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「極道大戦争」(2015) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、『ROOKIES』や『猿ロック』で有名な人気俳優市原隼人さん主演のホラーコメディー『極道大戦争』ですよー!

正直、タイトルと宣伝を見て「うーん……これは地雷っぽいなー」と思い、最初観る気はなかったんですが、『ザ・レイド』で世界を驚かせた、シラッドマスターのヤヤン・ルヒアンが出演していることを知って観ることにしましたよー!

 

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画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

2015年6月公開の日本映画。
ヤクザバンパイアに噛まれ血を吸われた者はヤクザになってしまうという奇想天外な物語のメガホンを取るのは、多分日本で最も多作な監督 三池崇史
ストーリーは原作なしのオリジナルで三池組の山口義高が脚本を務めた。

主演は『ROOKIES』や『猿ロック』の市原隼人、ヒロイン杏子役は成海 璃子。

 

あらすじ

影山亜喜良(市原隼人)は目的もなく生きていたが、何度も命の危険にさらされながらも生き抜き、最強にして不死身と噂されるヤクザ 神浦玄洋(リリー・フランキー)に拾われ、彼の率いるヤクザの組員になっていた。
敏感肌の為、刺青も入れられない半端ヤクザと他の組員からも見下される影山だったが、ある日チンピラに暴行されてた杏子(成海 璃子)を助け、恋に落ちる。

一方、神浦の仕切る商店街に現れた謎の男たちが、神浦の命を狙い襲いかかる。
影山が駆けつけた時には時すでに遅し、二人がかりの男たちに為すすべもなく、神浦は無残に殺されてしまう……。

感想

三池崇史という男。

三池崇史監督といえば、近年では大人から子供まで楽しめる様々なジャンルの大作を手がけているので、名前は知らなくても作品名を聞けば「あー、あの映画の監督!」と分かる人も多いと思います。

今村昌平ら有名監督の作品で助監督を務め、ビデオ映画『突風!ミニパト隊』で監督デビュー以来、数々のVシネマ(*1) や劇場映画を撮り続けてきた人で、とにかく多作な監督としても知られています。

僕が初めてその名前を意識した作品は、当時Vシネマの帝王と呼ばれていた竹内力哀川翔が初共演・初対決することで話題を呼んだ作品『DEAD OR ALIVE 犯罪者』

バイオレンス&エログロの物語自体も強烈ではありましたが、あまりにも衝撃的なラストにポカーン( ゚д゚)となり、「いやいや、そんなハズはない!」と続編2本や、監督の他の作品を観ていくうち次第に三池作品の虜になっていった……と言うほどではないんですが、気になる監督の一人になっていったわけです。

そんな、三池崇史監督が「原点(Vシネマスピリッツ)に戻る」と作り上げたのが、本作「極道大戦争」なんですが……。
先に正直な感想を言うと「うーん……」でした。

曲者ぞろいの役者陣

本作の魅力は、なんと言っても曲者揃いのキャストの面々ではないでしょうか。
主演の市原隼人さんを始め、「そして父になる」「凶悪」などで役者としても注目されるリリー・フランキーさんや、「冷たい熱帯魚」で最怖の男 村田を演じて映画ファンを恐怖のどん底に叩き落とした でんでんさん、インドネシア初のアクション映画「ザ・レイド」のアクションで世界を驚かせたインドネシアの格闘技シラッドの使い手ヤヤン・ルヒアンなどなど、総そうたる顔ぶれ。

特に主演の市原隼人さんは「日本の若手俳優でこんなにヤクザ役が似合う俳優さんがいるんだ」と驚く程のハマりっぷりで、「ウラァーっ!」と吠える時の迫力だけでなく、静かな演技をしているときの佇まいなんかも、どこか日本人離れしたワイルドさやセクシーさがあるなと感心してしまいました。

一方そんな市原隼人さんを従える親分、神浦役のリリーさんはあまり武闘派ヤクザというイメージはなかったんですが、リリーさん独特の「普段は穏やかだけどキレたらヤバイ」感じが思いのほかヤクザの親分役にハマっていて、その後の展開に期待を持たせる見事な演技でした。

あと、冒頭ちょろっと登場するだけなんですが、神浦と敵対するヤクザの役でピエール瀧さんも登場。
相変わらず、超怖かったですw

あとは、この個性豊かすぎるメンバーを三池監督がどんな風に料理するのかと、期待は膨らむ一方だったんですが……うーん…。

神浦が所属していたが、何らかの事情で足抜けした謎の組織の殺し屋として登場するのがシラッドマスターのヤヤン・ルヒアンなんですが、いや、いいんですよ?
アクションシーンとかかなり凄い事してるんです。
が、ラスボスとして登場する謎の生物? KAERU君の登場で、ヤヤンの影が薄くなっちゃってるんですけどーーー!
KAERU君とヤヤン、カブってるからーー!

