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様々な要素を内包した物語「LION ライオン~25年目のただいま~」(2017) *ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、サルー・ブライアリーが自身の経験を元に書いたノンフィクション本「25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語」を実写映画化した『LION ライオン~25年目のただいま~』ですよー!

アカデミー賞6部門にノミネートされ、各国の映画賞でも高い評価を受けた作品。
英国王のスピーチ」の製作陣と、「スラムドッグ$ミリオネア」の デーヴ・パテールやニコール・キッドマンなど実力派キャストが参加して制作されています。

で、この作品はそもそも予告編とタイトルでほぼネタバレしているので、あまりネタバレは気にせずに感想を書いていきます
なので、余計な情報を入れたくないという方は先に映画を観てから、この感想を読んでくださいねー。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

英国王のスピーチ』などのプロデューサー、イアン・カニングが製作に名を連ねた実録ドラマ。幼少時にインドで迷子になり、オーストラリアで育った青年が Google Earth を頼りに自分の家を捜す姿を追う。メガホンを取るのは、テレビシリーズや短編などを手掛けてきたガース・デイヴィス。『スラムドッグ$ミリオネア』などのデヴ・パテル、『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラ、名女優のニコール・キッドマンらが顔をそろえる。

ストーリー:インドのスラム街。5歳のサルーは、兄と遊んでいる最中に停車していた電車内に潜り込んで眠ってしまい、そのまま遠くの見知らぬ地へと運ばれて迷子になる。やがて彼は、オーストラリアへ養子に出され、その後25年が経過する。ポッカリと人生に穴があいているような感覚を抱いてきた彼は、それを埋めるためにも本当の自分の家を捜そうと決意。わずかな記憶を手掛かりに、Google Earth を駆使して捜索すると……。(シネマトゥデイより引用)

感想

「ライオン」ってこんな物語

というわけで、いきなりネタバレすると、本作は「25年間迷子だった主人公サルーが家に帰る物語」です。

しかも、この作品は原作者であるサルー本人の経験談。つまり実話なんですね。

インドの貧しいながら暖かい家庭で育った5歳の少年サルーが、はぐれた兄を探して乗り込んだ列車が発車。数千マイル離れたコルカタで迷子になってしまいます。

サルーの地元で使われる言葉はヒィンドゥー語ですが、コルカタの言葉はベンガル語
しかも、5歳のサルーは母の名前が分からない上に、地元の名前も間違えて覚えていて、結局生家には戻れず、オーストラリア人夫婦の養子に。

それから25年後、グーグルアースを知った彼は、僅かな記憶を頼りにグーグルアースを使って生家を探し出すという物語なんですね。

予告編を観たとき、僕はてっきり幼年期はサラッと見せて、青年になったサルーがメインの物語で、グーグルアースでどうやって自宅を探し出すのかをメインにした物語なんじゃないかと思ったんですが、いざ観てみると、少年時代のサルーが様々な困難を乗り越えてオーストラリアで養子に迎えられるまでのストーリーが全体の半分を占めていましたねー。

様々な要素を内包した物語

そんな感じで、本作は表面的には迷子が家に帰るという非常にシンプルな物語なんですが、その奥には、インドという国が抱える様々な問題や家族から引き離されたサルーのアイデンティティ。養子縁組の光と影など、サルーと、彼に関わった人々の心情を丁寧に描いているんですねー。

キャスト

幼年期のサルーを演じるのはサニー・パワールというインド人少年で、インド人スタッフが何千人もの中から発掘したシンデレラボーイ。

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あどけない顔の可愛らしい男の子ですが、大きくてまっすぐな瞳の奥に芯の強さをを持っていて、観る者を引き込んでいきます。

演技も5歳とは思えない上手さで、本作の成功にかなり貢献していると思いましたね。

青年になってからのサルーを演じるのは、「スラムドッグ$ミリオネア」のデヴ・パテル。優しい養母と養父のもとで幸せに成長しながらも、実母や兄への想いを捨てきれずに悩む繊細で難しい役柄を見事に演じていました。

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そんなサルーを支える養母、スーを演じるのは名女優ニコール・キッドマン
初めて思いの丈をぶつけるサルーに、自分が彼を養子にした理由を語るシーンは本当に素晴らしかったんですが、リアルでも二人の養子を持つ彼女自身の思いも乗っかっていたのかもしれませんね。

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サルーの彼女ルーシーを演じるのは「ドラゴン・タトゥーの女」でリスベットを演じたルーニー・マーラ

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リスベットのイメージが強い彼女ですが、本作ではアイデンティティに悩むサルーの心の支えになる強くて優しい女性を好演してました。

ガース・デイヴィス監督

本作で監督を務めるのは、オーストラリア出身でCMデレクターやドラマシリーズの監督としても活躍しているガース・デイヴィス。
母国オーストラリアでドキュメンタリー映画「P.I.N.S.(原題)」を監督した経験からか、インドのスラムに暮らす人々(本物のスラムの人たち?)や、駅や迷子収容所の子供たち。自然や風景の描写など、全体的にドキュメンタリーっぽい撮り方だなーと思いましたねー。

それでいて、シーンによっては作劇的に美しく撮っていたりもして、そのバランスも良かったと思いました。

気になったシーン

ただ、スーとジョンが引き取った二人目の養子、マントッシュ( ディヴィアン・ラドワ)やルーシーが、やけに宙ぶらりんな描かれ方だったのは、ちょっと気になりましたねー。(いや、実話の映画化なんだから仕方ないんでしょうけども)

あと、(これも仕方ないんですけど)養父のジョンが劇中であまり存在感がないのが若干かわいそうでしたw

インドの今と養子縁組の現実

幼年期のサルーは言葉も通じない見知らぬ土地で迷子になり、様々な人に出会います。
実際インドでは毎年8万人もの子供たちが迷子や誘拐などで行方不明になっているそうで、本作でもサルーに対して良からぬ思惑で近づく大人や、いい人だけどスラム暮らしの女性、孤児や迷子などの子供たちを収容する施設は、まるで刑務所のような劣悪な環境で、その一方でそんな環境から子供たちを救うために、養子縁組を進めるグループの人々もいて。

そういう意味では、遠いオーストラリアで優しい養父養母に出会えた彼は、同じような境遇の子供たちの中では運のいい方だったと言えるんでしょうね。

そこには貧富の差や教育格差、国として色々な整備が整っていないという、インドが抱える問題もあると思うし、幼い子供たちがそれらの犠牲になっている現実もあることを、この映画は教えてくれます。

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そして、養子縁組によって救われた子供たちもまた、自らのアイデンティティに悩み、それ以前の環境によっては精神的に不安定になってしまうなど、一筋縄では解決しない部分があることも、本作ではしっかり描いているんですね。

そうした「今そこにある現実」を一見シンプルなストーリーの中に織り込むことで、本作はただのお涙頂戴映画ではなく重層的な語り口を持つ作品になっています。
だからこそ、ラストのシーンでは感動するし、観たあとは色々考えさせられる作品になっているんじゃないかと思いました。

あと、映画のラストでなぜタイトルが「ライオン」なのかも分かりますよ。

興味のある方は是非!!!

 

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