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第二次世界大戦の史実をクリストファー・ノーランが映画化「ダンケルク」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ダークナイト」や「インターステラー」などのクリストファー・ノーラン監督が、第二次世界大戦の史実「ダンケルクの戦い」を劇映画化した話題作『ダンケルク』ですよー!

正直に言うと、面白かったのかつまらなかったのか、一回観ただけでは判断がつかない映画でしたねー。

ちなみに本作は、史実を元にした作品なので普通にネタバレしていきます。
なので、ネタバレ嫌という人は、先に映画を観てから、この感想を読んでください。

いいですね? 注意しましたよ?

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あらすじと概要

第2次世界大戦で敢行された兵士救出作戦を題材にした作品。ドイツ軍によってフランス北端の町に追い詰められた連合軍兵士たちの運命と、救出に挑んだ者たちの活躍を描く。監督は『インセプション』などのクリストファー・ノーラン。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などのトム・ハーディ、『プルートで朝食を』などのキリアン・マーフィ、『ヘンリー五世』などのケネス・ブラナーらが出演。圧倒的なスケールで活写される戦闘シーンや、極限状況下に置かれた者たちのドラマに引き込まれる。

ストーリー:1940年、連合軍の兵士40万人が、ドイツ軍によってドーバー海峡に面したフランス北端の港町ダンケルクに追い詰められる。ドイツ軍の猛攻にさらされる中、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)ら若い兵士たちは生き延びようとさまざまな策を講じる。一方のイギリスでは民間船も動員した救出作戦が始動し、民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)は息子らと一緒にダンケルクへ向かうことを決意。さらにイギリス空軍パイロットのファリア(トム・ハーディ)が、数的に不利ながらも出撃する。(シネマトゥディより引用) 

感想

ダンケルクの戦い」とは

ウィキペディアによれば、第二次世界大戦中、ドイツ軍のフランス侵攻の1940年5月24日から6月4日の間に起こった戦闘のことだそうです。

フランスに攻め込んできたドイツ軍に対抗する英仏軍でしたが、ドイツ軍は戦車や航空機を駆使した電撃戦を展開。連合軍はフランス本土最北端のダンケルクに追い詰められてしまいます。

英仏軍は、この戦闘でドイツ軍の攻勢を防ぎながら、輸送船の他に小型艇、駆逐艦、民間船などすべてを動員して兵士の救出作戦を実行。約40万人の将兵を脱出させたのだそうです。

本作では、そんな「ダンケルクの戦い」を106分の映画にしているんですねー。

状況を把握するだけで精一杯

そんな本作は、若き英兵士たちがダンケルクの町を歩いているシーンからスタート。
まるでゴーストタウンのような町の中で、ある兵士は家の前のホースから直接水を飲み、ある兵士は家の窓から手を入れて、残されていたシケモクを取って吸おうとし、ある兵士はドイツ軍がばら撒いた「降伏せよ」というチラシを、尻拭き紙用にポケットにねじ込んでいます。

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そこにイキナリ銃声が響き、慌てて逃げる兵士たちは一人また一人と銃弾に倒れ……。

そうして命からがら辿り着いた遮蔽物の何もない海岸線には、大勢の兵士たちが救助船を待っている状況なんですね。

ノーランはここまで、一切セリフを使わず、(字幕による簡単な説明と)映像だけで描いているのです。

イギリス人にとって、「ダンケルクの戦い」は恐らく一般教養として誰もが知っているだろうから、本作のタイトルと冒頭の映像を観れば、何が起こっているのか大体は分かると思うんですが、日本人で歴史に疎い僕なんかは、ただただ画面の中で起こっている状況を理解するので精一杯で、(少なくとも1回見ただけでは)ストーリーまではとても追いきれないんですよね。

まるでイキナリ自分が、(わけも分からないまま)戦場に放り込まれたような感覚だったし、それはまさにノーランの狙いでもあるわけです。

また、時計が針を刻む音が不安感を煽る激伴や、様々な音の演出も、自然と不安感を煽り立てるんですよね。

僕はテレビ画面で観ているのでそれほどでもなかったけど、劇場、特に大画面・大音量のIMAXで観ていた人は、本当に戦場にいるような感覚を味わったんじゃないかと思いましたねー。

異なる3つの「時間」

本作はざっくり、陸軍兵士のトミー (フィン・ホワイトヘッド)、英軍の要請を受けて兵士を救うため、自分の遊覧船でダンケルクに向かうミスター・ドーソン (マーク・ライランス)、英国の戦闘機“スピットファイヤー”を操縦し敵機を撃墜するファリア (トム・ハーディ)という三つの視点で物語が進みます。

トミーのパートでは「防波堤:1週間」、ミスター・ドーソンのパートでは「海:1日」、ファリアのパートでは「空:1時間」と、それぞれのパートの冒頭で表示されます。

これはつまり、映画開始時点から終了までの106分間にどれだけ時間が経過しているかという時間の流れを説明していて、トミーのパートはクライマックスの1週間前から、ミスター・ドーソンは1日前から、ファリアは1時間前から。それぞれのパートがスタートしているわけです。