今、何を言ってるんだお前はって思われた方、安心してください僕もよく分かってませんw

いや、序盤から圧倒的な身体能力と格闘術で、市原隼人さん演じる影山を苦しめ、ラスト付近ではタイマン対決をするヤヤン先生。
ところが、その手前で登場するのが圧倒的な強さを誇り『組織』のボス?として君臨するKAERU君が登場するんですね。

その容姿は名前そのまんまで、カエルの着ぐるみです。
ただし超強い。
着ぐるみのままバリバリにアクションをこなします。
しかも、本気モードになって着ぐるみを脱ぐと、中から登場するのはブルース・リー並みにマッチョな人間の肉体を持つカエル君。(体は人間で顔だけややリアルなカエル)
ちなみにカエルくんの中の人は、三元 雅芸(みもと まさのり)さんという、大阪出身の俳優さんで、殺陣師としても活躍されてるそうです。

ただね、このカエルくんが超絶アクションこなしちゃうんで、せっかくのヤヤン先生のアクションが霞んじゃうんですよ。もうさ、どっちかで良くね? っていう。

三池崇史の本領発揮……だかしかし。

僕も三池監督の全作品を観ているわけではない(多作過ぎてとても追いきれない)のでハッキリと断言は出来ないんですが、本作は確かに三池監督のVシネマ時代のノリが炸裂してるように見えました。
ただ、全体的に物足りなかったというのが正直な印象です。

ストーリーがしっちゃかめっちゃかで、ないに等しいのは、まぁ分かります。
昔の三池作品にも、ノリと勢いとパワーで細かいあれこれを吹っ飛ばしちゃうような作品は色々あります。
ただ本作は一見、昔の悪ノリ路線の作品ように見えて、全体的に『大人の配慮』が見え隠れしちゃってるんですよねー。

エロなし、グロは控えめ(というか殆どなし)、物語的にも破綻してるように見えて(いや、破綻はしてますけど)ラストはそれとなくまとめちゃってる感じ。

大人か! と。

あまりこういう頭の悪い文句はつけたくないんですが、昔の三池さんならもっと露悪的に、バカみたいに血しぶきブッシャー!! で、ヌードは特盛、薄暗い画面の奥では悪趣味でヤバ気で如何わしい事が行われてて、最後はちゃぶ台返しでドッカーーン! と強引に締めちゃってたと思うんですよ。(エログロ=偉いってわけではないですよ?)

ちなみに三池監督本人のメッセージによると、

「映画は知らないから観に行くものだったのに、いつのまにか安心できて裏切られないものを観に行くものになっていると思うんです。そこで、『極道大戦争』を観て『えっ、なんだこれ!』『こんな映画作って怒られないんだ!』って思ってもらえると、この映画も役に立ったと言えるかな(笑)」

 

 だそうです。
三池監督はクレバーな監督なので言葉通り計算ずくで本作を作ったんだろうし、言ってることは「仰る通り」と頷ける部分もあるんですが、だとしたら、ちょっと大人し過ぎるんじゃないかなー。

もっと、観客にトラウマを残すくらい物語を徹底的にぶっ壊してくれよー。とも思っちゃうんですよね。

もちろん、商業的な部分もあるだろうし市原隼人さんや成海 璃子も出演してるし、あんまり無茶なことが出来ないのは100も承知なので「昔の三池作品が観たいんだよーーー!!」なんて事は言いません

ただ、どうせやるなら『昔の三池崇史の上澄みをなぞる』んじゃなく、『今の三池崇史』の本気を見せて欲しかったなーと思うんですよね。

ちなみにこれは、ある程度、三池崇史監督作品を観てきて『三池映画』に慣れている人間の意見でして、『ちゃんとした映画』を求める人には間違ってもオススメできませんし、三池崇史の世界に慣れていない人には、「なんじゃこりゃーー」なんじゃないかとは思います。(良い意味でとは言ってませんよー!)

なので、なんとなく今の映画に物足りなさを感じている人は、試しに観てみるのもアリかなーって思います。

興味のある方は(自己責任で)是非!

 *1 Vシネマ 東映ビデオ株式会社が1989年より制作・発売を開始した、劇場公開を前提としないレンタルビデオ専門の映画の総称。(Wikipediaより)

 

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