今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

実話を元にした“決して諦めない男”の物語「パッドマン 5億人の女性を救った男」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは実話を元にしたインド映画『パッドマン/5億人の女性を救った男』ですよー!

愛する奥さんのために生理用ナプキンを作ったら、結果的に多くの女性を救うことになった男の物語です。

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概要

夫が妻のために安くて安全な生理用品を作ろうとする実話を基にしたドラマ。清潔で安価なナプキンを低コストで大量生産できる機械を発明し、さらには女性たちに働く機会を与える主人公の奮闘を描く。主人公を演じるのは、『チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ』などのアクシャイ・クマール。監督を、プロデューサーとして『マダム・イン・ ニューヨーク』などに携ってきたR・バールキが務める。(シネマトゥディより引用)

感想

実話ベースのインド映画

本作はタミル・ナードゥ州出身の発明家で社会活動家アルナーチャラム・ムルガナンダムが低価格で衛生的な生理用ナプキンを発明した実話を元にした、トゥインクル・カンナーの短編小説集「ザ・レジェンド・オブ・ラクシュミ・プラサード」の一編「The Sanitary Man of Sacred Land」を原作に作られたインド映画です。

トゥインクル・カンナーは元インドの元人気女優で、本作では制作にも名を連ねているんですね。

実話を元にしたインド映画と言えば、アーミル・カーン星一徹ばりのスパルタ教育で娘を女子レスリングインド代表に育てたマハヴィル・シン・フォーガットを、「きっと、うまくいく」のアーミル・カーンが演じた「ダンガル きっと、つよくなる」があって、方向性は違えどテーマはどちらも同じ

IT分野などで世界を牽引する発展を遂げる一方、多民族・他宗教国家であり地方では未だに因習(というか迷信)に囚われている人も多いインド。

女性の社会的立場の低さは地方に行くほど顕著なようで、両作ともそうした宗教観や因習からくる女性の地位向上や自立をテーマにした作品なんですね。

そこには、映画という人気メディアを通して国民を啓蒙する意味もあり、女性の社会的地位の向上をテーマに取り込んでいくのが、近年のインド映画のトレンドになりつつあるのかな? と思ったりします。

ざっくりストーリー紹介

本作の主人公ラクシュミ(アクシャイ・クマール)はのつく愛妻家。手先が器用で様々な発明をしては奥さんを喜ばせていたんですが、ある時、奥さんのガヤトリ( ラーディカー・アープテー)が月経の時に汚い布を使っている事にショックを受けます。

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彼の住んでいる村では月経は「穢れ」とされていて、月経の5日間女性は家には入れず軒先(というかベランダ?)で眠るんですね。

そこでラクシュミは奥さんに高価な海外製の紙ナプキンをプレゼントするんですが、ガヤトリは喜ぶどころか薬局に返してくるように言います。

それならとラクシュミはナプキンを自作してプレゼントするんですが、見よう見まねで作った彼のナプキンは役に立たず、そもそも女性の月経に男が首を突っ込むこと自体がタブーになっているので、彼の行動は村人だけでなく実母や姉妹、さらには最愛の妻からも理解されません。

それでも諦めないラクシュミは、ナプキンを作っては妹や女子医学生、はては初潮を迎えた少女にまでナプキンの試作品を渡すんですが、これがとうとう大問題に発展。

村人からは白い目で見られ、家族には見放され、挙句最愛の妻は実家に帰ってしまう事態に。

結局村を追い出される形になってしまったラクシュミ。
しかし、それでも彼は諦めません

学のない彼は自分のナプキンの欠点が分からず、それならと大学教授の家のお手伝いとして働きながら教授に教えを請おうとするんですが、仲良くなった教授の息子がググってくれたおかげで、自分が綿だと思っていたのはセルロースだった事を知ります。
そこで大企業を装ってアメリカからセルロースのサンプルを手に入れます。

そして高価なナプキン製造機の構造を研究し、同じ構造の安価な製造機を自作。
見事ナプキンを完成させるんですね。

ところが、せっかく作っても“男が作った生理用ナプキン”など使ってくれる女性はいない
途方に暮れるラクシュミですが、先進的な女性パリー( ソーナム・カプール)との出会いが彼とインド女性たちの運命を変えるのだった――という内容。

いわば本作はインド版「下町ロケットなんですね。

2001年のインドが舞台

驚くのは、この作品の元になっているのが2001年の実話だという事。
そして、ラクシュミにとって最大の壁となるのが男ではなく、彼が助けたいと思っている女性だという事なんですよね。

そこには彼らの宗教観やそれに伴う古い因習が当たり前の常識としてあって、また下半身の問題でもあるので女性たちの反発も分からなくはないんですけどね。

そんな誰にも理解されないラクシュミの行動を認めて価値を見出してくれたのが、大学教授の父に育てられた先進的な女性パリー。
都会育ちの彼女との出会いがキッカケとなって、それまで苦労の連続だったラクシュミの発明は一気に実を結び始めるのです。

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そしてそれが、インド中に思いもよらぬムーブメントを巻き起こして行くことになるんですね。

エンタメ映画として

もちろんインド映画ですから、劇中に歌とダンスも入りますよ。
映画冒頭で歌に合わせて彼が愛妻家であることや、手先が器用でアイデアマンであることが映像で語られていく手際の良さが素晴らしいんですよね。

また、正直エンタメ映画にしにくい題材をここまで見事なエンタメ作品として誰もが楽しめる映画にしたR・バールキ監督の手腕も素晴らしいって思いました。

劇中、スーパーマンバットマンスパイダーマンが引き合いに出されるんですが、ついにナプキンの謎を解き明かしたラクシュミが、ナプキン製造機を作り上げるまでのシーンは「アイアンマン」でトニースタークがアイアンマンを開発するシーンと同じ気持ち良さがありましたねー。

残念ながら

そんな本作は前述したように、生理用ナプキンを取り巻くインド国内の迷信を根絶するために人々の意識を高めるという啓蒙活動の意味合いもあるんですが、タブーを取り扱っているため残念ながらクウェートパキスタンでは上映禁止になってしまったそうです。

決して政治色の強い作品ではないんですが、国によっては宗教と政治が強く結びついていたり国同士の軋轢もあったりするので致し方ないのかもしれませんね。
ただ今は、やがてそうしたアレコレを乗り越えて、本作が世界中の人々に届く日が来ることを願うばかりです。

興味のある方は是非!!!

