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あの高倉健がテロリスト役!? 日本発本格パニックサスペンス「新幹線大爆破」(1975)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは1975年の東映映画『新幹線大爆破』ですよー!
高倉健が、新幹線に爆弾を仕掛けるテロリスト役を演じた本格パニックサスペンス映画です。

この作品は初見なんですが、最後までずっとハラハラしっぱなしでとても面白い映画でしたねー!

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画像出典元URL:http://amazon.co.jp

概要

新幹線の乗客を人質にとった爆弾脅迫事件が発生した。爆弾は走行中の新幹線に仕掛けられており、列車の速度が時速80キロ以下になると爆発するという。巧みなポイント切り替えによって、新幹線は速度を維持したまま南下していく。だが、その終点は間近に迫りつつあった……。『スピード』という洋画が大ヒットしたことがあったが、それを20年ほど前に先取りした作品。(allcinema ONLINE より引用)

感想

「スピード」の元ネタ?

本作の内容をざっくり紹介すると「新幹線が時速80km以下にスピードを落とすと爆発する爆弾を仕掛けられたため止まれなくなる」というパニック映画です。
キアヌ・リーブス主演の「スピード」(1994)の元ネタと言われている本作ですが、映画評論家の町山智浩さんによれば、スピードの元ネタは「暴走機関車」で黒澤明の書いたオリジナル脚本らしく、実は本作の設定も同じくこのシナリオをが元ネタになっているのではないかと言われているようです。

また、同じく黒澤監督の「天国と地獄」(63)やスタンリー・キューブリック監督の「現金に体を張れ 」(56)の影響もあるのではないかとのことでした。

元々は、新幹線が出来た当時、緊急の場合は自動的に停車するシステムが売りだった新幹線。「じゃぁ、そんな新幹線が、もし止まれなくなったら」という発想から本作は作られたのだそうです。

“あの”高倉健がテロリスト役!?

で、新幹線に爆弾を仕掛けて身代金を要求する犯人グループの主犯を演じるのが、当時任侠シリーズなどで大スターだった高倉健です。
彼が演じるのは、不況で倒産した精密機械工場の元経営者・沖田哲男。
そんな彼が、左翼過激派崩れの古賀勝(山本圭)、バイク事故で仕事を失い沖田に拾われた大城浩(織田あきら)と3人で、新幹線に件の爆弾を仕掛け、乗客1500人を人質に政府に500万ドルを要求するわけです。

当時の新幹線は東京・博多間までの路線しかなく、その限られた時間の中で犯人グループを逮捕しようとする警察、爆弾を解除し乗客1500人の命を守ろうとする国鉄、500万ドルを手に入れようとする沖田たちという、三つ巴のドラマが展開していくのが本作の見所なんですね。

また町山さんによれば、沖田の経営する工場が潰れた背景には、当時、経費の安い外国に仕事を奪われた零細工場が潰れていったという背景があるのだそうで、真面目で面倒見の良かった沖田はそのせいで妻子とも別れ、工場も失い、古賀は革命を夢見て学生運動で戦ったものの結局は夢破れ、大城は一度は沖田に救われたものの会社が潰れ、日雇いで働いていた大企業の工事現場の事故で大怪我を負ったにも関わらず、治療費を値切られ。

そんな負け犬三人が、完全犯罪を成し遂げることで日本に復讐しようとする。というのが犯行の動機なんですね。

パニック映画というより、サスペンス映画として素晴らしい

本作の見所は、新幹線に仕掛けられた爆弾を乗務員や乗客が発見し解除する――ではなく、主に、犯人グループと警察の攻防だったりします。

イタズラではないことを示すため、夕張の貨物車に同じ爆弾を仕掛ける古賀、新幹線の清掃係のバイトに入って爆弾を仕掛ける大城、逆探知を避けるため移動を繰り返しながら公衆電話で警察と交渉する沖田。

序盤は、警察の必死の捜査を嘲笑うように、周到に用意した計画通りに事を進めていく三人ですが、受け子役の大城がアクシデントから死亡したことで、徐々に三人の計画が狂っていくんですね。

この序盤から中盤にかけての展開は、ずっとハラハラしっぱなしだったし、同時に沖田たちの計画が綺麗にハマっていくケイパーもの的な気持ちよさもあり、どんどん物語に引き込まれていくんですよ。

まぁ、警察があまりにも間抜けすぎるという弱点はあって、少ない情報から手がかりを掴んでいくという展開も、ツッコミどころは多いんです。

ただ、その合間に宇津井健演じる倉持運転指令室長と、新幹線運転手の千葉真一との緊迫したやり取りや、タイムトライアル的なサスペンスが入ってくるので、途中で緊張感が途切れることがないんですよね。

そういう意味ではパニックものとしてというより、サスペンスものとしてとても良く出来ている映画だし、日本でもこんな映画が作れたんだなーと感動してしまいましたねー。

まぁ、ラストの方はいくらなんでも(サスペンス展開を)盛り込みすぎではないかと思わなくもないですけども。

日本よりも海外での評価が高い作品

この作品、予算が5億3000万円というから、当時としてはかなりの超大作なんですが、公開当時、日本では思ったほど当たらなかったのだとか。

というのも、映画史研究家の春日太一さんによれば、まず東映自体の人気が落ち込んでいたことと、製作期間が短く十分な宣伝が打てなかったことで、本作公開があまり周知されていなかったというのが大きな理由らしいです。

逆に、アメリカやフランスなど海外の方が本作の評価は高かったらしいんですね。
確かに言われてみれば、この作品はどこか、邦画というより洋画の香りがある気がしますし、海外版では三人が犯行に至る背景のシーンをばっさりカットして、アメリカでは110分、フランスでは100分に短縮されているらしいんですね。

この映画の弱点は、やはり約2時間30分と長いことで、特に三人の背景を語るシーンは本筋にはほぼ関係ないし、浪花節的というかエモいというか、言いたいことやりたいことは分かるけど、やっぱどうしても冗長だと思うんですね。

個人的にはむしろ、その部分を削った海外バージョンがあるなら、そっちを観てみたいなーと思ったりしました。

豪華キャストの無駄遣い

あと、本作は無駄にキャストが豪華だったりします。
予告を見ると、千葉真一、多岐川裕美、志穂美悦子北大路欣也丹波哲郎志村喬などなど、そうそうたる名前が並んでるんですが、こうしたキャストの殆どはカメオ出演的なチョイ役で、役者の無駄遣いにも程があるなーとw

しかも、予告のシーンは殆ど本編には登場しなくって、何故かと言うと本作が完成したのが公開の三日前で、予告は役者たちが別の映画で出演してるシーンを切り張りしてるからなんですよね。

予告編だけ観ると、いかにも千葉真一が猛スピードで走る新幹線を舞台にアクションを繰り広げそうな感じなんですが、本編ではずっと運転席で座ってるっていうねw

今風に言うなら予告編詐欺ってやつですが、この当時の映画ではよくある事だったようです。

ともあれ、やっぱり高倉健の存在感は大きくて、彼が登場するだけで画面がピリっと引き締まる感じ。やっぱ健さんはカッコイイです!

確かにツッコミどころも多いけど、(当時の熱量も含め)今の邦画では中々観られない面白い映画でしたねー!

興味のある方は是非!!!

 

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