、主演のマーゴットはアリス役ではなく、アリスを不思議(悪夢)の世界へと誘うウサギの役。では、アリス役は誰かといえば、彼女と関わる男たちなんですね。

同時に物語が進むと、彼女もまた、ある男によって悪夢の世界へと送り込まれたアリスだった事が明らかになっていきます。

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画像出典元URL:http://eiga.com

つまり、男たちの暴力によって悪夢に引きずり込まれたアリスが、復讐のため男たちを悪夢の世界へ引きずり込むべく、ウサギへとジョブチェンジしたわけです。

そう考えると、物語のベースがロリコンで有名なルイス・キャロルの代表作「不思議の国のアリス」ってところも「あー、なるほどねー」という感じ。

そんなアニーの現実離れした妖艶さを演出するため、舞台となる街も駅も、ニコラス・ウィンディング・レフンっぽい原色のライティングで彩られて、あえて現実感のない夢の中のような世界になっているのです。

作劇として破綻してね?

で、本作はなぜアニーが裏稼業に入っていったのかという、種明かしがラストでされます。というかアニーが全部セリフで説明してくれます。

この作品はある種のミステリー要素も含んでいると前述しましたが、前半ではアニーを謎めいた女として見せ、ラストでこの物語の全てが明らかにするという趣向なんですね。

でも、残念ながら本作においてその趣向は完全に失敗してるんですよ。 

だって、事前に何の前フリもないんだもん。

つまり、アニーが、誰になぜ、復讐しようとしているのかっていう目的を匂わせるシーンが一切なくて、完全に相手を追い詰めたところで「実は私は~」と説明を始めるっていう、完全な後出しジャンケン

観ているこっちは完全に(    ゚д゚)ポカーン…ですよ。

 

普通そういうどんでん返し的なミステリー要素って、物語の途中でヒントになりそうな伏線を張っていて最後にネタばらしするから、観客も「あー、あの時のアレはそういう意味だったのか!」と納得するわけですよ。

ところが、この作品ではずっとアニーの妖艶な謎の悪女っぷりを幻想的な雰囲気で見せて、何でもアリな世界観なのかな? と思わせて最後の最後に「実は~」とやる。
でも、そもそも最初から謎が提示されてないんだから、ネタばらしさられたところで「え、そういう話だったの?」と困惑するだけなのです。

あと、本作一番の見せ場である“アニーの秘密”のヒントらしきシーンはちょこちょこ入ってるんだけど、それも時系列入れ替え演出のせいでまったく意味がないっていうね。

つまり、映画としてどうこう以前に、もう作劇からして失敗してると思うんですよね。

というわけで、個人的に本作はマーゴット・ロビーのコスプレ以上の価値は感じませんでした。

興味のある方は是非。

 

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マカヴォイの独壇場「スプリット」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、前回ご紹介した「アンブレイカブル」とともに、現在公開中のM・ナイト・シャマラン最新作「ミスター・ガラス」と世界観を共有するシャマランユニバース三部作の1本『スプリット』ですよー!

この映画、個人的にはシャマラン映画の中で一番好きな作品になりました!(って言っても、ちゃんと観たのは本作を含めて3本だけどw)

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

シックス・センス』などの鬼才M・ナイト・シャマランが監督、製作、脚本をこなして放つスリラー。女子高校生たちを連れ去った男が、23もの人格を持つ解離性同一性障害者だったという衝撃的な物語を紡ぐ。複雑なキャラクターを見事に演じ分けたのは、『X-MEN』シリーズなどのジェームズ・マカヴォイ。高校生対23の人格による激しい攻防戦に息詰まる。(シネマトゥデイより引用)

感想

とはいえ、シャマランですからね。
今回も正直どこまで書いていいのかよく分からないんですよねーww
ほら、シャマランと言えばどんでん返し、どんでん返しといえばシャマランじゃないですか。

まぁ、本作と先日ご紹介した「アンブレイカブル」と本作が「ミスター・ガラス」に繋がるというのは公式でも発表されてるので、その辺はもう書いていいと思うんですが。

というわけで一応、ラストの決定的なネタバレだけはしないように感想を書いていくつもりですが、「ネタバレは嫌!」という人は先に本作を観てから、この感想を読んでくださいね。

開始5分で物語は動き始める

本作の内容をざっくり一言で言うと、3人の女子高生が多重人格のジェームズ・マカヴォイに誘拐されるという物語です。(これはネタバレじゃないよ!)