 

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掴みどころのない作品「ディアマンティーノ/未知との遭遇」(2018)*ネタバレ

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年「未体験ゾーンの映画たち」で公開されたポルトガル映画ディアマンティーノ/未知との遭遇』ですよー!

クリスティアーノ・ロナウド似のサッカー選手が、巨大なチワワが現れたフィールドの中をドリブルする予告編を観て「イナズマ・イレブン」的なコメディー映画なのかな?と思って観たら、思ってたのと全然違ってましたw

正直、今思い返して観ても、よく分からない映画でしたねー。

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概要

ガブリエル・アブランテスとダニエル・シュミットが監督と脚本を担当したファンタジードラマ。ネオナチ、難民、クローンなど多様な問題を背景に、ポルトガルの偉大なサッカー選手の引退後の迷走が描かれる。『熱波』などのカルロト・コッタがサッカーのスーパースターを演じた。(シネマトゥディより引用)

感想

一体何を観せられているのか……。

本作を一言で言うなら「掴みどころのない映画」です。
予告編を観たときは絶対にコメディだと思ったんですけど、どうもそういう訳ではないらしい。かといって超真面目な映画かというとそうでもなく、ファンタジーでもなく、SFでもなく、恋愛映画ともアクションとも違う。

一体この映画は何なんだ……ってなるんですよw

ざっくりあらすじを書くと、

サッカー界のスーパースターであるディアマンティーノは、2018年Wカップの決勝戦の前日に海を渡ってくる難民に遭遇。
生まれて初めて「難民」の存在を知った彼は試合に集中出来ずポルトガルはWカップ優勝を逃し引退を表明する。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 主人公ディアマンティーノ。明らかにクリスティアーノ・ロナウドに寄せてます。

さらに決勝戦の最中、最愛の父が死んでしまい(殺したのは双子の姉)悲嘆に暮れるディアマンティーノ。

しかも彼には当局から、マネーロンダリングの容疑が掛かっていて(犯人は双子の姉)、引退後に出演したテレビ番組で「難民の子を引き取る」という彼の元にやってきたのは“少年”は、マネーロンダリングの証拠を掴もうとする潜入捜査するスパイの女性アイーシャレズビアン)。

しかし、彼女は純粋で無垢なディアマンティーノと生活するうち、彼に好意を持つようになっていく。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 超ひどい双子の姉

そんなある日、弟を金づるとしか思っていない双子の姉の元に、ディアマンティーノの遺伝子からクローン人間を作り、ポルトガル復権を目指す国内右派に属する研究所から打診があり、金に目がくらんだ姉たちはこれを了承。

実験体になったディアマンティーノは、ランボルギーニ博士からクマノミの遺伝子を注射されておっぱいが大きくなってしまう。
更に、ポルトガルEU離脱プロパガンダのイメージキャラクターとしてCMに出演。

もはや誰も信じられない彼は、愛する“息子”が本当は女性であった事を知ってHして、童貞卒業。

しかし姉から、唯一信じたアイーシャが潜入捜査官であることを知らされ絶望。

そして実験は最終段階に入り、クローンにディアマンティーノの脳情報をコピーすることに。

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画像出典元URL:http://eiga.com / マッドサイエンティストランボルギーニ博士

これをすると彼は死んでしまうが、双子の姉は快諾。
そんなディアマンティーノのピンチを救うためアイーシャは研究所に潜入。
襲いかかる双子の姉を倒すも、ランボルギーニ博士に殺されそうになる。

が、ギリギリで覚醒したディアマンティーノに救われ、二人は結ばれるのだった。

って、なんだこれ。

あらすじを完全ネタバレで書きましたが、全部読んでもどんな内容かさっぱり分からないですよね? だって、書いてる僕も分かりませんからw

解説を読んでみると、現在のポルトガルに広がる難民問題、富裕層のマネーロンダリング、科学技術の暴走、国の右傾化、LGBTなどの問題を、国民的なサッカー選手の物語として寓話的に描いたってことらしいです。

全てががゆるゆる

そう言われれば、確かに前述の描写は一応全て劇中に入ってはいるし、物語の筋立てもどこかキリスト教的な雰囲気がある気がします。

主人公がサッカー選手なのも、元々サッカーの盛んなお国柄ですし、だから主人公の見た目をクリスティアーノ・ロナウドに寄せているんでしょう。

しかし、それが映画的に上手くいっているかといえば、答えはノーなんですよね。

ポルトガルが抱える問題とやらも、問題提起にもなってなければ監督なりの答えも示していなくて、ただ無造作に放り込んでいるだけにしか見えませんしね。

かといってエンタメに振り切ってるかと言えばそんなこともなく、コメディーとして笑い飛ばしたり皮肉ったりしてる様子もなく、各種問題はそのまま劇中に登場するので寓話にもなってないし。

脚本、映像、CG、設定などなど全てがゆるゆるで、登場人物が何をしたいのかも分からず。(目的がハッキリしてるのは双子の姉だけ)

結局、巨大なチワワが出てくるシーンしか印象に残らないんですよねー。
しかも、唯一印象的なそのシーンさえ、主人公の妄想以上の意味はないのです。敢えて言うならイマジナリーフレンド的な感じなのかな?

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画像出典元URL:http://eiga.com / 主人公がゾーンに入るとフィールドに現れる巨大な小型犬たち

無理やり読み解くなら

それでも、あえて無理やり読み解くなら、昔は大国だったが現在はヨーロッパの中でもあまり目立たず、EUに振り回されるポルトガルの栄枯盛衰をサッカー選手に置き換えて、過去の栄光や成功体験に縋る人々を揶揄することで警鐘を鳴らしつつ、今の小さな幸せに目を向けよう。みたいな事が言いたかったのかな?と。

まぁ上手くはいってないですけどね!

興味のある方は是非!

