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ファンタジーとSFが融合。ティム・バートン濃度が高い秀作「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、巨匠ティム・バートン最新作「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」ですよー!

個人的に、ティム・バートンって当たり外れの大きな監督というイメージなんですが、本作は「大当たり」でしたよー!

 

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あらすじと概要

ランサム・リグズの小説「ハヤブサが守る家」を実写化したファンタジー。奇妙な子供たちが暮らす屋敷を訪れた少年が、彼らに迫りつつある危険と自身の秘めた宿命を知る。監督は、『アリス・イン・ワンダーランド』などのティム・バートン。『悪党に粛清を』などのエヴァ・グリーン、『エンダーのゲーム』などのエイサ・バターフィールド、『アベンジャーズ』シリーズなどのサミュエル・L・ジャクソンらが顔をそろえる。

トーリー:少年ジェイクは、現実と幻想が交錯する中で、奇妙な子供たちが暮らす“ミス・ペレグリンの家”を見つけ出す。子供たちが不思議な能力を持ち、ひたすら同じ一日を繰り返す理由を知る一方で、彼らに忍び寄ろうとしている危険に気付くジェイク。さらに、ミス・ペレグリンの家へと導かれた理由と自身の役割を知る。やがて、真実が明らかになるとともに、子供たちに思わぬ変化が起こるが……。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

原作について

本作は2011年に出版された、アメリカ人作家ランサム・リグズのデビュー作「ハヤブサが守る家」を原作にしています。
この原作小説はちょっと変わった作りになっていて、元々古い写真の収集家だったリグズの所蔵写真を集めたフォトブックになる予定だったのが、編集者のアドバイスで人物写真からキャラクターや物語の発想を膨らませた小説になったらしいんですね。

で、このリグズは1979年生まれの38歳。
だからかもしれませんが、物語の設定が今っぽいというか、いわゆるファンタジーとは少し毛色が違う感じ。
たとえば、孤島の孤児院に集まる子供達は全員、いわゆる異能者=ミュータントだし、エヴァ・グリーン演じるミス・ペレグリン自身も「時間を操る」能力を持っていて、ある一日を「ループ」させることで、子供達の安全圏を作っています。
また、ある場所をゲートにしてタイムリープしたり、敵は不老不死を望む異能者で、そのために世界に散らばる異能の子供たちを狙っているとか、日本だとアニメやラノベなんかでも割と馴染みのある設定ですよね。

そんなダークファンタジー的な世界感とSF的ロジックが混じったような、「ハリー・ポッター」シリーズにも通じる現代的感覚を持った作品で、そんな作品の持つ世界感はティム・バートン監督の持つ資質とガッチリ噛み合っていると思いましたねー。

ティム・バートン版「X-MEN」!?

アリス・イン・ワンダーランド」「 チャーリーとチョコレート工場」「ビッグ・フィッシュ」「 ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」など、 ティム・バートン=(ゴシック)ファンタジー映画というイメージを持つ人も多いんじゃないでしょうか。

実際彼はそういう世界が大好きですが、一方でSFや特撮にも深くて、「バットマン」や「猿の惑星」、「フランケン・ウィニー」や「マーズ・アタック!」なども手がけています。つまり生粋のオタクなんですねw

そして、彼の特徴の一つに「箱庭的な世界」が得意というのもあります。
室内セットで世界を作りこんで、その中で物語が進む、ある意味「演劇的」手法というか。その特徴が顕著なのは「フランケン・ウィニー」や「 ナイトメアー~」 「 スリーピー・ホロウ 」などですかね。
「アリス~」や「チャーリーの~」も、そうした箱庭世界の拡大版ですしね。

もう一つは、異能・異形・異界の者、もしくはそうした者の世界に紛れ込んだ人間=マイリティーが主人公の作品が多いってことですね。
それは、そうしたキャラクターに彼自身を投影しているんだと思います。

