今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

KUBOの前に製作・公開されたライカ作品「ボックストロール」(2014*日本ではビデオスルー)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」の2年前に公開されていながら、日本では今年やっとDVDが出たスタジオライカストップモーションアニメ『ボックストロール』ですよー!

ずっと噂は聞いていて観たいと思ってたんですが、今回やっと観ることができましたよー!

https://eiga.k-img.com/images/movie/81000/photo/b6f50353cfed1d41.jpg?1519951993

画像出店元URL:http://eiga.com

概要

「KUBO クボ 二本の弦の秘密」のスタジオライカが2014年に手がけたストップモーションアニメ。チーズブリッジの町では、子どもを襲って食べるという恐ろしい怪物「ボックストロール」の噂が住人たちを怯えさせていた。町の権力者リンド卿は悪徳害虫駆除業者スナッチャーに依頼し、トロールたちを次々と捕獲していく。しかし実際は噂とは異なり、トロールは夜の町でガラクタを集めては発明に勤しむ心優しい生き物だった。そんなトロールたちと地下で暮らしてきた人間の男の子エッグスは、人間に捕らえられた育ての親フィッシュを救うため、生まれて初めて地上に出る。そこで出会ったリンド卿の娘ウィニーとともに、スナッチャー率いる駆除軍団に立ち向かうエッグスだったが……。テレビシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ」のアイザックヘンプステッド・ライトがエッグス、「マレフィセント」のエル・ファニングウィニー、「ガンジー」のベン・キングズレースナッチャーの声をそれぞれ担当。(映画.comより引用)

感想

スタジオライカ作品といえばこれまで、「コララインとボタンの魔女 3D」(2009)「パラノーマン ブライス・ホローの謎」(2013)、そして「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」(2017)がそれぞれ公開され高い評価を得ていますが、「パラノーマン」と「KUBO」の間に公開されているのが本作「ボックストロール」です。

どころか「KUBO」の大ヒットでライカスタジオの名前は日本人にも広く認知されているにも関わらず、本作はDVDすら中々出ない状態で不思議に思っていたんですが、実際観てみると「あーそういうことか」と納得でしたねー。

いや、作品としては面白いし素晴らしいんですよ。

でも、ビジュアル的にもストーリー的にも、日本ではウケなさそうな感じなんですよね。

可愛くないキャラクターたちと露骨なメタファー

もともと、スタジオライカ作品のキャラクターってちょっと微妙というか、キャラクターのデザイン自体はあまり可愛くないんですよ。
でも、ストップモーションで人形を動かす時に、何百通りも3Dプリンターで作られた表情を変えて生き生きと動かすことや、ストーリーの中での行動やセリフを見聞きしているうちに、そのキャラクターが好きになっていくんですね。

で、本作に登場するキャラクターのデザインがまた、どいつもこいつも可愛くないわけです。

https://eiga.k-img.com/images/movie/81000/photo/4446a7c3aa5f0eb8/640.jpg?1519952073

画像出店元URL:http://eiga.com

ダンボール箱を服(というか甲羅)のように着て過ごすボックストロールたちのビジュアルは言うに及ばず、主人公の男の子エッグはぱっと見た感じ面長で小狡そうに見えるし、ヒロインの女の子ウィニーは困っしゃくれていて勝気で最初はちょっと嫌な感じ。

https://eiga.k-img.com/images/movie/81000/photo/20c21f1e61909efa/640.jpg?1519952076

画像出店元URL:http://eiga.com

悪役のスナッチャーウィニーの父親のリンド卿は、子供そっちのけで権力にしがみつくばかりのどうにもならないヤツだし、大衆はスナッチャーの仕組んだ嘘っぱちを信じ込んで無害なトロールたちを「殺せ殺せ」と騒ぎ立てる。

内容的にもほかの作品と比べてダークで、要するに温厚で臆病なボックストロールたちを恐ろしい怪物であるかのように言いふらし、自らがトロールを退治することで権力者の座に上り詰めようとするスナッチャーと、それに踊らされる大衆や美味いチーズにしか興味のない権力者たちに、トロールに育てられたエッグとネグレクト気味な少女ウィニーが立ち向かうというという構図なんですね。

それはつまり、ナチスユダヤ人迫害を始めとしたあらゆる人種や異文化、マイノリティー差別のメタファーであることは明白で、他のライカ作品にも通じるテーマですが、それらと比べてもテーマ性がより強め…っていうよりかなり露骨なのです。

本作はそんな歪んだ世界を子供の視点で見て、歪みを正すべく二人が奮闘する という物語なわけで、要は「大人(今の社会システムの象徴)は信じられない」っていう物語だし、なんなら迫害する側(人間)だけでなく、なんの声も上げず抵抗もしない迫害される側(トロール)をも糾弾してるわけですよ。

そりゃあ日本でファミリームービーとして公開するにはちょっと難しいですよね。

あと、トロールやエッグの主食が昆虫ってのに嫌悪感を感じる人がいるかもだしw

スナッチャーの悲哀

そんな本作で悪逆非道の限りを尽くすスナッチャーという男。
要はマッチポンプで権力の座に上り詰めようとしているわけですけど、ただこの男は「権力を掴んで何かをしたい」っていう目的があるわけではなく、ただ権力者になりたいだけなんですね。

この映画の舞台になるチーズブリッジという町の名産はチーズらしく、権力者たちは会合と称しては毎夜チーズの試食するだけの役立たずで大衆の事なんか何も考えていません。
で、スナッチャーの目的は、会合と称して毎日チーズの試食する権力者の行為に憧れているだけなんです。
食べただけで顔や舌が腫れ上がるくらいのチーズアレルギーなのにですよ。

物語内ではハッキリ言及されているわけではないんですが、この町はハッキリした階級社会で貧富の差が激しい格差社会でもあるようで、多分、スナッチャーとその一味は最下層の出身だと思うんですね。
で、彼はこの町の頂点に上り詰める野望を抱くわけですが、権力者の象徴である「白い帽子を被ってチーズの試食をする」という彼らの真似事がしたいだけというところに、スナッチャーという男の悲哀を感じずにはいられないんですよね。(彼の最後も含めて)

スチームパンク

まぁ、そんな諸々を含みつつも、基本的に本作は主人公エッグの冒険譚であり成長譚であり、活劇でもあります。

ちなみに、舞台設定はハッキリとは語られないですが、18世紀のヨーロッパが舞台らしく、電気や蓄音機、蒸気自動車などが登場する、いわゆるスチームパンクものなんですよね。

で、ボックストロールたちは機械工作が超得意な技術者集団で、昼間は地下で寝ているけど、夜になると町に出て、捨てられたガラクタなどを拾って改造、自分たちの生活を豊かにして楽しんでいるんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/81000/photo/a46e62bb3173519a/640.jpg?1519952074

画像出店元URL:http://eiga.com

その辺の映像描写は観ていてワクワクするし楽しくて、さすがはライカって感じでした。
最初こそ、ちょっと不気味なボックストロールや可愛げのないエッグやウィニーですけど、物語が進んで彼らの正確や背景が分かってくるとどんどん好きになっていくのは、他のライカ作品と同じだし、最後にちょっとだけ割り切れない余韻を残すストーリーも相変わらず見事だなーって思いましたよ。

興味のある方は是非!!!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com