 

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J・K・ユニバース 「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのはJ・Kローリング原作・脚本の「ファンタスティック・ビースト」シリーズ第2弾『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』ですよー!

ハリーポッターシリーズには上手く乗れなかった僕でしたが、前作の不思議生物の可愛らしさにすっかりやられた&ニュートを始めとした各キャラクターも好き(特にジェイコブ)だったので、続編となる(タイミングが合わず映画館では観られなかったですが)本作も楽しみに観たんですけど、んんん~?? ってなってしまいましたねー。

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概要

ハリー・ポッター』シリーズの原作者J・K・ローリングが脚本を手掛け、エディ・レッドメイン演じる魔法動物学者を主人公にしたファンタジーシリーズの第2弾。パリの魔法界にやって来たニュート・スキャマンダーたちの戦いが展開する。敵役のジョニー・デップ、若き日のダンブルドア役のジュード・ロウらが共演。監督は、前作に引き続きデヴィッド・イェーツが務める。新たに登場する魔法動物も活躍。(シネマトゥデイ より引用)

感想

J・K・ユニバース

前作「 ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」は、イギリスの魔法使いで魔法生物学者であるニュート・スキャマンダーエディ・レッドメイン)が“ある目的”のため渡航したNYで、偶然出会った魔法省の職員ティナキャサリン・ウォーターストン)やパン屋になりたい人間のジェイコブ。他人の心が読めるティナの妹クイニー(アリソン・スドル)と出会い、またNYを騒がせる事件に巻き込まれていく。というストーリー。

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ニュートが持ち歩くスーツケースの中では様々な魔法動物が飼われていて、ケースから逃げ出して騒ぎを起こす動物たちを捕まえるのに、ニュートとジェイコブのデコボココンビが右往左往しながら友情を深め、お堅いティナと緩いニュートが惹かれあっていく様子が微笑ましかったりと、とても面白かったんですよねー。

で、本作。

前作の4人がメインの物語を期待して観たんですけど……んんん~?と。

前作はニュートたち&魔法生物の物語と、悪名高い闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルドジョニー・デップ)がオブスキュラスを宿す少年クリーデンスエズラ・ミラー)を唆してNYに騒動を起こす物語の2本の柱で構成されていたんですが、本作でメインとなるのは後者なんですよね。

 

前作でクリーデンスは死に、ゲラート・グリンデルバルドは逮捕されたんですが、本作のアバンでグリンデルバルドが脱走するところから物語がスタート。

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さらにニュートがNYに渡ったのは、若き日のダンブルドアジュード・ロウ)の差金だった事も分かるんですねー。

んんん~??

さらに死んだと思われたクリーデンスがパリで生きていることが分かり、ダンブルドアからパリに向かいクリーデンスの保護を要請されるニュート。

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自宅に戻るとジェイコブとクイニーが訪れ、記憶を消されたジェイコブはクイニーによって記憶を取り戻したこと、二人は新婚旅行でイギリスにやってきた事を告げるも、人間(マグル)と魔法使いの結婚は犯罪なので、好き合っていても結婚出来ない事に業を煮やしたクイニーが、ジェイコブに“惚れ魔法”を掛けて強引に連れてきた事が分かります。

それが原因で二人は言い合いになり、クイニーはクリーデンスを探すティナのいるパリに行ってしまう。

ニュートとジェイコブも二人を追ってパリに行き、そこで再び騒動に巻き込まれるというストーリー。

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劇中ではダンブルドアとグリンデルバルドの関係やクリーデンスの出自も判明し、さらに「ハリー・ポッター」シリーズで登場するキャラクターも前身の姿で登場するんですよ。

「あー、そっちかー…」と。

つまり本シリーズはMCUマーベル・シネマティック・ユニバース)ならぬJ・K・U(J・K・ローリングユニバース)であり、「スターウォーズ」で言えばハリー・ポッターへと繋がる“エピソード1~3”だったわけですね。多分。

魔法生物の活躍は少なめ

前作では大活躍しストーリー上も大きな役割を果たした魔法生物たち。
本作でも前作から引き続き、光り物大好きなニフラーと木の枝みたいなボウトラックルが登場。
また、海に生息する馬やドラゴンのような外見で体毛が海藻みたいなケルピーや、中国に生息しているズーウーなども登場し、日本からは河童が参戦しています。

ただ印象としては前作ほど出番も多くないし、それほどストーリーにも関わってない感じなんですよね。
本作のストーリーの主軸は、あくまでクリーデンスの出自とグリンデルバルドが巻き起こす事件と、それに翻弄されるニュートたちの物語。
そして今後は「ハリー・ポッター」でも描かれた正義の魔法使い集団vs闇の魔法使い軍団の戦いへと大きく舵を切って行くっぽいんですよね。

それは悪くないと思うしどんな展開が待ってるか気になるところですが、前作を観て「ハリー・ポッター」と世界観は共有していても、正義対悪の戦いを描くストーリーではないと思ってたのでちょっとビックリでしたねー。

あなた、そんな子じゃなかったでしょ!

ただ一つ文句を言うなら、本作でのクイニーがねー。
前作では姉のティナとは対になるような先進的な思想の持ち主で、ノーマジー(非魔法使い)であるジェイコブに恋したりするところや、全体的にふんわりした若干不思議ちゃんな感じが良かったんですよね。ジェイコブとセットで癒し枠キャラというか。

ところが本作では、冒頭からジェイコブに魔法をかけて操るような真似をしたり、さらに終盤ではあんなことになってしまって……。

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あなた、そんな子じゃなかったでしょ!って思っちゃいました。
いや、気持ちは分かるしキャラ的にも矛盾はないんですけどねー。(´ε`;)ウーン…

っていうか、前作ではジェイコブとクイニーがコメディーリリーフとして物語に軽さを与えてくれてたんですが、本作はそれがない分物語がグッと重くなってしまって、(僕を含めた)前作のあの感じが好きな人にはちょっと辛かったかなー?って思いましたねー。

とはいえ魔法世界の街並みの精巧なセットや小道具の数々、魔法生物や冒頭の脱獄シーンなどなど、見所は多いし見ごたえもある作品だったと思います。

興味のある方は是非!!

