ぷらすです。
今回ご紹介するのは、日本のアニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフにした、イタリア産ヒーロー映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』ですよー!
日本公開前から注目してた作品ですが、残念ながら僕の地元では公開されなかったので、DVDレンタルが始まるのを待ってたんですよー。
いろいろツッコミどころも多いけど、個人的には好きな映画でしたねー(´∀`)
画像出典元URL:http://eiga.com
あらすじと概要
アニメ「鋼鉄ジーグ」をモチーフとし、イタリアのダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で最優秀新人監督賞などを受賞したアクション。荒廃したイタリアを舞台に、超人的な力を得た男が「鋼鉄ジーグ」ファンの少女を守るため、闇の組織と戦う姿を描く。『緑はよみがえる』などのクラウディオ・サンタマリア、『グレート・ビューティー/追憶のローマ』などのルカ・マリネッリらが出演。ダークな世界観やクライマックスの激闘が見どころ。
ストーリー:テロが頻発するローマ郊外。チンピラのエンツォ(クラウディオ・サンタマリア)は、ひょんなことから人知を超えた力を手に入れる。ある日、エンツォが慕う“オヤジ”が殺害されてしまう。オヤジの娘のアレッシアは、エンツォを日本製アニメ「鋼鉄ジーグ」の主人公・司馬宙に重ね、二人の距離は少しずつ近づいていく。そんな中、闇の組織のリーダー・ジンガロ(ルカ・マリネッリ)の脅威が迫り……。(シネマトゥデイより引用)
感想
鋼鉄ジーグとは
本作のタイトルにもなっている「鋼鉄ジーグ」とは、1975年から1976年まで放映された永井豪・安田達矢とダイナミック企画原作のロボットアニメです。
サイボーグ化した主人公が変形する頭部パーツと、バラバラに射出される体のパーツが磁力で合体して巨大ロボットになるというコンセプトが斬新な作品で、僕も玩具持ってましたねー。
ただ、本作は「鋼鉄ジーグの実写映画」ではなく、「鋼鉄ジーグをモチーフにしたヒーロー映画」なので、「鋼鉄ジーグ」を期待して観ると肩透かしを食らってしまうと思います。
イタリアの“ジーグ”はコソ泥で孤独なダメ中年!?
本作の主人公エンツォ(クラウディオ・サンタマリア)は孤独なダメ中年で、盗んだ品物を“故買屋”のセルジョ(ステファノ・アンブロジ)に買い取ってもらうことで食い繋いでいるコソ泥なんですね。
映画は、そんな彼がイタリアの街を逃げ回るところからスタート。
散々走りまくった挙句、エンツォが逃げ込んだ川の底には、放射性廃棄物の入ったドラム缶が不法投棄されていて、漏れ出した放射性廃棄物の混じった水をしこたま飲んだエンツォは、不死身の体と怪力を手に入れます。
その能力にエンツォが気づくのは、セルジョの手伝いで麻薬取引の現場に行き、取引相手に拳銃で撃たれて建設中のビルの9階から落っこちるも、体は無傷で弾丸が当たった傷も翌日には綺麗に治っている事に気づいたことや、うっかり自分の家のドアを破壊してしまったから。
ただ、エンツォはダメ人間なので、その能力を使ってATM強盗とかするくらいしか思いつかないんですね。
家族や友達もいない彼の好物はヨーグルトで、趣味はAV鑑賞なんですが、ATM強盗で得た金で、ヨーグルトとAV(あとローション)を山ほど買ってくるあたりは、思わず笑っちゃうような切ないようなw
麻薬取引でエンツォと共に撃たれて死んだセルジョには、アレッシア(イレニア・パストレッリ)という一人娘がいるんですが、母親の死や辛い現実に心を病み、アニメの「鋼鉄ジーグ」の世界に逃げ込んでいる彼女が、セルジョのボス ジンガロ(ルカ・マリネッリ)に(父親の行方を聞き出すために)拷問されそうになるところを、エンツォがなけなしの罪悪感で助けるんですね。
彼女はエンツォの力を目撃し、彼を鋼鉄ジーグの主人公司馬宙(しば・ひろし)と重ね合わせて慕い、エンツォはそんな彼女をどう扱えばいいか分からず、しかし一緒に行動するうち、孤独だった彼の心に愛が芽生え……というな感じで、物語は2人の奇妙なラブストーリー? へと進んでいくのです。
画像出典元URL:http://eiga.com 主人公エンツィオとヒロインアレッシア
ヒーロー誕生の物語
