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映像も物語も素晴らしい秀作…だけど「怪物はささやく」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、昨年日本公開されたダークファンタジー『怪物はささやく』ですよー!

美しい映像とリアルなCG、少年の辛い現実と怪物の語る物語を交互に見せつつラストに導いていく寓話的ストーリーが、とても素晴らしい映画でした!

……けど、個人的にはちょっと思うところもある作品でもありましたねー。

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概要

パトリック・ネスによる小説を、『インポッシブル』などのJ・A・バヨナ監督が映画化したダークファンタジー。病に侵された母親と暮らす孤独な少年と、彼に「真実を語れ」と迫る怪物の奇妙な交流を描き、スペイン版アカデミー賞ともいわれるゴヤ賞を席巻した。主演は、『PAN ~ネバーランド、夢のはじまり~』などのルイス・マクドゥーガル。母親役をフェリシティ・ジョーンズ、祖母役をシガーニー・ウィーヴァー、怪物の声をリーアム・ニーソンが務める。(シネマトゥディより引用)

感想

本作は、乳がんで亡くなったイギリスの児童文学作家シヴォーン・ダウドのプロットを、イギリス在住のアメリカ人作家パトリック・ネスが引き継いで完成させた同名小説を、『永遠のこどもたち』『インポッシブル』などで知られるスペイン人監督J・A・バヨナが、ギレルモ・デル・トロの傑作ダークファンタジー『パンズ・ラビリンス』を手がけたスタッフと実写映画化した作品で、原作者であるパトリック・ネスが脚本も担当しています。

ガンに侵された母親と暮らす孤独な少年と、12時7分に現れる「怪物」との奇妙な交流を描いた叙情的なダークファンタジー?なんですねー。

ざっくりストーリー紹介

大人と子供の狭間にいる13歳の少年コナー(ルイス・マクドゥーガル)。
彼の最愛のフェリシティ・ジョーンズ)はガンに冒され、父親(トビー・ケベル)は離婚して海外に新しい家庭を持ち、祖母シガニー・ウィーバー)とはお互いに反りが合わず、学校ではいじめられているという、13歳の子供にとっては悪夢のようなヘビー過ぎる現実の中にいます。しかも、夜な夜な悪夢に苛まれうなされて飛び起きる日々。

そんなある夜の12時07分、彼のもとに巨大な木の「怪物」が現れ「三つの物語を聞かせるから、4つ目の物語はお前の真実を語れ」と命令してくるんですね。

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そして約束通り、怪物は12時07分になると少年のもとに現れて物語を語り、その間にも母親は様態が悪化し入院、厳しい祖母の家に預けられ、戻ってきた父親ともギクシャクし、学校ではいじめが続きと、彼を取り巻く環境は厳しさを増していく……。という物語。

果たして怪物が語る3つの物語にはどんな意味があるのか、少年が隠している真実とは何かが、この作品の牽引力になっています。
また、原作は寓話的ではあるけれど、児童文学というわけではなくヤングアダルト(ティーン)向け文学で、そういう意味で13歳という主人公の年齢は絶妙だなーと思いましたねー。

怪物の語る「物語」を彩る水彩アニメーション

本作の素晴らしさは、怪物の造形デザインやリアルなCG映像、そして怪物が語る「物語」を表現する水彩絵具で描かれたアニメーションの美しさです。
この水彩アニメーションは、美大を諦めた母親と、そんな母親の才能を受け継いだコナーの物語とも直結しているんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / おばあちゃんはシガニー・ウィーバー

神出鬼没な怪物はCGで作られているんですが、とてもリアルでしたねー。
外だろうが家の中だろうが学校だろうが、神出鬼没でどこにでも現れるんですが、例えば学校の食堂に現れても、映像的な違和感がまるでないんですよね。

そんな、「パンズラビリンス」スタッフの技術で作り上げられた怪物の実在感が、本作のストーリーを語る上で、非常に重要な役割を果たしていたように思いました。(怪物の声とモーションピクチャーを担当したリーアム・ニーソンの演技も良かった)

怪物と少年の奇妙な交流

本作に登場する「怪物」は、最初その正体が分からず、ストーリーの経過と共に徐々にその正体が明らかになっていきます。
最初のうちはコナーの敵役なのかな? と思いながら観ていたんですが、どうやらそういうわけではないらしく、また、怪物の語る「物語」がコナーの現実とリンクしていることも徐々に分かってくるんですね。

僕は終盤まで、この怪物が少年の寂しさが生み出した、父性の象徴なんだろうと思って観ていたんですが、ラストでその正体が明らかになるシーンでは、「そういうことか」と思わずグッときてしまいましたねー。

また、「怪物」は主人公コナーが少年から青年へと成長するための通過儀礼としての役割もはたしています。そして3つの物語の後にコナーが語る真実は、むしろ現代の大人にこそ深く刺さるし共感を得られるのかもと思ったりしました。

映像も物語も素晴らしい秀作…だけど

そんな感じで、本作は映像も凝っているし物語も上手くまとまった素晴らしい秀作です。

……なんですけど、個人的には上手くまとまり過ぎている印象でしたねー。
観ている間は物語に引き込まれるし感動もするんだけど、全体的に綺麗にまとまり過ぎている分、突出した引っかかりみたいなものがなくて、良い作品なんだけど記憶には残らない感じというか。

ラストの怪物の正体が明かされるシーンでも、驚くというより納得しちゃう感じでしたしね。

だからといって、つまらないとかダメというわけではなく、全体的にバランスもいいしクオリティーの高い作品なんですけど、もっとこう、驚きや歪さがあるともっと良かった気がしました。
あと、僕の年齢的に、コナーよりおばあちゃんやお父さんの方に感情移入しちゃうってのもちょっとありましたねw
コナーと近い年齢で観れていたらもっと感情移入出来たし感動もしたかもなー。なんて思ったりしました。

興味のある方は是非!!

 

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