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シャマラン版スーパーマン?「アンブレイカブル」(2001)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、新作が公開されるたびに物議を醸すM・ナイト・シャマラン監督の長編映画アンブレイカブル』ですよー!

実は僕、シャマラン作品って「ヴィジット」(15)くらいしかちゃんと観てないんですが、現在シャマラン最新作「ミスター・ガラス」が公開中で、その作品と世界感を共有している作品ということで、観てみることにしました。

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画像出典元URL:http://www.Amazon.co.jp

概要

シックス・センス」のM・ナイト・シャマラン監督とブルース・ウィリスのコンビによるサスペンス・スリラー。フィラデルフィア。ある日、乗客、乗員131名が死亡するという悲惨な列車追突事故が発生する。かつて有望なフットボールの選手だったデヴィッド・ダンは、その列車事故の唯一の生存者だった。しかも傷一つ負わなかったのである。“なぜ自分だけが奇跡的に助かったのか”と悩むデヴィッドのもとに、ある奇妙なメッセージが届く……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

シャマランの世界的大ヒット作といえば、ブルース・ウィリス主演の「シックス・センス
ところが僕はこの作品と、たまたまテレビでラスト10分のネタあかしのシーンだけを観てしまうという、非常に不幸な出会い方をしてしまったんですよねw

以来、シャマランとは縁がなくて、初めて最初から最後までしっかり観たのは2015年公開の「ヴィジット」だけだったりします。

で、先日Twitterでたまたま彼の新作、「ミスター・ガラス」が公開中だと知り、それがどうやら“ヒーロー映画”らしい事、サミュエル・L・ジャクソンブルース・ウィリスが出ている事、本作と2017年公開の「スプリット」を含めた“シャマランユニバース三部作”完結編らしい事を知って、本作に興味が沸いたんですね。
まぁ、残念ながら僕の地元では「ミスター・ガラス」の公開予定はないっぽいんですけどもw

ざっくりストーリー紹介

ある日、フィラデルフィアで列車の脱線事故という大事故が発生。
この事故で奇跡的に無傷だった中年男のデヴィッド・ダンブルース・ウィリス)以外の乗客は全員死亡してしまう。

そんなデヴィッドの元に、一通の封筒が届くことから物語は動き出す。

送り主は、些細なことでも骨折してしまう骨形成不全症という難病を持って生まれ、クラスメイトから「ミスター・ガラス」というあだ名をつけられたイライジャ・プライスサミュエル・L・ジャクソン
幼少期からコミックを読み続けコミックイラストの画商になった彼は、自分のように先天的に体が異常に弱い人間がいるなら、逆に驚異的に強靭な肉体を持つ人間もいるはずで、それがデヴィッドなのだと言う。
最初は相手にしないデヴィッドだったが……。という物語。

シャマランが描く“ヒーロー映画”

暴力を扱う映画に、ヒーローが暴力で事件を解決する映画と、暴力とは何かを描く映画の2種類がありますよね。
前者は痛快なヒーロー映画やアクション映画で、後者は「アウトレイジ」(10)などのギャング映画やノワール作品ってところでしょうか。

同様に“ヒーロー映画”にもヒーローがヴィラン(悪者)を倒す映画と、ヒーロー(正義)とは何かを描く映画の2種類があって、後者の有名どころで言うと「ウォッチメン」(09)や、「ダークナイト」(08)などが有名。
本作はその系譜にある作品なんですね。

こうしたリアル路線のシリアスでダークなヒーローコミックは、モダンエイジと呼ばれる1980年代以降のアメコミに顕著で、「ウォッチメン」のアラン・ムーアや、「バットマン: ダークナイト・リターンズ」のフランク・ミラーを筆頭に、今もアメコミの主流になっています。

これらの作品で彼らは、「正義とは」「ヒーローとは」といった主題を追求し、実際に起こった戦争等の歴史的事件を絡めながら描いているのです。

本作のインタビューなどでアメコミが好きと答えたシャマラン。本作のアイデアを考えた時に、これらモダンエイジ以降の作品に影響を強く受けたのではないかと、僕は思うんですよねー。

本作は、ヒーロー誕生譚を通して、何者でもなかった二人の男が自分の存在を証明するという映画です。

まぁ、言ってみればヒーロー映画の王道展開ではあるんですが、そこはシャマラン印。
シックス・センス」でも見せた、ラストでのどんでん返しが用意されている、ある種のミステリーホラー仕立てになってるんですねー。

そして、(予算が少なかったのかもですが)とにかく地味。
まぁ、それがリアルっちゃぁリアルなんでしょうけど、派手なアクションや映像は一切出ないし、マーベルのヒーロー映画的なカタルシスも皆無です。

