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「宇宙戦争」(2005) ネタバレ感想

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、2005年公開のSFパニック映画『宇宙戦争』ですよー!
白状すると僕、本作は今回が初見です。(〃ω〃)> オハズカシイ

っていうか、思い返してみるとスピルバーグ作品って結構 観逃してるんですよねー。

本作はそんな僕が、未見のスピルバーグ作品もこれから観ていかなきゃなーと思う一作でしたよー。
ちなみに今回は、ネタバレも含みますんで、(いないとは思いますが)万が一これから本作を観ようっていう人は、先に映画を見てくださいね。
いいですね? 注意しましたよ?

 

https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/71XzqdZHZrL._SL1378_.jpg画像酒店元URL:https://www.amazon.co.jp

あらすじと概要

イギリスの小説家にして、SF小説の父とも言われるH・G・ウエルズの同名小説の映画化作品。
1938年にはラジオドラマ化、1953年に実写映画化された他、その後も多くのSF映画に多大な影響を与えている。
特に1938年 オーソン・ウェルズがラジオドラマとして放送した際、途中から聞いた人たちが現実に宇宙人が攻めてきたと勘違いしてパニックになったのは有名な話。

本作では、原作、1953年版『宇宙戦争』のエッセンスを生かしつつ、9.11テロ後の世相を反映させた作りになっている。

離婚しニュージャージー州ベイヨンで一人暮らしの港湾労働者のレイ・フェリエ(トム・クルーズ)の元に、元妻がボストンの両親の家を尋ねるため二人の子どもを預ける。
不器用なりに何とか二人との距離を詰めようとするレイだったが、長男ロビー(ジャスティン・チャットウィン)は反抗期真っ只中で娘のレイチェル(ダコタ・ファニング)も生意気盛り。

そんな時、突然街中に何度も落雷する嵐が起こり、電子機器や自動車まで動かなくなってしまう。
明らかに異常な事態に、街に様子を見に行ったレイは、突如地中から出現した巨大ロボット「トライポッド」によって人々が攻撃を受ける様子を目撃する。

主演はトム・クルーズ 監督はスティーブン・スピルバーグ
また、1953年版『宇宙戦争』で主演したジーン・バリー、アン・ロビンソンもカメオ出演している。

 

感想

宇宙戦争』の逸話として一番有名なのが、1938年、オーソン・ウェルズが製作したラジオドラマ版ではないかと思います。
実際に火星人が侵略を開始したと思った聴取者がパニック状態になったという逸話ですね。その後も1953年にプロデューサーのジョージ・パルによって実写映画化されてますし、「マーズアタック」や「インディペンデンスデイ」他多くの作品がこの原作に多大な影響を受けているハズです。
そして、本作の監督、スピルバーグ御大は少年時代、原作や1953年版の「宇宙戦争」を観て育った世代でもあるんですよね。

ザ・スピルバーグ的演出

冒頭、トムク・ルーズ演じるレイの性格や、別れた妻や子供達との関係が、結構じっくり描かれます。しかし、セリフによる説明はそれほど多くありません。
役者の表情や、小道具、ちょっとした会話の端々から、レイや元奥さんと子どもたちとの関係が見えてくる実に映画的な手法。

例えば、レイが嫌がる息子を半ば強制的にキャッチボールに誘うというシーンがあります。長男は多分中学生か高校生くらいで、もう父親とキャッチボールっていう年でもないんですよ。

でも、二人の子供たちが幼い頃に別れたレイには、それ以外のコミュニケーション手段が思いつかない。別れた時点で時間が止まってるわけです。そしてキャッチボール中に、レイの独善的な部分だったり幼稚さみたいな部分も見えてくるんですよね。

で、嫌々キャッチボールの相手に出てきた長男ロビーが被るキャップがレッドソックス? のキャップだったりするのも上手い演出ですよね。
レッドソックスの本拠地はボストンなので、ロビーは暗に“新しい父親の方がいい“と帽子で訴えてるわけです。

