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「大阪外道-OSAKAVIOLENCE-」(2011) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2012年の第22回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得した映画『大阪外道』ですよー!

パッケージを見るたび気にはなってたものの、中々手に取るタイミングがなかったんですが、今回思い切ってレンタルしてみましたー!

 

http://ecx.images-amazon.com/images/I/71gig-ipe6L._SL1087_.jpg画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp/

概要

TSUTAYAでは『大阪バイオレンス三本勝負 第1弾』と紹介されている、大阪下町を舞台に暴力と日常を12歳の少年マサシの視点で描いた劇映画。
2012年、第22回ゆうばり国際ファンタスティック映画祭オフシアター・コンペティション部門でグランプリを獲得している。
監督は、大阪生まれの映画監督 石原 貴洋。
プロデューサーは「探偵濱マイク」シリーズの林海象

 

あらすじ

12歳の悪童マサシ(木村涼介)が住む大阪・下町。
そこには、ヤクザさえも恐れる『外道』と呼ばれる杉村(大宮将司)、と地元ヤクザの息子で『非道』と呼ばれる飛髙(河本政則)いう二人の男がいた。
それまでまったく接点のなかった二人だったが、ある事件をキッカケに外道、非道、ヤクザの争いの火蓋が切られてしまう。

 

感想

本作は、石原監督によるインディペンデント体制で作られているらしく、つまり自主制作映画?らしいです。

なので、データーがイマイチ分からなくて、もし間違っていたら申し訳ないです。

弱肉強食の世界を少年の視点で描く

本作は、大阪・下町が舞台です。
時代設定は現代のようでもあり、昭和40年~50年代のようでもあり、そこもハッキリと描かれているわけではないんですが、多分現代なのかなー?

主人公マサシの母親は病気で入院中で、とび職の父親(水野祐介)と二人で暮らし。
近所の子供たちを集めて悪さばかりしている12歳の少年です。

ひったくりや万引きで小銭を稼いで意気揚々と歩いていると、高校生の不良たちにカツアゲにあい、その高校生たちは杉村という男に金を取られるというサバンナさながらの弱肉強食の世界。

その設定自体が現代っぽくないというか、一昔前の時代って感じがするんですよね。

で、この杉村という男はこの界隈では『外道』と言われ、ゆすりと暴力、みかじめ料で生計を立ててる男ですが、子供にはとても優しい一面もあります。

一方、地元ヤクザの息子?で、父親の代わりに刑務所に入り、最近出所したばかりの、飛髙は、ケンカを売ってきたチンピラ少年をドライバーで刺殺したり、息子を殴りまくったり娘の頭をおかしくさせちゃうような、まさに『非道』な男。

この二人の男を中心に、主にマサシ視点で物語は進んでいきます。

生々しいリアリティーが溢れるドキュメンタリーのような手触りの作品

本作は低予算の自主制作体制ということで、正直、登場キャラクターのどこまでが役者さんで、どこから一般の人なのかがよく分からないんですよね。
『外道』役の大宮将司さんは、元ヘリコプター交通情報リポーターで逆輸入寿司職人という異色の経歴を持つ俳優さん?らしいです。

『非道』役の河本政則さんは、どうやら本職は初代 彫 政統(ほり まさむね)という彫師さんらしく、他にバンドのボーカルなんかもされてるようで、どうやら専業の俳優さんではないみたいですねー。

その他のキャストの人たちも、あまりテレビや映画で見かけない人が多いし、明らかに一般人と思われるの方も出演してたり。

その所為なのか、それとも監督の演出なのか分かりませんが、全体的に演技してる感じが見えなくて、悪く言うと全体的に素人っぽいんですが、それゆえの生々しさというか、全体的にドキュメント映画のような手触りを感じる仕上がりになってます。

特に暴力の描写というより、その手前(暴力をチラつかせながら相手を追い込むシーンとか)のやりとりや、暴力に怯える人たちの表情になんともリアリティーがあって、見てるだけで心がざわつくような怖さがありました。
特に不良少年や街のチンピラ役の人たちは「この人たち多分本物だよね」と言いたくなるようなリアルさで、セリフは棒読みなのにその佇まいからじみ出るが凄くて、観ていて「絶対関わりたくないー!((((;゚Д゚))))」という感じ。

もしかしたら大阪の下町という昭和を感じさせる舞台立ても、生々しさに影響してるのかもしれませんね。

日常と暴力の混在したカオスな世界

本作では、子供も容赦なく暴力に晒されます。
『非道』の息子テツオ(河本龍明)は毎日のように殴られ、その姉も殴られないように必死に『非道』の機嫌を取ろうとするあまり、精神に異常をきたす始末。
父親が事故で入院することになるマサシを引き取るか施設に預けるかを本人の前で言い合う親戚の会話も、マサシに浴びせられた暴力と言えると思います。

その一方で『外道』は、狭い家でたくさんの『兄弟』に囲まれて暮らしたいという娘の願いを叶えるべく、共同トイレのアパートに引っ越して、可哀想な身の上の子供たちを引き取ってはご飯を食べさせてあげたり世話してあげる優しい一面も。

そういえば、劇中にはご飯を食べるシーンが印象的に描かれています。
マサシが父親と二人で食卓を囲むシーンや、『外道』のアパートで子供たちが大勢で鍋を囲むシーンなどは、地元の子供たちと、これまでに撮った9本のショートフィルムの中でたどり着いた大切なシーンだと、監督本人が語っています。

つまりこの映画では日常の生活と暴力が地続きというか、大阪・下町という同じ入れ物の中で、分けられることなく混ざり合って存在しているんですね。
その辺のごった煮感は、邦画というよりどこか海外(特にアジア圏)の映画に近いザラザラした感じがしました。
本作の本質は、そんな世界で生き抜くために成長していく、子供達の逞しさを描くジュブナイル映画なんじゃないかと思います。

内容が内容だし、正直ストーリーや映像的に(わざとそういう演出なのかもですが)上手くないなーと思う部分も多々有るので、好き嫌いがハッキリ分かれそうな作品ではありますが、個人的には面白かったし、監督の次の作品も観てみたいと思いました。

興味のある方は是非!

 

▼大阪バイオレンス3本勝負▼