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“世界のクロサワ”が描くフランス映画「ダゲレオタイプの女」(2016) *ちょいネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、“世界のクロサワ”こと黒沢清監督によるフランス映画。

ダゲレオタイプの女」ですよー!

監督がフランス人スタッフ、キャストともに作り上げたホラーロマンスです!

で、今回は軽くネタバレしているので、これからこの映画を観る予定の方は、映画を観た後に、この感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

『回路』『アカルイミライ』など国内外から高く評価されている黒沢清監督が、外国人キャストを迎えてフランス語で撮り上げたホラーロマンス。ダゲレオタイプという撮影手法で肖像写真を撮影するカメラマンの屋敷に隠された秘密を、不穏なタッチで描く。主演は『預言者』などのタハール・ラヒム。彼が思いを寄せるヒロインを『女っ気なし』などのコンスタンス・ルソーが演じるほか、名優オリヴィエ・グルメ、監督としても活躍するマチュー・アマルリックが共演。

トーリー:ダゲレオタイプで写真を撮影している写真家ステファン(オリヴィエ・グルメ)のもとで働くことになったジャン(タハール・ラヒム)は、ステファンの娘で、拘束器具に長い時間固定され被写体をしているマリー(コンスタンス・ルソー)が気になり始める。かつて被写体だったステファンの妻ドゥニーズが屋敷で自殺していたことを知ったジャンは、母親のようにさせないために、マリーを外に連れていこうと試みる。(シネマトゥデイより引用)

 

 

感想

ダゲレオタイプって何?

ダゲレオタイプというのは世界初の実用的写真撮影法で、銀板に直接映像を焼き付ける撮影法です。
ただ、露光時間が長くて撮影にはとても時間がかかる。そしてその間にモデルが動くと写真は失敗する。
というわけで、モデルが途中で動いてしまわないように専用の拘束具に固定されて、撮影が終わるまで身動きがとれない(らしい)んですねー。

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本作では、このダゲレオタイプにこだわる気難しい写真家、ステファン(オリヴィエ・グルメ)が、亡き妻と娘のマリー(コンスタンス・ルソー )をモデルにダゲレオタイプの作品を撮り続けていて、その助手として青年ジャン(タハール・ラヒム)がステファンに雇われる所から物語がスタートします。

ざっくりストーリー紹介

物語はフリーターのジャンが、アルバイト募集で写真家の助手としてステファンの家にやってくるところからスタート。

彼の雇い主はダゲレオタイプという特殊な写真撮影で名を挙げた、ステファンという気難しい写真家で、自分の娘マリーがモデルの等身大の作品を何枚も撮影しているという、エスパー魔美のお父さんみたいな人。

仕事の覚えが早かったジャンはステファンの助手として重宝され、やがてマリーと恋に落ちるが、この家には恐ろしい秘密があった。

という物語です。

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そしてこの映画は一応ホラーなんですが、個人的には「ホラー」というよりも「怪談」って感じがしました。
恐らく、黒澤監督は意識的に、フランスを舞台にした「怪談」をやろうとしたんじゃないかと思うんですが、どうですかねー?

フランスでも黒沢清黒沢清だった

映画冒頭、ジャンがステファンの家にやってくるシーン。

一瞬、「え、ここ本当にフランスなの?
と思うくらいいつも通り(と言えるほど本数を見てるわけではないんですがw)の黒沢清の画作りでしたねー。

最近の作品で言うと「クリーピー 偽りの隣人」的っていうか、パリ感ゼロの何処にでもありそうな特徴のない街並みが映し出されるわけです。
そして屋敷につくんですが、そこは外門と緑の内側の門の二重構造になっていて、日常と非日常の境目って感じなんですよね。この辺も「クリーピー~」感があるというか、黒沢清節全開って感じです。

そして屋敷の中では、メインの被写体の後ろに「何か」がそれとなく映る不穏な感じが満載。
不自然な暗闇だったり、風になびくレースのカーテンだったり、地下のスタジオやマリーが大事にしている温室だったり、黒沢清作品的な符号がそこかしこにあって、フランス映画じゃなくてフランスを舞台にした黒沢清作品なのだと、強く印象づけられます。

また、劇中不意に撮される、都市再開発のクレーンは、どこかダゲレオタイプで使われる拘束具を連想させたりして、映像的な韻を踏んでる感じがしましたねー。

母親の死の謎(ちょいネタバレ)

妄執に囚われる父親に恐れを抱く娘マリーは、家を出ようと仕事を探しています。
そんなマリーとジャンが親しくなっていく場面で、彼女の母親もダゲレオタイプのモデルだったこと、病にかかり温室で自殺したことが分かります。

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さらに後半では、この父親のステファンが妻(と娘)に行っていた、ある非道な行為が明らかになるんですね。
そして、それは妻の幽霊という形でステファン自身を苦しめます。

ここで恐ろしいのは、妻の幽霊にステファンは苦しめられているけれど、彼自身は妻をしに追いやった事を悔いてはいないってところで、妻がなぜ自殺したのかすら理解出来てないし、作品にすることで妻や娘を“永遠”に生かしてやったのだ的な恩着せがましい事まで言い出す始末。

ハッキリとは描かれてないんですが、多分ステファンはダゲレオタイプによる写真撮影で一時期名声を得たのだと思うんですよ。
で、以来、ダゲレオタイプにとり憑かれ狂ってしまった男ってことなんだと思います。

そして、そんなステファンの妄執に触れるうち、ジャンもそれとは気づかずに生と死、あの世とこの世の境界が曖昧になっていくわけです。

蛇足

そんな本作は131分あります。
この規模のこの内容の作品としては、正直長すぎるなーってのが正直な感想。

じっくりじわじわ描きたいという気持ちはわかりますが、全体的にダレ場や不必要(と個人的に思う)シーンが多くて長く感じてしまうんですよね。

特に後半の約15分は、まるっと蛇足だった気がします。
多分、最後のネタばらしは観た人全員が「うん、知ってた」って思っただろうし、その手前のアパートのシークエンスでバッサリ終わった方が良かったんじゃないかなーと。

そこも含めて冗長なシーンやカットを削って、90~100分くらいのタイトな作品に収めたら、もっと面白かったんじゃないかなって思いました。

ただ、黒沢清監督の作風は元々ヨーロッパ映画と相性がいいと思うし、また今後も海外のスタッフ・キャストと作る黒沢清監督の「洋画」は観てみたいと思いましたよ。

興味のある方は是非!

 

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