で、映画が始まると誘拐される少女3人の1人の誕生パティーが行われるんですが、その中にはクラスに馴染めない問題児の女の子ケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)も呼ばれてるんですね。

で、パーティーの主役だった女の子のお父さんが、ケイシーともう一人の女の子を車で家に送って上げることになります。

先に、三人を車に乗せたお父さんは、誕生日プレゼントをトランクに積んでいる。
その後ろ姿に、カメラがゆっくりと迫っていくんですが、振り向いたお父さんの言葉でそのカメラが何者かの主観映像だった事が分かるんですね。

そこでカメラが車内の三人に切り替わり、乗り込んできたのは坊主頭のマカヴォイ。
後ろの二人が「車を間違えているわよ」と注意すると、男はおもむろにス麻酔らしきスプレーを三人に吹きかけたところで、画面が暗転してタイトルどーん!

うっひょー!☆拍手!!(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\☆(゚∇゚ノノ\喝采!!☆

もう完璧! 

映像が車内に切り替わってからは、助手席に座ったケイシーの視点に変わり、彼女の感じた違和感を映像で見せながら、徐々に不穏さを盛り上げるという心憎い演出もいい!

やるじゃんシャマラン!( *• ̀ω•́ )b グッ☆

そして、ケイシーが目覚めると、そこにはすでに目が覚めていた二人が怯えていて、観客は彼女たちと同じく何も分からない状況に放り込まれ、物語が進むうち、少しづつ状況や真相を理解していくという作りになっていくわけです。

 一時は、不向きなビックバジェットの映画を手がけた為に、評論家からもファンからも酷評され、迷走してると言われたシャマランですが、2015年の「ヴィジット」を経て本作で完全復活したと言われてるし、僕もそう思いますねー。

僕は熱心なファンではないですが、シャマランはどちらかといえばワンシチュエーションの小作品の方が得意に思えるし、そういう意味で本作は、まさにシャマランにピッタリの題材。

そして「アンブレイカブル」から16年、途中(失敗作も含む)8本の作品を手がけたことで、その強烈な作家性はそのままに、語り口がグッとスマートになって見やすくなっているように思いました。

マカヴォイの独壇場

そんな本作を成功に導いた功労者といえば、数々の作品に引っ張りだこの実力者ジェームズ・マカヴォイ
本作では、なんと23+1重人格者を演じています。
といっても、主にメインで登場する人格は5人。

神経質で潔癖症のデニス。

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画像出典元URL:http://eiga.com 多分デニス。

女性人格のパトリシア
9歳の少年ヘドウィグ

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画像出典元URL:http://eiga.com  ヘドウィグ

リーダー格で社交性のあるバリー
主人格で2014年9月18日から副人格達に乗っ取られていたケビン

それぞれ別の人格である彼(彼女)らが、身体の主導権を握るには“照明”という権利が必要で、それをコントロールしていたのがリーダー格のバリー。
バリーは彼の主治医であるセラピストのカレン・フレッチャー博士との面会の時など対外的なシーンで主に登場します。

他に、オーウェル、ジェイド、ともう一人の計8人 を演じ分けているわけですが、さらに、(姿は直接移りませんが)デニスとパオリシアの会話を一人で演じたり、フレッチャー博士の前でデニスがバリーに成りすますシーンもあったりしするので、バリーを演じるデニスをマカヴォイが演じているという非常に難しい芝居もしてるんですよね。

後半ケイシーの前で、各人格が次から次へと入れ替わるシーンでは、さすがのマカヴォイも「自分が一体誰を演じているのかこんがらがってしまった」と、インタビューで答えていたようです。

アニャ・テイラー=ジョイの存在感

そんなマカヴォイに負けず劣らず、本作で重要な役割なのがアニャ・テイラー=ジョイ演じるヒロインのケイシー

彼女は友人や先生などとも距離を取る、孤独な少女です。
それには、彼女の生い立ちや家庭環境が関係していて、それゆえ他の二人のように、むやみにデニスたちに立ち向かおうとしたり、無計画に彼らから逃げ出そうとはしません。

 しかし、9歳の少年ヘドウィグが表面に出ている時は、言葉巧みにヘドウィグから情報を引き出したり、言葉で丸め込んで逃げる隙を伺ったりするんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com いい味だしてるアニャ・テイラー=ジョイ

ただ、怯え、悲鳴を上げて逃げ惑うだけのヒロインではなく、彼女は頭脳をフル回転させながら、生き残るチャンスを狙っているのです。
そんな難しい役どころをアニャ・テイラー=ジョイは見事に演じてるんですね。

大きな瞳でケイシーの心情を上手く表現し、マカヴォイ演じる複数の人格と対等にわたい合う存在感を表しているのです。

 

