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今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

「百日紅 〜Miss HOKUSAI〜」(2015) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、 『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』(2001)や『~嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』(2002)
児童文学のアニメ化作品『河童のクゥと夏休み』(2007)
森 絵都さんの同名小説のアニメ化『カラフル』(2010)
などのアニメ長編映画で高い評価を得ているだけでなく、2013年には多くの名作映画を世に送り出した映画監督 木下恵介を描いた実写映画『はじまりのみち』も手がけて高い評価を得た原恵一監督の最新作、百日紅 〜Miss HOKUSAI〜』ですよー!

もう最初に書いちゃいますけど、超面白かったです!!

http://image.eiga.k-img.com/images/movie/80339/poster2.jpg?1429270163
画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

1983年から1987年まで『漫画サンデー』で連載された杉浦日向子の同名漫画の長編アニメ映画。
主人公 お栄役に杏、父親の葛飾北斎役に松重豊北斎の弟子でふたりと同居する池田善次郎(渓斎 英泉)に濱田岳など、人気俳優の起用も話題になった。

 

あらすじ

浮世絵師のお栄(杏)は父親の北斎松重豊)と善次郎(濱田岳)とひとつ屋根の下で絵を書いて暮らしている。

掃除も料理もせず、雑然とした家に通う歌川国直(高良健吾)や善次郎と騒いだり、離れて暮らす生まれつき目の不自由な妹 お猶(清水 詩音)と出かけたり。

そんなお栄の目を通して、江戸に暮らす人々や風俗を生き生きと描く人生賛歌。

 

感想

原作者の杉浦日向子さんは、漫画家、文筆家、作家、時代考証家と様々な顔を持ち、特に江戸の風俗に関しては数々の著書を残された方です。

一方の原恵一監督は、『クレヨンしんちゃん~嵐を呼ぶ アッパレ! 戦国大合戦』で作家の鈴木輝一郎さんに「戦国時代の合戦シーンとして、動画の映像資料として最も正確なもの」と言われるほど細部のディテールにこだわる人。

そんな杉浦さんの原作が、葛飾北斎の娘を主人公にした、江戸時代の物語を描いた原作を、原監督が映像化するというんですから、これはもう面白くないハズがないと確信して観たわけですが、予想を大きく裏切られてしまいました。

ええ、もちろん良い意味で。

本作の感想を一言で言うなら、傑作です!

 といっても、本作は何か大きな事件が起こってそれを解決するとか、そういった劇的な内容ではありません。
むしろ、江戸の情景や小さな出来事、風俗や暮らしを、主人公お栄の一人称で淡々と紡いでいく物語です。

浮世絵師の見た『江戸』

稀代の浮世絵師 葛飾北斎と、その娘で浮世絵師のお栄(葛飾応為)を中心に物語を描んだから、もっとドラマティックにしようとすればいくらでも出来たはずだし、作家なら父娘として絵師としての葛藤や衝突から生まれる二人の『人間ドラマ』をクローズアップして描きたくなりそうなものですが、本作ではその辺の描写は最小限に抑えられていて、むしろ江戸時代の人々の暮らしや仕事、風俗といったディテールに焦点を当て、淡々と、でもとても丁寧に描いているんですね。
よく『神は細部に宿る』なんて言いますが、江戸の町のディテールが細部にわたるまで細かく描かれてることが、一見淡々としたこの物語に厚みと質量を持たせ、命を吹き込んでいます。

僕は原作は読んでいないのですが、これは恐らく杉浦日向子さんが漫画で描こうとしたモノを原監督が読み取って、最高の映像技術でより鮮明に表現したのだと思います。

本作に登場するメインキャラの半分は浮世絵師です。
江戸の町の風景を、風俗を、暮らしを、宗教観を、死生観をも含めた全ての『浮世』を、筆と墨で一枚の紙に写し取ってきた絵師を物語の中心に据え、彼女らの目を通した江戸を描くことは、すなわち彼女ら自身を描くことと同義です。

そこに余計な説明ゼリフなんて野暮なものは殆どありません。お栄と北斎のやり取りや行動、表情、描く絵から、観客はその裏にあるドラマを読み取る作りになっています。

お栄と北斎の目に映る江戸の町は多層的です。
江戸の空には龍が舞い、花魁の首が伸び、魑魅魍魎が跋扈(ばっこ)している、そんな世界。

それは、絵師である二人の想像かもしれないし、例えば猫が人間には見えないモノを見ている(ように見える)みたいに、絵師にしか見えない世界があるのかもしれません。(同居人の善次郎には見えてないようなので二人が特別なのかもしれませんけど)