エンツィオを公司馬宙と重ね合わせているアレッシアは彼に「人類のために力を使い、父さんを助け、闇の日から世界を救って」と懇願し、貧民層の生まれで、仲間や友達を次々と失って自暴自棄に陥っていたエンツィオは、力をアレッシアのために使おうと考えるようになっていきます。
一方、ギャングのボス ジンガロは、かつてTVのオーディション番組に出たことだけを誇りにしていて、世間の目を自分に向けさせたいと思ってる小物。
本当はただのチンピラなのに「俺はすごい」って思ってる、典型的な誇大妄想狂で、身の丈に合わない麻薬取引に手を出して失敗(セルジョが撃たれ麻薬が手に入らなかった)。上位組織の女ボス・ヌンツァによって殺されかねない状況になります。
画像出典元URL:http://eiga.com ある意味主人公以上の存在感を見せた悪役ジンガロ(カラオケ中)
本作は、ヨーグルトとAVだけが楽しみなエンツォと、誇大妄想に取り憑かれたチンピラのジンガロという、社会の底辺にいる鏡合わせの2人の対決を軸に、エンツィオがヒーローになるまでを描いたヒーロー誕生の物語なんですねー。
ダメ中年がヒーローになる物語といえば、昨年感想にも書いた「アメリカン・ヒーロー」もそうですが、本作でメガホンを取ったガブリエーレ・マイネッティ監督は、子供の頃に観ていた日本のアニメが大好きなオタクなので、設定や物語がいちいちツボを抑えているなーって思いました。
気になったところ
そういう意味で、本作はヒーロー誕生譚として過不足ないし、「鋼鉄ジーグ」の絡め方も絶妙だと思うんですが、ただ、ヒロインの言動がエキセントリックすぎて、正直ちょっと引いちゃうんですよねーw
画像出典元URL:http://eiga.com
本来なら主人公と年の差がある少女のほうが、「レオン的」な感じで物語が収まりがいいと思うんですが、本作のヒロインはどう見ても主人公と同年代なんですよね。
物語に「鋼鉄ジーグ」を絡めたいとか、主人公との(セックスシーンもある)ラブストーリーだとか、ヒロインの設定的な問題とかが絡んでるからなのかもですが、大人の色っぽい女性が「鋼鉄ジーグ」の世界に逃げ込んで、少女のように振舞う姿は、どうにもノイズになっちゃうというか、もっと単純に(オタク的に)観ていて痛々しいというか。
まぁ、本作に限って言えばそれも正解なのかもですが。(´ε`;)ウーン…
おそらくイタリアでも「鋼鉄ジーグ」は大分前に放映されたアニメだと思うし、それをストーリーに絡めるために、設定に無理が出ちゃってるかなって思いました。
あと、普通に街中の川に放射性廃棄物が捨てられてるってのも、若干違和感を感じたけど、そこはまぁ物語の展開上仕方ないのかな。
それ以外の戦闘シーンがショボイとか、クライマックスのサスペンスシーンがあまりハラハラしないとか、爆発シーンが思いのほかショボイとかは、予算の都合上仕方がない部分だと思うし、それでも格好良く見せようという工夫や努力が見えるところは、個人的には好感が持てました。
一方で、ジンガロが自分の残虐シーンをスマホで撮影してYouTubeにアップするとか、エンツォの超人的なシーンを防犯カメラで捉えるとか、今風な映像演出もされてて良かったし、エンツォ役のクラウディオ・サンタマリアは、その佇まいも含めて凄く良かったし、ジンガロ役のルカ・マリネッリはどんどん狂っていく悪役を魅力たっぷりに演じてましたねー。
あと、本作のタイトルはイタリア語のタイトル「LO CHIAMAVANO JEEG ROBOT」の直訳なんですが、映画が開幕すると「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」と日本語で映し出されるんですね。
僕は最初、日本の配給会社がタイトルを差し替えたんだと思ったんですが、これ、オリジナルそのままの状態らしいです。
子供の頃にイタリアで放送されていた日本のアニメに、並々ならぬ愛情とこだわりを持っていて、長編デビューとなる本作以前にも「ルパン三世」や「タイガーマスク」をモチーフにした短編を撮っているガブリエーレ・マイネッティ監督のこだわりだったらしいんですが、だからと言って一部のオタクに向けた映画ではなく、一本の映画としても十分面白いし見ごたえのある作品でしたよ!
興味のある方は是非!!
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