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「群盗」(2015) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、韓国の時代劇『群盗』ですよー!
映画評論家の評価やネットレビューを読んでも、ほぼ絶賛という本作。
そこまで面白いなら一丁観てみるかとレンタルしてきたんですが、

ヤバイ、超滾(たぎ)る。

というわけで、これから感想を書くわけですが、ネタバレはしない予定だけど、ちょっと内容に触れたりするかもなので、これから観る予定のある方は本作を観たあとでお読み下さい。
内容が分からないと不安という人のために、先に書いておくと、

韓国映画で時代活劇。超面白いです。オススメです。

さて、いいですね? 注意はしましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

2004年に韓国で公開。
朝鮮王朝末期の1862年を舞台に、腐敗した権力者と義賊の戦いを描いた韓国の時代劇。
監督は『悪いやつら』で韓国の映画賞を総なめしたユン・ジョンビン。
主役のトルムチ(トチ)に、監督が大学在学中に撮影したデビュー作「許されざるもの」「悪いやつら」にも出演しているハ・ジョンウ。

 

あらすじ

朝鮮王朝末期の1862年。
民衆は悪党領主や腐敗した役人たちによる搾取や圧政に苦しんでいた。
母と妹の一家3人で細々と暮らしていたと畜人トルムチ(ハ・ジョンウ)はある日、武官のユン(カン・ドンウォン)からある女性の暗殺を任されるが、人の良さが祟って未遂に終わる。

口封じのため、ユンは部下に命じてトルムチたちの家を燃やすが、母と妹は命を落とし、トルムチだけは生き延びる。

すぐさま復讐のためユンの邸宅に乗り込むトルムチだったが、武芸に秀でたユンの前に歯が立たず、捉えられ殺されるところを盗賊団「智異山チュソル」に助けられる。
腐敗した領主や役人の打倒を掲げる義賊たちの一味となったトルムチは、武芸を磨きユンへの復讐を誓うが。

 

感想

韓国産痛快時代活劇

本作を一言で言うと、タランティーノが撮った黒澤映画ってな感じです。
時代劇ではあるんですが、ベースは西部劇なんですよね。

舞台は朝鮮王朝末期の韓国。
腐敗した領主や役人たちの搾取によって民衆たちは虐げられ、その中には山に逃れて盗賊になる物も。
そんな盗賊の一派「智異山チュソル」は悪い領主や役人を襲い、奪い取った米や金品を民衆に分け与える義賊なんですね。

本作はそんな「智異山チュソル」と、冷酷無比な武官チョ・ユンとの戦いをメインに、5章立てで観せる韓国の時代活劇です。

キャラクターの魅力

1章では「智異山チュソル」の面々が冒頭、悪領主を襲撃する下りでメンバーが一人づつ紹介されていきます。

布にくるんだ鉄球を武器に使う怪力のチョンボ(マ・ドンソク)、すばしこさや軽業担当の瞬殺者クムサン(キム・ジェヨン)、紅一点で弓撃手のマヒャン(ユン・ジヘ)、武術はからっきしだけど口八丁手八丁の戦略士テギ(チョ・ジヌン)、サブリーダー的存在の坊主テンチュ(イ・ギョンヨン)に、文武ともに優れたリーダー頭領デホ(イ・ソンミン)

http://image.eiga.k-img.com/images/movie/81683/gallery/sub8_large.jpg?1424323113「智異山チュソル」メンバー 画像出典元URL:http://eiga.com/

彼らは、ただ力任せに押し入って領主や役人から奪い取るわけではなく、各々が能力を発揮し役割を果たしながら、戦略を持って任務を遂行していくんですね。

この冒頭からもう、面白い。

その前に説明で、悪徳領主や役人の悪行や、虐げられ、逆らえば処罰される民衆の様子が流れて、それとは対照的に贅の限りを尽くす悪領主の様子が描かれてるので、まんまと「智異山チュソル」の策にハマり殺されても、まぁ、自業自得よねー( ̄ー ̄)y-~~~
ってな感じで爽快感の方が勝ちます