 

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人類の大逆襲!「スカイライン-奪還-」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、前回取り上げた「スカイライン-征服-」の続編、『スカイライン-奪還-』ですよー!!

続編と謳ってますが、前作と同じ時間軸で別の場所、別の主人公で描かれる本作。

絶望的な状況をどうやってひっくり返し逆転していくのか、目が離せませんでしたよー!

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概要

エイリアンと人類の攻防を描いた『スカイライン-征服-』の続編。ロサンゼルス市警の刑事が、反政府組織を率いる男らと共にエイリアンに挑む。前作の監督だったグレッグ&コリン・ストラウスが製作に回り、前作の脚本を務めたリアム・オドネルがメガホンを取る。『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』などのフランク・グリロ、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』などのイコ・ウワイス、『ザ・レイド』シリーズなどのヤヤン・ルヒアンらが出演。(シネマトゥディより引用)

感想

7年越しの続編

エイリアンの襲撃に翻弄され、絶望的な状況の中で一筋の希望が見えるところで終わった前作。
前回の感想でも書いたように、僕はこの前作をずっとスルーしていたんですが、期待せずに観たら思わぬ拾い物だったんですよね。

で、前作から7年ぶりに公開された続編となるのが本作「スカイライン-奪還-」です。
続編とは言っても、前作と同時刻にエイリアンに襲撃された別の人々物語なんですけどね。

本作の主人公は、ロス市警の刑事マークフランク・グリロ)。
奥さんが亡くなってから、すっかりグレてしまいケンカで逮捕された息子トレント(ジョニー・ウェストン)を引き取りに来たマークは、地下鉄に乗って帰宅する途中にエイリアンの襲撃に遭遇。

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そこから先はエイリアンから逃げ回り、市民が宇宙船に吸い込まれ、仲間がエイリアンに捕まったり殺されたりという前作の復習的な展開となります。
マークとトレント、婦人警官のオードリーボヤナ・ノヴァコヴィッチ)たちもまた、為す術もなく宇宙船に吸い込まれてしまうんですね。

宇宙船の中ではぐれてしまったマークと、トレント&オードリー。
マークは必死に息子を捜すわけですが、そこで出会ったのがエイリアンに改造された前作の主人公ジャロッドと妊娠中のエレイン!

エイレンはエイリアンの青い光を浴びた影響で、妊娠半年にも関わらず破水していて今にも赤ちゃんが生まれそうな状況で、マークが無事女の子を取り上げるも彼女はそのまま死んでしまいます。

エイリアンに改造されながらも人間の心を失っていないジャロッドは、トレントのいる場所をマークに教え、赤ちゃんを託すと自分は宇宙船を破壊するため爆薬をセット。

エイリアンのボスとの対決には敗れるも、見事宇宙船を爆破し墜落させるんですね。

と、ここまでが前半パート

宇宙船が墜落したのは、何とLAではなくインドネシア
結局トレントは救えなかったものの、宇宙船から赤ん坊を抱えて逃げ出したマークとオードリーが出会ったのは、山奥で麻薬密造をするグループの兄妹なんですが、兄のスアを演じているのがみんな大好きザ・レイドで世界中のアクション映画ファンに名を知らしめたイコ・ウワイスなんですよ!

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画像出典元URL:http://eiga.com / みんな大好きイコ・ウワイス

さらに麻薬密売グループに捕まってしまう政府の警官を演じるのはヤヤン・ルヒアン!

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画像出典元URL:http://eiga.com / ヤヤン・ルヒアンも参戦!

この二人が揃ったら、勝ったも同然ですよ!(*゚∀゚)=3コレデカツル!

さらに、ジャロッドとエレインの子供ローズ(亡くなったマークの奥さんの名前)がエイリアンを倒す鍵だということも分かり、インドネシアの山奥にある遺跡を舞台に反撃開始!

襲いかかるエイリアンをシラッドのナイフ術でバッタバッタとなぎ倒すイコ&ヤヤンの肉弾アクション&エイリアンに改造されたものの人間の心を取り戻したトレントとエイリアンのボスが繰り広げる巨大ロボットバトル

こんなの燃えないワケがないじゃないですか!

しかも、クライマックスではアベンジャーズの例のカメラワークまで見せられて、僕の中の小五男子が再興奮!でしたねー!!(*゚∀゚)=3

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そして、「ザ・レイド」の大ファンというリアム・オドネル監督(前作では脚本を担当)も多分、撮影中は大喜びだったと思いますよーw

前作のモヤモヤをスッキリ解決!

最後の最後で希望の光を見せつつも、人間がコテンパンに負けた状態で幕を閉じた前作。

個人的にはそんな前作も好きだったんですけど、やっぱりモヤモヤした気持ちは残っちゃうんですよね。

しかし、そんな前作は本作の序章に過ぎなかったわけですよ。

前半部分では前作のフォーマットをなぞりながらも、後半への伏線や前フリを配置し、後半で一気に回収しつつ僕らが観たかった最高の展開を観せてくれるんですよねー!

もちろんツッコミどころは多々あるし、かなり強引な展開や雑な部分もあるし、そもそもそれを言うなら本作そのものが相当大味なバカ映画ですよ。

でもね、細けぇことはいいんだよ!

イコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンのシラッドアクションと、巨大ロボットバトルを一本の映画の中でが見られたらツッコミポイントなんか全部チャラですよ!

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あのラストも最高でしたしね!!( *• ̀ω•́ )b グッ☆

興味のある方は是非!!

 

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note.mu

低予算ながら久しぶりの拾い物だった!「スカイライン-征服-」(2011)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年続編が公開されたSF映画『スカイライン-征服-』ですよー!

実は本作の続編が観たくて、だったら1本目から見なきゃダメかなと思って一緒にレンタルしたんですが、ネットでは思いのほか評価が低かったのでハードル下げ気味で観始めたんですよ。

そしたら思いのほか面白くて、久しぶりの拾い物でしたよ!

