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宮崎作品の廉価版「メアリと魔女の花」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、スタジオジブリ退社後、プロデューサーの西村義明と米林宏昌監督が設立した「スタジオポノック」製作第一弾作品『メアリと魔法の花』ですよー!

アニメーターとして多くのジブリ作品に参加、「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の2本を監督した米林監督が、独り立ちして初めての監督作ということで注目はしてたものの、予告編を見る限り期待半分不安半分という感じだったのですが……。

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概要

借りぐらしのアリエッティ』などの米林宏昌監督がスタジオジブリ退社後、プロデューサーの西村義明が設立したスタジオポノックで制作したアニメ。メアリー・スチュアートの児童文学を基に、魔女の国から盗み出された禁断の花を見つけた少女の冒険を描く。少女メアリの声を務めるのは、『湯を沸かすほどの熱い愛』やNHK連続テレビ小説とと姉ちゃん」などの杉咲花。脚本を『かぐや姫の物語』などの坂口理子、音楽を『思い出のマーニー』などの村松崇継が手掛ける。(シネマトゥデイより引用)

感想

3.11以降の日本

2016年は、7月に庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」、8月に新海誠監督の「君の名は。」。そして11月には片渕須直監督の「この世界の片隅に」がそれぞれ公開され、大いに話題になりました。同時に、この3作は3.11を強く意識した作品でもあります。

それから約1年後に公開された本作もまた、明らかに3・11以降の日本を描いた作品になってましたねー。

ストーリー

本作はイギリスの女性作家メアリー・スチュアートが1971年に発表した『The Little Broomstick』(邦題は「小さな魔法のほうき」)が原作。

昔、1人の赤毛の魔女が魔女の国から「夜間飛行」という花の種を盗み出すが、逃走中に力尽きて乗っていた箒と共に種を森に落としてしまうところから物語はスタート。

それから数十年後、11歳の少女メアリ・スミスは大叔母シャーロットが住む赤い館に引っ越して来たものの、友達もなく、テレビもゲームもない退屈な日々。

そんなある日、彼女は黒ネコのティブに導かれるように、森の中で青く光る不思議な花と木の蔓に覆われた一本の箒を見つけ……。という物語。

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コンプレックスの赤毛を近所に住む少年ピーターにからかわれ、大叔母の家の手伝いをすれば失敗ばかりのメアリは、理想の自分になりたいという変身願望を持っている思春期の入口に立った女の子で、そんな彼女が「夜間飛行」の力で魔女の力を得て冒険を繰り広げるという、設定だけ聞くといかにも面白そうなストーリー。
なんですが、一言で言うなら圧倒的に物足りなさが残る作品でしたねー(´・ω・`)。。。

宮崎駿の廉価版

米林監督はジブリの生え抜きで、原画マンとして数々のジブリ作品を支え、宮崎さんの仕事を一番近くで見てきた愛弟子だし、本作のストーリー的にもジブリ(というか宮崎駿)感が出てしまうのは仕方がないと思うんです。(多分、スポンサーや僕を含めた観客にも求められている部分もあるだろうし)

それを踏まえたうえで、あえて嫌な言い方をするなら、この作品は宮崎駿の廉価版」という印象を受けました。

ジブリ時代に監督した「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の2本は、(好き嫌いは分かれるかもだけど)米林監督のカラーが出ていたと思うし、当時の米林監督が抱えた諸々の複雑な思いを作品に込めようという熱量を感じたんですよ。

ところが本作にはそれが全く感じられず、何ていうかこう、求められているものを無難にまとめようとしてる感が透けて見えるんですよね。

物凄くオブラートに包んで言うなら、今までジブリで培ってきた表現方法を随所で駆使しているわけですが、そういう事じゃないよ! と。
劇中で描かれている3.11以降の日本と子供達というテーマすら、なんか薄っぺらく感じてしまいました。「え、それ本当にそう思ってる?」っていう。
もちろん宮崎さんっぽく作ること自体はいいけど、それならそれで宮崎駿超えを目指してくれよ! って思いましたねー。

演出に問題あり

本作の場合、ストーリーの方は極めてシンプルな分そこまで悪くなくて、むしろ米林監督の演出の方に明らかに問題があると感じました。

メアリが初めて見る魔法の世界に驚くシーン。
多分、本作で一番の見せ場です。

ここで魔女の国や「エンドア大学」を観客に「あっ」と言わせるくらい魅力的に描くことで、後半とのギャップが活きる大事なシーンじゃないですか。

なのに、魔法の世界が全然魅力的に見えないのです。

なんかこうスッカスカというか、書き割りっぽいというか、奥行きや広がりが感じられないっていうか。

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そこから先はひたすら、「どこかで見たような」展開が続きます。

いや、「どこかで見たような」展開自体が悪いわけではないんですよ。

ただ、「あ、これは千と千尋だな」とか「お、ここはポニョだな」とか「アリエッティーかよ」とか、まるでマッド動画みたいに見覚えのある表現やキャラクターが釣瓶打ちなのに“元ネタ”を超える驚きが一つもないんですね。

少なくとも、僕がこの作品に求めていたのは「宮崎駿チルドレンだった米林監督のその先」なのに、出来上がった作品はジブリの二番煎じで米林監督のオリジナリティーというか作家性みたいなものが全然見えてこないわけですよ。

しかもなまじ上手いもんだから、観てる分には普通に観られるのが余計にタチが悪いっていうね。

ポスト宮崎駿という呪い

ここ何年もの間、ポスト宮崎駿を探そうとスポンサーたちは必死ですよね。
何人ものアニメ監督が槍玉に挙げられて、上手くかわした人もいれば、かわしきれなかった人もいますけど。

で、米林監督も槍玉に挙げられた一人(というか最有力)で、しかも、ジブリで2本も監督しているわけですから、かかる期待もプレッシャーも半端ないのは想像に難くありませんし、観客側も知らず知らずの内に米林監督に宮崎駿の影を求めてしまってると思うんですね。

斯く言う僕も、この感想で米林監督と宮崎さんを比べて文句言ってるわけだし。

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それについては米林監督には申し訳ない気持ちだし、気の毒だとも思うんですが、正直これは米林監督がアニメを作り続ける以上、背負わざるを得ない十字架であると同時に、ある種のアドバンテージでもあるんじゃないかと思うんです。

出来れば次作では、もっと強かにアドバンテージをフル活用して「これが米林宏昌だ!」という作品を観せて欲しいです。

興味のある方は是非!!

 

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