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リアルな感情表現に心を揺さぶられる!「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは昨年のアカデミー賞主演男優賞脚本賞の2冠を受賞した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』ですよー!

非常に良い評判は聞いていて気になってはいたんですが、正直「何か重そうだなー」と観るのを怖気づいていたんですよねー。
でも、意を決して観てみたら、確かに重い内容でしたが、それ以上に心揺さぶられる素晴らしい作品でしたー!

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あらすじと概要

マット・デイモンがプロデューサー、ケイシー・アフレックが主演を務め、数々の映画賞を席巻した人間ドラマ。ボストン郊外で暮らす便利屋が兄が亡くなったのを機に帰郷し、16歳のおいの世話をしつつ自身が抱える過去のトラウマと向き合う姿が描かれる。メガホンを取るのは、『ギャング・オブ・ニューヨーク』などの脚本を担当してきたケネス・ロナーガン。共演には『ブルーバレンタイン』などのミシェル・ウィリアムズ、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』などのカイル・チャンドラーらが名を連ねる。

ストーリー:ボストン郊外で便利屋をしている孤独な男リー(ケイシー・アフレック)は、兄ジョーカイル・チャンドラー)の急死をきっかけに故郷マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻ってくる。兄の死を悲しむ暇もなく、遺言で16歳になる甥のパトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人を引き受けた彼は、甥の面倒を見るため故郷の町に留まるうちに、自身が心を閉ざすことになった過去の悲劇と向き合うことになり……。(シネマトゥディより引用)

感想

本当は、マット・デイモン初監督作になる予定だった

本作は当初、数々の作品で賞を受賞、役者だけでなく脚本家としても評価の高いマット・デイモンの監督デビュー作になる予定だったんだそうです。

当初は、自ら監督・主演を考えていたマット・デイモンですが、スケジュールの都合が合わず、監督脚本を、マーティン・スコセッシも認めるストーリーテラーケネス・ロナーガンに依頼。また主演は旧友でベン・アフレックの弟ケイシー・アフレックに譲って、自分はプロデューサーになったことでも話題になったんですよね。(その時マット・デイモンが主演した映画も含めて)

どんな内容?

心臓病を患っていた兄、ジョーカイル・チャンドラー)の急死で生まれ故郷のマサチューセッツ州マンチェスター・バイ・ザ・シーに戻った主人公リー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)。
拭いきれない過去の深い傷を背負っていた彼は故郷を離れていたが、兄の遺言で甥パトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人として、故郷に留まる内に、自分の過去と向かい合うようになる。という物語。

このあらすじだけ聞けば、いくらでも(分かりやすく)感動的な映画に出来そうなものですが、ケネス・ロナーガン監督はそれを良しとせず、徹底的にキャラクターのリアルな感情の動きや言動にこだわり、結果的に、そのリアルさが多くの観客の共感を呼んで、アカデミー賞を2部門を受賞することになったわけですねー。

そして、本作は主人公リーの現状と回想を行き来しながら、彼の心の傷の原因に迫るという、ある種のミステリー要素で物語を引っ張っていくのです。

“安易な感動”を許さない、監督のリアルな感情表現

映画冒頭、リーは故郷から車で1時間30分ほどのボストンでアパート設備などの管理・修繕の仕事をしているんですが、仕事には真面目だけど無愛想で、住人から度々苦情が入る厭世的で暗い男です。
しかし、回想の中の彼は、兄と甥と3人で船に乗って釣りに出ればジョークを言いまくり、友人と夜中まで騒いで奥さんに怒られるような陽気な男なんですね。

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そんなリーの過去に、一体何があったのか? という謎が、徐々に明らかになっていくというのが、序盤から中盤にかけての流れです。

実は彼は、ある取り返しのつかない過ちを犯して全てを失い、以来、人が変わってしまったんですね。

それが明らかになる回想シーンは、観ているこっちの心が抉られるくらい辛かったです。なぜなら、それは他人事ではなく誰の身にも起こり得ることだから。

本作は、そんなリーや周囲の人達が、それぞれの喪失と折り合いをつけて再生していく様子を、静かに淡々と描いて行くんですね。

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これが、上記のように凡百の監督であれば、多分、全員が悲しみを乗り越えて故郷で幸せに暮らす的な大団円にするだろうし、その方が観客もスッキリする「良い映画」になると思うんですよ。

でも、本作ではジョーを失ったリーも、息子のパトリックも、大声を上げて泣いたりはしません。
リーは、兄ジョーの葬儀やら残した資産(家とか船とか)の手続きで大忙しだし、16歳の息子のパトリックはそれまでと変わらず、ガールフレンドとイチャイチャしたり、バンドやったり、アイスホッケーをやったりしています。

そんな彼らに「え?」 って思うし、二人とも薄情に見えるかもですが、実際近しい人が亡くなった時って、わりとそんな感じですよね。
亡くなった人に近しいほど、ゆっくり悲しんでいる暇も、受け入れる心の余裕もないっていうか。

しかも、ジョーが亡くなったのは真冬で、地面が凍って掘り返せないので、地面の氷が溶ける春まで冷凍保存することに。(個人的に一番のビックリポイントでした)

つまり、二人はジョーが埋葬されるまでは宙吊り状態で、ジョーの死に整理をつけて前に進むことが出来ない状況なんですね。

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しかも、ジョーの遺言によって、パトリックの後見人に指名されたリーですが、彼的には、このマンチェスター・バイ・ザ・シーに残ることは出来ない=パトリックをボストンに連れて行くしかないし、パトリックは故郷を離れたくないのでリーに来て欲しい。そんな二人は衝突を繰り返しながら、徐々に長く離れていたお互いの心の溝を埋めて理解しあっていくのです。

最後まで観ると、ジョーはもしかしたら、そこまで全部見越して遺言やら手続きやら、自分の死後の準備をしていたのかなって思ったりして、またグッときてしまうんですよね。

で、これからの事を考えたり準備したり葬儀をあげたりするため、故郷を奔走するリーは、別れた奥さんや友人たちと再開し、彼ら、彼女らもまた、心に消えない傷や後悔を抱えている事に気づくわけです。

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その事で彼自身が救われるわけではないけど、リーにとってはやっと過去と向きあって、長いトンネルを抜ける一歩を踏み出すキッカケになるんですよね。

それでも生きて行かざるを得ない

つまり、この作品は「残された者たちの物語」で、大切な人を失って絶望したとしても、残された者たちはどこかで折り合いをつけて、それでも生きて行かざるを得ないという事を描いているんじゃないかと思います。

本作が素晴らしいのは、それを大上段に構えて大声で叫ぶのではなく、劇中の彼ら、彼女らにそっと寄り添うように、静かに淡々と描いているところなんですよね。

だから観客は物語が終わっても、彼らの人生はここから続いていくと思えるし、自分の人生や後悔を彼らに重ね合わせて、勇気づけられるのではないかと思いました。

興味のある方は是非!!

 

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