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概要

戦うすべもないごく普通の人たちへのエイリアンの襲撃を、『アバター』や『2012』を手掛けたVFXチームによる圧倒的な映像で描くSFディザスター・ムービー。『AVP2 エイリアンズVS. プレデター』のグレッグ、コリン・ストラウス兄弟がメガホンを取り、リアリティーを重視した視点で人類滅亡の危機を描き出す。主演は「24 TWENTY FOUR」のエリック・バルフォー。今までにない観点で描かれる地球最後の日の描写に、興味が尽きない。(シネマトゥデイより引用)

感想

期待してなかったけど

実はレンタル店で本作自体は以前から見かけてはいたんですが、パッケージのルックが如何にもB級っぽいのでずっとスルーしてたんですよね。

でも続編の方にはみんな大好きザ・レイド」のイコ・ウワイスも登場すると聞いて、レンタルが始まるのを待ってたんですが、でも続編って聞くとやっぱり最初から観たくなるのが人情ってもんじゃないですか。

で、今回続編の「スカイライン-奪還-」のレンタルが始まったタイミングで、本作も合わせて借りてきたんですが、本作の方はさほど期待してなかったわけです。
ネットの評判も悪かったですしね。

ところが、実際観てみたら思いのほか面白くてビックリ
キャスト陣はよく知らない役者ばかりだったんですが、逆にそれが先の展開が読めない感じでプラスに働いてましたねー。

宇宙人侵略もの

この作品はスピルバーグの「宇宙戦争」やエメリッヒの「インデペンデンス・デイ」などに連なる「宇宙人侵略もの」です。

ある日突然地球に襲来した宇宙船。
その宇宙船から照射される青い光を見た人間は全員、宇宙船に吸い込まれてしまうんですね。

高層マンションのペントハウスで主人公たちが寝ていると、突然激しい揺れとともにブラインドの隙間から青い光が漏れ込んでくる。
すると隣室から悲鳴が聞こえ、何事かと部屋に入った主人公はまともに青い光を観てしまい――というシーンから物語はスタートします。

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そこで、主人公ジャロッド(エリック・バルフォー)と恋人のエレイン(スコッティ・トンプソン)のロスアンゼルスに向かう飛行機の中まで時間が戻る構成。

この機内のシークエンスでは二人が友人の誕生パーティーに向かっていること、顔の長い主人公ジャロッドは優しく親切な男である事が提示されます。

シーン変わってフェラーリのオープンカーで高級マンションにやってくる黒人テリー(ドナルド・フェイソン)のシークエンス。
高級車を乗り回し屋上のペントハウスに暮らすことから、彼が大金持ちであることが分かる。そしてテリーの電話でどうやら映画関係者(監督?)であることも。

で、ジャロッドとテリーが会ってパーティーが始まってからのシークエンスで、エレインが妊娠している事が分かる。
エレインの告白に喜ばず「まだ早すぎる」なんて言っちゃうジャロッド。
かなりのクズ発言ですが、これでジャロッドが“まだ大人になりきれていない”事が分かるんですね。

そしてパーティーが終わりみんなが寝静まった早朝4時すぎ、冒頭のシーンになっていよいよ宇宙人の侵略シークエンスに戻る――という、まぁ今時の展開です。

なんですが、恐らくは予算の関係で物語の大半はこの高級マンションの中でのすったもんだに終始するんですよね。

本作の制作費は1千万ドル。ハリウッド制作のSF映画としては低予算の部類らしいので舞台をマンションに限定したんですね。

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でもその分、使うべき部分にはしっかり予算をかけていて、宇宙人が襲来してくる冒頭とラストのシークエンスは迫力もあるし、全体としてのルックはちょっと安っぽい部分もあるけど、その分はストーリーと語り口の上手さでカバーしているんですよね。

侵略パニックをメタファーにミニマムな物語を描く

本作のストーリーラインは大きく分けて2本。

一つは、突如地球に宇宙人が侵略し征服される様子を描くパニック映画としての物語。
もう一つは、主人公ジャロッドの成長譚。

前述したように主人公ジャロッドは、困っている人を放っておけない気の優しい男ですが、その一方で恋人エレインの妊娠を喜ばずに傷つけてしまうクズ野郎でもあります。
それはつまり責任という現実から逃げ回る、大人になりきれていない男だということなんですね。
そしてその設定がラストの展開への布石になっているわけです。

だから映画終盤まで、ジャロッドはとにかく迫り来る“現実”から逃げ出すことしか考えてないし、その事をエレインに責められマンションの管理人オリヴァー(デイヴィッド・ザヤス)からは「現実を見ろ」と言われ続けます。

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そして終盤、進退極まってやっとジャロッドは“現実”と向き合い大切な人を守ろうと奮闘するんですが、それまではずっとコイツの頼り無さや弱さにイライラさせられるんですよねー!
その辺が、本作が低評価な理由の一つかもしれませんw

本作の主軸はあくまでジャロッドが“大人”になるまでの物語で、宇宙人や宇宙船はあくまで現実の困難であり通過儀礼のメタファーなんですね。

誠実で丁寧なストーリー運び

H・G・ウェルズが1898年に発表したSF小説宇宙戦争」の昔から、映画のみならずあらゆるメディアで散々擦られまくっている「宇宙人侵略もの」

アホみたいにデカイ宇宙船で攻めてくる「インディペンデンス・ディ」
スピルバーグが監督しトム・クルーズ主演の宇宙戦争
日米戦艦と宇宙船が戦う「バトル・シップ」
故郷を失ったガミラス星人に攻められる宇宙戦艦ヤマト
本作の監督ストラウス兄弟に訴訟を起こしたソニー・ピクチャーズが制作・公開した「世界侵略:ロサンゼルス決戦」などなど。

これだけ本数が作られると、さすがにもう新しい切り口は無理だろうと思ってたんですが、本作の設定は新しかったんですよねー。

宇宙船やエイリアンが放つ青い光を見た人間は、次々に母船に吸い込まれたりエイリアンに飲み込まれたりするんですけど、じゃぁ彼らは一体何の目的で大量の地球人を集めているのかが最後に分かって「そういう事か!」と。

そして何度か青い光を直視し吸い込まれそうになるも、ギリギリのところで助かるジャロッド。
それがクライマックスからラストシークエンスで彼が取る、ある行動のフリになっているのもロジカルで上手いなーって思いましたよ。

予算の関係とはいえ舞台を限定することで、密室劇的なサスペンスも生んでいる構成の上手さも含めて、非常に誠実で丁寧なストーリー運びで好感の持てる面白い作品だったと思います。

興味のある方は是非!!

