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名匠ロマン・ポランスキー監督が名作舞台劇を映画化「おとなのけんか」(2012)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、演劇界で権威のあるオリヴィエ賞とトニー賞に輝いたヤスミナ・レザの舞台劇『大人は、かく戦えり』を、名匠ロマン・ポランスキー監督が映画化した『おとなのけんか』ですよー!

数々の名作で世界的にファンの多いポランスキー監督ですが、恥ずかしながら、多分僕は本作がポランスキー作品デビューじゃないかと思うんですよねー。
で、そんな本作の感想を一言でいうと、皮肉が効いてて超面白いコメディー映画でしたよー!

 

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あらすじと概要

世界各地の公演で好評を博し、演劇界で権威のあるオリヴィエ賞とトニー賞に輝いたヤスミナ・レザの舞台劇を、名匠ロマン・ポランスキー監督が映画化したコメディー。子ども同士のケンカを解決するため集まった2組の夫婦が、それぞれに抱える不満や本音をぶつけながらバトルを繰り広げるさまを描く。和解のための話し合いから修羅場に陥っていく2組の夫婦を、ジョディ・フォスタージョン・C・ライリーケイト・ウィンスレットクリストフ・ヴァルツという演技派が務める。豪華なキャストが集結した本作で、彼らがどんなストーリーを展開していくのか注目したい。

ストーリー:ニューヨーク・ブルックリン、子ども同士のケンカを解決するため2組の夫婦、ロングストリート夫妻(ジョン・C・ライリージョディ・フォスター)とカウアン夫妻(クリストフ・ヴァルツケイト・ウィンスレット)が集まる。双方は冷静かつ理性的に話し合いを進めるが、いつしか会話は激化しホンネ合戦に。それぞれが抱える不満や問題をぶちまけ合い、収拾のつかない事態に陥っていく。(シネマトゥディより引用)

 

 

感想

ロマン・ポランスキーって何者?

「名監督ロマン・ポランスキー」の名前は僕も知ってはいたんですけど、今まで上手くタイミングが合わなくて、ハッキリ彼の作品として意識して観たのは本作が初めてなんですね。(「ローズマリーの赤ちゃん」は昔テレビで観たかも?)

で、この人のことをネットで調べてみると、超波乱万丈な人生を送っている人だったんですね。

1933年生まれのポランスキーポーランドユダヤ人。お母さんは第二次世界大戦ホロコーストの犠牲になり、お父さんとは生き別れてアチコチの家を転々とし、その家々でも酷い目に合わされたりしつつポランスキー少年は何とか生き延びます。

戦争終了後ポーランドに戻った彼は、生き延びた父親と再開。
映画大学で学んだあと、俳優として数本のポーランド映画に出演し、フランスに渡って1962年に『水の中のナイフ』で監督デビュー。
このデビュー作で高い評価を受けてイギリスへ移り、さらにアメリカヒューストンに住みます。

1968年には、映画女優シャロン・テートと結婚し子供を授かるも、奥さんが妊娠中にカルト教団によって惨殺され失意のどん底に。

友人の助けもあり、何とか立ち直ったポランスキーはそこからアメリカで映画を撮り続け、監督として高い評価を得ていくんですが、1977年にジャック・ニコルソン邸で13歳の少女に手を出した疑いで逮捕され、釈放後に再度収監を逃れるために国外脱出をしてロンドン経由でパリに移り住むんですね。

まぁ、後半は完全な自業自得ですが(スイスでも淫行で逮捕されてるし)、壮絶な人生を歩んできている人なのは間違いないと思います。

そして、こうした諸々の経験が、ポランスキーの人格や作品に強い影響を与えているのは間違いないようなんですねー。

(ある意味)密室で行われるワンシチュエーションの会話劇

で、そんなポランスキー78歳の作品が本作『おとなのけんか』です。
子供同士の喧嘩で片方が怪我を負ってしまった二組の両親が、最初は冷静に話し合っているものの話が拗れに拗れて、最終的にとんでもない修羅場に発展するという物語。

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舞台のほとんどは、被害者側のロングストリート家のリビングで、登場人物はほぼ4人だけという、まさに舞台劇をそのまま映画にしたような作品でして、上映時間の78分、そのままリアルタイムで物語が進行しているという変わった作りの映画です。

え、それ面白いの?」って思われるかもですが、これが超面白いんですよ!