というわけで、ここからネタバレ。

どういう物語なのか

前述した通り、本作は「アンブレイカブル」の続編です。

アンブレイカブル」は、ミスター・ガラスことイライジャ(サミュエル・L・ジャクソン)の計略によって不死身の男デヴィッド(ブルース・ウィリス)が能力を覚醒、ヒーロー? になるまでの物語でしたが、本作は23人格のケビン(ジェームズ・マカヴォイ)が、24人目の人格を目覚めさせ、スーパーヴィラン(悪者)として覚醒するまでの物語なんですね。

母親に虐待されていたケヴィン少年は、自分を守るため22の人格を作り出した多重人格者。
大きくなってからは、彼の副人格バリーがリーダーとして、それぞれの人格をコントロールしながら社会生活を送っています。

で、長い間、そんな“彼ら”のカウンセリングをしてきたのがセラピストのカレン・フレッチャー博士。

彼女は女子高生誘拐事件をテレビで知り、さらにケビンの複数人格からメールを受けとったことでケヴィンの副人格が事件に関わっているのでは? と疑いを持ち始めるのです。

ケヴィンの副人格たちは、前述したように“照明”という主導権を握る権利を得て表出してきますが、 デニスとパトリシアはある危険思想を持ち始めたことで、照明の権利をバリーに取り上げられてしまっているのです。

しかし、権利を持っていた9歳のヘドウィグを上手く言いくるめ仲間に引き込んだ二人は、バリーから照明を奪取して封じ込め、女子高生誘拐事件を起こすんですね。

二人はなぜ女子高生を誘拐したのか

デニスとパトリシアは、24番目の人格「ビースト」がいることを確信。
彼を覚醒させるための“生贄”として、3人を誘拐してきたわけです。

彼女たちを(物理的に)食べさせることで「ビースト」は(物理的に)人知を超えた生物に進化する。ということらしいんですね。

ビーストはケヴィンの副人格の中で、最も恐ろしい破壊衝動の塊であり、世界に自分たちを認知させるという、ケヴィンの中の承認欲求が具現化した姿なのです。

そうした超能力者というか進化した人類を、X-MENでプロフェッサーXを演じたマカヴォイに演じさせるんですから、「シャマランの狙ったな?」 と邪推せずにはいられませんw しかも「ビースト」だしねw

一方、ケイシーが学校で問題を起こすのは、家に帰りたくないから。
彼女の父親は、彼女が小さい時に心臓発作で亡くなっていて、以来、ケイシーは叔父に引き取られて暮らしているのですが、彼女は叔父からずっと性的な虐待を受けているのです。

当初、彼女がほかの二人の「三人であいつを倒そう」という誘いに乗らないのは、大人の男の恐ろしさが身に染みて分かっていて、かつ、幼少期に父親と行っていた狩りで、力の違い(戦力差)を冷静に見極められるからなのです。

つまり、ケビンとケイシーの二人は同じ境遇を持つ鏡像関係にあり、ケビンが副人格を作りトラウマや怒りを外に向けるのに対して、彼女はずっと内=自分に向けてきたんですね。

本作のラストは賛否両論あるようですが、僕はケイシーのその後に含みを持たせる終わり方は、個人的には好きでしたねー。

そして「ミスター・ガラス」へ

で、ネットでレビューを読んだところ、実はこのケビン「アンブレイカブル」でも登場しているのだとか。
劇中、能力に目覚めたデヴィッドが、人ごみの中で母親から虐待されている少年を“見つける”んですが、どうやらその少年が後のケビンということらしいんですね。

本作の最後でも、事件の報道をレストランのテレビでデヴィッドが見ているというシーンで挿入され、現在公開中の「ミスター・ガラス」に繋がる事がわかります。(これが今回のどんでん返し)
「ミスター・ガラス」の予告を観ると、デヴィッド・イライジャ・ケビンの他に、ケイシーも登場するようで、もうワクワクが止まりません!!

出来れば、この熱量のまま今すぐに「ミスター・ガラス」を観にいきたいんですが、僕の地元では公開してないっていうね。(ノω;)

まぁ、もちろん細かいアラは色々見えるんですが、物語の進みがスムーズなのでノイズというほどは気にならないし、ラストで「ビースト」になったケビンに賛否あるかもですが、「スリラー映画」ではなくて「ヒーロー映画」として観れば、僕的には十分に許容範囲でしたねー!

興味のある方は是非!!!

 

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シャマラン版スーパーマン?「アンブレイカブル」(2001)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、新作が公開されるたびに物議を醸すM・ナイト・シャマラン監督の長編映画アンブレイカブル』ですよー!