 

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シャマラン・ユニバース3部作完結編!「ミスター・ガラス」(2019)*ネタバレ

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2000年公開の「アンブレイカブル」2016年公開の「スプリット」の続編で“シャマラン・ユニバース”3部作の完結編となる『ミスター・ガラス』ですよー!!

結果的に3作ともレンタルで観ることになってしまいましたが、逆にあまり時間を開けずに3本観られたのは良かったです。

ただ、この作品の感想を書くにはネタバレ無しは難しいので、今回はアンブレイカブル」「スプリット」そして本作のネタバレ全開で感想を書きます。

なので、これから本作(&過去2作)を観る予定の人や、ネタバレは絶対に嫌! という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

シックス・センス』などのM・ナイト・シャマラン監督が、『アンブレイカブル』の後日譚(たん)を描いたサスペンスドラマ。自分をスーパーヒーローと信じて疑わない3人の男性が集められ、禁断の研究が始まる。『ダイ・ハード』シリーズなどのブルース・ウィリス、『アベンジャーズ』シリーズなどのサミュエル・L・ジャクソン、『スプリット』などのジェームズ・マカヴォイらが共演。(シネマトゥディより引用)

感想

完成まで18年、執念のシャマラン・ユニバース

本シリーズの第1作となる「アンブレイカブル」が公開されたのが2000年。
まだMCUも公開されてなくて、世間的に当たったスーパーヒーロー映画と言えば、1978年公開のリチャード・ドナー版「スーパーマン」のシリーズと1989年公開のティム・バートン版「バットマン」シリーズくらい。

もちろん、その他のヒーロー映画も公開はされていたもののヒットとはならず、シャマランによれば当時はまだ「ヒーロー映画はバカにされていた」時代だったんですね。

その後、2002年~公開サムライミ版「スパイダーマン3部作」や2005年~公開のクリストファー・ノーラン版「ダークナイト3部作」でアメコミ映画が盛り上がっていくわけですが、シャマランはそれらの大ヒット作に先立って「アンブレイカブル」を制作していたんですねー。

本作のタイトルにもなったミスター・ガラスは、この「アンブレイカブル」に登場する悪役? です。

生まれつきちょっとした衝撃で骨がポキポキ折れちゃう体質ゆえにミスター・ガラスと呼ばれるイライジャサミュエル・L・ジャクソン)は、自分とは対局にあるアメコミスーパー・ヒーローのような存在が居るはずという妄執に取り付かれていています。
つまり、超強いスーパーヒーローの存在を証明することで、逆説的に骨ポキポキマンである自分にも存在理由がある事が証明される。という考えなんですね。

そんな彼がついに見つけたのがデヴィッド・ダンブルース・ウィリス)。

彼は乗客全員が死亡した列車事故で唯一の生存者。
しかも、人並み外れたパワーを持ち極端に体が強く病気やケガもした事がないうえに、人に触れると悪人かどうかが分かるという能力まであるのです。

「君こそ長年探し求めたスーパーヒーローだ」と近づいてくるイライジャを、最初は邪険に追い払うダンですが、やがて「もしかしたら…」と思うようになり、ある事件を解決したことで両者の関係も良好に……って思ったら、大量の死者が出た件の列車事故もそれ以前の飛行機事故も、全部イライジャがヒーロー探しのために起こした事が発覚。
ダンは警察に通報、イライジャは逮捕される。っていう物語でした。

もちろん面白い映画なんですけど、この時はそれほど興業も振るわず当然続編の話もなく。単体の作品なのだと誰もが思っていたわけですよ。

それからしばらくの間、シャマランは監督として迷走しまくっていたものの、前年の「ヴィジット」で大復活を遂げ、2016年満を持して送り出したのが「スプリット」です。

X-MEN」のプロフェッサーX役でも知られるジェームズ・マカヴォイが、24人格の殺人鬼ケヴィンを演じるスリラーで、劇中約6人のキャラを演技だけで瞬時に演じ分けるマカヴォイの演技力に賞賛の声が集まり、映画としてもヒットしました。

そのラストシーン。
ケヴィンのニュースをダイナーで観ている一人の男の姿が。
なんと、その男はブルース・ウィリス演じるダンだったんですねー!!

なんと「アンブレイカブル」と「スプリット」は同じ世界の物語であり続編だったというサプライズ。

そして、今年公開された本作「ミスター・ガラス」が、“シャマラン・ユニバース”18年目にして完結作であることを知ったシャマラニスト(シャマランのファン)たちは狂喜乱舞したのです。

1作目の主人公がダン、2作目の主人公がケヴィン、そして3部作のトリを飾るのが本作の主役ミスター・ガラス

本作で、ケヴィンの中の人格たち(自称 「群れ」)は、自分たちが異常者ではなく進化した人類である事を証明するため、最強にして最凶の人格「ビースト」を召喚し、世間に知らしめようとしているんですね。

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そのための生贄としてチアガールを誘拐しているわけです。(ビーストは食人族)

一方、奥さんを亡くしたダンは残された息子を相棒にして独自にケヴィンの行方を追う自警活動に精を出しています。
その途中で出会った悪人どもを懲らしめている様子がネットなどにアップされて、彼は人々から「監視者」と呼ばれているんですね。

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そして、ついに出会った両雄はついに激突するも、駆けつけた警察に取り押さえられて精神病院に入れられます。

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そこには、自分をヒーローだと妄想している患者を専門に研究している精神科医 エリーサラ・ポールソン)と、鎮静剤の大量投与で廃人同然になったイライジャもいて――という物語。

エリーはダンとケヴィンの能力に一つ一つ論理的に反論して、彼らが超人ではないと説明していきます。
そんなエリーの“カウンセリング”によって、二人のアイデンティティは大きく揺らぐわけですね。

