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「フォックスキャッチャー」(2015) 感想 ネタバレ有り

ぷらすです。
今回ご紹介するのは第67回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し第87回アカデミー賞でも5部門でノミネートされた話題作『フォックスキャッチャー』ですよー!
今回は実在の事件が元ということでネタバレ有りなので、これから本作を観る予定の人はその後で読んでくださいね。
いいですね? 注意はしましたよ?

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画像出店元URL: http://eiga.com/

概要

第87回アカデミー賞で5部門にノミネート、第67回カンヌ映画祭では監督賞を受賞した作品。
1996年に実際に起こったデュポン財閥の御曹司ジョン・デュポンによる、レスリング金メダリスト・デイヴ・シュルツ射殺事件を題材にした劇映画。
監督はベネット・ミラー、ジョン・デュポン役に『40歳の童貞男』のスティーブ・カレル。
マイク・シュルツ役に『21ジャンプストリート』のチャニングテイタム。
デイヴ・シュルツ役に『アベンジャーズ』でブルース博士(ハルク)役のマーク・ラファロ

 

あらすじ

1987年ロサス五輪で金メダルを獲ったものの、アマチュア規定により満足な生活ができず、また兄デイブ・シュルツ(マーク・ラファロ)のように上手く世渡りが出来ないマーク・シュルツ(チャニング・テイタム)は鬱屈した日々を送っている。
そんなある日、彼はデュポン財閥の御曹司ジョン・デュポン(スティーブ・カレル)が設立したレスリングチーム『フォックスキャッチャー』に高待遇で迎えられる。
最初は上手くいっていた二人の関係は、デュポンがマイクの兄デイヴをスカウトしたことからおかしくなっていく。

 

感想

本作を一言で言うなら「閉じた世界」を描いた作品なんじゃないかと思います。

大金持ちの御曹司ジョン・デュポンと、レスリング金メダリストでありながら相応の扱いを受けていない(と思っている)マーク・シュルツ。
マークの兄で金メダリスト。人当たりも良くて面倒みもいいので誰からも好かれるデイヴ・シュルツ。

本作の物語は、この三人の閉じた関係の中で進んでいきます。

映画冒頭、物語はマークは小学校で講演するシーンからスタートします。

子供たちはマークの話に全く興味がなく、根の暗いマークは上手く話ができず。
その後、小学校からギャラ20ドルをもらうときに、小学校はマークではなくデイヴに講演を頼んだけれど都合が合わず(もしくはデイヴがマークに譲ったのかもですが)マークが代理で講演したことが分かります。

その後、マークとデイヴの両親が離婚し、父と母の間を行ったり来たりだったこと、マイクにとってデイヴが親代わりだったこと、世渡りの下手なマークは兄に対して強いコンプレックスを抱え、愛憎渦巻く感情を抱いていることが分かります。

有り体に言えば、極度のブラコンです。しかも反抗期。

この暗いブラコン男を演じてるのはチャニング・テイタムなんですが、僕的にはコメディー映画『21ジャンプストリート』の印象が強くて、最初彼だと分かりませんでした。(本人に似せるためにちょっと受け口にしてるし)
ちなみにお兄さんのデイヴを演じてるのは『アベンジャーズ』でブルース(ハルク)役のマーク・ラファロなんですが、こちらは髪は短髪の黒髪で髭ボウボウになってて、映画が終わるまで分かりませんでしたよ。

そんなマークを自分のチームに誘う、ジョン・デュポンは財閥の御曹司で、こちらは極度のマザコンです。

自称レスリングコーチで鳥類学者で愛国者ですが、どう見てもそんな風には見えません。
色々肩書きを述べてても「あー、コイツ大したことないなー」っていうのが、素人目にも一発で分かるんですね。
それも「俺も昔は結構ヤンチャしててさー」的な感じじゃなくて、子供が気を引くために大人に丸分かりの嘘をついたりしますよね。まさにあんな感じです。

ただ、困ったことにお金と地位だけはあるので、学位もお金で買えるし、本も自費出版できるし、自分の家にレスリングの道場も作れちゃうし、お金が欲しいから周りの「大人」も何も言わない。
なので、のびのびと子供のままおっさんになっちゃったような人です。

で、その根底にあるのは常に母親に褒めてもらいたいという気持ちなんですね。
ところが、肝心のお母さんは馬に夢中で、出来損ないの息子なんか眼中にないわけです。

でも、そんな事とは知らないマイクは、初めて兄ではなく自分が認められたことに大喜びで、デュポンに気に入られようと一生懸命。
夜中に突然訪ねてきて、「二人でレスリングの練習だー」なんて言われても文句一つ言いません。

ところがデュポンの方は少し違います。
彼が欲してるのは次のオリンピックで、アメリカを世界一に導いたコーチという『ステイタス』で、だからロス五輪で金メダルを獲った『シュルツ兄弟』、もっと言えば兄デイヴの方が目当てだったわけです。

『ホックスキャチャー』っていうのは狐狩りの事なんですが、猟犬に狐を獲ってこさせるんだそうです。
つまり、デュポンは金メダル=狐を狩るために、出来るだけ毛並みのいい猟犬が欲しかったんですね。

ふたりの会話からデュポンのそんな心情は透けて見えるんですが、兄が誘いを断って一旦はデュポンが諦めたこともあって、マイクはデュポンに気に入られるため文字通り忠犬ぶりを発揮。
愛国主義者の会』では苦手なスピーチ(デュポンを褒め称える内容)を覚え、一緒に麻薬をやり、話し相手になって、髪も切ってやりとデュポンが望みには何でも応えようとし、その甲斐あって、デュポンもマイクに対して心を許していきます。

そうして、しばらくは歪ながらもなんとか上手くいっていた二人の関係ですが、デュポンの金にモノを言わせたデイブ招聘という非道い裏切りによって、マイクはひどく傷つき、ソウルオリンピックで結果も残せずにデュポンの元を去ってしまうのです。

そして、残ったベイヴにデュポンは擦り寄っていくものの、デイヴはあくまでビジネスライクにデュポンに接します。
何故なら、デイヴは『大人の世界の住人』で、デュポンのルールは通じないから。

そうして結局、最愛の母も亡くし一人ぼっちになったデュポンの元に残ったのは、自ら資金をだして作らせた、自分を褒め称えるためのドキュメンタリーフィルムだけ。
その画面の中では、不器用ながら一生懸命デュポンの要求に応えようとするマイクが映ってる。そのフィルムを一人で眺めていたデュポンは、ある日、ついに凶行に及ぶ。
という内容。

まぁ、実際の事件でデュポンがデイヴを撃ったのはソウルオリンピックから8年後で、動機もハッキリとは分かってないみたいですけどね。

本作を観た人は『同性愛の匂い』を感じると思うし、ある程度は製作陣もそこを狙っているフシはあるんですが、個人的にデュポンはそこまで成熟していなくて、もっともっと未成熟な友情と恋愛の区別がつかない子供で、ただただ、誰かにかまって欲しい幼児のように見えました。

多分好き嫌いは分かれる映画だと思うし、僕自身もあまり好きではないですけど、好きな人には一生心に残る、そんな映画だと思います。

興味のある方は是非!!

 

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