ぷらすです。
今回ご紹介するのはタツノコプロの創立55周年記念作品『破裏拳ポリマー』ですよー!
最初は観る気なかったんですが、監督がアクションの得意な坂本浩一監督ということで、観てみることにしましたー。
多分、どれくらいの期待値で観るかによって評価の別れる作品だと思いますが、個人的には、ちょっと期待値上げすぎちゃったかなー? って感じでしたねーw
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あらすじと概要
「科学忍者隊ガッチャマン」シリーズなど数多くの人気アニメを生み出してきたタツノコプロによるSFアクションヒーローアニメ「破裏拳ポリマー」を実写映画化。元ストリートファイターの探偵で、奥義「破裏拳」を操る拳法の達人・鎧武士が正義の使者ポリマーとなり、悪と戦うさまをコミカルに活写する。主演は、本格的アクション初挑戦の『赤い糸』などの溝端淳平。アクション監督としても活躍する坂本浩一監督がメガホンを取る。
ストーリー:凶悪化する組織犯罪に対抗すべく開発された、絶大な力を持つ“ポリマースーツ”。しかし、中断を経て生まれたテスト版3体が盗まれ、犯罪に使われてしまう。スーツ奪還のため、封印されていたオリジナル版ポリマースーツの使用が決まるが、スーツ起動には特定の声によるダイアローグコードが必要だった。そこで警察は、封印を解く声の持ち主で拳法の達人である探偵・鎧武士(溝端淳平)に協力を求める。(シネマトゥデイより引用)
感想
タツノコプロダクションといえば、科学忍者隊ガッチャマン、タイムボカンシリーズ、新造人間キャシャーン、破裏拳ポリマーなどなど、1970年代から80年代にかけて少年時代を過ごした僕のようなファンにとっては、まさにヒーローアニメのパイオニアと言えるアニメ制作会社です。
そんなタツノコの「新造人間キャシャーン」を、2004年実写劇場版としてリブートしたのが「CASSHERN(キャシャーン)」
この作品は、紀里谷和明が監督を務め、CGを多用して全体のルックはカッコよかったものの、予算の都合なのか2時間以上の映画にも関わらず、肝心のキャシャーンのアクションシーンはほんとに一瞬で、中盤以降は敵役の唐沢寿明の演説が延々続くという地獄のような映画でした。
それから4年後、2008年にハリウッドで制作された「スピードレーサー」(「マッハGoGoGo」の実写映画化)
ガッチャマンの実写化を依頼された三池崇史監督が、「ガッチャマンは予算的に無理だけどコッチなら出来ますよ」と提案して作られた2009年の「ヤッターマン」
それでも作ったら、本当にただひたすらに酷かった2013年の「ガッチャマン」
そして、タツノコアニメの実写化劇場作品としては5作目となるのが1974年の同名アニメの実写化作品である本作なのです。
正直「またか……」と思ったし、予告編を観ても地雷臭しかしなかったのでスルーしようと思ったんですが、米国の「パワーレンジャー」シリーズでアクション監督を務め、近年では仮面ライダーやウルトラマン、戦隊ものの劇場版などのアクションシーンが高い人気を評価を得ている坂本浩一監督がメガホンを取ると聞いて、「それなら」と観ることにしたんですね。
パワードスーツを着用して拳法で戦うヒーローという本作の設定と、ジャッキー映画に憧れてスタントやアクションの道に入った坂本監督の相性はいいんじゃないかと思ったし、ほかのタツノコヒーローに比べて、本作なら物語のスケール的にも邦画の予算でも作れるかもと思ったからです。
…………思ったんですけどねー。
一体誰得なのかと小一時間……
実写映画だけでなく、アニメの方でも過去作のリブートに失敗し続けているタツノコ作品。
僕の知る限り、設定を大きく変えた「ガッチャマンクラウズ」以外で、リブートに成功した作品はないんですよね。(タツノコアベンジャーズこと「infini-T Force」は観てないので何とも言えませんが)
その一番大きな要因は、「いったい誰に向けて作っているのか分からない」ってこと。
リブートされた作品はアニメ・実写ともほぼ1970年代の作品で、明らかに僕と同年代のおっさんオタク向けなネタにも関わらず現代風なテイストを盛り込もうとし、そのくせ当時の設定やテイストが何の説明もなくそのまま入れ込まれてるので、おっさん的には「コレジャナイ」だし、若者たちは「ナニコレ…」だしと、結局どっちつかずの中途半端な感じになっちゃうわけですよ。
あと、実写版の方はそもそも邦画の予算では再現できない作品が多いですしね。
さらに、実写なのにアニメの設定のままやろうとするから、それはもう失敗しない方がおかしいんですよ。ええ。
以前も書きましたが、メディアが違えば当然文法が違うわけで、アニメを実写にするには、実写映画用の文法に「翻訳」しないとただのコスプレショーになっちゃうのです。つまり人間が演じても違和感のない様に、物語もキャラクターも設定も、最初から作り直さないと大抵失敗します。
タツノコヒーローに限らず、そこを勘違いして安易に上っ面だけを真似して、ただのコスプレショーになってるマンガやアニメ原作の実写映画は本当に多いと思うんですよ。
そういう意味で「ヤッターマン」は、元ネタからしてギャグテイストの作品なので、アニメ設定もそんなに違和感はなかったですけどね。(そういう意味で三池監督はクレバーだと思う)
良かったところ
本作では、その辺はわりとしっかり出来ていて、アニメ版の「破裏拳ポリマー」を知らない人でも、キャラや物語の設定がちゃんと分かるようにオリジナル設定も交えつつ、実写映画に翻訳していましたねー。
凶悪化する犯罪者に対抗するために、国家が秘密裏に開発したパワードスーツ(ポリマースーツ)を着用して戦うという設定も決して悪くないと思うし、なぜ民間人の鎧武士がポリマーに選ばれたかの理由付けも(無理矢理感はあるけど)それなりに納得出来る感じでした。
あと、気弱な新米刑事と私立探偵のバディーものという設定も今風でいいと思うし、元ネタにも登場するヒロインで探偵助手の南波テル(柳ゆり菜)が機械やITに強いという設定も悪くないし、ポリマースーツのデザインも(顔が丸見えになるの以外は)メタルヒーローっぽくてカッコイイですし。
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なので上手くハマれば、面白くなりそうな感じはあったんですよね。
アクション
アクションそのものはかなり良かったです。
格闘&パルクールを入れ込んだアクションシーンは、さすが坂本監督だけあって見ごたえがあったし、主役で探偵の鎧武士を演じた溝端淳平は思った以上に良かったし、邦画のアクションとしてはかなりレベルが高かったんじゃないですかね。
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ところが冒頭の方で、カメラのアングルが悪いのか、パンチやキックが相手に当たってないのが分かっちゃうシーンがあるんですよね。アクション映画でそれはどうなん? っていうね。
あと、凶悪犯罪が云々っていうなら、敵はマシンガンくらい持ってて欲しいところだったし、もっと極悪な行動しても良かったと思います。(全年齢向けだからソフトなのかな?)
