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「ゼロ・ダーク・サーティ」(2013) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、9・11からウサマ・ビン・ラディン殺害までを一人の女性の視点から描いた作品『ゼロ・ダーク・サーティ』ですよー!(ここはネタバレじゃないですよ?ww)
観ている間ずっと胃が重くなるような、生々しい映画でした。(*´д`;)…
あと、今回は最初から最後まで全部ネタバレします。(っていうかほぼ史実だけど)
なので、これから本作を観る予定の方は、映画を見たあとに間奏部分を読んでくださいねー。
いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

2013年アカデミー賞の各賞にノミネートされ、音響編集賞を受賞した米国アクションサスペンス映画。
10年間、ウサマ・ビン・ラディンを追い続けたCIA分析官マヤの執念を描いた作品。
監督は「ハート・ロッカー」など多くの作品を手がけるのキャスリン・アン・ビグロー。主演は「インターステラー」や「オデッセイ」にも出演しているジェシカ・チャステイン

 

あらすじ

中東を専門に扱う若き女性CIA分析官マヤ(ジェシカ・チャステイン)は、9・11アメリカ同時多発テロ事件に関与したテロリストを追うため、パキスタンのCIA支局に配属される。
テロリストへの非人道的な拷問、上司や政治家との確執と対立、仲間の死を経験しながら、マヤのチームは約10年がかりで9・11の指導者、ウサマ・ビン・ラディンに繋がる男を特定する。

 

感想

DVDを再生してから気づいたんですが、僕は戦争映画が本当に苦手なんですね。
本作をレンタルしたときも記憶が曖昧で、ホラー映画だっけーなんて借りて観たら、最も苦手な戦争映画だったので、あぁしまったーー!! と後悔しながら観ました。(自業自得)

で、本作は2013年の各賞にノミネートされてるだけあって、映像の生々しさや終始映像に漂う緊張感に意がキリキリするような気持ちになりました。

どうしても…

この手の映画って、感想や映画評にどうしても書き手の政治的思想が影響してしまうというか、映画の内容とは少しズレてしまいがちだなーっていう印象があります。
特に9・11の直接的な被害を受けているアメリカでは尚更だし、この映画を政治的思想に利用する人も出てきたりしますよね。

もちろん、監督スタッフたちだって、そこはわかった上で9・11だったり、中東でのテロや非人道的な尋問を取り上げてるだろうし、某かの思惑もないわけではないと思いますけども。

終始漂う、嫌な空気と緊張感

本作は基本的に、とても地味な映画です。
物語の大半は、情報を集めてアルカイダのテロリストを探すだけですからね。
ただ、157分の間ずっと、嫌な空気と緊張感が映画を支配してるんですね。

映画はジェイソン・クラーク演じるダニエルが、捕えたアルカイダのテロリストに対しての尋問からスタートします。
これがもう、見てるだけで「うわー……」ってなる嫌な感じ。

顔にタオルを被せてそこに水をかける水責めの拷問や、下半身マッパにして首輪をつけて部屋の中を引きずり回すとか、爆音でヘビメタをかけて寝かせないとか、小さな箱に閉じ込めるとか。
そうかと思うと、食べ物や飲み物で懐柔したり、自白してないのに自白したって騙したりとか、あの手この手でアルカイダの重要人物の情報を聞き出そうとします。

ジェシカ・チャステイン演じる主人公 マヤは、この尋問(というか拷問)に最初はドン引きなんですが、時間が経つにつれてどんどん慣れていっちゃいます。

僕は、このマヤの変化こそが、本作の描きたかった本質なんじゃないかって思いました。最初は観客と同じ視点を持っていたマヤが、任務という『正義』を与えられてどんどん、アルカイダを人間としてじゃなく『倒すべき敵』と見るようになていく様というか。現場にいる人たちが(アルカイダのメンバーも含め)、大きな流れの歯車になっていく恐ろしさみたいな。

そんな中、尋問のデーターを見返して手がかりを探していたマヤは、一人の男にたどり着きます。ビン・ラディンの連絡係であるアブ・アフメ。

マヤは、このアブ・アフメこそがビン・ラディンを探し出す鍵と確信しますが、上司は情報の信ぴょう性に疑問を持ち、取り合ってくれない。
そして物語は、マヤの執念の調査を追っていく展開になるわけです。

その間にも、精神的に疲れ果てた上司のダニエルが本国に帰ったり、海外やパキスタン国内で次々に自爆テロが起こったり、仲間のジェシカ(ジェニファー・イーリー)がアルカイダの罠にハマって爆死したり、アルカイダのリストに載ってしまったマヤ自身が標的として銃撃されたり、CIAの拷問の様子が流出して世論が敵に回ったり、大統領が変わったり。
もう、敵味方入り組んで色んな思惑が絡む中、マヤは執念とも言える調査を続けていくんですね。

しかも、敵がどこに潜んで自分たちを狙ってるかも分からない状態だし、パキスタンの人々だって、敵ではなくても味方でもないわけで、いわば完全アウェー状態。
だから、普通に食事してる場面や、ターゲットの追跡シーンでも、いつ敵に襲われるか分からない緊張感がずっとついてまわるわけです。

ビン・ラディン殺害作戦の生々しさ

で、そんなマヤやチームの執念の捜査が実り、ビン・ラディンの隠れ家らしき家が見つかり、いよいよビン・ラディン暗殺計画が実行されるわけですが、このシーンがまた何とも生々しいわけですよ。
ネイビーの暗視スコープ越しの映像とか、撃ち合い、爆破などなど。
いつかテレビのニュースで見たような、生々しい映像に「ひーーー」ってなります。
もちろん、残酷になりすぎないようある程度の配慮はされてると思うんですが、そこにはビン・ラディンも含めた三家族が暮らしていて、女性や子供たちは目の前で夫(父親)が殺害されるわけで、子供が怯えて泣いてる様子とか観ちゃうとたまらない気持ちになります。

マヤに残されたものは…

そんなこんなでネイビーは見事ビン・ラディン殺害に成功し、マヤの長年の努力や執念も報われてめでたしめでたし……とはなりません。

任務を終えたマヤは輸送機をチャーターして、本国?に戻るわけですが、そこにはマヤしか乗っていません。
パイロットが。(多分冗談で)「どこに行くんだい?」と訪ねますが、マヤは答えらず、ただ、静かに涙を流して本作は終わります。
約10年、彼女やチームが成し遂げた『正義』の果てに何が残り、これからどこに向かえばいいのか。

僕には、このパイロットのマヤへの問いかけは、そのまま監督の僕ら観客への問いかけのようにも感じました。

約3時間と長尺な映画ですが、見ごたえのあるスゴイ映画ではありますが、正直お腹いっぱいだし、僕はもう2度と見ないだろうなーって思いました。

興味のある方は是非!