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アジアを代表するロマンチック面白おじさんの最新作「人魚姫」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、アジアを代表するロマンチック面白おじさんチャウ・シンチーの最新作『人魚姫』ですよー!

タイトル通り、人間の男と人魚の女の子の恋愛ストーリーなんですが、そこはチャウ・シンチー。一筋縄ではいかない過剰でベタな笑いと、観ているコッチがドン引きするぐらいのバイオレンスを織り交ぜた、まさしくチャウ・シンチー印の一作でした!

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

少林サッカー』などのチャウ・シンチーがメガホンを取り、若き実業家と美しい人魚の恋愛をコミカルに描くファンタジー。開発プロジェクトのトップである実業家と人魚族のかれんな女刺客によるロマンスが繰り広げられる。『ドラゴン・フォー』シリーズなどのダン・チャオ、チャウ・シンチー監督作『ミラクル7号』にも出演したキティ・チャンらが共演。笑いの中にも社会問題を盛り込んだ内容にくぎ付け。

トーリー:青年実業家のリウ(ダン・チャオ)はリゾート開発のため、香港郊外の海辺にある美しい自然保護区を買収。しかし、そこには絶滅の危機にひんする人魚族が住んでいた。人魚族は、刺客として美しい人魚のシャンシャン(リン・ユン)を人間の女性に変装させて送り込む。ところがリウとシャンシャンは惹(ひ)かれ合い、やがて人魚族の存在が人間に知られてしまう。(シネマトゥデイより引用)

 

感想

チャウ・シンチーについて

多くの人がチャウ・シンチーと聞いて思い出すのは『少林サッカー』(2001)と『カンフーハッスル』(2004)の2本くらいじゃないかと思います。
というのも、日本では中国・香港映画の公開館数って少ないんですよね。
ただ、チャウ・シンチー映画は中国をはじめ(日本を除く)アジア圏では、『ミラクル7号』や『西遊記~はじまりのはじまり』など、発表した作品全てで大ヒットを飛ばし、今やアジアの喜劇王と呼ばれる大監督なのです。

そんなチャウ・シンチー監督待望の最新作が、本作『人魚姫』なんですね。

過剰なギャグ・ロマンス・そしてバイオレンス

そんなチャウ・シンチー監督の特徴はといえば、劇中のギャグ・ロマンス・そしてバイオレンスなど、とにかく全てが過剰ってところじゃないかと思います。
特に劇中のギャグシーンは、「え、今時それをやるの!?」というようなベタでバカバカしい、小学生男子がゲラゲラ笑っちゃうような事をてらいなくやって見せるんですね。(ジャッキー・チェンもそうでしたけど)

チャウ・シンチー映画常連の、「良い顔」のおばちゃんやおじさん、太った女性やいかにもアホっぽい子供たちのオフビートな笑いや、主役の人魚シャンシャン(リン・ユン)や、上半身は人間で下半身がタコのその名もタコ兄(ショウ・ルオ)のドリフ的なドタバタなどを全力で見せられるので、何ていうかもう、バカ負けしちゃって思わず笑っちゃうっていう。

しかも後半のかなりシリアスなシーンにも、気の抜ける効果音を入れてみたり、下らないギャグを差し込んでみたり。
もう、一体どんな気持ちで見ればいいのかとw

そうかと思うと、見ているコッチが恥ずかしくなるようなロマンスをぶっ込んできたり、ギョッとする(シャレじゃないよ!)ような痛々しい描写や、ドン引きするくらい過剰なバイオレンス描写を入れ込んだりする感覚が、まさにチャウ・シンチー印って感じで、ホント油断できません。

じゃぁ、ただ無茶苦茶やってるのかというとそうではなく、作品の根底に監督自身が持っている問題意識や観客へのメッセージがドスンと一本あって、その両者の絶妙なバランス感覚が他の監督とは違う、チャウ・シンチー監督独特の作家性なんだろうなーって思うんですね。

CGとセット

映画、特に洋画を見慣れた人にはチャウ・シンチー映画のCGは、“ちゃち”に観えてしまうかもしれません。
実際、本作のCG自体のクオリティーは前作「西遊記~」と比べても、かなり見劣りしてしまうんですね。

ただ、それすらも彼の計算なんじゃないかと、僕は思うんですよね。
洋画の「リアルに見せる」CGとは対極の「デフォルメのため」のCGというか、(ちゃちさも含めて)物語や世界感の味付けや、それ自体を笑いの材料に使ってしまう東洋的CGの使い方の最先端というか。

「嘘を隠す」ためじゃなく、むしろ嘘を誇張していくことで「物語の嘘」を目立たなくしている感じがするんですよね。

でも、全てがCG頼りというわけではなく、人魚族の隠れ家である難破船の中は巨大セットを作ったりすることで、作品やキャラクターに一定の実在感を持たせているのは、ハリウッドのビッグバジェット映画と共通しています。

音楽

もう一つのチャウ・シンチーの特徴は音楽の使い方で、他の映画やアニメ、ドラマなど全然関係ないジャンルの音楽をBGMに使うタランティーノ的なやりかたなんですね。ただ、その音楽のチョイスはやっぱりチャウ・シンチーならではというか、本作でも「ドラゴン怒りの鉄拳」や「ゲッターロボ」のテーマ、エンディングテーマでは『射雕英雄伝』という香港の武侠ドラマのテーマ曲を使ったりしています。

その辺も油断できないところで、気を抜いて見ていると、突然シチュエーションの違う場面で耳馴染みのある曲がかかってビックリしちゃったりするし、それがなぜか違和感なく物語にマッチしてるんですよねー。

トーリー

で、本作の大枠のストーリーはまさしく『人魚姫』そのものなんですが、シチュエーションはしっかりアレンジされていて、金の亡者である成り上がりの社長リウ( ダン・チャオ)によって住処を奪われ傷つけられた人魚族は、この男を暗殺するためシャンシャンを送り込むのだが……っていう設定なんですね。

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そこには、環境問題だったり、中国バブル以降の拝金主義、少数民族(マイノリティー)への迫害(宇多丸師匠の受け売り)といった問題提起が割とストレートに入っていて、もっと言うとチャウ・シンチー自身の仏教的・アジア的な道徳に基づくメッセージが込められているんですね。

じゃぁ、説教臭い映画なのかといえばそんな事はなくて、ギャグやロマンスやアクションなどなど、これまたアジア的な面白さをふんだんに盛り込んだエンターテイメントにすることで、誰もが楽しめる作りにしているんです。

なので見ているコッチは笑ったり怒ったり泣いたりと、喜怒哀楽の感情全部を揺さぶられて、最後に「あー、いい映画見たなー」って満足できるんですよね。

残念ポイント

ただ、本作は前半が割と冗長というか、いきなり冒頭で本筋とあまり関係ないシーンが入ってたり(一応後の伏線にはなってるんですけどね)、登場キャラに感情移入するのに時間がかかるので、映画全体のライド感は前作「西遊記~」に比べると落ちてしまう感じは否めないかなーと。
それもチャウ・シンチー作品にしてはって話で、もちろん一定の面白さの基準はクリアしている前提ですけどねー。

 

ジャッキー・チェン以降、日本ではあまりフューチャーされない香港映画ですが、チャウ・シンチー作品はどれをとってもハズレがないというか、コメディーだけどしっかり作家性やメッセージを入れ込みつつ、観客を楽しませるアジアでも稀有な監督でもあるので、本作に限らず機会があれば多くの方に観て欲しいって思います。

興味のある方は是非!!!

 

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