アンブレイカブル」「スプリット」の続編として、二人が対決するスーパーヒーロー映画を想像していた人たちにとっては肩透かしの展開ですが、その辺がいかにもシャマランらしい展開と言えるのかもしれません。

全てはイライジャの掌の上

そんな3人の中でエリーが最も警戒しているのが、ミスター・ガラスことイライジャ。
骨は弱いが知能は以上に高く、飛行機や列車事故を引き起こした張本人ですからね。

薬の大量投与で廃人同然の彼ですが、どうも人眼を盗んでは病院内を自由に動き回っている気配があり、エリーはそんなイライジャ対策として、病院内外に100個を超える監視カメラを取りつけて徹底的に監視。さらに謎の機械でロボトミー的な人格矯正? 治療を決定するんですね。

しかし、そんなエリーの行動や、ケヴィン、ダンの対決さえも全てはイライジャの掌の上だった事が、クライマックスで分かる仕掛けになっているのです。

だから、本作の主人公は「監視者(ダン)」でも「群れ(ケヴィン)」でもなく、「ミスター・ガラス」なんですね。

謎の組織

三人の特別な力を理詰めで否定する精神科医のエリー。
ぱっと見、患者に対して真摯に向き合う優しいお医者さんという彼女ですが、どこか胡散臭さが拭えない。
実は、彼女はある謎の組織の構成員であることが後半で明らかになります。

そして、この組織が過去にもコミックのに登場するヒーローやヴィラん(悪役)のような特別な能力を持つ人間たちを“矯正”または“排除”してきたことも同時に明らかになるんですね。

彼らは「人間の世界にはコミックのヒーローも悪役も必要ない」と考えていて、そうした存在は人間の世界に余計な混乱と混沌を引き起こすという思想の元に、ヒーローやヴィランの芽を刈り取っている組織なのです。

コミックスコード

で、観終わった後ネットで他のレビューを読んでいた中に、組織やエリーにはモデルがいるのでは? というレビューを見つけ、個人的に非常に腑に落ちたんですよね。

1930年代。
当時の全米の教育者たちが、子供や学生たちへの悪影響と学業成績の低下を理由に、悪役(ヴィラン)を賞賛したり裸に近い格好の女性が登場するコミックスを、一斉に批判し始めるようになります。

当時、いわゆるヒーローコミックの人気は落ち、犯罪者を描いたクライム・コミックやホラー・コミック内の暴力及び流血表現がエスカレートしていたんですね。

で、それらのコミック批判の発端となったのが、精神科医フレデリック・ワーサムの著書「無垢への誘惑」です。
その内容をざっくり言うなら「暴力や犯罪、性的表現を描いたコミックは青少年に悪い影響を与える」というもの。

日本でも似たようなのがありましたよね。青少年健全なんとか条例

で、政府を巻き込んだ議論が繰り返され、いよいよ批判が高まった1954年。
アメリカ合衆国のコミック・ブックの内容を取り締まるために設立された、全米コミックスマガジン協会(CMAA)の一部門として誕生した「コミックス倫理規定委員会」によって「コミックス・コード」という自主規制が始まったのです。

関係文章を読んでみると、この規制はハリウッドの「ヘイズコード」を下敷きに、性的表現や暴力は元より、吸血鬼やゾンビなどのホラー全般などなど多岐に渡ったそうで、この規制によりアメコミは正義が悪を打ち倒すヒーローものしか描けなくなってしまったらしいんですね。

しかし、実は事の発端となったフレデリック・ワーサムは、コミックス・コードには反対の立場だったとも書かれていて、調べてみると彼はそもそも子供にコミックを読ませる事自体に反対だったようです。

自署を曲解された気の毒な人かと思ったら、より過激な「コミック撲滅派」でしたよw

彼に言わせると、スーパーマンは権力、武力、暴力のシンボルで、バットマンと相棒ロビンは同性愛者で、「ワンダーウーマン」はボンテージSMだそうですよ。(意訳)

うん、まぁ、当たらずとも遠からずですけどねw

一方で「大人のための検閲には賛成しない」と主張してきたことを彼の名誉のために一応付け加えておきます。

で、話を戻すと、エリーのモデルはこのフレデリック・ワーサムであり、彼女の属する組織のモデルはコミックス倫理規定委員会によるコミックス・コードそのものではないかと。

一方で、怪力と頑丈な体、悪人を見抜く能力を持つダンのモデルとなっているのはスーパーマンケヴィンは、ジェームズ・マカヴォイのキャスティングも合わせて考えれば恐らくはX-MEN
そして、言葉巧みに相手を意のままに操り、目的のためには殺人さえも何とも思わないイライジャバットマンの宿敵ジョーカーや、スーパーマンの宿敵であるレックス・ルーサーあたりがモデルにしていて、尚且つ18年という年月と私財までを投入して本作を作り上げたシャマラン自身が投影されたキャラクターでもある気がしますねー。

シャマラン流「ウォッチメン

有名なコミックヒーローをモデルにオリジナルのヒーローを描いた作品といえば、 アラン・ムーア原作の傑作コミックで2009年に ザック・スナイダー監督で実写化された「ウォッチメン」を連想する人も多いのではないでしょうか。

アメコミ全体を批評的、かつ総括的に描く本作の構成は「ウォッチメン」によく似ている気がします。

この3部作で、かなりのアメコミ・フリークであることが分かったシャマラン。
恐らく彼は、 アラン・ムーアフランク・ミラーが活躍した1980年代半ば以降のいわゆる「モダンエイジ」のコミックに強い影響を受けているのではないかと。(「ダークナイト」的な暗くてシリアスなアレ)

つまり本作は、シャマラン流のMCUであり、「ウォッチメン」でもあると僕は思うんですよね。

そして、(多分)MCU作品の10分の1程度の予算で、これだけ見ごたえのある「ヒーロー映画」を作ってしまったのだから、シャマラン恐るべしなのです。

とはいえ、大量殺人犯であるミスター・ガラスが、まるでヒーローのように描かれるラストには賛否両論あるようですが、個人的には上記の「コミックス・コード」に対するシャマランの回答と考えれば、見事なオチだったのではないかと思いましたねー。

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映像“は”美しい「散り椿」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、黒澤組の撮影助手からキャリアをスタートさせたカメラマン出身の木村大作監督初の時代劇『散り椿』ですよー!

