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「ターボキッド」(2015) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、『チャリンコ版マッドマックス』と呼ばれ、世界中の映画祭などで高い評価を得ている2015年のカナダ映画『ターボキッド』ですよー!

まず最初に書いちゃいますが、本作はまったくオススメ出来ません。
っていうか、これをオススメしちゃうと人格が疑われそうなのでw

本作は、低予算でチープで無駄に残酷描写の多い、いわゆるB級映画です。
アメリカだと、駐車場にスクリーンを張って上映されるドライブインシアターや、一般向けの上映が終わった夜中だけ上映されるミッドナイト上映でしか観られない『グラインドハウス』というジャンルがあって、大抵は低予算でエログロナンセンスの三拍子揃ったチープなB級ジャンル映画が上映されるんですが、本作はモロにその系譜の作品で、世の中にはそんな『おバカ映画』が好きな僕みたいなファンもいるんですね。

なので、本作の感想で褒めている部分は『B級映画にしては』という括弧書きが常についているという事を、念頭に読んで頂けたらと思います。

いいですね? 注意しましたよ?

 

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画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

2015年のカナダ映画。
本作はクリエイティブ集団「Roadkill Superstars」が手がけた短編「T is for Turbo」が、『ホーボー・ウィズ・ショットガン』のジェイソン・アイズナー監督の目に留まり長編化に踏み切った。

監督・脚本:フランソワ・シマード、アヌーク・ウィッセル、ヨアン=カール・ウィッセル。主演はマンロー・チェンバーズ。
また、『スキャナーズ』や『トータルリコール』でもお馴染みのベテラン俳優マイケル・アイアンサイドが悪役のゼウスを演じる。

 

あらすじ

時は1997年。
核戦争によって文化や秩序は消滅し、荒くれ者たちが水をめぐって争いを繰り広げる荒廃した世界で、青年キッド(マンロー・チェンバーズ)はコミック「ターボライダー」をバイブルにしながらたった1人で生き延びてきた。

キッドは謎の美少女アップル(ローレンス・レボーフ)と出会い恋に落ちるが、その地域一体の水を独占する首領ゼウス(マイケル・アイアンサイド)によってアップルは誘拐されてしまう。

 

感想

チャリンコ版マッドマックス

多分、ちゃんとした映画も作られてはいるんでしょうけども、何故か僕が出会うカナダ映画ってこういうB級バイオレンスばっかりでして(そういう映画ばかり好んで観るから?)、本作もまさに世紀末を舞台にした『近未来』バイオレンス作品です。

核戦争によって荒廃し、水も燃料も無くなった世界での乗り物は、なんとチャリンコ。
主人公も悪役軍団もみんなチャリンコにのって移動します。

チャリンコの醸し出すほのぼの感と、血しぶきブッシャー、肉体破壊バリバリのゴア表現の温度差が、何とも言えない不思議な笑いを作り出し、その舞台設定や悪役のデザインも相まって『チャリンコ版マッドマックス』なんて呼ばれてるんですね。
ちなみに本作は「ABC・オブ・デス」というオムニバスホラーに応募するために作られた短編を練り直し、長編化したんだそうですよ。

画面のチープさやカメラワーク、編集の粗さ、レトロゲーム的なタイトルデザインや電子音楽は、本作の監督である3人組「ROADKILL SUPERSTARS」が子供の頃に影響を受けた80年代カルチャーへのオマージュらしいです。

一方で、こういうB級バイオレンス映画の場合、とにかく血しぶきとゴア表現を刺激的に見せることがメインになってしまって、ストーリーそっちのけの悪趣味一辺倒な作品が多い中、本作は悪趣味で悪ふざけ的バイオレンスの中に『少年の成長譚』という『ストーリー』をちゃんと入れ込んでいるんですね。

魅力的なキャラクター

そんな本作に登場するキャラクターもそれぞれ魅力的です。

マンロー・チェンバーズ演じる主人公キッドは、子供の頃、悪の首領ゼウス率いる軍団に母親を殺されてから一人っきり、ヒーローコミック「ターボライダー」をバイブルに廃品回収をしながら生きています。

ローレンス・レボーフ演じるヒロイン、不思議ちゃんのアップルは最初明らかにアレな子で、キッドも観ているコッチもドン引きなんですが、ストーリーが進むうちにだんだん可愛く見えてくるんですねw

http://image.eiga.k-img.com/images/movie/82692/gallery/turbo_001_large.jpg?1438917612画像出典元URL:http://eiga.com/

そんな二人と敵対する悪役の首領ゼウスは、スキャナーズ』や『トータルリコール』にも出演しているベテラン俳優のマイケル・アイアンサイド

廃工場のようなアジトで、拉致してきた人々と自分の部下を戦わせる時はギリシャっぽいマスク(ゼウス?)を被ったりして、いい感じにハッタリが効いてます。(ただしすぐ脱いじゃうけどw)

http://image.eiga.k-img.com/images/movie/82692/gallery/turbo_005_large.jpg?1441187145画像出典元URL:http://eiga.com/

他にも、ゼウスに敵対しキッドを導くお助けキャラ(あまり役にたたない)フレデリック(エドウィン・ライト)はカーボーイ風だったり、キッドに情報を教える酒場のマスター(そのせいで非道い拷問を受けて殺される)もいたりして、ストーリーに必要な最低限のキャラクターはしっかり配置されてる印象を受けました。

あと、ゼウスの忠実な部下スケルトンのデザインもいい感じ。
その名の通り鋼鉄製のドクロっぽいマスク、アイスホッケーのプロテクターにトゲトゲ、腕には丸鋸を発射する装置やチェーンソーをアタッチメントで付け替え可能

ホーボー・ウィズ・ショットガン』に(なんの脈絡もなく)登場する『地獄の使者』というキャラクターに通じる小五的カッコよさがあるなーと思いました。

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やりすぎ残酷シーンも含めての80年代LOVE

本作を特に印象づけてるのは、やりすぎなゴアシーンです。
とにかく、人間の体と言わず頭と言わず豆腐みたいにスパスパ切断されて、血しぶき増量でブッシャーっと吹き出す80年代スタイル。時代設定が1997年なのも80年代に流行った1990年代=世紀末のイメージらしいですしね。

同じカナダの映像集団「アストロン6」作品や前述している「ホーボー・ウィズ・ショットガン」、もうちょっとメジャーなところで言うと、悪ノリしてる時のタランティーノロバート・ロドリゲス作品にも似てますが、個人的にはエログロナンセンス専門のB級映画会社『トロマ・エンターティメント』(「悪魔の毒々モンスター」が有名)を思い出しました。

ちなみに物語の設定は、日本のマンガやアニメ、昔の横スクロールファミコンゲーム的だし、そういう80年代カルチャーで育った監督たちが、本作の中にそれらへの愛と敬意を詰め込んだ作品になってます。

一方で、キャラ設定やストーリーはベタベタではあるけど、『少年が成長して大人になる』という不変的なテーマの物語でもあり、途中で破綻することなくキッチリ語りきってるところを観ると、監督である3人組「ROADKILL SUPERSTARS」は、多分今風な映像や演出をしようと思えば出来る人たちなんでしょうね。

ただ、もう一度書きますけど、あくまでそれは『B級映画にしては』の括弧つきの話だし、B級ジャンル映画が好きな僕の偏愛的な評価でもあるので、こういう映画がダメな人は「なんだこれ」って思うダメな映画なのは間違いないです。
あと、「マッドマックス」は絶対言い過ぎだと思うww

なので、僕からは間違ってもオススメできませんが、それでも興味のある方は(自己責任で)是非。