ぷらすです。
今回ご紹介するのは、僅か17000ドル(日本円で200万弱?)という超低予算で制作されたインディー映画『ベルフラワー』ですよー!
何ていうか、超どインディー感溢れる作品ながら、並々ならぬ熱量が溢れ出していて、多分刺さる人にはザクザク刺さるタイプの作品でしたねー。
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
『マッドマックス2』に登場する悪の首領ヒューマンガスをヒーローとあがめ、世界滅亡を夢見る若者たちの友情と愛憎を描いたダークな青春ドラマ。恋人に裏切られ絶望した男が狂気へと駆り立てられていくさまを、幻惑的な映像表現で描く。監督、脚本、製作、編集、主演を務めたのは、本作で長編デビューを果たした新鋭エヴァン・グローデル。自らの失恋経験を基に独自の映像世界を作り上げ、第27回サンダンス映画祭で上映されるや大反響を呼んだ。(シネマトゥディより引用)
感想
本作は、友人宅に居候していたボンクラ童貞青年エヴァン・グローデルが、初恋→失恋をした心の痛みを、
「チキショー! この辛い気持ちを映画にしてやるぜ!・゜・(ノД`)・゜・」と、自ら脚本、監督、主演、プロデューサー、車両改造までこなして作り上げたという青春ラブストーリーです。
でも、エヴァン・グローデルはボンクラなので、ラブストーリーに大好きな映画「MADMAX2」と足してしまい、他に類を見ないボンクラ青春バイオレンスラブストーリーになってしまったんですねー。
しかも、本作のヒロインは、現実でエヴァン・グローデルをフッた女性ジェシー・ワイズマン本人が演じているそうですよ。
ざっくりストーリー紹介
子供の頃、テレビで「MADMAX2」を何度も観て、悪役のヒューマンガスをヒーローと崇めるウッドロー(エヴァン・グローデル)と親友のエイデン(タイラー・ドーソン)は、来るべき週末世界の支配者になるべく、火炎放射器やマッドな改造車を制作しているボンクラ童貞。
そんなある日、参加したバーのイベント「コウロギ食べコンテスト」(生きたコウロギを食べる)で見事な食べっぷりを見せたミリー(ジェシー・ワイズマン)に恋しちゃったウッドローは、二人で数日かけてテキサスまでドライブデートをし、帰宅後ウッドローはついに童貞を卒業する。
そんなハッピー気分も束の間、彼はミリーが自宅で別の男と浮気しているところを目撃してしまい……。という物語。
いやもう、何ていうかデート中のウッドローとエミーの会話や、エミーにいいところを見せようとして荒くれ男にボコられるトコとか、初Hでのアレコレ、童貞卒業後の浮かれっぷりなど、隅々までリアルなイタイタしさに溢れていて、多くの男性はウッドローに“過去の自分”を重ねて悶えちゃうのではないかと思いますw
画像出典元URL:http://eiga.com /自作の火炎放射器を発射するボンクラ二人組。
そもそも、このウッドローはエイデンと二人で火炎放射器を作り、空き地でカカシを燃やして「うっひょー! ヤッベー!!(嬉)」とか言って喜んでるような真性のボンクラですからね。
で、恋人の浮気(しかも自宅で)を見ちゃったウッドローは、「エミーのバカーーーー!! ・゜・(ノД`)・゜・」と盗んだバイクならぬ、テキサスで自動車と交換したバイクで走り出すも交差点で自動車とクラッシュ。そのまま入院するハメになるまでが前半。
そして、退院後にミリーが部屋に忘れていった荷物を、(彼女の?家の庭で)火炎放射器で燃やしたことから、事態はがどんどん悪化して収拾がつかなくなっていく……というバイオレンスな後半に続くわけですね。
しかし、この後半部分はウッドローの妄想と現実が入り混じって(前のシーンで死んだキャラが生きてたり)物語がグチャグチャに崩壊していくわけです。
これについて、監督のエヴァン・グローデルは、「失恋した自分の脳内をそのまま映像化した」と語っています。
もう“ひとり”の主人公「メデューサ」
そんな、失恋で廃人同然のウッドローを励まそうと、親友エイデンは購入した車を改造しまくった「MADMAX」使用のマッスルカー「メデューサ」を作り上げます。
72年型ビューイック・スカイラークをベースに、前後にカメラ、(映画用のダミーじゃなくて)ガチのスーパーチャージャー、ドリフトマシーン(ドリフトしやすいように後輪にオイル? を吹き付ける)、火炎放射マフラーを搭載したモンスターマシン。
画像出典元URL:http://eiga.com /主人公の分身メデューサ。超かっこいい。
制作費17000ドルのうち、10000ドルをこの車の改造にかけたのだとか。
なぜなら、この「メデューサ」は荒れ狂うウッドローの心の中に救う怪物のメタファーであり、もう“ひとり”の主人公でもあるからです。
ウッドローはボンクラで冴えないオタクで精神年齢は小5男子。だからこそ、ヒューマンガスになって「セカイ」に復讐してやりたいわけで、最初は手作りの火炎放射器程度だったルサンチマンは、初恋の彼女に裏切られたショックで膨れ上がり「メデューサ」というバケモノに成長してしまったという事なのです。
これ、そのままゴジラやガメラなどの怪獣映画と同じ構造だし「初恋の女に裏切られた世界なんか滅んでしまえ! 」っていうマインドは、「セカイ系」と言えるかもしれません。
「セカイ系ボンクラ青春バイオレンス怪獣ラブストーリー」って、カオスにも程があるだろ!って話ですけどもw
コートウルフ
もう一つ、本作で特徴的なのはエヴァン・グローデルが開発?したカメラ「コートウルフ」です。
エヴァン・グローデルを取材した町山智浩さんによれば、ビデオカメラとレンズの間に蛇腹を取り付けて、カメラとレンズの距離や角度、また蛇腹の間に様々なフィルターを挟むことが出来るので、普通は撮影後にVFXで処理する特殊効果を撮影の段階で作れるし、映像が昔の8mmカメラ的というか、ピントや陰影が不思議な映像になる――ということらしいです。
画像出典元URL:http://eiga.com /コートウルフによる現実感のない映像
確かに、映像を観るとデジタルカメラっぽくないし現実感のない不思議な感じで、ウッドローの妄想の映像化という試みにはすごく効果的な役割を果たしていたように思いますねー。
まぁ、正直に言えばとても万人にオススメ出来るタイプの映画ではないし、観る人によっては「なんじゃこりゃ?」と呆れちゃうような映画だと思いますが、監督自身を反映した主人公のダメさや愚かしさやイタさも含めて、個人的には愛おしい作品でしたねー。
あ、ちなみに、タイトルの「ベルフラワー」は、エヴァン・グローデルをフッたジェシー・ワイズマンが住んでいたアパートのあった通りの名前だそうです。
興味のある方は是非!!
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