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キングオブカルト、アレハンドロ・ホドロフスキー濃度が高い「ホーリー・マウンテン」(1988) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、カルト映画の帝王アレハンドロ・ホドロフスキー3作目の監督作品『ホーリー・マウンテン』ですよー!

伝説のカルト映画「エルトポ」以上に、ホドロフスキー濃度の高い電波チックな映画でしたねーw

Wikipediaによれば、日本公開は1988年ですが、本国での制作公開されたのは1973年なので、今回はネタバレは気にせずに書いていきます。なのでで、もしもこれから本作を観るという人は、映画を先に観てからこの感想を読んでくださいね。

ただ、映画を見る人に一言注意しておくと、エログロに耐性のない人は注意したほうがいいかもです。

いいですね? 注意しましたよ?

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画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

世界にヒットした『エル・トポ』などで知られ、数多くの熱烈なファンを持つチリ出身の名匠アレハンドロ・ホドロフスキーの作品をデジタルリマスター版で上映。不死を求め、聖なる山の頂点へと向かう男女9人の狂気と美に満ちた旅が展開する。ホドロフスキー監督自身が、登場人物たちを聖なる山へと導く錬金術師を熱演。今もなお色あせることのない奇抜で驚異的な映像世界と、あまりに唐突であぜんとさせられるラストシーンに注目だ。

ストーリー:とある砂漠ではりつけにされ、裸の子どもたちに石を投げつけられているキリストに似た風ぼうの盗賊(ホラシオ・サリナス)。自力で十字架から降り立った彼は、居合わせた男と共に町へ向かう。町ではキリスト像を売る太った男たちに捕らえられ、鏡の部屋に閉じ込められてしまう盗賊だったが、何とか部屋から脱出し……。(シネマトゥディより引用)

 

感想

アレハンドロ・ホドロフスキーとは

本作の監督アレハンドロ・ホドロフスキーは、1929年チリのボリビア国境近くの町トコピジャに生まれ、12歳の時にサンティアゴへ移住。
サンティアゴ大学で心理学と哲学を学んでいましたが、マルセル・カルネの『天井桟敷の人々』に感銘を受けてパリに渡り、マルセル・マルソーの弟子になりメキシコで100本以上の芝居を演出します。

映画監督としてデビュー作は1957年。トーマス・マン原作の短編を原作にした『LA CRAVATE
1967年にフェルナンド・アラバールの小説を映画化した長編『ファンド・アンド・リス
1970年に自身の代表作となった『エル・トポ』を発表し、本作が三作目(長編は二作目)なんですね。

そして「サンタ・サングレ/聖なる血 」(1989年)、「ホドロフスキーの虹泥棒 」(1990年)、「リアリティのダンス 」(2013年)を監督、2013年には幻に終わったSF「DUNE」とホドロフスキーに迫ったドキュメント映画「ホドロフスキーのDUNE」が公開され、2016年には「Poesía Sin Fin」を発表したんだとか。

また、「ホドロフスキーの虹泥棒 」以降23年映画から離れた彼は、その間フランスのコミック(バンド・デシネ)の原作者としても活躍していたそうですよ。

とにかく豪華な作品

本作は前作「エルトポ」と比べてもかなり豪華な作りになっています。
というのも、「エルトポ」の大ファンだったジョン・レノンビートルズのマネージャーでもあるアラン・クレインを紹介したことで、メキシコ映画(アメリカと合作)としては史上最大の150万ドルもの制作費で作られているからです。

巨額の予算を得たホドロフスキーは、まさにやりたい放題。
彼の脳内をそのまま映像に写し取ったような、とんでもなく豪華で電波なカルト作品が出来上がってしまったんですねー。

