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100人を超えるアーティストが贈るゴッホへのラブレター「ゴッホ 最後の手紙」(2017)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「ひまわり」などの名画で誰もが知るフィンセント・ファン・ゴッホの生涯を描いたアニメーション『ゴッホ 最後の手紙』ですよー!!

125名の画家たちによる史上初の油絵アニメーションという、前代未聞の技法で「不遇の天才」ゴッホの生涯と死の謎に迫る伝記映画です!

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概要

「ひまわり」などの名画で知られるフィンセント・ファン・ゴッホの謎に包まれた最期を、油絵のテイストで描いたサスペンス。自殺したとされる画家が弟に宛てた最後の手紙を託された主人公が、その責務を果たそうと奔走するうちにゴッホの死の真相に迫る姿を描く。主演を『ジュピター』などのダグラス・ブースが務め、『ブルックリン』などのシアーシャ・ローナンらが共演。油絵が実際に動いているかのように見える映像に注目。(シネマトゥディより引用)

感想

まず、最初に書いておかなくちゃならないのは、僕はゴッホの名前と有名な作品(「ひまわり」とか)くらいは知ってるけど、別にゴッホに詳しくもないし特別好きでも嫌いでもないんですよね。

ぶっちゃけゴッホの最後が自殺だったというのも、この映画を観て初めて知ったくらいなんですよ。
でも、そんな僕でもこの映画を観たあとはゴッホが好きになっちゃうというか、監督のドロタ・コビエラ、ヒュー・ウェルチマンを始めとしたスタッフの熱意とゴッホ愛に当てられてしまうというか。

うまく言えないけど、そんな映画でしたねー。

125人の画家による全編油絵アニメーション

この映画はアニメーションなんですが、なんと125人もの画家ゴッホのタッチを再現した、全編油絵で作られたアニメーションなのです。

その制作方法は、まずゴッホの絵画に似せて作られたセットや、撮影後にCGアニメーションゴッホの絵と合成させるためのグリーンバックを背景に俳優たちが演技をした実写を撮影し、その映像を特別なシステムでキャンバスへ投影して、長期にわたる特訓でゴッホのタッチを完璧に習得した画家たちの筆で油絵に。

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画家たちは、演じている俳優の特徴は残しつつゴッホの絵画に登場する人物の風貌や雰囲気をうまく混ぜ合わせながら描き、“動く肖像画”として1秒につき12枚、合計62,450枚もの油絵を描いて高解像度写真を撮影するという、気が遠くなるような工程を経て制作しているんだそうです。

なぜ、わざわざそんな大変な方法を選んだのかといえば、ゴッホが弟テオに残した最後の手紙に記された「我々は自分たちの絵にしか語らせることはできないのだ」という一節に、「だったら彼の絵で語らせるべきではないか」と、この前人未踏の手法を選んだんだそうですよ。

多分、いくら文字で書いてもピンと来ないと思うので、予告編を貼っておきますね。

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ゴッホの人生と死、その謎に迫るミステリー

ここまで読んでくれた人は「つまりゴッホ風の油絵アニメーションの伝記映画ってこと? 」と思われるかもしれません。

ところがこの映画、なんとミステリーなのです。

本作の主人公(というか聞き手?)はゴッホではなく、郵便配達人の父からゴッホの「最後の手紙」を託されたアルマン(ダグラス・ブース)。

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彼はゴッホの弟テオに手紙を届けるため、アルルからパリ、そして彼が最期の日々を過ごしたオーヴェールへと旅をする中で、様々な人たちから生前のゴッホの様子を聞いていきます。

その途中でテオが、ゴッホの後を追うように死んでいた事を知ったアルマンは、導かれるようにゴッホが自殺したオーヴェールへと辿り着きます。

ゴッホうつ病治療のため精神科医のポール・ガシェ (ジェローム・フリン)を頼ってこの地に滞在し、最後は拳銃で自らの“腹部”を撃って、滞在中のラヴー旅館で駆けつけたテオに見守られながら短い生涯を終えたということになっていたのです。

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しかし、町の人々にゴッホの様子を聞くうち、アルマンはゴッホの死が自殺ではなかったのではないかという疑念を抱き始め……。

というのが、本作の内容なんですね。

 本作はそうしたミステリー要素で興味を持続させながら、世間一般の「狂人」「不遇」「天才」「孤独」といったパブリックイメージだけで語られがちなゴッホの実像に迫ろうとしているのです。

技法と物語から浮かび上がるフィンセント・ファン・ゴッホ

全編油絵によるアニメーションという技法と、アルマンによる関係者へのインタビュー形式の作劇によって、本作から二つのことが浮かび上がってきます。

一つは、「同じ技法を使ってもゴッホの絵にはならない」という事。
各国から招集された125人ものプロの画家が、ゴッホの筆致を完コピして描いた本作のアニメーションはもちろん素晴らしいんですが、例え同じ技法で描いたとしても、それはゴッホの絵にしかならないという事が逆に証明されてしまっているというか。

それは画家たちが上手いとか下手とかいう問題ではなくて、近づける事は出来てもオリジナルとは違うという事実が、(ゴッホに限らず)作家のオリジナリティーだと言うことを、自身も画家である監督は言いたかったのかな? なんて思いましたねー。

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もう一つは、ゴッホは本当に不幸だったのか」問題。

弟テオの献身的な援助に依存していて、ゴーギャンとの共同生活が破綻したことで精神を病んで自分の耳を切り落とし、生前はたった1枚の絵しか売れなかったゴッホ
他にも好色家、狂人、天才、怠け者、探求者など、そのエキセントリックさや不幸、不遇、孤独というイメージが一人歩きしている彼ですが、最後の地オーヴェールの人々が語るゴッホはとても穏やかで、子供にせがまれて絵を書いてあげたり、貸しボート屋の主人や宿の亭主やその娘、ガシェ父娘などと普通に交流しているんですよね。

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ゴッホの生涯については、彼が弟テオに書き残した大量の手紙から解明されているそうで、おそらく本作で描かれた晩年のゴッホの姿は、真実に基づいたものだったのではないかと思います。

つまり、監督を始めとした製作陣やスタッフは、ゴッホの不幸でエキセントリックなだけの人間という誤解を解きたかったのではないかと。

そして、彼が(アーティストに限らず)多く若者たちと同じように「何者か」になりたくて足掻いた傷つきやすい青年だった事を、本作は愛と誠意を持って語っているんじゃないかと思いました。

とにかく映像のインパクトが強いので、つい、そちらばかり目がいってしまいますが、ストーリーもしっかり面白いしゴッホに興味のない人でも、きっと楽しめる映画になっていると思いますよー!

興味のある方は是非!!!

 

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