そんなティム・バートンにとって、本作はまさにうってつけの題材。
異能・異形の子供たちが、ミス・ペレグリンに守られた箱庭で暮らし、紆余曲折あって自分たちの居場所を見つける物語ですからね。

で、アメコミ映画好きな人なら、本作を観て「X-MEN」を連想した人も多いんじゃないでしょうか。
X-MENのリーダー・プロフェッサーXも、ミュータントの子供たちを差別から守るために彼らの学園=居場所を作ってあげますしね。
ちなみに本作の脚本は「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」のジェーン・ゴールドマンだそうですw(もちろん、だから似てるというわけではないですが)

奇妙でカワイイ子供たち

本作の魅力は、何と言っても子供たちの魅力的なキャラクターです。

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放っておくと宙に浮いてしまうので、重い鉛の靴を履いている女の子。
降霊術で無機物に命を吹き込める男の子。
触れたものを燃やせる女の子。
透明人間の男の子。
幼いけど怪力の女の子、植物を操る女の子。
体に蜂を飼っている男の子、後頭部に大きな口のある女の子。
片目からプロジェクターのように自分の夢や未来予知を投影出来る男の子。
いつも覆面を被っている双子。

特に超怪力のちびっ子、ブロンウィン( ピクシー・デイヴィーズ)は可愛かったですねー(´∀`)

そんな彼らを厳しくも優しく養う女主人ミス・ペレグリンは、時間を操りハヤブサに変身できます。

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本作は、謎の死を遂げた祖父の遺言に従って「平凡な」いじめられっ子の少年が彼らの孤児院に行き、色々あって彼らと協力しながら自分の居場所を見つけるというボーイミーツガールな作品なんですね。

ちなみにそんな彼らを狙う悪役は、「またお前か!」でお馴染みサミュエル・L・ジャクソンですよーw

ティム・バートンの宝箱やー

映像的も、本作は実にティム・バートンらしいというか、非常に楽しんでいるのが伝わって来るオマージュが散りばめられてました。

屋敷の内装やミス・ペレグリンや子供たちの服装なんかは、彼が愛するゴシック調で統一されているし、屋敷で不気味な人形が動いて戦うシーンをストップモーションアニメでの撮影や、クライマックスの骸骨戦士なんかは、完全にハリーハウゼンオマージュで、久しぶりに彼の「好き」が詰まった宝箱をひっくり返したような、ティム・バートンらしい作品だなーって思ったりしました。

適材適所で個性は活きる

奇妙な子供たちは、その「個性」ゆえに社会に居場所がなく、ミス・ペレグリンの庇護の元、箱庭のような屋敷で共同生活をしています。
主人公ジェイク( エイサ・バターフィールド)もまた、ある事情から社会に溶け込めずにいるんですね。

しかし、ある事件をきっかけに居場所を失った彼らは協力して、初めて自分たちの手で居場所を取り戻そうとします。
それまでは、コンプレックスや恐れの対象でしかなかった彼らの能力=個性が、行動の中で初めて「長所」として活きるのです。
そして、その事が彼らに自信を与えて、守られるだけの存在から、コミュニティーの一員としての成長物語になっているんですね。

これ、個性を短所にするか長所にするかは自分次第ということで、別の視点で観れば、適材適所で個性は活きるという組織論にも通じるのかななんて思いましたねー。

以前観たフロリストのドキュメントで、「日向を好む植物、日陰を好む植物、それぞれが快適な場所に植えてやれば、綺麗な花が咲く」(意訳)みたいな事を言ってたのを思い出しましたし、多分、この物語の主題もそういう事なのかなーなんて思いました。

 

「アリス~」や「チャーリーと~」に比べれば、多分低予算な作品なんじゃないかと思うんですが、その分制約も少なく、割とティム・バートンの好きなように撮る事ができた作品なんじゃないかと思うし、個人的にティム・バートンはこの位のスケールの作品が一番本領を発揮出来るんじゃないかなーなんて思ったりしましたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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