ストーリー

本作は二部構成になっていて、前半は、荒地に倒れていたキリストそっくりの盗賊の青年が、裸の子供達によって磔にされたうえに石を投げられてキレたり、従者? を引き連れて街に出て、カエルとトカゲによるスペイン軍に滅ぼされるメキシコの芝居(大道芸?)を手伝ったり、酔っ払って寝ているうちに型どりされて、自分そっくりのキリスト像を大量生産されてキレたり、チンパンジーと一緒にいる娼婦の女の子にストーキングされたり、街の中心にあるホドロフスキー演じる錬金術師が住む高い塔に強盗に入ったらを返り討ちにされたり、錬金術で自分のウ〇コを金に変えてもらったり、錬金術師の弟子になったりします。

で、後半は、ホドロフスキー錬金術師が「永遠の命を手に入れるには7人の大富豪と共に聖なる山に上って世界を牛耳る賢者? たちを倒すのだー」とか言いだして自ら選んだ、武器商人、美少年の睾丸を切り取ってはコレクションするホモの警察署長、おもちゃで子供を未来の兵隊に洗脳するおもちゃ屋の女社長などなど、とにかくクセの強いメンバーを修行させて聖なる山に登らせるという物語です。

何を言ってるか分からないと思いますが、書いてる僕もよく分かりませんw

エロ・グロ・悪趣味満載のドラッキーなビジュアル

ざっくりストーリーを書いてるだけでも目眩がするんですが、本作は映像もかなり凄くて、大量の動物の死体とか、兵隊に虐殺される大量の人々とか、大量生産されるキリスト像とか、とにかく何でもかんでも大量に出てくるし、ラブマシーンというコンピューターに電子棒を上手く入れてイカせると妊娠して子供を産むし、登場人物のほとんど老若男女問わず全裸・もしくは半裸だし、身体障害者の人は出てくるしで、一体何を見せられてるんだろう……って気持ちになること請け合いです。

ホドロフスキーにあんまり大金あげちゃダメだよジョン。(;´д`)

とはいえ、こうした映像にはそれぞれ意味があるようで、例えば、ホドロフスキーにとって衣服というのは社会性の象徴なので、裸の人は社会生活が出来ない=“何者でもない人”を表してるそうです。(なので社会に出ていない子供はほぼ全員裸)
他にも身体障害者の人は善なる者の象徴だったり、ラブマシーンは機械化する社会への批判だったり、大量生産されるキリスト像は宗教(キリスト教?)への批判だったり(ホドロフスキー無神論者らしいです)。

そうした諸々がイメージとしてランダムに映し出されるので、本作は非常に難解な作品に見えてしまうんですね。

ホドロフスキーのオリジナル宗教と哲学

この作品の前半では、聖書などで描かれる「キリストの受難」を解体し、彼が影響を受けた禅や仏教密教などの要素を混ぜて再構築することで、盗賊=キリストの目を通してこの世に蔓延る暴力を描き、後半では世界を牛耳る権力者を七つの大罪に準えていて、自らが師となって修行と試練を通して彼らを改心させる構成になっているんですね。多分。

なので、聖なる山を登りきった彼らを待ち受けていたのは錬金術師自身で、「ほんとは不老不死なんてないけど、修行を通してお前ら人間らしくなった。これからはちゃんと現実を生きろよ」とか言っちゃうし、さらにカメラ目線で「これは映画だから、君たちも現実を生きなさい」みたいな事を言って、カメラを引いてスタッフも撮しちゃうという驚愕のエンディングを迎えるわけですよ。工エエェェ(´д`)ェェエエ工

ちなみに前半で主人公だった盗賊はメンバーと一緒に山を登りきる寸前でストーキングし続けた女の子と下山します。

要するにこの映画で、ホドロフスキーは「金とか権力や文明より、自然と一体となって愛する人と暮らすのが真の人間らしさだぜ。ラブ&ピース!」って言いたかったんじゃないかなーって思います。多分

 

一見すると、悪趣味な悪ふざけみたいだしワケわからない映画なんですが、当のホドロフスキーは大真面目なのです。

だからこそ、彼の映画はストーリーもビジュアルもハチャメチャだしワケわからないけど、観客の心を打つ映画になってるんじゃないかと思いますねー。

興味のある方は是非!!(ただしR-15なので気をつけて)

 

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