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スピルバーグ、もう一つの遺言「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(2018)*ネタバレあり

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「レディ・プレイヤー1」とほぼ同時期に、スピルバーグ史上最短のスピードで製作された『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』ですよー!

本作を観た人は多分、誰もが思う事だと思うんですが、「レディ~」と本作をほぼ同時進行で作っちゃうとか「スピルバーグ、マジヤベェ!」って思いましたねーw

あ、ちなみに、本作は史実を元にしているので、今回はネタバレ全開で感想を書きます。
なので「ネタバレは嫌」という人は、先に映画を観てからこの感想を読んでくださいね。

いいですね? 注意しましたよ?

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概要

メリル・ストリープトム・ハンクスが共演し、スティーヴン・スピルバーグがメガホンを取った社会派ドラマ。実在の人物をモデルに、都合の悪い真実をひた隠しする政府に対して一歩も引かない姿勢で挑んだジャーナリストたちの命懸けの戦いを描写する。『コンテンダー』などのサラ・ポールソンやドラマシリーズ「ベター・コール・ソウル」などのボブ・オデンカークらが出演。脚本を『スポットライト 世紀のスクープ』で第88回アカデミー賞脚本賞を受賞したジョシュ・シンガーらが担当した。(シネマトゥデイより引用)

感想

「レディ・プレイヤー1」と公開が近かった事もあって話題になった本作。「レディ~」の製作期間中だった2017年5月30日にユニット撮影を開始してたった50日間で完了。同年の12月には公開したという、(もともと早撮りで知られるスピルバーグが手がけた中でも)最短を記録した作品なのだそうです。

では、なぜそこまでスピルバーグが急いで本作を公開したかったのかというと、トランプが大統領に就任したからだそうで、「この作品はすぐ作ってすぐ公開したかった」と、トランプ大統領就任から45日めにスピルバーグは本作の製作を発表したんだそうです。

つまりスピルバーグは、ベトナム戦争が泥沼化している1971年に起こった実際の事件を通して、アメリカの「今」を描いたんですね。

ペンタゴン・ペーパーズとは

本作の元になった「ペンタゴン・ペーパーズ」事件をざっくり説明すると、国際安全保障問題担当国防次官補のジョン・セオドア・マクノートンが命令して作らせたベトナム戦争トンキン湾事件に関する国家機密文章が流出し、それをニューヨークタイムスがスクープします。

それで、これまでの歴代大統領による発表がとんだ嘘っぱちだった(勝ち目のない戦争で多くの若者の命が失われた)ことが明るみになり大騒ぎに。
これに慌てたニクソン政権はニューヨークタイムスを訴えるんですが、同時期に独自のルートから機密文章ほぼ全文を入手したワシントンポストが記事にしたことで、他の新聞社も追従。

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ニューヨークタイムス&ワシントンポストは、「国家機密文章漏洩」の罪で政府に告発され裁判で争うも表現・報道の自由が認められ勝訴したわけです。

本作では、当時まだ地方紙に過ぎなかったワシントンポストの女性社主キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)と、編集主幹のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)にスポットを当てて、この事件の顛末を描いているんですね。

イムリミットは10時間

そもそも、この機密文章のコピーをリークしたのは、ジョン・セオドア・マクノートンの命令でベトナム戦争の様子を前線で記録していた国防総省勤務のダニエル・エルズバーグ

彼は責任逃れのために勝てない戦争を続ける政府に義憤を覚え、密かに持ち出してはコピーしていた「ペンタゴン・ペーパーズ」をリーク。
ニューヨークタイムスは3ヶ月間をかけて事実を精査し、記事を掲載したわけです。

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特ダネを独占されたワシントンポストのベンは、機密文書を手に入れる為に、マクナマラと仲が良い社主キャサリンに文書を入手するよう懇願しますが、キャサリンは家族ぐるみの親友であるマクナマラをこれ以上の窮地に陥れることを躊躇するんですね。