『粋生き』と描かれるキャラクターの魅力

主人公のお栄は勝気でプライドの高い女性です。
父の北斎の言葉を借りれば『描けないなんて言いたくない』のです。
だから、苦手な枕絵(春画)を描くためなら陰間茶屋(男娼の売春宿)に処女を捨てにも行きます。
物語中盤、彼女が描いた地獄絵図の所為で、注文主の奥さんが神経を病んでしまうというエピソードがありますが、お栄はそれほどの実力の持ち主でもあるんですね。

しかし、そんな彼女の腕前を北斎は未熟と切り捨て、注文主の屋敷に乗り込んで件の絵を修正。すると、奥さんの気の病はピタリと収まって、「悔しいがまだまだ父親には叶わない」とお栄が負けを認めるエピソードがあります。

普段は父親を鉄蔵(北斎の本名)と呼んでぞんざいに扱う彼女ですが、師匠としての『葛飾北斎』の実力は認めているし尊敬してるんですね。

その北斎は、絵を描く意外のことには全く頓着がなく、気の乗らない注文はお栄に代筆させたり、高値を吹っかけたりと版元泣かせな気難しい男。
しかし、絵のネタになりそうな話を聞くとホイホイと見に行くフットワークの軽さも見せる生粋の『絵描き』なんですね。

それが原因かどうかは分かりませんが奥さんとは別居?していて、盲目で病弱な末娘のお猶(なお)には中々会いに行こうとしません。

お猶がそう長くは生きられない事は、本人も含め家族全員承知しています。
だからお栄はお猶に外の世界を感じさせてやろうと連れ出すし、母親はお猶の具合が悪くなっても「大丈夫、大したことはない」と口にします。
どちらも、お猶を最後まで見届ける覚悟ができています。

でも、北斎にはその覚悟がない。
母親やお栄のように、気休めを言ったり外に連れ出してお猶の気を紛らわせてやる事が出来ないのです。
何故なら彼は『真実』を写し取る絵師で、他の伝え方が分からないから。
絵に関しては一流の『北斎』でも、それ以外のことはからっきしな『鉄蔵』は、だからお猶に会いに行けないのですね。
そんな鉄蔵(北斎)を、お栄は『弱虫で泣き虫』と言い切ります。

同居している弟子の善次郎(渓斎 英泉)は、お栄に『ヘタ善』なんて呼ばれるくらいデッサンに難有りですが、女好きで春画美人画には独特の色気が定評のある絵師。

お栄に恋心を寄せる歌川豊国門下の国直は、若いけれど実力派。師匠と敵対関係の北斎を尊敬して北斎宅に出入りし、お栄にもアタックするけど相手にされていないし、逆にお栄が恋心を抱く初五郎(魚屋 北渓)はお栄を絵師として尊敬しているけれど女としては見ていない。

もちろん劇作品用に脚色された『キャラクター』ではあるんですが、原作者の杉浦さんは実在した浮世絵師をモデルにするに当たって、文献だけでなく彼・彼女らの描いた絵からもインスピーションを受けてキャラクターづけしてるのかなーなんて思ったりもしました。

音と音楽

あと、音楽と音の使い方も良かったです。
冒頭、北斎の説明からお栄が日本橋を渡るシーンでかかるギターの曲は痺れたし、EDの椎名林檎さんの曲も良かったです。
お栄がお猶を小船に載せて橋の下を通るシーンの橋の裏から聞こえる音(足音とか)にはハッとしたし、使ってる言葉も(全部ではないけど)ちゃんと江戸言葉なんですよね。

もしかしたら江戸っ子にはイントネーションの違いとか違和感を感じるところがあったりするかもですが、何でもかんでも『べらんめえ調』じゃなく立場や相手によって言葉遣いが変わってるのも良かったです。

特に、松重さんと濱田岳さんは堂に入ってるなーと思いました。

結論『傑作』です。

公開時に着物の着付けが違うという話もあったみたいですが、個人的には、嘘は承知で絵的な観え方を優先したんじゃないかなー? なんて思ったり。(穿ちすぎ?)

本当はもう、ネタバレ全開で最初から終わりまで全部書きたい位ですが、そうもいかないのでこの辺で止めときますw
とにかくエンターテイメントとしても素晴らしいし「この人たちの生活をずっと見ていたい!」って思っちゃうような傑作でしたよー!(すでに2回見てます。そしてレンタル中に多分もう1回は見るw)

興味のある方は是非!!!

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