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東映“実録ヤクザ映画”の流れを汲む新作「孤狼の血」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、「凶悪」や「日本で一番悪い奴ら」を手がけた白石和彌監督の最新作『孤狼の血』ですよー!

仁義なき戦い」を始めとした、東映が得意とする“実録ヤクザ映画”の流れを汲むバイオレンス映画です。

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画像出典元URL:http://eiga.com

概要

『凶悪』などの白石和彌監督がメガホンを取り、柚月裕子の小説を映画化。暴力団対策法施行以前の広島県を舞台に、すさまじい抗争を起こしている暴力団と彼らを追う刑事たちのバトルを活写する。役所広司が主演を務め、松坂桃李真木よう子滝藤賢一田口トモロヲ石橋蓮司江口洋介らが共演。昭和の男たちが躍動する。(シネマトゥディより引用)

感想

東映お家芸とも言うべき“実録ヤクザ映画”

元祖 実録ヤクザ映画にして日本ノアール映画の金字塔「仁義なき戦い
「仁義なき~」を観たことがない人でも、♪チャララ~チャララ~という、あの印象的なテーマソングを聞いたことがないという人は少ないのではないでしょうか。

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仁義なき戦い」は、菅原文太松方弘樹千葉真一北大路欣也などなど、当時の二枚目スターたちが一堂に介して、戦後広島で起こった暴力団同士の抗争を描いた大人気シリーズでした。

テレビの普及や社会情勢の悪化、不景気などなど、様々な要因から系映画苦しくなってきた映画会社は、それぞれの方針で生き残りを模索するわけですが、元々華やかな時代劇を得意としていた東映は、その後、高倉健らスターを主演に据えた任侠シリーズを経て、美能幸三が網走刑務所で書き綴った手記をベースに、飯干晃一が連載したノンフィクションを映画化。

当時若手だったスターたちが広島のヤクザに扮し、まだ若手監督だった深作欣二が手がけた、暴力団が血で血を洗う抗争を描いたこのシリーズは異例の大ヒットを飛ばし、以降東映は実録ヤクザ路線に舵を切り、レンタルビデオが始まるとVシネマに舞台を移し、「実録ヤクザ映画」は現在まで綿々と続いているんですね。

そんな東映実録ヤクザ映画をスクリーンに復活させたのが、本作「孤狼の血」なのです。

ヤクザ映画といえば、近年だと北野武監督の「アウトレイジ」シリーズを思い出す人もいるかと思いますが、アウトレイジの大ヒットが、本作の制作に繋がったといえるかもしれません。

日本を代表する「いい顔」のオッサンが大集合

そんな本作でマル暴の刑事 大上を演じるのは名実ともに実力派俳優の役所広司
その大上と組む大卒キャリアの新米刑事 日岡役を松坂桃李が務めるんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com  / 主演の二人。

まさに、日本版「トレーニングデイ」ですよ!

他にも、名脇役 石橋蓮司、「凶悪」以降白石組常連のピエール瀧など、“いい顔のオッサン”たちが大集合でしたねー。

ざっくりストーリー紹介

昭和63年。暴力団対策法成立前夜の広島呉原市では、地元暴力団の尾谷組と五十子会傘下の加古村組の因縁が高まり、いつ抗争に発展してもおかしくない状況だった。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 安心の石橋蓮司

そんな呉原市のマル暴刑事になった大学出のキャリア日岡は、ベテランながら法律無視の刑事 大上と組まされ、両暴力団の間を行き来するはめに。

暴力・賄賂・恐喝・放火と、捜査のためならやりたい放題の大上に反発しながらも、日岡は次第に、大上に惹かれていくのだが…。という内容です。

呉原市は架空の町なんですが、全編モデルとなった呉市でオールロケを敢行したというから、その本気度が伝わりますね。

ディテールへのこだわり

例えば、警察車両が白のマークⅡだったり、まだ携帯がなくて日岡がポケベルを持ってたりというディテールだけでなく、当時のザ・昭和な風景を残す呉市で撮影を行ったのは大正解だと思いました。