実は僕、シャマラン作品って「ヴィジット」(15)くらいしかちゃんと観てないんですが、現在シャマラン最新作「ミスター・ガラス」が公開中で、その作品と世界感を共有している作品ということで、観てみることにしました。

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画像出典元URL:http://www.Amazon.co.jp

概要

シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン監督とブルース・ウィリスのコンビによるサスペンス・スリラー。フィラデルフィア。ある日、乗客、乗員131名が死亡するという悲惨な列車追突事故が発生する。かつて有望なフットボールの選手だったデヴィッド・ダンは、その列車事故の唯一の生存者だった。しかも傷一つ負わなかったのである。“なぜ自分だけが奇跡的に助かったのか”と悩むデヴィッドのもとに、ある奇妙なメッセージが届く……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

シャマランの世界的大ヒット作といえば、ブルース・ウィリス主演の「シックス・センス
ところが僕はこの作品と、たまたまテレビでラスト10分のネタあかしのシーンだけを観てしまうという、非常に不幸な出会い方をしてしまったんですよねw

以来、シャマランとは縁がなくて、初めて最初から最後までしっかり観たのは2015年公開の「ヴィジット」だけだったりします。

で、先日Twitterでたまたま彼の新作、「ミスター・ガラス」が公開中だと知り、それがどうやら“ヒーロー映画”らしい事、サミュエル・L・ジャクソンブルース・ウィリスが出ている事、本作と2017年公開の「スプリット」を含めた“シャマランユニバース三部作”完結編らしい事を知って、本作に興味が沸いたんですね。
まぁ、残念ながら僕の地元では「ミスター・ガラス」の公開予定はないっぽいんですけどもw

ざっくりストーリー紹介

ある日、フィラデルフィアで列車の脱線事故という大事故が発生。
この事故で奇跡的に無傷だった中年男のデヴィッド・ダンブルース・ウィリス)以外の乗客は全員死亡してしまう。

そんなデヴィッドの元に、一通の封筒が届くことから物語は動き出す。

送り主は、些細なことでも骨折してしまう骨形成不全症という難病を持って生まれ、クラスメイトから「ミスター・ガラス」というあだ名をつけられたイライジャ・プライスサミュエル・L・ジャクソン
幼少期からコミックを読み続けコミックイラストの画商になった彼は、自分のように先天的に体が異常に弱い人間がいるなら、逆に驚異的に強靭な肉体を持つ人間もいるはずで、それがデヴィッドなのだと言う。
最初は相手にしないデヴィッドだったが……。という物語。

シャマランが描く“ヒーロー映画”

暴力を扱う映画に、ヒーローが暴力で事件を解決する映画と、暴力とは何かを描く映画の2種類がありますよね。
前者は痛快なヒーロー映画やアクション映画で、後者は「アウトレイジ」(10)などのギャング映画やノワール作品ってところでしょうか。

同様に“ヒーロー映画”にもヒーローがヴィラン(悪者)を倒す映画と、ヒーロー(正義)とは何かを描く映画の2種類があって、後者の有名どころで言うと「ウォッチメン」(09)や、「ダークナイト」(08)などが有名。
本作はその系譜にある作品なんですね。

こうしたリアル路線のシリアスでダークなヒーローコミックは、モダンエイジと呼ばれる1980年代以降のアメコミに顕著で、「ウォッチメン」のアラン・ムーアや、「バットマン: ダークナイト・リターンズ」のフランク・ミラーを筆頭に、今もアメコミの主流になっています。

これらの作品で彼らは、「正義とは」「ヒーローとは」といった主題を追求し、実際に起こった戦争等の歴史的事件を絡めながら描いているのです。

本作のインタビューなどでアメコミが好きと答えたシャマラン。本作のアイデアを考えた時に、これらモダンエイジ以降の作品に影響を強く受けたのではないかと、僕は思うんですよねー。

本作は、ヒーロー誕生譚を通して、何者でもなかった二人の男が自分の存在を証明するという映画です。

まぁ、言ってみればヒーロー映画の王道展開ではあるんですが、そこはシャマラン印。
シックス・センス」でも見せた、ラストでのどんでん返しが用意されている、ある種のミステリーホラー仕立てになってるんですねー。

そして、(予算が少なかったのかもですが)とにかく地味。
まぁ、それがリアルっちゃぁリアルなんでしょうけど、派手なアクションや映像は一切出ないし、マーベルのヒーロー映画的なカタルシスも皆無です。

