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「グリーン・インフェルノ」(2015) 感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ホステル」などグロ系ホラー映画界の貴公子、イーライ・ロス監督の『グリーン・インフェルノ』ですよー!

あらかじめ書いておきますが、今回はオススメはしませんよw
だって内容はアレだし、R-18指定の映画ですからねー。

 http://image.eiga.k-img.com/images/movie/79777/poster2.jpg?1443407136
画像出典元URL:http://eiga.com/

概要

1981年に公開され話題を呼んだ食人ホラー映画、『食人族』をモチーフに、イーライ・ロス監督が6年ぶりにメガホンを取った作品。
映画館で劇場予告編が中止になったり、「食人族 -製作35周年記念HDリマスター究極版-」の販売が一時中止になるなどの騒動も話題になった。

あらすじ

アマゾンの森林伐採の実態を世に訴えるため、学生たちの活動家グループは現地に赴く。その後、彼らは度を越した行動で全員強制送還されることになるが、その途中で搭乗機がエンジントラブルで墜落。熱帯雨林に墜落した飛行機の生存者たちは救助を求めるが、彼らを待ち受けていたのは『食人族』だった。

感想

本作は、好事家の間で今尚カルト的人気を誇るホラー映画『食人族』を、『ホステル』などの作品で知られるイーライ・ロスがリブートするという事で、一部の映画ファンの間で公開前から盛り上がった作品です。

食人族とは

この『食人族』という映画を少し説明すると、ドキュメンタリーを装ってさまざまなヤラセを行ってきた、グァルティエロ・ヤコペッティーの『世界残酷物語』などに代表されるモンド映画(観客の見世物的好奇心に訴える猟奇系ドキュメンタリー・モキュメンタリー映画の総称)というジャンルが流行った時期がありまして、その決定版という触れ込みで公開された映画です。

内容は、ドキュメンタリー撮影のためにジャングルに住む原住民ヤマモモ族の村に行き、ドラマチックな映像に仕立てるために色々酷いことをした結果、無残に皆殺しにされるというもので、その一部始終を撮影したフィルムが発見されたという体のフェイクドキュメンタリー形式の映画で、今で言う、POV形式の元祖とも言うべき作品なんですね。

イーライ・ロスという男

イーライ・ロスの名を、世界に知らしめたのは何と言っても『ホステル』だと思います。浮かれポンチの男たちが、スロバキアで殺人愛好家に捕まって酷い目に遭う(かなりソフトな表現)という映画で、容赦なく人体破壊を描く残酷表現が有名な監督でもあります。

まったく共感できない主人公たち

本作の中で食人族の被害に合うのは、学生たちの活動家グループです。
いわゆる意識高い系の人たちで、何かしら問題を見つけてはハンストとかデモとかしちゃうんですね。
で、主人公のジャスティン(ロレンツァ・イッツォ)は、最初彼らを見て小馬鹿にしているんですが、授業で教わった女性の割礼儀式にショックを受けたのと、リーダーのアレハンドロ(アリエル・レビ)がタイプだったことから、あっさりこのグループに加わっちゃう女の子で、もう、誰ひとりとして共感できるヤツがいないわけです。

そんな彼らの次の活動は、ペルーの緑と未開の原住民を守るため、違法森林伐採への抗議活動。
彼らはインターネットとスマホを武器に、森林伐採の業者やペルー軍に立ち向かい、その様子を生中継することで世論を味方に付けて見事勝利するわけですが、ジャスティンはここでリーダーのアレハンドロが自分を仲間に引き入れた真の目的を知りハートブレイク。また、このアレハンドロが終始見事なクソ野郎っぷりを発揮するんですよね。

しかし、その目に余るやり方に、彼らは即刻国外退去を命じられ、飛行機でアマゾンの森を飛んでる最中、突如飛行機が墜落、数名は死亡するものの、彼らは一命を取り留め、そして食人族の皆さんに出会ってしまうわけです。

それまでに、このグループの傲慢かつ強引な態度や行動を散々見せられてるコッチとしては、彼らの仲間が食人族の皆さんに美味しく頂かれちゃうシーンにも、心を痛めることなく観ることが出来るわけですね。

丁寧に描かれるディテールと絶妙なバランス感覚

そして、本作で一番最初に美味しく頂かれちゃうのが、グループ内で唯一好感が持てる男ジョナ(アーロン・バーンズ)なんですが、この時の解体手順がアイデア満載かつ、食人族の皆さんが持っているであろう独自の儀式の様子や食人族の彼らのコミュニティーの様子を、非常に丁寧に描いています。
その上で、イーライ・ロス監督は、わざと作り物っぽく見えるやりすぎなデフォルメ描写で観客に本作がフィクションであることを常に意識させているんですね。(いや、慣れてない人には十分ショッキングですけども)

そのへんのバランス感覚は相変わらず見事だなーって思います。

その他にも、仲間の死体を串刺しにして、ちゃんと『食人族』オマージュを入れるあたりも中々心憎い演出です。

B級ホラーと侮ることなかれ

そんなこんなで、本作は直球ど真ん中のB級残酷ホラー映画なんですが、その実、かなり綿密に計算された映画でもあります。
前半、彼らのアメリカでの活動の様子や、リーダー アレハンドロの胡散臭さ、女性の割礼の歴史に主人公ジャスティンがショックを受けるシーン、グループの力関係、ジャスティンの叔父との会話などなど、後半で張った伏線を後半でキッチリ回収する手際の良さを観ると、やはりイーライ・ロスが監督として、とても非凡な才能の持ち主であることが分かります。

また、本作の後ろに、自分たちとまったく違う文化に土足で踏み込む無知や罪深さに警鐘を鳴らすという壮大なテーマも見えてくるし、そのテーマは同時に観客に対しても突きつけられているという、深い内容でもあるんですよねー。

まぁ、それはこの映画のアリバイみたいなもので、イーライ・ロス監督は『食人族』をやりたかっただけだと思いますけどもw

そんなこんなで、現代に蘇った『食人族』
興味のある方は(自己責任で)どうぞ。