っていうか、敵がスナックにたむろしてる街の不良みたいな奴らってのもなー。
もうちょっとこう、暴力組織やテロリスト的な感じの方がすんなり受け入れられた気がしますねー。
コメディーシーン
本作には、笑いの要素もふんだんに入っていて、それが上手くハマってるシーンも確かにあるんですが、いかにもベロベロバー的っていうか「はい、今おどけてますよー」っていう感じなのは、どうなのかなーと。
100歩譲ってそこはいいとしても、後半でかなりシリアスな展開になっても似たような感じで笑いを入れられると、観ているこっちの集中力が途切れちゃうのでアレはやめて欲しいと思いましたねー。
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かなりヤバイと分かっている現場に、助手で女の子の南波テルを連れてくる鎧武士の神経を疑うし、鎧武士の真剣な戦いの合間に、テルがいかにもテロリスト然とした屈強な相手とコミカルな格闘シーンを演じたり、胸の谷間をアップにするカメラワークとか、笑顔のアップとか、いちいち緊張感が削がれてほんとイライラしました。
っていうか、その手前のシーンで新米刑事の来間譲一を演じる山田裕貴の熱演も、その無駄な演出で台無しですよ。
せめてラストの方だけでもテルを(事務所からネットを通じて助ける)バックアップ要員に回すとか、何か良いやり方があったと思うんですけどね。
舞台設定
あと本作の舞台設定が、未来なんだか過去なんだかよく分からないのもすごく気になりました。
攻殻機動隊やブレードランナー的な、「雑多でアジア感溢れるTOKYO」をやりたいのは分かるんですが、今時マサイ族や遊牧民の人たちだってスマホくらい持ってますからね。
なのに、来間譲一は旧式のセドリックに乗って一昔もふた昔も前のアンテナ伸ばすタイプのケータイ使ってるし、捜査リーダーの土岐田恒 (長谷川初範)の家はビデオと黒電話ですよ。
実際の東京とは違うパラレルワールド感を出したいっていう意図はわかるけど、それ以外は普通に現代の東京の風景だから、逆にこのちょっとしたズレがただのノイズにしかならないんですよね。
ポリマースーツ
違和感といえば、主人公鎧武士が“変身”するシーンは、いかにも東映特撮っぽくて興醒めでしたねー。
グローブ・ブーツは先に身につけてて、ポリメットを被って“機動コード”を口で言うと量子的なアレで全身ポリマースーツになるっていう設定なんですが、(´ε`;)ウーン…って感じ。
子供向けの仮面ライダーや戦隊ものならそれでもいいですが、本作では戦いの前にあらかじめ着用しておく、あくまでパワードスーツ的な扱いの方が合ってたんじゃないかなーと。
舞台設定もそうですけど、作品のリアリティーラインがどの辺なのか分からなくてノイズになっちゃう……っていうか、この作品自体が、(演技も映像のルックも構成も)平成版仮面ライダーや戦隊モノ劇場版のテンプレで作られてるんですよね。
でも本作は明らかに大人向けな作品なんだし、リアリティーラインを引き上げて、全体的に大人の鑑賞に耐えられる作品にした方がいいような気がしました。
あと、ポリマーに変身したあと、顔が全部見えるのも個人的にカッコ悪いなーと。
フェイス部分はスモークでも貼って、普段は顔が見えない方がカッコよかったんじゃないかと思うし、それならスタントマンも使えるから、役者さんでは難しいかなり高度なアクションも出来たんじゃないかなー。
もちろん溝端淳平さんは頑張ってたし、思った以上にアクションも良かったですけど、生身と変身後の違いが分からなくてもったいないんですよね。
それと必殺技「破裏拳」のエフェクトは、あまりにもしょぼすぎると思いました。
いらないシーン多すぎ&構成悪すぎ
でもまぁ、一番問題なのは全体的に無駄なシーンが多くて、シーンの構成?が悪すぎるってことですかねー。
そのせいで作品全体のテンポが悪くなってるし、「そのシーンの後にこのシーンを繋げる!?」 みたいなのも多くて、折角盛り上がった気持ちが冷めちゃう事が多すぎるんですよ。
そこを何とかするだけでも、全体的にスマートで盛り上がる作品になるんじゃないかと思いましたねー。
とまぁ、散々文句を並べましたけど、個人的には「CASSHERN(キャシャーン)」や「ガッチャマン」に比べれば好感の持てるし、良いところも沢山ある作品でしたよ。
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