薄暗い画面の中、辛気臭い顔でボソボソ喋るブルース・ウィリスと、変な髪型でずっとうさん臭いサミュエル・L・ジャクソンの問答が延々と続くのです。(´ε`;)ウーン…

なので、ヒーロー映画のエンタメ的カタルシスを求める人が本作を観たら、かなり盛大に肩透かしを食らっちゃうんじゃないでしょうか。

というわけで、ここからほんのりネタバレします。
ネタバレが嫌という人は、映画を観たあとにこの感想を読んでください。

 

イライジャの妄執

上記の通り、サミュエル・L・ジャクソン演じるイライジャは、先天性の病気でちょっとしたことで骨が折れてしまう超虚弱体質。
そんな息子を引きこもりにしないために、母親は彼が外に出るたびに一冊づつヒーローコミックを渡すという作戦に出ます。

こうして、多くのヒーローコミックを読み続けて立派なアメコミオタクになったイライジャは、コミックアーティストの原画を扱う画廊で成功してるんですが、同時にある種の妄執に取り憑かれるようになります。

それは、自分のように先天的に身体の弱い人間がいるなら、逆に先天的な能力を持つコミックヒーローのような人間もいるはずという理論。

そんな彼がついに見つけたのが、乗客が全員死亡する程の列車事故に遭っても無傷だったデヴィッドなんですね。

実は彼、生まれてこの方ただの一度も、病気や怪我をした事がないのが徐々に明らかになっていきます。
若い頃にはアメフトのスター選手でしたが、当時恋人だった奥さんとのデート中の交通事故で足を骨折して選手を引退した……ことになってるんですが、実はこれは嘘。
暴力的なアメフトが大っ嫌いな奥さんと結婚するために、足を折ったと嘘をついてアメフトを引退したんですね。

ただ、その事で奥さんと息子を愛しながらも、どこか心の距離を感じてしまうデヴィッドと、それを察知した奥さんの仲は次第に冷え込み、喧嘩したわけでもないのに離婚寸前。デヴィッドはニューヨークで人生をやり直そうとしていたのです。

そんな彼のもとに現れたイライジャは、自説をデヴィッド父子に披露。
最初はただの妄言だと思っていたデヴィッドですが、まだ小学生の息子の方はすっかり信じ込んでしまい、デヴィッドがいくら「普通の人間だ」と言っても信じず、ついには「パパが超人だということを証明する!」と拳銃を向ける始末。

「やめなさい!」「一発だけ!」っていう、付き合い始めの高校生カップルみたいな言い合いを繰り広げますw

その合間にもイライジャのラブコールは続き、デヴィッドもだんだんその気になってきて、他人に触れると相手の考えが分かる能力を発見したり、180キロ以上のバーベルを持ち上げたりするうちに、どうやら自分はマジでスーパーヒーローの能力があると確信するのです。

そして、自分のスーパー能力を実証するため、デヴィッドはレインコートで正体を隠して駅で悪者を探し、やっつけ、ついにスーパーヒーロー誕生! 
息子や妻との関係も修復できてめでたしめでたし……と思いきや。っていうね。

イライジャは何故スーパーヒーローを探していたのか

とまぁ、デヴィッドの方はそんな感じですが、では何故、イライジャはデヴィッドをスーパーヒーローに覚醒させたのか。
世界を守るため? ヒーローのサイドキック(相棒)になりたかった? ヒーローに守って欲しかった? 違います。

彼がデヴィッドをスーパーヒーローに覚醒させた理由は、スーパーヒーローの存在を証明することが=自分の存在を証明することになるからです。

ラストでヒーローに目覚めたデヴィッドとイライジャは握手を交わします。

体は極弱ですが頭脳明晰なイライジャなので、デヴィッドとの握手の意味を失念していたハズはなく、その結果も当然予測していたハズ。
彼にとっては握手もその結果も全てが計画のうちで、その結果こそがデヴィッドが真のスーパーヒーローになるための最後のスイッチでもあったわけです。

そして、計画を完遂することで彼はデヴィッドと同じく、自らの存在理由を手に入れる事ができるというわけですね。

生まれつき体の弱い彼は、コミックのようなヒーローにはなれない。
だったら……というわけです。

つまり、この映画は孤独な二人の男が“世界に承認されることで世界に居場所を見つける”物語であり、デヴィッドとイライジャの関係はシャマラン版「スーパーマン」なんですね。多分。

「面白かった?」と聞かれると(´ε`;)ウーン…と悩む作品ではありますが、2000年の段階で、リアル路線のダークでシリアスなヒーローものを映画化したシャマランは先進的だったんだなーって思いましたねー!

興味のある方は是非!!

 

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