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「インヒアレント・ヴァイス」(2015) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、たった6本の映画で世界三大映画祭すべてで監督賞に輝いた名監督、『PTA』ことポール・トーマス・アンダーソンの新作『インヒアレント・ヴァイス』ですよー!

 

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画像出店元URL:http://eiga.com/

概要

アメリカ最高の文学者のひとりとトマス・ピンチョンの小説『LAヴァイス』を、ポール・トーマス・アンダーソン監督が映画化。一人の探偵を通して1970年代、ヒッピー文化の終焉を描いていく。
第87回アカデミー賞では監督賞と衣装デザイン賞、第72回ゴールデングローブ賞ではホアキン・フェニックス主演男優賞にそれぞれノミネートされた。

 

あらすじ

1970年ロスアンゼルス
病院の診療室の一角に事務所を構えるヒッピー探偵、ドック(ホアキン・フェニックス)の自宅に訪ねてきた元カノのシャスタ(キャサリン・ウォーターストン)は、不動産業界の大物ミッキー・ウルフマン(エリック・ロバーツ)の愛人になっていて、彼にまつわる事件の調査を依頼する。
シャスタに未練タラタラのドックは気乗りがしなかったものの、捜査に乗り出した途端何者かにハメられた末に殺人容疑で逮捕され、ミッキーとシャスタは行方不明になってしまう。

 

感想

多分、なんの前情報もなく本作を観た人ほぼ全員が、『なんだこれ?』って思うんじゃないかと思います。(僕も思いましたw)

まず、登場人物がやたら多い。
次々と新たな登場人物が、なんの前フリもなく登場してくるので「お前誰やねん!」ってなったり、「あれ、なんか見落としてたっけ?」と不安になります。
しかも、その多くは物語の本筋に絡むわけでもなく、ちょこっと出てきては謎の言葉を吐いて姿を消し、また次の人物が……と、まさに入れ代わり立ち代わり状態で主人公ドックの前を通り過ぎていきます。

それだけでも大変なのに、主軸だと思ってた事件が主人公に関係なく解決したり、枝葉だと思ってた事件が主軸になったり、敵が誰なのか味方が誰なのか分からなかったり。で、物語に振り落とされないように必死にしがみついてるうちに、なんか終わってたみたいな。

そんな難事件に挑むことになるのが、ホアキン・フェニックス演じる主人公のドックです。ベルボトムジーンズにサンダル履き、もじゃもじゃのもみあげが印象的な『ヒッピー探偵』というギャグマンガに登場しそうなキャラクター。

ヒッピーの名にふさわしく、いつも大麻吸ってラリってるダメなおじさんだけど、何故か女性にはモテます。

このヒッピー探偵ドックが事件を追い、謎の組織の正体を暴いていく物語って思いますよね? ところが違うんですよ。

このおっさん、ロールプレイングゲームのように、とりあえず、手がかりになりそうな相手のトコロにフラフラ聞き込みに言っては新たな面倒事に巻き込まれ、「〇〇に会ってみろ」と言われフラフラ会いにいくとまた面倒事に巻き込まれ、疲れたら大麻吸って、またフラフラ面倒事に巻き込まれに行きます。

そんな彼に関わる人たちも、ドックに負けず劣らず変人ばかり。

事件の発端になる不動産王ミッキー・ウルフマンは、ユダヤ系なのにナチス崇拝者で、荒くれもののバイカーたちを用心棒に雇ってる。
で、元カノのシャスタはそんなミッキーの愛人で、ミッキーの嫁さんとその愛人にミッキーから財産をふんだくるために精神病院に入院させる片棒を担げって誘われて(脅されて?)ドックに相談に来ます。

他に、武装のためネオナチから武器を買おうとする黒人過激派のメンバー、ゴーストタウンで風俗店を営むレズビアンカップル、ロリコンの歯科医、FBI、精神病院を装った洗脳組織、ロス市警が『汚れ仕事』のために雇っている殺し屋、元麻薬中毒者のバンドマンの情報屋、ヘロイン中毒を克服したあと「正しいヘロインの使い方」をレクチャーしてる情報屋の奥さん、ドックが昔救った有力者とその娘(洗脳済み)、腐敗したロス市警、有能な検事でドックの今カノ、海洋専門の弁護士、ロス市警の刑事でドックを目の敵にしてるけど、内心認めてる? チョコバナナアイスとパンケーキ大好きな刑事ビックフット(ジョシュ・ブローリン)。

そんな一見バラバラな彼らをゆるーく繋ぐのが、謎の組織「金の牙」です。

「金の牙」は他国から純度の高いヤバめの薬を密輸販売して、薬のやりすぎで歯がなくなったヒッピーのための歯医者組合を作り、精神病院でリハビリ(洗脳)して社会にリリースしたヒッピーに薬を売りつけるという、リサイクル活動をしてるらしいんですね。

そして、その莫大な資金を使って、アメリカを影から支配している(らしい)です。

で、ドックは大麻吸いながら、彼らの間を行ったり来たりしてるうちに、どんどんアメリカの暗部に足を踏み入れてしまうというのが本作の大筋らしい。

ね? 訳わからないでしょ?

本作を作るにあたって、大きな影響を受けているのがロバート・アルトマン監督の1973年作品『ロング・グットバイ』という作品で、その作品に影響を与えているのがハワード・ホークス監督の1946年作品『三つ数えろ』なんだそうです。(僕はどちらも未見なんですが)

この二つの作品の原作は、ハードボイルド小説のレイモンド・チャンドラーで、つまり、本作はハードボイルドの流れを汲んだ作品ということになるみたいです。

そう言われてみると、確かに主人公のドックは、廃れかけのヒッピー文化にどっぷりと浸かっている時代遅れな男です。
大麻吸ってラリってるうちに、気づけば周りがどんどん変わっていってて、自分だけが取り残されちゃってるみたいな。

多分、本作の肝はそこで、起こる事件や登場人物はいわば全部が枝葉みたいなものなのかもしれませんし、『金の牙』のバックに黒幕なんかいなくって、時代遅れのヒッピー文化が勝手に廃れていくのが納得が行かなくて、何か理由をつけようと思ってるドックの妄想なのかもしれません。

そういう意味では、余計な枝葉をかき分けてたどり着くのは、青春の終わりに抗う厨二病をこじらせたおっさんの物語と言えるかもしれません。

とまぁ、そんなややこしいことを考えなくても、いい感じの音楽と、いい感じの映像、いい感じにぶっ飛んだキャラクターの、いい感じにドラッキーなコメディーとして観れば、それはそれで楽しめるかもです。

もっと言うと、キャサリン・ウォーターストン演じる、美人で可愛いドックの恋人シャスタが、全裸で乳首をクリクリするシーンだけでも見る価値アリだと思いますよー。(ひどいオチ)

興味のある方は是非!

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