翌日、謎の女性によってワシントンポストにも機密文章の一部が持ち込まれますが、しかし、その文章はすでにニューヨークタイムスが記事にしているものでした。

さらにニューヨークタイムズは、機密文書に関する記事を掲載したことで、ホワイトハウスからの圧力がかかり、出版差し止め命令を受けてしまいます。

一方、独自に機密文書の入手に動いていた新聞記者バグディキアンは、友人だったエルズバーグの居場所を突き止め、膨大な量の機密文書を入手。

ベンは翌朝の新聞に掲載するため自宅に精鋭を集め機密文章を解読、記事を書かせますがイムリミットはたった10時間。しかも機密文章の記事を掲載することは政府の圧力によって会社が潰されかねないリスクも抱えているのです。

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キャサリンに掲載を迫るベン。止めさせようとする役員幹部。
イムリミットが迫る中、キャサリンはマスメディアとしての正義を貫くのか、それとも会社を守るのかの判断を迫られるという作品なんですね。

二つのテーマ

本作には二つの大きなテーマがあります。

一つは、女性蔑視問題
もともと、ワシントンポストはキャサリンの父親が社主で、父親はキャサリンの夫に跡目を継がせ、その事にキャサリン自身も納得していたんですね。
ところがある日、夫が自殺、キャサリンは迷った末に自ら社主となる決心をするわけです。
しかし、取引銀行や株主、幹部役員の多くはキャサリンをお飾りのように扱い、彼女が独断でベンをスカウトしたことにも納得していないし、キャサリン自身も会社を担う重責に自信が持てていないのです。

本作は、そんなキャサリンが会社の存続に関わる大きな決断を下すことで成長・自立する姿を描いているんですね。

裁判の後、ニューヨークタイムズ側にマスコミ陣が群がるのを横目に階段を降りるキャサリンのもとには女性たちが集まっているという構図は、本作のそうしたテーマを象徴的する表現だと思いましたねー。

そしてもう一つは、マスメディアの意義

新聞に記事を掲載したことで、ニューヨークタイムス、ワシントンポスト両社は政府に起訴を起こされるわけですが、判決は新聞社側の勝訴でした。それはアメリカ合衆国憲法修正第1条「表現と報道の自由が認められたからなんですね。

本作ではマスメディアの姿勢や役割について、人を変え、言葉を変えながら繰り返し語られています。
そして、これはもう言うまでもなく、権力によって言論やマスメディアに圧力をかけるトランプ政権への批判でもあり、全ての報道と表現者へのスピルバーグからの警鐘とエールでもあるわけです。

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あと、これは余談ですが、インタビューでスピルバーグは本作を「(自分の)ツイートみたいなもの」と言ったらしいですが、これはもちろん何かとツイートが話題(問題)になるトランプ大統領への当てこすりですよね。

温厚そうな顔して、しれっと毒を吐くスピルバーグ御大、流石ですw

スピルバーグ、もう一つの遺言

同時期に撮られていた「レディ・プレイヤー1」は、スピルバーグから次世代のクリエイターを目指す若者たちへ向けた、ある意味「遺言」的な意味合いを持つ作品だったわけですが、本作はそんな若者たちをサポートするべき大人たちに向けた「遺言」なのだと思います。

そしてこの両作、もっと言えば「カラーパープル」以降、彼は作品を通して常に「自由」の大切さを全世界の人々に説いているのだと思います。

エピローグについて

本作を観た人の中にはラストのエピローグ(警備員の件)がピンと来なかった人もいるんじゃないでしょうか?
あれは、その後ニクソン大統領が辞任に追い込まれる事になる「ウォーターゲート事件」の始まりを描いているんですねー。
どういうことか気になった人はウィキペディアで調べてみてくださいw

あと、最後に「ノーラ・エフロンに捧げる」ってクレジットが出ますが、ノーラ・エフロンは、本作の後日談とも言える『大統領の陰謀』監督バーンスタイン奥さんで、脚本を推敲する過程で彼女も(クレジット無しで)関わっているってことらしいです。

 

まぁ、こんなふうに書くと何か重くて堅苦しい映画みたいに思われてしまうかもですが、そこはスピルバーグですからね。
メッセージやテーマ性を入れ込みつつ、エンターテイメント映画として誰でも楽しめる超面白い映画になってました。

ただ、早口で食い気味なセリフが多い映画なので、字幕より吹き替えで観たほうが楽しめるかもしれません。

興味のある方は是非!!

 

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