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「犬神家の一族」(2006) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、あの『犬神家の一族』を市川崑監督自らセルフリメイクした、
2006年版『犬神家の一族』ですよー!

少し前に、映画史研究家 春日太一さんの著作「市川崑と『犬神家の一族』」を読んで、「そう言えば、昔観たけど内容とかちゃんと理解できてなかったなー」と思って、もう一回見直そうと思ったんですが……。

うっかり2006年版の方をレンタルしてしまいました。マジカ…orz|||

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画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp/

概要

1976年、角川映画第1弾として公開され社会現象にもなった、横溝正史原作の同名小説の映画化作品『犬神家の一族』を、市川崑監督自らの手で再映画化。
主役の金田一耕助にはオリジナル版と同じく石坂浩二、その他豪華キャストが名を連ねている事でも話題になった。
市川崑監督の遺作でもある。

 

あらすじ

昭和22年、那須湖畔の本宅で信州財界の大物・犬神佐兵衛(仲代達矢)が莫大な遺産を残して他界。
遺産の配当や事業相続者を記した遺言状は、長女松子の一人息子佐清が戦争から復員するまで開封しないという犬神佐兵衛の意思により、佐兵衛の死から7ヶ月経っても開封されずにいた。
同年10月、犬神家の顧問弁護士 古館恭三(中村 敦雄)の法律事務所に勤務する若林豊一郎の依頼で犬神家の本宅のある那須湖畔を訪れた私立探偵 金田一耕助石坂浩二)だったが、到着早々 依頼人である若林(嶋田豪)は何者かに毒殺されてしまう。

しかし若林の死は、その後次々と起こる陰惨な殺人事件の幕開けでしかなかった。

 

感想

僕は2006年版は初見でして。
オリジナル版も最後に観たのは随分前なので、正直内容もうろ覚えという状態です。

そんな僕が本作に最初に感じたのは、「あれ? こんなだっけ?」でした。

昔観たオリジナル版は、もっと話が入り組んでいておどろおどろしい映画だったようなイメージだったんですが、本作は割とスッキリしているというか、なんていうかこう……ストーリーも絵面も昔より随分アッサリしてるような気がするんですよね。

これは僕が大人になったからそう感じるのか、映画の内容が変更されてるのか、それとも両方なのか分かりませんが、正直食い足りさなを感じてしまいました。

キャストの違い

当然ですが一番の違いはキャストです。

主役の金田一はオリジナル版と同じく石坂浩二さんですが、オリジナル版から30年ですからね。
僕の中では『犬神家~』の金田一って若いイメージだったので、やっぱ多少の違和感はありました。なんていうかこう、安定感があるっていうか。

僕のイメージでは、『犬神家』の頃の金田一耕助って大金持ちの一族に振り回されてる印象なんですよね。なんで本作で犬神家の面々と対等に渡り合ってる金田一に違和感を感じたのかもしれません。(オリジナル版もうろ覚えなので実際には違ってるかもですが)

あと、犬神家三姉妹は松子に富司純子さん、竹子に松坂慶子さん、梅子に萬田久子さんと流石ベテラン揃いなので安心して観てられるんですが、スケキヨ役の尾上菊之助さんや、野々宮珠世役の松嶋菜々子さん、那須ホテルの女中ハル役の深キョンは、シュッとしてるなーとw

それが悪いんじゃなくて、オリジナル版と比べると全体的にスマートな印象なんですよね。現代的っていうか。
これは役者さんの所為じゃないんですが、それによって『犬神家の一族』という設定や時代背景のリアリティーが薄まってる感じがしてしまうんですよね。

一方で等々力署長(オリジナル版では橘警察署長)役の加藤武さん、大山神官役の大滝秀治さんは配役も同じで、特に加藤さんの「よし、分かった!」が出ると、映画やTVで金田一耕助シリーズを観てた世代としては「よっ、待ってました!」ってなりますよねw

他にも、オリジナル版に登場した役者さんが配役を変えて登場してたりするので、そこもファンの人は「お!」って思うかもですね。

金田一耕助という存在

多分、『金田一少年の事件簿』に先に触れて、本作で初めて『犬神家の一族』を観た人は、「なんだよー、金田一耕助って全然名探偵じゃないじゃん」って思うかもしれません。だって、全然殺人を防げてないですもんね。

でも安心してください。

オリジナル版の時もそうでしたw

これは、前述の春日太一さんの著作を読んで初めて知ったんですが、金田一耕助って『神や天使』のような存在、つまり傍観者であると監督は考えていたそうです。

つまり『犬神家の一族』における金田一耕助の役割は、事件を解決したり未然に食い止めたりする事じゃなくて、一族の血に起因する事件を結末まで見届けてから、その概要を観客に説明することが役割であって、そういう意味では『犬神家の一族』の主役は犬神家の人々で、金田一は物語を語るナレーター的な役割なんだそうです。

それを知った上で観ると、一連の事件の説明を終えたあと、真犯人が起こす行動に対する金田一のリアクションや、オリジナルと変更されたラストシーンの意味合いも何だか違って見えてきます。

オリジナル版より良くなってる部分

オリジナル版に比べると、なんだか物足りなく感じた本作ですが、もちろんオリジナル版よりも良くなってるところも多々あります。

例えば、『スケキヨ』のゴムマスクなんかは多分、素材や技術が良くなっているからだと思うんですが、オリジナル版に比べると格段に表情が出てる感じがしました。
それによって、オリジナルとは違う迫力や怖さがあったように思います。

あと物語も、『オリジナルに比べると物足りない』と書いてますが、それは言い換えれば物語自体が整理されて飲み込みやすくなってるっていう事でもあるので、おどろおどろしさがなくなった分『ミステリー映画』としてのカタルシスは上がってるんじゃないかなーって思ったり思わなかったり?(オリジナル版もうろ覚えなんでハッキリとは言えませんが)

僕の世代だと、どうしても子供時代に衝撃を受けたオリジナル版と比較しながら本作を観てしまうし文句も出てしまうんですが、本作を単品として観れば、決してつまらない作品ではないことだけは間違いないです。

興味のある方は是非!!