ぷらすです。
今回ご紹介するのは、あの「マッドマックス」シリーズを手がけたジョージ・ミラーが製作と脚本をつとめたファミリームービー『ベイブ』ですよー!
公開当初は全然興味がわかなかったんですが、ジョージ・ミラーが関わっていると知って、早速観てみることにしましたー。
画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp
概要とあらすじ
1995年の米映画。
養豚場で生まれた極平凡な子豚の『ベイブ』は、ひょんな事から無口で実直な老農場主アーサー・ホゲット(ジェームズ・クロムウェル)の農場に貰われることに。最初は“食用“として育てられたベイブだったが、偶然と出会いに恵まれた彼は、史上初の牧羊豚を目指すことに。
第68回アカデミー賞7部門にノミネート、CGとアニマトロニクスといった特殊効果が評価され、視覚効果賞を受賞した。
監督はクリス・ヌーナン。
感想
本作が公開された頃は、よくある動物を主人公にしたファミリームービーなんだろうとスルーしてしまっていた本作。
で、『マッドマックス-怒りのデスロード』の公開以降、ジョージ・ミラーが関わった作品として度々名前を聞くようになり、評価も高いようだったので早速、観てみることにしましたー。
年齢によって見えるものが変わる映画
本作は、ぱっと見のルックは可愛い子豚が活躍するファミリームービーなんですが、開始早々いきなりベイブの母親が出荷されちゃうところから物語がスタートするんですよね!
この出だしで、本作がただ可愛いだけの映画ではないなってのが分かって、少々驚きました。
その後、ベイブはお祭りの景品として出荷を免れ、偶然通りかかった牧場主のアーサー(ジェームズ・クロムウェル)に貰われていきます。
子供たちは既に巣立っていて、アーサーは奥さんのエズメ(マグダ・ズバンスキー)と二人暮らし。奥さんはベイブをハムやソーセージにしようとノリノリで餌やりをしたりします。
そんな中、牧羊犬のフライや他の家畜たちとのふれあい、そしてベイブ自身の素直さもあって、運命が少しづつ変わっていく様子が描かれていくんですね。
内容的には小さな子供でも充分に楽しめるように作られているし、ラストもハッピーエンドになってるんですが、ベイブや牧場の仲間たちは常に死の影が付きまとうわけですよね。(家畜だから)
クリスマスの日なんかは、ベイブの丸焼きか、ガチョウのオレンジ焼きかなんて、ちょっとしたサスペンスがあったり。
もちろん動物を〆てるところは映像では見せませんが、家畜を〆る小屋を動物の視点でおどろおどろしく演出したり、家畜じゃなくてもスライの子供たちがほかの飼い主に売られていったりする様子も、彼ら(動物)視点で描くので、人間的には極々普通の営みが、なんとも残酷な事として見えるように作られています。
また、最初、本作では農場の家畜や動物たちはそれぞれ馬鹿にしたり恐れたりしあっています。牧羊犬にとって羊たちは自分に従わせるべき無能な動物だし、羊たちはスライたちを“狼“と呼んで嫌ってます。
鶏とガチョウ、犬と猫、馬、牛なども、それぞれにヒエラルキーや確執があって、同じ牧場に住みながらそれぞれ分かり合うことはない状態なんですね。
これは言うまでもなく、人種問題や差別問題のメタファーになっていて、いわば『もし地球がひとつの牧場だったら』みたいな感じ。
そういう意味で、本作は人種間の対立や差別、偏見を内包した寓話でもあるわけです。
そんな中、ベイブという一匹の“異物“が、彼らの橋渡し役としてやってくることで、みんな(アーサーも含めて)の心情や関係を変えていくという物語なんですね。
本作は、そんな風に観る人の年齢によって見え方が変わってくる、まさに『ファミリームービー』なわけです。
ギリギリのバランスで
といっても、みんな仲良く暮らしました。めでたしめでたし。とはなりません。
牧場に暮らす動物たちの関係が、少しだけ変わる程度に、本作は抑えられています。
この辺をベタベタのご都合主義的に描かないところは、“命“を扱う映画のリアリティーとファンタジーのギリギリのバランスを、真摯な姿勢で描いていると思いました。
『ベイブ』と『マッドマックス 怒りのデスロード』
話は冒頭部分に戻るわけですが、お母さんを連れて行かれた子豚たちの心情がナレーションで語られるんですけど、「大きくなれば彼らは“豚の天国“に行くことが出来ると思っている」(うろ覚え)って言ってて、こいつらウォーボーイズじゃん! と思わず笑ってしまいましたよw
いや、別に笑うシーンじゃないんですが、先にマッドマックスを観てしまったからw
で、一回そう思っちゃうと、もちろん映画のルックも内容もまったく別モノなんですが、なんとなく「怒りのデスロード」が透けて見えるなーなんて思ったり。
本作に、ジョージ・ミラーがどのくらい深く関わっているのかは分かりませんが、多分、全く別な二つの物語の中に、彼自身の人生哲学というか、映画人としての一貫したテーマが投影されているからなんじゃないかなーと思ったりしてしまいました。
興味のある方は是非!