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バンホーベン久しぶりの新作にして傑作!「エル ELLE」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ポール・バーホーベン約10年ぶりの新作『エル ELLE』ですよー!
この作品、物凄く乱暴にジャンル分けするなら、“レイプリベンジムービー”って事になると思うんですが、そこは我らがバーホーベン。当然、一筋縄ではいかない作品になってましたねー!

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『ピアニスト』などのフランスの名女優イザベル・ユペールと『氷の微笑』などのポール・ヴァーホーヴェン監督が組んだ官能的なサイコスリラー。『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』の原作者フィリップ・ディジャンの小説を原作に、レイプ被害者の女性が犯人を捜しだそうとする姿を描く。『ミモザの島に消えた母』などのロラン・ラフィットや『愛されるために、ここにいる』などのアンヌ・コンシニらが共演。欲望や衝動によって周囲を巻き込んでいく主人公を熱演するイザベルに注目。(シネマトゥデイより引用)

感想

イザベル・ユペールXバーホーベンが送るブラックコメディ

映画冒頭、真っ暗な画面に陶器やガラスの割れる音と女性の絶叫、男の荒い息が聞こえるという、衝撃的なOPから始める本作。

そして、ズボンを上げながら半ケツで逃げる目出し帽の男と、散らかった床に横たわる中年女性(ミシェル:イザベル・ユペール)という映像が映し出されて、冒頭の音声がレイプだったと分かるんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 映画冒頭のショッキングなシーン

と思ったら、立ち上がったミシェルの、顔にアザを作りながらも無表情で床に散らばった食器の破片を片付け、ゆったりと泡風呂に入り、寿司の出前を取ってやってきた息子を出迎えて一緒に出前の寿司を食べるという、まるで何事もなかったような行動に観ているこっちは再び度肝を抜かれます。

本作の主人公ミシェルはエロゲー会社の経営者で、共同経営者の夫と浮気していて、売れない小説家の夫とはずいぶん前に離婚、ボンクラ息子はファーストフード゚店アルバイトのくせに妊娠したビッチな彼女と結婚すると言い出し、年老いた母親は整形を繰り返しながら若いツバメを囲い、父親は八つ墓村なみの大量殺人事件を起こして投獄中っていう超カオスな設定。
前述の衝撃的なOPの後、ストーリーが進むうちに、そんな彼女の背景が少しづつ見えて来るわけですねー。

その後彼女は病院で性病やエイズの検査してもらいますが警察に通報はせず、自ら犯人探しを始めるというのがメインのストーリーで、ミステリー要素で観客の興味を引っ張りながら、彼女の抱える背景や周囲の人間たちとの関わりを見せていくわけです。

というと、ミステリーサスペンスなかと思われるかもしれませんし、もちろんそういう映画なんですが、この映画、基本的にはコメディー映画、しかもとびっきり意地悪なブラックコメディーなのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 「クビにされたくなかったらチンコを見せなさい」

(ほぼ)全員が容疑者

で、本作に登場する男たちは、ボンクラ息子のヴァンサン(ジョナ・ブロケ)を除いてほぼ全員がレイプの容疑者です。

共同経営者アンナ(アンヌ・コンシニ )の夫ロベールクリスチャン・ベルケル )は、不倫に嫌気がさしているミシェルとの関係を続けたい。

ミシェルの母親イレーヌ(ジュディット・マール)のツバメは自分に冷たい態度を取るミシェルを恨んでいる。

ゲームクリエイターキュルト(ルーカス・プリゾル)を始めとしたゲーム会社のスタッフの大多数は、ゲームもよく知らずに指示を出してくるミシェルが嫌い。

逆に同じゲーム会社のケヴィン(アルチュール・マゼ)はミシェルに惚れてるっぽい。

お隣のパトリック(ロラン・ラフィット)は、奥さんの レベッカ(ヴィルジニー・エフィラ )が敬虔なカトリック信者で欲求不満っぽい。

そんな中、製作中のエロゲーでレイプされるキャラの顔にミシェルの顔写真コラされた動画が社内のPCに一斉送信されたり、犯人からと思われるメールがスマホに送られてきたり、家に不審者が侵入したりして、ミシェルは自衛のため武器ショップで護身用のスプレーや手斧を購入したり、銃の撃ち方を訓練したりしつつ、元夫のシャルル(リシャール・カサマヨウ)・アンナ・ロベールに「この前レイプされたわ」なんてサラッと告白。