この辺は、クライムムービー(チームによる犯罪映画)的演出なんですね。

2章では、主役トルムチとラスボスのユンが登場します。

この、ユンというのが、
まーーーーーーーーー憎っっっったらしいヤツで、
美しい容姿とは裏腹に悪逆非道の限りを尽くすんですね。
しかも、当代随一の実力を持つ武官なので超強いわけです。
まぁ、コイツが悪いのは出世に秘密があって、その所為ですっかり捻くれちゃってるので、それを思えば同情の余地もあるんですが、そこを差っ引いいてもその所業はまさに鬼畜です。
ユンを演じているのはモデルも務める俳優のカン・ドンウォン
この人、普通の格好だと二枚目だなーくらいなんですが、本作では妖艶ささえ感じる
超美系です。

http://image.eiga.k-img.com/images/movie/81683/gallery/sub6_large.jpg?1424323113超美人で超強いユン 画像出典元URL:http://eiga.com/

対する、トルムチはユンの家に肉を納品する屠殺人。
身分は最下層で、母親と妹と町外れのアバラ屋に住むボンクラです。

そんなトルチムがある日、ユンに呼ばれて「お金あげるから寺にいるビッチを殺してきてよ」と頼まれ、ホイホイ引き受けるんですが、ボンクラだけど気のいいヤツなので暗殺は失敗。
口封じのために、母子もろとも焼き殺されそうになるものの、大やけどを負いながらも1人だけ生き残っちゃうんですね。
で、すぐに復讐に行くけどアッサリ返り討ちにあい、処刑寸前のところを「智異山チュソル」に救われて仲間になるわけです。

で、修行の末強くなったトルムチは、スキンヘッドにして、トチ(世の中をひっくり返すみたいな意味らしいです)と呼ばれるようになり、屠殺用の包丁をカスタマイズし、二刀流の使い手になっていくんですね。
ちなみにこのトチ、設定では18歳w

http://image.eiga.k-img.com/images/movie/81683/gallery/sub2_large.jpg?1424323112
               ↑18歳w 画像出典元URL:http://eiga.com/

 

嘘つけ! ってツッコミたくなること請け合いですが、監督によれば当時の写真を見ると、みんな実年齢よりずっと老けて見えたからって理由だそうですよ。

事ほど左様に、とても単純明快なストーリーの骨格に、それぞれのキャラクターで肉付けしていくスタイルなので、物語が頭に入ってきやすいし、キャラクターもみんな魅力的で素晴らしいです。

なにより、最下層の人間が権力者を敵に回して戦うという設定がもうね、滾る!

難を言えば

ただ、難を言えばラスボスのユンに悲しい出自を背負わせちゃったことで、ラストのカタルシスは薄れたし、下ネタギャグも今時どうなか~と思ったり。

他にも、日本人的には「あ、そこまでやっちゃうんだ」って思う部分もありましたが、その辺は、日本と韓国のヒーロー感の違いなんでしょうね。

アクションとスケール感

あと、本作の見どころはアクションです。
長い刀を華麗に振り回すユンと、カスタマイズ包丁二刀流のトチの3度に渡る戦いはスピード感と迫力があったし、頭領のデホの槍のような刀とユンが戦うシーンもグッとくるカッコよさでした。

そういう武器にもそれぞれの個性があって、キャラ付けに一役買ってるんですよね。
また、盗賊団のみんなが馬で疾走するアクションにもグッときました。
ワイヤーを使ったアクションもあるんですが、中国映画の無重力ワイヤーアクションと違って、あくまで剣劇の補佐的役割として使われてるのも良かったですよ。

あと、時代劇ってとこも本作のミソの部分です。
これが現代劇だと荒唐無稽な設定も、時代劇(というより西部劇ですが)のフォーマットに落とし込むことでハリウッドにも負けないアクションエンターテイメントに出来るんですよね。
つまり、ある種のファンタジーとして観客に違和感なく作品のスケール感を広げられるってことで、むしろこの辺は日本が十八番だったはずなのにねぇ……ってちょっぴり寂しく思ったり。
そこに触れると長くなるんで止めときますけど。

韓国映画っていうと、人間の暗部を抉るような陰惨で仄暗い『コリアンノワール』のイメージが強かったんですが、ここに来てトンデモない活劇映画が出てきたなーと思いました。韓国映画レベル高いなー。

あと余談ですが、「韓国マカロニウエスタン」って書かれてるのをチラっと見かけましたが、マカロニウエスタンはイタリアで作った西部劇という意味なので、韓国産ウエスタンならキムチウエスタンじゃないかなーって思いました。

ともあれ、とにかく終始滾る映画でしたし、しっかりした作劇はさすがのクオリティーでしたよー!

興味のある方は是非!!