なので、パートごとに昼間だったり夜だったりして、この仕掛けを理解するまでに結構時間がかかってしまいました。

そして、その演出は劇伴の時計の音ともリンクしているんですねー。

「戦争映画」ではなく「サバイバルサスペンス」

本作は戦争を扱った映画にも関わらず、敵のドイツ軍人は一人も登場しません
登場するのは、敵の戦闘機と機銃と魚雷くらいなのです。

なぜなら「これは戦争映画ではない。サバイバルに焦点を当てたサスペンス映画なんだ」とノーラン自身が言うように、本作が描こうとしているのは、登場人物たちがドイツ軍の攻撃から生き延びて海を渡り、自国(ホーム)に帰りつけるかどうかのサバイバルであって、(誤解を恐れずに言うなら)戦争そのものではないからです。

いつ、どこから敵の発射した銃弾や爆弾に襲われるかも分からないまま、彼らは生き延びるため必死に逃げ回っているんですね。

そんな中、トニーとギブソンアナイリン・バーナード)は、砂浜で見つけた負傷兵を担架に乗せて、人ごみを掻き分けて救助船に運びます。

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でもそれは、負傷兵の命を救う為ではなく、負傷兵と一緒に自分たちも船に乗り込んで逃げようという計算なんですね。

結局ふたりは船から下ろされてしまうんですが、次の救助船に乗り込もうと、桟橋の下に潜り込んで様子を伺います。

「戦争映画」として観れば、このふたりの行動は自己中心的で汚い行いに見えるかもですが、ふたりは切望的な状況から生き残るために知恵を絞って行動しているのです。

しかし、その後も何とか忍び込んだ船が沈没させられたり(そして海岸に戻るハメに)、やっと見つけた座礁船(潮が満ちたら浮くので逃げられる)に隠れていれば、敵の銃撃で船底が穴だらけになり、沈没したり。

一方、遊覧船のオーナー ミスター・ドーソンは危険を顧みずドーバー海峡を越えてダンケルク沖に向かいます。

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そこには「ある理由」があることが後半で明かされますが、序盤は何故、彼が危険を冒してまで英兵を救助に向かうか分かりません。
その途中で救った一人の兵士によって、ダンケルク湾にはドイツ軍のUボートが救助船を沈めようと待ち構えていることが分かります。

空軍のファリアは、ダンケルクに残された兵士や船を守るため敵機を撃墜するものの、敵の銃撃によって燃料計を破損。

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いつガス欠になるか(=自国に戻ることが出来ない)分からない状況で、自国の兵士を守るために、敵機と死闘を繰り広げます。

そんな感じで三者三様、まさに生き残りをかけたサバイバル映画といった作りなんですねー。

そして、この作品では、必ずしも善人が生き残り、悪人が死ぬわけではなく、最終的には運の強い奴が生き残ります。

劇映画としてはスッキリしない結末ですが、「戦争ってそういうものだろ?」というノーランの声が聞こえてきそうな結末だし、誰が生き残るか分からないことで、観客はより劇中のサスペンスにのめり込んでいくわけですね。

 実物主義者ノーラン

クリストファー・ノーランといえば、フィルム主義者でもあり、また出来るだけCGを使わず(可能な限り)本物を使うことで知られた監督です。

例えば「ダークナイト」では、本当の大型トレーラーの横転させ、病院を爆破していますし、多分観た誰もがCGだと思ったであろう、「インターステラー」の高次元描写も実際にセットを作って撮影しているんだとか。

そんなノーラン、本作では実物のスピットファイヤーや船を登場させ、実際に爆破したり沈めたりしたそうですよ。
魚雷が当たった船底に大量の海水が流れ込んで、大勢の兵士が飲み込まれていく様子もセットを使って撮影してるし、砂浜の爆破シーンもCGじゃなく本当に爆破させているのだとか。

また、本作はIMAX用のカメラで撮影してるんですが、不時着する戦闘機の内部にIMAXカメラを設置して着水シーンを撮影しようと思ったら、予想以上に飛行機が早く沈没したという話もあったそうです。(結局もうダメかと思われたフィルムは何とか復元できたそうです)

そうやって、(極力)CGではなく本物を使う事で、画面の中に「質量」を感じさせる大迫力の映像を撮影できたんですねー。(その分役者さんたちは大変だったと思いますがw)

この映画にドラマはあるのか

事ほど左様に、本作は106分という時間の中で、登場人物たちがどうやって生き残るかを描いた、ある種のシュミレーション的な映画で、キャラクターの背景やドラマなどは殆ど描かれません。

それは例えば、ジョージ・ミラー監督の「マッドマックス 怒りのデスロード」や庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」に近い作り方です。

それを持って、この作品にはドラマがないとか、登場人物に感情移入出来ないという意見もあるようで、それは確かにその通りかもと思うんですが(実際僕も最初はそう感じたしw)、しかし、ノーラン監督はそうしたシュミレーション的な状況の中で、彼らが背負っている背景や、心情、性格・信念が分かるような役者の表情であったり、うっかりすれば見逃してしまうような短いセリフを、そっと忍び込ませているのです。

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そして劇中、絶望的な状況の中、ボルトン海軍中佐 (ケネス・ブラナー)が言う「生きて故郷(ホーム)に帰ることが勝利」(意訳)と言うセリフは、そのまま本作の背骨とも言えるメインテーマになっているし、本作が凡百の「戦争映画」と一味違うところなんだと思います。

ところで、この記事の冒頭で「面白いのかつまらないのか判断がつかない」と書きましたけど、これだけ長い感想を書いてるって事は、きっと面白かったんでしょうねww

興味のある方は是非!!!

 

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