慌てふためきオロオロする3人の様子を見て「やっぱり言うんじゃなかった」と、うんざりした顔で言うんですね。

ミシェルが警察に通報しない理由

でも、この三人の慌てた様子に、観ている方は「そりゃそうだよ」と思うし、ミシェルは何故警察に通報しないのかと疑問に思うわけですが、その理由は、彼女が10歳の時に父親が犯した事件のせいで(自分も被害者にも関わらず)長年にわたり世間から理不尽な目に合わされてきたからです。

その中には、報道被害や(当然)警察からのセカンドレイプ的なこともあり、だから彼女はマスコミと警察に対して強い拒絶感を持っているんですね。

さらに、母親の方はそんな娘を気にもかけない様子で若い男を漁っていたと思われ、そんな中、彼女は努力によって今の地位に上り詰めてきたわけです。

つまり、彼女は10歳の頃からずっと、理不尽な暴力(レイプ)を受け続けてきたわけで、この映画を観ていると、ミシェルは強い女性のように見えますが、決してそうではなくて、強い女性に見えるように振舞わなければ、とても生きていけなかったのです。

とはいえ、自分を理不尽に押さえつけようとしたり、暴力や嫌がらせをする男達に対して泣き寝入りせずに、確実に報復するところはやっぱり強い!そして怖い! と思ってしまうんですけどねw

ラストの方の“あるシーン”で、ミシェルがニヤリと笑うシーンには、心底ゾッとしてしまいましたよ!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

多面的なキャラクターたち

そんなミシェルだけでなく、本作に登場するキャラクターは誰も彼も、一面的な描かれ方をしていません。

例えば、ミシェルと絶賛不倫中のロベールはミシェルに対しては身勝手なクズの振る舞いをするけど奥さんのアンナには良き夫だし、ボンクラ息子のヴァンサンは役立たずで甘ったれだけど優しいし、逆にミシェルに惚れてるらしいオタク社員のケヴィンの愛情は歪んでる。

各キャラクターそれぞれをストーリーの為の一面的な駒ではなく、それぞれ多面性を持った人間として描くところは、さすがバーホーベンだなーと関心しましたねー。

下品になりすぎないバランス

これまで「ロボコップ」「ショーガール」「スターシップ・トゥルーパーズ」などショッキングなシーンやエロいシーンをバンバン描いてきたバーホーベンは、下品で露悪的で悪趣味な監督と思われがちですが、そうした描写を通して、いつも観客に人間の醜い本性や、恐ろしさを突きつける反骨精神を持つ監督です。

まぁ、それが行き過ぎて、下品・露悪的・悪趣味に見えることも多いし、本作も謎解きミステリーやサスペンスなどのエンタメ要素で観客を引き込みつつ、しっかり不謹慎で意地悪な笑い、エロやグロシーンも入ってるバーホーベン印の映画になってます。

が、決して下品になりすぎていないのは、主演にイザベル・ユペールの存在が大きいと思いましたねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com

当初、この作品を米国で作ろうと考えていたバーホーベン監督ですが、オファーした有名女優にことごとく断られ、受けてくれたのがフランスの大女優イザベル・ユペールだったらしいんですね。

イザベル・ユペールはこの映画を撮影中はすでに63歳、でもビックリするくらい綺麗だし、それでいてミシェルという女性の芯の通った強さをしっかりと体現する圧巻の演技で僕は終始圧倒されっぱなしでした。

もちろん、レイプというデリケートな題材を扱っているし、何と言ってもバーホーベン監督なので好き嫌いはハッキリ分かれそうな作品ではありますが、個人的には超面白かったですよー。

興味のある方は是非!!

 

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