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弾圧と戦い続けた脚本家の物語「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(2016)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは米国の脚本家ダルトン・トランボの半生を描いた伝記映画
『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』ですよー!

アメリカの脚本家ダルトン・トランボが、マッカーシズム・いわゆる赤狩りによって逮捕されてから、アカデミー賞で自身の名前を刻んだオスカー像を受け取るまでの28年間を描いた作品です。

本作は事実に基づいた伝記映画なので感想にはネタバレも含まれてしまいます。
なので本作をこれから観る予定の方は、映画のあとに感想を読んで下さいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

ローマの休日』『ジョニーは戦場へ行った』などの名作を手掛けてきた脚本家ダルトン・トランボの半生を描く伝記映画。東西冷戦下のアメリカで起きた赤狩りにより映画界から追放されながらも偽名で執筆を続けたトランボを、テレビドラマ「ブレイキング・バッド」シリーズなどのブライアン・クランストンが演じる。共演は『運命の女』などのダイアン・レイン、『SOMEWHERE』などのエル・ファニング、オスカー女優ヘレン・ミレンら。監督を、『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズなどのジェイ・ローチが務める。

トーリー:『恋愛手帖』で第13回アカデミー賞脚色賞にノミネートされ、着実にキャリアを積んできたダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)。しかし、第2次世界大戦後の冷戦下に起きた赤狩りの標的となり、下院非米活動委員会への協力を拒否したことで投獄されてしまう。釈放後、彼は偽名で執筆を続け、『ローマの休日』をはじめ数々の傑作を世に送り出す。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

マッカーシズム赤狩り)とは

ざっくり言うと、第二次世界大戦後、冷戦初期の1948年頃より1950年代前半にかけて行われたアメリカ保守派による共産党員、および共産党シンパと見られる人々の排除の動きのことです。

下院議員で積極的に「赤狩り」を進めた共和党右派のジョセフ・マッカーシー上院議員の名をとって、この名がつけられました。

ハリウッドでも多くのアメリカ共産党員・共産党シンパが「ブラックリスト」に入れられ、仕事や家族を失うこととなり、中には自殺してしまった人もいたようです。

本作の主人公ダルトン・トランボもアメリカ共産党員で、映画スタッフの賃上げストライキなどのリーダーとして活動していたことから保守派に目をつけられ、反共キャンペーン下院非米活動委員会による第1回聴聞会に仲間らとともに呼ばれます。

この様子はテレビやラジオで中継され、仲間の名前を明かすことを迫られるわけですが、トランボを含む10人の脚本家(ハリウッド10)は仲間の名前を言わず、議会侮辱罪で逮捕され、禁固刑の実刑判決を受けてしまいます。

さらに出所後もジョン・ウェインらを筆頭とする「アメリカの理想を守る映画連盟」という組織の監視を受け、ハリウッドから完全に干されてしまうんですね。

そこでトランボは、『ローマの休日』の脚本を仲間の名前で売り込み、B級専門の映画会社キング・ブラザーズ社で多くの脚本の手直しをするスプリクト・ドクター兼脚本家として偽名を使って仕事をこなす日々を送り、やがて『スパルタカス』『栄光への脱出』で実名でクレジットされていくのです。

有名人が実名で登場

で、そんな本作では色んな有名人が実名で登場します。
「アメリカの理想を守る映画連盟」のジョン・ウェイン( デヴィッド・ジェームズ・エリオット)
元ハリウッド女優で劇中トランボの宿敵となるゴシップ記者のヘッダ・ホッパー( ヘレン・ミレン

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画像出典元URL:http://eiga.com /イヤーなババアヘッダ・ホッパー役の ヘレン・ミレン

スパルタカス』で主役兼制作で、トランボの救世主となったカーク・ダグラス( ディーン・オゴーマン)
などなど。

なので「え、この人にそんな過去が!? とか、この人ってそんな人だったの!?」 と驚くことも。
また、非米活動委員会審問会のテレビ映像や劇中で流れる映画など、当時の映像がふんだんに使われていて、それらの映像から当時のアメリカの空気感が伝わって来るんですよね。

そして、それぞれ実在の人物を演じた役者陣の演技も素晴らしく、とくに主役のトランボを演じたブライアン・クランストンの飄々とした演技や、宿敵ヘッダ・ホッパーを演じたヘレン・ミレンの実に憎々しい演技は素晴らしかったですねー!

思想弾圧という全体的に重いテーマながら、観ていて重苦しい気持ちにならないのは、ブライアン・クランストンの演技が大きいような気がします。

本作の真の主役

本作の主役はタイトル通りダルトン・トランボだし、物語は彼の視線で描かれていくわけですが、実はこの映画は「赤狩り」という潮流の被害者・加害者となってしまった映画関係者たちの群像劇なんですね。

なので、真の主役は「赤狩り」という潮流そのものなのかなーなんて思ったりしました。
アメリカの保守派の人たちは本作に対して、「トランボの(故意に)思想やアメリカ共産党員としての行動を描いていない」的なバッシングをしたそうで、確かに本作ではトランボ自身が英雄的に描かれすぎのようにも見えます。

ただ、前述したように、本作のテーマは思想の違いによるレッテル貼りだったり、冷戦時代の集団ヒステリー状態からくる「赤狩り」という個々人の思想や考えの違いを踏み潰して平らにならしてしまう「大きな流れ」に対する警告だと思うので、左右派閥の思想云々で語るのは筋が違うと思うし、アメリカだけの話ではなく、昨今の日本を含む世界的な問題をトランボという人物を通して描いているんじゃないかと思いました。

ラストシーンで、オスカーを獲ったトランボの演説は、そうした大きな流れに対しての一つの回答で、それまであまり感情的な言動のなかったトランボが、声を震わせながら語る言葉に、思わず胸が熱くなってしまったし、まさに今だから観るべき映画なんじゃないかと思いました。

興味のある方は是非!!!

 

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