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アン・ハサウェイ主演の“セカイ系”映画「シンクロナイズドモンスター」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「プラダを着た悪魔」「レ・ミゼラブル」のアン・ハサウェイが主演だけでなく自ら製作総指揮も務めたSF?映画『シンクロナイズドモンスター』ですよー!

怪獣や巨大ロボットが出てくる映画ということで、ボンクラ映画スキーとしては、かなり気になっていた映画だったんですよねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

レイチェルの結婚』『レ・ミゼラブル』などのアン・ハサウェイが主演と製作総指揮を務めた異色作。失意のヒロインが、突如現れた巨大怪獣を操り世界を混乱させる。『なんちゃって家族』などのジェイソン・サダイキス、『美女と野獣』などのダン・スティーヴンスらが共演。『ブラック・ハッカー』などのナチョ・ビガロンド監督がメガホンを取った。(シネマトゥデイ より引用)

感想

アン・ハサウェイが負け犬ダメウーマンに

本作を大雑把にジャンル分けすると、いわゆる“セカイ系”と呼ばれるジャンルに入る作品です。

セカイ系をザックリ説明すると、「個人に起こる出来ごとや精神が世界の命運が直結している物語」って感じ。庵野監督の「エヴァンゲリオン」以降の日本アニメで死ぬほど作られてきた中二病的なアレです。

なので“セカイ系”の主人公は、(日本のアニメなどでは)思春期の少年少女になることが多いんですけど、本作の主人公は、失業して同棲していた彼氏にも見捨てられた酒浸りのアラサー女子。そんな負け犬ダメウーマンことグロリアを演じるのは、オスカー女優のアン・ハサウェイなんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / ダメ可愛いアン・ハサウェイ

仕方なく、ニューヨークから今は誰も住んでいない実家のあるニューハンプシャー州に戻った彼女は偶然、幼馴染のオスカー(ジェイソン・サダイキス)と出会って彼の経営するバーでアルバイトを始めるんですね。

そして、オスカーやその友達としこたま呑んだ彼女が、公園を通って帰ってみると姉から電話があり、韓国ソウルに怪獣が現れたという知らせを受けます。

最初はただショックを受けていた彼女ですが、やがて怪獣のある動作から自分の行動と怪獣の動きがリンクしている事を知り……。という物語。

美人女優のアン・ハサウェイですが、本作ではボサボサ髪にで身なりにも気を使わない負け犬女子を熱演しているんですが、そこはアン・ハサウェイですからね。
とことん気の抜けた姿もむしろダメ可愛いんですよね。

「怪獣映画」ではない

予告編などでフューチャーされるのは、彼女とソウルに現れる怪獣がシンクロしているところなんですが、本作の主軸はそこではありません。

本作でストーリーの主軸となるのは、主人公グロリアが逃げ帰った田舎での様々な経験を経て独り立ちするまでの物語で、怪獣とのシンクロはあくまでフックの一つに過ぎないんですね。

そんな彼女と対になるキャラクターが、幼馴染のオスカーです。
オスカーにとってグロリアは(恐らく)初恋の相手で、最初こそ甲斐甲斐しく彼女の面倒を見るんですが、次第に行動がエスカレートしていきます。
それは、自分の気持ちに気づかず奔放に振舞う彼女に対しての嫉妬心や田舎暮らしゆえのコンプレックスが原因で、つまり彼もまた大人になりきれないアダルトチルドレンなわけです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / どんどんゲス野郎になっていく幼馴染のオスカー

美術で心情を表現

宇多丸師匠の評論でもあったように、そんなオスカーの心の変化を本作では彼の住む部屋や、彼が経営するバーの内装を使って表現していて、そこは確かに上手いなーと思わせる部分なんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 韓国の様子をテレビで見る二人

バーは元々、オスカーが亡き父親から引き継いだものですが、彼は改装費が間に合わず手をつけられなかった半分は閉じて、(生まれ故郷しか知らない田舎者が思う)精一杯オシャレな内装に改装した残り半分で営業しているわけです。
そこに現れたグロリアが、閉じていた昔ながら未改装のままな残り半分を開放させる=オスカーが心の中で封印していた“本性”の部分を開放させるという展開になっているんですよね。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 意識高い系でいけ好かない元カレ

一方、グロリアの元カレの方は真面目で、酒浸りのグロリアを厚生させようとしている「ちゃんとした人」見えるんですが、しかし彼の言動は常に上から目線でモラハラ気味。つまりタイプは違うけどオスカーと元カレの根本は結局同じなんですね。

怪獣との繋がり

そういう意味では非常に現代的なテーマを扱った作品と言えるし、アン・ハサウェイジェイソン・サダイキスの演技もとても良いんですが、問題は彼女と怪獣の繋がりがあまりしっかり描かれていない事。

少女時代の彼女が(多分、学校の宿題で)作った、ソウル市街の模型らしきものを持って登校中、風に模型が飛ばされ、それを少年のオスカーが追いかけて見つけるわけですよ。

「お、わざわざ探してあげるなんてオスカーやるじゃん」と思ってると、彼はおもむろにその模型を踏みつけ、その時二人に雷が落ちてーーっていうのが、一応グロリアと怪獣がシンクロした要因ということにはなってるんですが、そもそも明らかに白人で、特に韓国に何の関係も思い入れもなさそうな彼女が、なぜソウルの模型を作ったのかも謎だし、怪獣がソウルに現れて暴れた事にショックを受けるのも飲み込みづらいし、怪獣の仕草を見て、自分とシンクロしているとか、砂場がソウルと繋がっていると気づくのも何だか唐突な感じ。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 韓国ソウルに現れる怪獣

怪獣が現れるのは元々の予定では日本だったらしく、二人は怪獣やロボットアニメのファンだった――みたいな設定だったのが、色々あってソウルに舞台が映ったことで分かりにくくなったのかもですが、もし日本が舞台だったとしても二人との繋がりの描写を入れないと分からないし、せっかく発想自体は面白いのに、その「分からなさ」がクライマックスシーンのノイズになってしまってるんですよね。

それ以外の部分は、今の時代にマッチした物語だし、美人で演技も上手いのに何故かアメリカでは執拗に嫌われてるアン・ハサウェイ自身がメタ的に乗っかってるようにも感じる面白い作品なだけに、構成上、二人と怪獣のシークエンスが上手くシンクロしてなかったのは、もったいないなーと思いましたねー。

興味のある方は是非!

 

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