薄暗い画面の中、辛気臭い顔でボソボソ喋るブルース・ウィリスと、変な髪型でずっとうさん臭いサミュエル・L・ジャクソンの問答が延々と続くのです。(´ε`;)ウーン…

なので、ヒーロー映画のエンタメ的カタルシスを求める人が本作を観たら、かなり盛大に肩透かしを食らっちゃうんじゃないでしょうか。

というわけで、ここからほんのりネタバレします。
ネタバレが嫌という人は、映画を観たあとにこの感想を読んでください。

 

イライジャの妄執

上記の通り、サミュエル・L・ジャクソン演じるイライジャは、先天性の病気でちょっとしたことで骨が折れてしまう超虚弱体質。
そんな息子を引きこもりにしないために、母親は彼が外に出るたびに一冊づつヒーローコミックを渡すという作戦に出ます。

こうして、多くのヒーローコミックを読み続けて立派なアメコミオタクになったイライジャは、コミックアーティストの原画を扱う画廊で成功してるんですが、同時にある種の妄執に取り憑かれるようになります。

それは、自分のように先天的に身体の弱い人間がいるなら、逆に先天的な能力を持つコミックヒーローのような人間もいるはずという理論。

そんな彼がついに見つけたのが、乗客が全員死亡する程の列車事故に遭っても無傷だったデヴィッドなんですね。

実は彼、生まれてこの方ただの一度も、病気や怪我をした事がないのが徐々に明らかになっていきます。
若い頃にはアメフトのスター選手でしたが、当時恋人だった奥さんとのデート中の交通事故で足を骨折して選手を引退した……ことになってるんですが、実はこれは嘘。
暴力的なアメフトが大っ嫌いな奥さんと結婚するために、足を折ったと嘘をついてアメフトを引退したんですね。

ただ、その事で奥さんと息子を愛しながらも、どこか心の距離を感じてしまうデヴィッドと、それを察知した奥さんの仲は次第に冷え込み、喧嘩したわけでもないのに離婚寸前。デヴィッドはニューヨークで人生をやり直そうとしていたのです。

そんな彼のもとに現れたイライジャは、自説をデヴィッド父子に披露。
最初はただの妄言だと思っていたデヴィッドですが、まだ小学生の息子の方はすっかり信じ込んでしまい、デヴィッドがいくら「普通の人間だ」と言っても信じず、ついには「パパが超人だということを証明する!」と拳銃を向ける始末。

「やめなさい!」「一発だけ!」っていう、付き合い始めの高校生カップルみたいな言い合いを繰り広げますw

その合間にもイライジャのラブコールは続き、デヴィッドもだんだんその気になってきて、他人に触れると相手の考えが分かる能力を発見したり、180キロ以上のバーベルを持ち上げたりするうちに、どうやら自分はマジでスーパーヒーローの能力があると確信するのです。

そして、自分のスーパー能力を実証するため、デヴィッドはレインコートで正体を隠して駅で悪者を探し、やっつけ、ついにスーパーヒーロー誕生! 
息子や妻との関係も修復できてめでたしめでたし……と思いきや。っていうね。

イライジャは何故スーパーヒーローを探していたのか

とまぁ、デヴィッドの方はそんな感じですが、では何故、イライジャはデヴィッドをスーパーヒーローに覚醒させたのか。
世界を守るため? ヒーローのサイドキック(相棒)になりたかった? ヒーローに守って欲しかった? 違います。

彼がデヴィッドをスーパーヒーローに覚醒させた理由は、スーパーヒーローの存在を証明することが=自分の存在を証明することになるからです。

ラストでヒーローに目覚めたデヴィッドとイライジャは握手を交わします。

体は極弱ですが頭脳明晰なイライジャなので、デヴィッドとの握手の意味を失念していたハズはなく、その結果も当然予測していたハズ。
彼にとっては握手もその結果も全てが計画のうちで、その結果こそがデヴィッドが真のスーパーヒーローになるための最後のスイッチでもあったわけです。

そして、計画を完遂することで彼はデヴィッドと同じく、自らの存在理由を手に入れる事ができるというわけですね。

生まれつき体の弱い彼は、コミックのようなヒーローにはなれない。
だったら……というわけです。

つまり、この映画は孤独な二人の男が“世界に承認されることで世界に居場所を見つける”物語であり、デヴィッドとイライジャの関係はシャマラン版「スーパーマン」なんですね。多分。

「面白かった?」と聞かれると(´ε`;)ウーン…と悩む作品ではありますが、2000年の段階で、リアル路線のダークでシリアスなヒーローものを映画化したシャマランは先進的だったんだなーって思いましたねー!

興味のある方は是非!!

 

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