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実力・行動・交渉でチャンスを掴み取っていく強かな3人のサクセスストーリー「ドリーム」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、日本では昨年公開された伝記映画『ドリーム』ですよー!

1960年代のNASAを舞台に、3人の黒人女性が差別に負けずに夢を掴み取る物語で、人種差別を実力でねじ伏せていく3人の活躍が、実に痛快な作品な作品でした!!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

人種差別が横行していた1960年代初頭のアメリカで、初の有人宇宙飛行計画を陰で支えたNASAの黒人女性スタッフの知られざる功績を描く伝記ドラマ。NASAの頭脳として尽力した女性たちを、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』などのタラジ・P・ヘンソン、『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』などのオクタヴィア・スペンサー、『ムーンライト』などのジャネール・モネイが演じる。監督は『ヴィンセントが教えてくれたこと』などのセオドア・メルフィ。ミュージシャンのファレル・ウィリアムスが製作と音楽を担当した。(シネマトゥデイより引用)

感想

実話を元にした伝記映画

1960年代初頭、宇宙開発でソ連に後れを取っていたNASAでは、“計算係”として優れた頭脳を持つ黒人女性たちを採用(というかパート扱い?)。
しかし、人種差別が横行していた当時のアメリカで彼女たちは正当な評価をされず、あくまで『計算機』代わりとして、離れの棟で一日中計算する日々でした。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 左からメアリー・キャサリン・ドロシー

そんな中、本作の主人公で数学の天才キャサリンタラジ・P・ヘンソン)、管理職“代理”のドロシー(オクタヴィア・スペンサー)、黒人女性初の技術者を夢見るメアリー(ジャネール・モネイ)は、その優れた頭脳と行動・交渉でNASA内の差別と偏見と戦いながら、初の有人宇宙飛行「マーキュリー計画」を成功させるため活躍するという物語です。

日本のタイトルは最初『ドリーム 私たちのアポロ計画』だったらしいんですが、「いや、マーキュリー計画やろ!」と批判が殺到。サブタイトルを取って、「ドリーム」になったようですね。

ちなみに原題は「Hidden Figures(ヒドゥン・フィギュアズ)」
「Hidden」は「隠れた」、「Figures」は「姿・人物・数・計算」的な意味があって、いわゆるダブル、トリプル・ミーニングになっているタイトルなのだそうです。

史実との相違点

ただウィキペディアによれば、劇中と史実にはちょっと違いもあるようで、

・黒人用と白人用を分けた差別的な設備は1958年には撤廃されている。(本作は1961年の設定)

・劇中で昇進願いを却下されているドロシーも、実際には1949年の段階でスーパーヴァイザーに昇進している。

・劇中でメアリーは工学の学位を得ようと奮闘してますが、実際の彼女は1958年の段階で工学の学位を修得しエンジニアの職を得ている。

・劇中でキャサリンは1961年にNASAに配属されたことになってますが、実際のジャクソンは1953年の段階でNASAの前身であるNACAに配属されている。

・劇中に登場するミッチェル(キルスティン・ダンスト)とポール(ジム・パーソンズ)は実在の人物ではない。

などなど。ただ、それはあくまで作劇的にマーキュリー計画をメインに据えるためで、物語の本質を捻じ曲げるものではないようです。

施設として差別的な設備は撤廃されていても、本作の舞台になった1961年のバージニア州などのアメリカ南部では、依然として白人と有色人種の分離政策が行われていた時代だし、そては先進的なNASAでも同じで、システム的な差別は撤廃されていても、“無意識的な差別意識は残っていたようです。(実際マーキュリー計画に多くの黒人女性が関わっていたことは、アメリカ本国ですらあまり知られていなかったわけですしね)

3人の戦い

そんな感じで、人種と性差別という二重の差別を扱った作品ながら本作は、差別に対して声高に糾弾するのではなく、差別を受けながらも3人が実力・行動・交渉で差別と戦う姿を観せていくところだと思います。

