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古典なのにむしろ今っぽい、カルト的ホラー映画「ローズマリーの赤ちゃん」(1969)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、巨匠ロマン・ポランスキー監督のホラー映画『ローズマリーの赤ちゃん』ですよー!

実はこの映画、僕は今回が初見だったんですが、想像してたのと全然違っていろんな意味で驚いた作品でしたねー。

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画像出典元URL:http://www.amazon.co.jp

概要

巨匠ロマン・ポランスキー悪魔崇拝者たちに狙われたある主婦の恐怖を描いたオカルト・サイコ・ホラー。マンハッタンの古いアパートに、若い夫婦者が越してきた。やがて妻のローズマリーは身篭もり、隣人の奇妙な心遣いに感謝しながらも、妊娠期特有の情緒不安定に陥っていく。彼女は、アパートで何か不気味なことが進行している、という幻想にとり憑かれていた……。(allcinema ONLINEより引用)

感想

古い映画なのにむしろ今っぽい

 本作は、アメリカの作家アイラ・レヴィン原作の同名ホラー小説が原作。
で、アイラ・レヴィンがこの作品を書くきっかけとなったのが「サリドマイド事件
 1961年 に西ドイツの小児科医 W.レンツの指摘で、妊娠初期に鎮痛系睡眠薬サリドマイドを服用すると奇形児が生まれる可能性があることが分かったという事件で、多くの女性が妊娠に恐怖心を抱くようになったのだとか。

このニュースと悪魔崇拝を組み合わせて書かれた原作の映画化権を、当時ゲテモノB級映画ばかり作っていた ウィリアム・キャッスルが取得。

しかし、彼に監督させるとまたぞろ低俗B級映画にされてしまうということで、当時ヨーロッパで活躍していたロマン・ポランスキーが抜擢されたという経緯なんですね。

主人公のローズマリーは赤ちゃんを妊娠。
しかし、アパートの住人たちが悪魔崇拝者で、自分は悪魔の子を妊娠させられたのではという疑念に取り憑かれた彼女は、精神的に追い詰められていき……という物語で、劇中起こっていることが現実なのか、それともマタニティーブルーのローズマリーが取り憑かれた妄執なのかが最後まで分からないというのがミソ。

物語はずっとローズマリー視点で描かれるわけですが、主演のミア・ファローが醸し出す線が細くて繊細な危うさによって、重度のマタニティーブルーによるノイローゼなのでは? と見ているこっちに思わせるように作られているんですね。
つまりローズマリー「信用できない語り部なのです。

実は僕がこの映画を観ようと思ったのは、あるレビュアーさんが本作と「ヘレディタリー継承」の関連について言及されていたからなんですが、1960年代の映画にも関わらず題材的にもテーマ的にもむしろ今っぽさを感じる作品だと思いましたねー。

特撮やビックリ演出は一切なし

そんな本作の何が凄いかというと、特殊メイクやSFX、流血など、おばけ屋敷的なビックリ演出はほぼなくて、役者の演技と照明、カットと編集、つまりは普通のドラマと同じように作られているところ。

映画冒頭、新居探しに古めかしいアパート(外観はジョンレノンとオノヨーコが暮らしたことで知られるダコタハウス)を訪れるガイとローズマリー夫妻の様子は、まるで古き良きアメリカの小意気なラブコメのような軽快なタッチで始まるんですが、それが映画序盤の“ある事件”をキッカケに、ローズマリーの目(見ている観客の視点でもある)には隣室のおせっかい老人夫婦や、産婦人科医、アパートの住人、果ては夫のガイに至るまで、その行動がどんどん怪しく見えてくるわけですね。

しかし同時に、彼ら(彼女ら)はただの親切な善人で、これは全てローズマリーの妄想なのではないかという疑念も捨てきれないので、観ながら、そして観終わったあともどっちなんだろうとモヤモヤしてしまうわけです。

そして観終わったあと振り返ってみれば、後の展開に向けて序盤の軽快なタッチの中にも周到に伏線が仕掛けられている事が分かるんですよね。(タンスの位置とかセリフの端々とか)

というわけで、ここからはネタバレですよー!

 

 

ラストの展開(ネタバレ)

すったもんだの末に、赤ちゃんを出産したローズマリーでしたが、残念ながら死産だったことを知らされます。

落胆する彼女でしたが、何故かトルコに行っているハズの老夫婦の隣室から赤ちゃんの泣き声が聞こえるんですね。

ローズマリーが、武器として包丁を片手に隣室に潜入すると、そこにはいないはずの隣人夫婦や、アパートの住人たち、産婦人科、そして夫のガイもいてパーティーの真っ最中。

そして、その中心には黒いゆりかごが置かれていて、その中を覗いた彼女は悲鳴をあげます。

この時、赤ちゃんの姿は撮らないんですが、ミア・ファローの演技だけで赤ちゃんが人ならざるものであることが分かります。

半狂乱になって周囲のサタニストたちに悪態をつき、自分の出世のために妻と赤ん坊を差し出した夫ガイに唾を吐きかける彼女でしたが、最後は、赤ちゃんの母親であることを受け入れる表情で映画は終わるんですねー。

このラストは、赤ちゃんを撮さないことで、より恐怖が増すという名場面なんですが、このシーンすら、現実なのか死産にショックを受けた彼女の妄想なのかは、曖昧なまま観客の想像に預ける形で映画は幕を閉じる。

ここも全て、役者の演技だけで構成されているので、いわゆるおばけ屋敷的な「怖い」というより、真綿で首を湿られているようなじわじわくる怖さ(というか嫌さ)がある映画でしたねー。

興味のある方は是非!!!

 

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