今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

邦画監督トップランナーの一人、吉田大八が三島由紀夫の小説を映画化「美しい星」(2016)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは三島由紀夫が1962年に発表した同名小説を、「霧島、部活辞めるってよ」などで知られる吉田大八監督が、現代に舞台を変えて映画化した『美しい星』ですよー!

良い人から凶悪な役まで幅広く演じ、役者としても評価の高いリリー・フランキーを始め、ベテラン女優の中島智子、ジャニーズの亀梨和也、朝ドラ「あまちゃん」などで知られる橋本愛など、個性豊かなキャスト陣が出演でも話題になりましたね。

http://eiga.k-img.com/images/movie/84444/photo/ab0e7ab20247e934.jpg?1489712547

画像出典元URL:http://eiga.com

あらすじと概要

三島由紀夫が1962年に発表した核時代の人類滅亡の不安を捉えた小説を、『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八監督が大胆に翻案して映画化。突如自分たちは地球人ではなく宇宙人だと信じ込んだ平凡な一家が、美しい星・地球を救おうと大暴走するさまが展開する。世界救済の使命に燃える火星人として覚醒した主人公はリリー・フランキー、水星人として目覚めた長男を亀梨和也、金星人として目覚めた長女を橋本愛、地球人のままの妻を中嶋朋子が演じる。

ストーリー:予報が当たらないと話題の気象予報士・重一郎(リリー・フランキー)は、さほど不満もなく日々適当に過ごしていた。ある日、空飛ぶ円盤と遭遇した彼は、自分は火星人で人類を救う使命があると突然覚醒する。一方、息子の一雄(亀梨和也)は水星人、娘の暁子(橋本愛)は金星人として目覚め、それぞれの方法で世界を救おうと使命感に燃えるが、妻の伊余子(中嶋朋子)だけは覚醒せず地球人のままで……。(シネマトゥディより引用)

感想

今や邦画監督としてはトップランナーの1人と言っても過言ではない吉田大八監督ですが、僕は代表作とも言える「霧島、部活辞めるってよ」が個人的にはそこまでハマれなかった事もあって、吉田作品にはちょっと苦手意識があったんですね。

なので本作も公開時はスルーしていたんですが、今回、TSUTAYAで作品を物色している時にたまたま本作を見つけたので、思い切って観てみる事にしました。

「美しい星」について

原作の「美しい星」は1962年、東西冷戦時代の核兵器による人類滅亡の不安・世界終末観を背景に、三島由紀夫が宇宙的観点から見た人間の物語を描いた異色のSF(というかSFベースの寓話?)小説です。

1964年にテレビドラマ、75年にラジオドラマ、2012年に舞台と、様々なメディアに展開されているようですが、映画化は今回が初めてなのかな?

吉田大八監督は、大学時代に三島の『美しい星』を読んで以来ずっと映画化したいと考え、周囲にもそう言い続けてきて、今回、ようやく30年越しの念願が叶ったんだそうですよ。

僕は原作未読なんですが、本作は時代設定だけでなく、一部キャラクター設定やラストシーンなどなど、割と大胆に原作を改変しているようです。

やっぱり上手い吉田監督

本作鑑賞後の第一印象としては、「やっぱり上手いなー」でした。。
今の邦画の世界で、セリフではなく映像でストーリーを語れる監督はあまり多くないんじゃないかと思うんですが、アバンのレストランの食事シーンでサクッと主人公家族の関係や、それぞれのキャラクターを流れの中で説明している手際の良さや、(恐らくは監督が影響を受けている)スピルバーグの「未知との遭遇」オマージュも盛り込まれてて、思わずニヤリとしてしまいました。

それ以降も語り過ぎず語らな過ぎず、過不足なくストーリーを映像とセリフなどで見せていくスマートさはさすがだなーと。

キャラ設定も絶妙で、主人公の大杉重一郎(リリー・フランキー)は、原作では無職で火星人として目覚めてからは「宇宙友朋(UFO)会」を作り、各地で「世界平和達成講演会」を開催して回る活動をするという設定なんですが、本作では、あまり当たらなくてニュースキャスターにいじられる天気予報士という設定です。

http://eiga.k-img.com/images/movie/84444/photo/c74abe8cd73cb641/640.jpg?1490232059