また、一連の事件の発端となる、冒頭の豚小屋での拷問シーン。
しっかり痛い&グロいシーンで嫌な感じを見せる演出で、その後も要所要所で痛グロいシーンをしっかり見せていくのは、さすが白石監督だなーと思いましたねー。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 道産子の星 音尾琢真も熱演

原作ではなかったという、クライマックスからのラストシーンを付け加えたことで、大筋は変わってなくても、映画のカタルシスはかなり上がってるんじゃないでしょうか。

あと、随所に東映実録ヤクザ映画のオマージュが入っているのも、「仁義なき~」とかを観ている人たちなら思わずニヤリとしてしまうんじゃないでしょうか。

全編に漂う物足りなさ

ただ、作品としては文句なしに面白い要素が揃っているハズなのに、観終わってみると何故か、物足りなさを感じてしまうんですよねー。

その理由が何なのかと考えてみた結果、全体的にゲス味が足りないんじゃないかなーって思いました。

例えば、冒頭豚小屋で拷問され殺害されたサラ金経理担当の妹が捜索願を出して、大上と話すシーン。
大上は日岡を部屋から追い出してその妹とエッチするんですけど、そのシーンは一切描かれてないんですよ。
事後に部屋から出てきた大上が、ズボンのチャックを上げる描写に留めてるんですね。

で、その間は、日岡と他の刑事の会話で、大上は女性の取り調べは必ず二人きりでするみたいな説明を入れるんですけど、何か物足りないんですよねー!

いや、別に役所広司がエッチしてる様子を映し出さなくてもいいんだけど、例えば刑事と日岡の会話の最中に女性の喘ぎ声やテーブルが軋む音が聞こえて、刑事たちが┐(´д`)┌ヤレヤレみたいな顔をするとか。

そういう描写が一個はいるだけで、主人公大上のゲス感が出るじゃないですか。

日岡の目に映る大上は、とんでもないゲス野郎かつ悪徳警官でないといけなくて、その割には彼のゲスさが出ていないというか、役所さんのいい人感が出ちゃってるというか。

本来、観客は日岡と同じ視線のハズなのに、役所さんのいい声で言われると、なんか納得しちゃうのですよw

それは役所さんの演技がまずいのではなくて、多分、ちょっとした演出が足りてないんじゃないかな? って思うんですよね。

それは他の役者さんにも言えて、なんていうか、脚本通りっていうか、やらされてる感言わされてる感みたいのを感じてしまって、ハラハラしないのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com / クライマックスの江口洋介は怖くて良かった。

まぁ、「仁義なき~」と比べてしまっているからそう思うのかもですが、でも、実録ヤクザ映画を謳って、東映映画として公開してるんだから、それは比べるなっていう方が無理ってもんでしょ。

もしかしたら、時世的に女性客が引かないようにっていう配慮なのかもですが。

あと、これだけは言いたいんですけど、“ある事”が起こって、その調査をしてる松坂桃李が、“ある物”を見つけて、「うあぁぁぁ!!」と叫びながら犯人に殴りかかるシーンがあるんですけど……

だから、叫ばせるなと何度言えば…。

物語的エモーションが欲しかったのかもだけど、俳優に叫ばせる演出は心底ダサいから!

例えば、犯人は証拠が出るはずがないとタカをくくっていて、そこで“ある物”を見つけた松坂桃李がそれを握り締めながら犯人に歩いていく後ろ姿をカメラで追うっていう方が、より彼の怒りが伝わるんじゃないですかねー?

ほんと、(特に若手俳優に)叫ばせると映画が安くなるから、いい加減やめた方がいいと思いますよ。

とはいえ、今の日本で作られたノワール映画がヒットするのは、やはりそれだけ需要があるからだろうし、個人的にもこれだけ尖った内容の作品がヒットするのは素直に嬉しいです。

すでに続編の制作も決まってるらしいので、今から楽しみですよー!

興味のある方は是非!!!

 

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