キャサリンは自らの天才的資質と実力で結果を出すことで、同僚に認めさせていくし、IBM導入を知ったドロシーは、いち早く部下の女性たちとともにプログラミングを勉強することでNASAでの自分たちの地位を確立。

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画像出典元URL:http://eiga.com  / 数学の天才キャサリン

工学の学位を得るため、白人専用の学校に通わなくてはならないと言われたメアリーは裁判所に提訴。裁判官の功名心をくすぐる交渉術で自らの望みを叶えます。

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画像出典元URL:http://eiga.com / エンジニアを目指すメアリー

その過程が非常に痛快なので、扱っているテーマ自体は重苦しいものなのに、抜けのいい(ある種)逆転劇的な楽しさに満ちているんですねー。

また、無意識的差別の象徴となるキャラクター、女性管理職のミッチェルと、キャサリンの同僚ポールも、劇中でキャサリンやドロシーに言われた言葉や彼女たちの行動で目を覚まし彼女たちを認めていくし、(劇中では描かれませんが)ミッチェル自身も女性管理職として性差別の被害者である事がそれとなく分かる描かれ方をしていて、単なる悪役としては描かれていないんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 後にIBMの責任者になるドロシーと、感じの悪いミッチェル

だからと言って、3人は差別を気にも留めずただ前向きに進んでいるわけではなく、もちろん自分を取り巻く理不尽に対して怒っているんです。
が、そこで感情をむき出しにするわけではなく、あくまで表面上は平然と、環境を変えるために最善の行動をすることを選択しているのです。

だからこそ、中盤で唯一、キャサリンが感情を爆発させるシーンがドスンと効いてくるし、ドロシーがミッチェルにチクリと刺す一言にも重みがあるんですねー。

そして、この二つのシーンを境に、彼女たちを取り巻く環境が変わり、物語はクライマックスへとスピードを増して盛り上がっていくのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / さぁ、反撃開始よ!

演出

それを、セリフに頼らずに同じ行動の反復に少しづつ変化を加えることで、映像的に説明していく演出が実に素晴らしいんですよねー!

例えば、この映画で象徴的に使われているのが「ドア」で、序盤では閉まっているドアが、中盤以降の彼女たちの行動によって次々に開かれていくとか。

同じ行動を繰り返し見せながら、序盤と後半ではその意味を変えて行くとか。

そうした、細やかな映像的演出で見せる事で、言葉よりもずっと雄弁に3人を取り巻く環境の変化を語っているんですね。

キャスト

そして、そうした演出を更に光らせるのがキャスト陣の見事な演技で、キャサリン役のタラジ・P・ヘンソン、ドロシー役のオクタヴィア・スペンサー、メアリー役のジャネール・モネイはもちろん、キャサリンの上司役 ケヴィン・コスナーぶっきらぼうだけど正しい理想の上司っぷりや、最初は超感じの悪いミッチェル役キルスティン・ダンストの弱さを見せる表情だったり、ポール役ジム・パーソンズの頭ではキャサリンを認めてるけど感情的に中々受け入れられない感じとか。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 上司にしたい男No.1のケビン・コスナー

それぞれの演技が実に素晴らしく、キャラクターとしても魅力的でした。

 

で、本作は1961年代のアメリカを通して、今も世界中に蔓延する人種・性差などによる理不尽な差別に対してはっきりとノーを突きつけていて、そうした差別がいかにバカバカしく下らない事かを、より論理的に分かりやすく見せているし、NASAという最先端の科学施設を舞台にすることで、そのテーマに超説得力があるんですよねw

こうして差別差別と書いてしまうと、「またそういう説教臭い映画か」と思われてしまいそうですが、そんなことは全然なくて、この作品はむしろ「理不尽にチャンスを奪われている人々が己の状況を嘆くのではなく、自らの才覚と実力で道を切り開いていく」サクセスストーリー的ワクワク感や楽しさに溢れているエンターテイメント作品に仕上がっているし、差別云々を抜きにしても、多くの人達が共感し勇気をもらえる傑作だと思いましたねー!

興味のある方は是非!!

 

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