最初は良識のある大人っぽく取り繕った、上辺の会話をしてる両夫婦ですが、その会話の端々には小さなトゲがあって、そんな会話の応酬が進むうちに、次第に化けの皮が剥がれた彼らの本音がどんどん顕になっていくんですね。

そして、攻守が入れ替わり、男vs女になり、夫婦喧嘩になりと、パワーバランスがどんどん変わりながら、論旨は本筋から外れ、どんどん収拾がつかなくなっていくわけです。

また、話がまとまりそうになると、誰かがいらんことを言ったり蒸し返したり、電話が鳴ったりしてリセットされ再び揉め始める。つまり、その場から逃げられないっていうのは、ある意味で密室劇的だなーとも思いました。

原作の舞台の方はどうやら90分あるらしいんですが、本作では役者の会話を早口にし、物語を78分に圧縮することでスピード感や緊迫感、物語のテンポをさらに上げているんですよね。

それと映像的なテクニックを合わせることで、舞台だと散漫になってしまいがちな観客の視点を上手く誘導しているんだそうです。だから、シチュエーションや演出は舞台演劇そのままっぽいのに、しっかり映画してるんですねー。

4人のキャラクター

本作で重要なのがキャスティングです。
この作品、何気に豪華メンバーなんですよね。

まず、被害者側の父親マイケル・ロングストリートを演じているのが、数々の映画で名脇役として知られる ジョン・C・ライリー。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でノバ帝国のノバ軍警察の衛生兵のおじさんを演じていた人ですね。

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このマイケルは一見物分りのいい穏やかな男に見えますが、その実ただの事勿れ主義で、なので追い詰められて仮面が剥がれると子供みたいに逆ギレします。

そんなマイケルの妻ペネロピを演じるのは大物女優 ジョディ・フォスター

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「正しさ」に拘る、いわゆる意識高い系の奥さんで、4人の中で一番ヒステリック。
実質、彼女が狂言回し的な役回りなんですね。

対して、加害者側の父親アラン・カウワンを演じるのは、「イングロリアス・バスターズ」のランダ大佐を始め、多くの作品で独特な存在感を見せる名優クリストフ・ヴァルツ

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このアランは子供より仕事が大事という弁護士で、話の最中に何度も何度もケータイに電話がかかってきて周りをイライラさせます。
そして、それを悪いとも思っていないし、4人の中で一番ニヒリストで、一見弱点のない冷静な男に見えますが、終盤である意外な弱点が明らかになります。

そんなアランの妻ナンシーを演じるのが、 ケイト・ウィンスレット

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投資ブローカーのナンシーは、良き母、良き妻を演じようと取り繕っているものの、その端々に持ち前のいけ好かなさが出てしまうというw
そして、旦那のゲスっぷりに辟易していて、本作で唯一本当に腹の中のものを吐き出すんですねー。

 

最初こそ友好的に子供の喧嘩の解決を図ろうとするものの、どんどん化けの皮が剥がれて本音をさらけ出していく“大人”4人の不毛な言い合いは、多分映画を見ている大人にとっては「あーこういうこと言うヤツいるわー」という「あるある」で、思わず笑ってしまうと思うんですが、反面、彼らの本音は誰もが心の中で一度くらいは思ったりする事でもあるので、笑いながらも少し居心地の悪さを感じてしまうかもしれません。

そして、この4人の対立はそのまま戦争や世界情勢のメタファーでもあって、最もミニマムな舞台を通して、その向こうにある世界の紛争や人種間の問題を軽妙洒脱なコメディーにして茶化しているんじゃないかと思いました。

その辺の意地悪さは、ポランスキー監督の人生を通して見た、人間観みたいなものが反映されているんじゃないかと思うんですよね。

 

ともあれ、短い作品なのでサクッと見られるし、コメディーとしてもよく出来た面白い作品でもあるので、オススメの一本です。

興味のある方は是非!!

 

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