その合間にTVで断片的に流される磁気嵐のニュースからの落雷と嵐。

そして地中から巨大ロボット「トライポッド」出現のシークエンスでの、突然トライポッドを出現させて「ワッ!」っと脅かすのではなく、「来るぞ来るぞ……ほらキター!!」的なねちっこい演出。

この辺の恐怖演出は流石スピルバーグっていう感じの、前振りとタメの効いた見事な演出だなーと思いました。

父親になれなかった男が父親になるまでのロードムービー

さてさて、そんなこんなでトライポッドで宇宙人が侵略を開始して以降は、トムと二人の子供たちがひたすら逃げる展開になります。

最初トム・クルーズ主演ということで、ヒーロー然としたトムクルーズがカッコよく敵と戦うんだろうと思い込んでいたんですが、本作で彼が演じるのは、父親になれなかった“普通の男“です。
なので当然、米軍の兵器も効かない超兵器トライポッドに手も足も出るはずはなく、とにかく息子と娘を連れて、元奥さんがいるハズのボストン目指して逃げる以外出来ることはないんですね。

何とか動く車を見つけて逃げ回るものの、息子はずっと反抗的だし、娘はパニック状態でキャーキャー騒ぐし、レイはギリ父親としての責任を果たそうとしてるものの、自分もイッパイイッパイ。

しかし、子供たちとレイが上手くいかない原因はレイ自身にあって、彼は最初、リーダーとして子供たちをコントロールしようとするんですね。
それが、返って二人の不信感や反発を招くわけで、結局、自分が優先で子供たちのケアまで頭が回っていないんです。

しかし、色々な危機を乗り越え、自分の無力さを噛み締めながら、レイは本当の意味で父親になるという、ある種のロードムービー的な映画でもあるわけです。

9.11テロ以降の『宇宙戦争

宇宙戦争』の原作では、地球を侵略にきた火星人との戦いということになっていて、1953年版の映画では、この火星人やトライポッドは対ソ連、そして原子爆弾の恐怖のメタファーとして描かれているそうです。

そして、2005年のスピルバーグ版での、宇宙人やトライポッドは9.11テロのメタファーとして描かれています。

トライポッドによって、ビルが倒壊し、一般市民が敵のビームによって無残に灰にされていく様子、そしてなすすべなく米軍に導かれながら列をなして呆然と歩く人々の姿は、観客に9.11を思い出す作りになっていて、スピルバーグ自身、インタビューの中で、あえてそういう意図で描写をしたと語っています。

また、本作でも採用された地球の細菌に耐性のない宇宙人が勝手に自滅するという決着は、原作では過去に他国を侵略し植民地化していった先進国への皮肉が込められているんですが、本作では、正義の名のもとに中東に進軍していった米国への皮肉も乗っかっているように感じたのは僕だけでしょうか?

つまり、スピルバーグは本作の中で侵略“される“側の恐怖とともに侵略する側の“奢り“の両面を描いてるんじゃないかなーと思いました。

賛否両論

とまぁ、ここまでは色々褒めてきたんですが、では本作が不朽の名作なのかというと、そんなことはなく、上手くいってないところや、ご都合主義、ツッコミどころの多い作品なんですよねー。

映画雑誌の『映画秘宝』では、2005年度ベスト2位・ワースト2位の両方を獲得するという、まさに賛否両論な評価だったらしいですし、ネット評でダメだったという人の意見を読むと「あー確かに」って納得しちゃう部分も多々あります。

原作に忠実にしたい、世相を反映したい、親子の絆を描きたいなどなど、原作が好きすぎるがゆえに、色々な要素を詰め込みすぎて映画そのものがとっ散らかったり、時間が足りなかったりして、舌っ足らずになっちゃったのかなという印象。

その舌っ足らずさや気持ちが空回っている感じが、奇しくも劇中の主人公レイとシンクロしてしまった感じが皮肉だなーなんて思いました。

ただ、僕みたいにスピルバーグで育った世代にとっては「そうそう! スピルバーグはこれだよねー!」という映像の素晴らしさも確かにあって、スピルバーグ映画としては出来はよくないけど、嫌いにはなれないって人も多いんじゃないかなと思いますねー。

興味のある方は是非!