画像出典元URL:http://eiga.com

映画冒頭、愛人のキャスターとの電話の最中に、2人の女性が握手と写真を求めてくるんですが、この「テレビに出ていてそこそこ有名人だけどナメられてる感」だったり、羽場裕一演じるニュースキャスターにぼんやり反感を持ってる感じを、ちょっとしたセリフや表情で見せています。

息子の一雄(亀梨和也)は学生時代野球部で、多分学校でも人気者だったけど今は自転車メッセンジャーのバイトをしていて、娘の暁子(橋本愛)は、美人ゆえに自分の中身を見てもらえない事に不満を抱いているし、奥さんの伊余子(中島朋子)はバラバラになってしまった家族や専業主婦という立場にぼんやりした不満があって、怪しげな水を売るねずみ講にハマって行くんですね。

http://eiga.k-img.com/images/movie/84444/photo/b5abdd5771d80354/640.jpg?1490232061

画像出典元URL:http://eiga.com

前半は、そんな家族の閉塞感や不満を、吉田監督ならではの嫌ぁぁぁな感じでじっくりじっくり見せていきます。

そして、お母さん以外の3人が宇宙人として“覚醒”してからは、それまで溜まりに溜まった鬱憤を爆発させるように、物語が一気に加速していくんですねー。

http://eiga.k-img.com/images/movie/84444/photo/2689fa31716f1b97/640.jpg?1486097319

画像出典元URL:http://eiga.com

特に、一雄と暁子の覚醒シーンでは、ヨーロッパのクラブ音楽っぽい曲に合わせて、両者のシーンがサブリミナル的に高速でカットバックして見せるドラッキーな映像で、観ているこっちが圧倒されるような凄いシーンでした。

で、そんな家族とともに、もう一人重要人物が登場します。
それが、佐々木蔵之介演じる議員秘書の黒木で、彼は自称(一雄と同じ)水星人で、議員を影から操り、大杉家族とも深く関係を持っていく謎の男。

http://eiga.k-img.com/images/movie/84444/photo/f9ba3b2763b27cbc/640.jpg?1486097323

画像出典元URL:http://eiga.com

本作では特にCGなどの特殊効果は使わず、佐々木蔵之介の演技(と撮り方)だけで黒木の怪しさや不気味さを表現してるんですが、佐々木蔵之介って演技上手いんですよねー!(お正月に「超参勤交代リターンズ」を観たばかりなので余計にそう感じましたw)

現実か妄想か

ただ、この作品では大杉家や黒木が本当に宇宙人なのか、それともただの妄想なのかは、曖昧なまま最後まで明かされることはありません。

何度か登場するUFOも、ハッキリとその姿を見せることはないし、劇中で超常的な事も起こらないし、大杉家や黒木の姿が変わるわけでもない。

宇宙人であるというのはあくまで彼らの自己申告で、さらに、実は溜まったストレスで彼らがおかしな妄想を見ているだけという風にも取れるエピソードがどんどん出てくるわけです。

その一方で、やっぱり彼らは宇宙人なのではと思わせるシーン(クライマックスのディスカッションとか)もあったりして、観てる方は「一体どっちなの!?」と、最後までモヤモヤするし、ラストシーンには「え、どういうこと?」ってなっちゃうんじゃないでしょうか。

もちろん、これは吉田監督を始めとした製作陣が意図的にそうしてるわけで、大杉家や黒木が本当に宇宙人なのか、それともイカれた地球人なのかは、ぶっちゃけどうでもいいわけです。

テーマ

じゃぁ、本作のテーマは一体何かといえば、スバリ「環境問題」……ではなく、「美しさとは何か」っていう事なんじゃないかと。
いや、そこにはもちろん環境問題も含まれてはいるんですが、もっと根本的な、自然の美しさだったり、人類の文明や文化や歴史がもたらした美しさだったり、家族や人々の営みの美しさだったり。
それらは全て繋がっていて、この「繋がり」が失われたとき「美しい星」も失われてしまうというのが、本作のテーマなのではないかと思いましたねー。

 

そんな感じで、やりたい事や言いたいことは分かるし、表現や語り口も上手いなーとは思うんですが、個人的にはやっぱり、大絶賛! ってほどはハマれませんでした。
ただ、本作の場合は「霧島~」の時とは違って、原作も含めた物語自体のヘンテコさによるところも大きいような気がします。

なので、原作を読んでいたら、また印象は変わっていたのかもしれませんね。

興味のある方は是非!!

 

▼よかったらポチッとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com