たまには邦画も観てみようと棚を眺めていたら目に入った作品。
ガチ格闘マスターの岡田准一主演の時代劇ということでレンタルしてきましたよー!

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概要

永遠の0』などの岡田准一が主演を務め、カメラマンのみならず『劔岳 点の記』で監督もこなした木村大作と組んだ時代劇。葉室麟の小説を基に、誰にも恥じない生き方を貫こうとする実直な武士たちの姿を描く。『明日への遺言』などで監督としても活躍する小泉堯史が脚本を担当。『CUT』などの西島秀俊をはじめ、黒木華池松壮亮奥田瑛二らが共演している。(シネマトゥデイより引用)

感想

木村大作と「散り椿」とは

本作の監督、木村大作は御年79歳。黒澤組の撮影助手からキャリアをスタートさせ、「日本沈没」(73)「八甲田山」(77)「居酒屋兆治」(84)など数多くの作品をカメラに収めてきた大ベテラン…というか今や日本映画界の生き字引的存在です。

2009年「劒岳 点の記」で撮影兼任で監督デビューし、その後監督した「春を背負って」(2014)に続く監督3作目が、初の時代劇となる本作「散り椿」なんですね。

原作は葉室麟の同名小説で、藩の不祥事を追及し故郷を逐われた瓜生新兵衛が、亡き妻との約束を守るべく18年ぶりに故郷に戻るという物語。

V6の岡田准一が主演を務め、西島秀俊黒木華石橋蓮司富司純子奥田瑛二など、豪華キャストが出演していることでも話題になりました。

映像の美しさ

そんな本作、木村大作自ら撮影も兼任しているということで、自然の風景描写はとにかく美しいです。
これらの映像はセットではなく、オールロケーションで寺や建物など実際の建造物や自然の中で撮影されているのだとか。
彩光に関しても、自然光を活かして撮影したそうで、建物も自然も本物を使って自然光を活かして撮影したことで、あの映像が生まれたんですね。

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セリフ回しや話し方

また、監督と脚本家の年齢もあるのかもですが役者のセリフ回しや話し方も、ちゃんと時代劇してると思いました。

上手く説明は出来ないんですけど、時代劇ってセリフ回しや発声法、イントネーションに現代劇とは違う「型」みたいのがあるんですよね。

なので、時代劇をよく知らない監督や役者で撮られた時代劇って、時代劇のコスプレをした現代劇になりがちなのです。
その辺は1958年から映画に携わっている木村監督なので、しっかり演技の演出や指導をしてるのかなと思いました。

殺陣

そんな本作の見所と言えば、やっぱり岡田准一の殺陣なんじゃないでしょうか。
色んな格闘技や武道に精通していることで知られる彼は、殺陣師の久世浩の振り付けに武術の経験を活かしたアレンジを加えていったそうで、例えば「るろうに剣心」みたいな派手さはないけれど、動き一つ一つに理由があるリアリティーと緊張感溢れる殺陣は、見ごたえ十分。

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特に、実質的なクライマックスである西島秀俊との、散り椿の前で行われる対決は画の美しさも相まって素晴らしかったですねー。

作劇と脚本

対して、物語の作劇やキャラ造形、ストーリーテリングの方は首をかしげてしまうというか、正直上手くないなと。

まず、登場キャラが多い割に説明が少ないので、最初のうちは誰が誰かよく分からないし、物語が進んでからも各キャラクターの関係性や感情が少々分かりずらい。

亡くなった奥さんとの「自分の代わりに散り椿を見てきて欲しい」という約束を守るため故郷に戻った主人公。
でも、散り椿の時期は既に終わっていて、結局1年間義妹の家に居候するわけですよ。

いや、花の咲く時期に来いよ。

ってなるじゃないですか。

まぁ、その後奥さんとのもう一つの約束が分かるんですが、それにしても義妹の家に一年間も居候するって、中々のメンタルですよね。特に家にお金を入れてる風でもないし。

あと、メロウなシーンや無駄話は結構な長尺で見せるわりに、映画冒頭の主人公の境遇はサクッとナレーションで済ませたのにはビックリでした。

最初間違えて音声ガイダンス状態で観ちゃったかと思いましたよ。

西島秀俊演じる榊原采女は、小林薫演じる悪家老に恨みがあり敵対関係なんですが、仮にも上司に当たる人間ですから、普通なら腹芸的な感じで油断させるように会話していくじゃないですか。

ところが、この采女は最初から敵対心むき出しで隠そうともしない。
「あんたの悪事は全部わかってるからな」的な事を平気で言っちゃう。
悪代官の方も「若殿の命奪って弟を若殿にしてやるからな」みたいなテロ予告を(人前で)普通に話しますしね。

しかもこの悪家老はバカ丸出しで、主人公が住む京都までわざわざ刺客を差し向けたり(別に証拠を持ってるとかではない)、汚職の証拠を持ってる商人(石橋蓮司)を部下に襲撃させたり。
自分の悪事を隠す気がないばかりか、余計なことをしては墓穴掘りまくるのです。
まぁ、若殿が来るまでは実質トップだからやりたい放題なんでしょうけども。

ミステリー要素やサスペンス要素もあるんだけど物語的に機能してないし、アクセルを踏んだかと思うとすぐにブレーキを踏んじゃう感じの作劇で物語が一向に盛り上がっていかない。

多分、原作の要素を色々入れ込んだんでしょうけど、脚色として上手く整理されてない感じで、むしろ要素を抜いてラブストーリーメインに絞り込んだ方が良かったのでは? と思ったりしました。

あと、キャラ造形の方も正直今時ではないというか、昔の時代劇っぽいんですよね。
それも、もしかしたら原作通りなのかもですが、キャラの価値観や考え方が今の時代の観客にはフィットしないかなーと。

60代以上の人なら楽しめるかもですけどね。

興味のある方は是非!

 

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