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世界に通じるタイ産“カンニング”エンターテイメント「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、中国・韓国でカンニング騒動でSAT試験が無効になった事件をヒントにした、タイのケイパー映画(チーム犯罪やスパイ映画など)『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』ですよー!

タイ国内だけでなく、アジアを中心とした海外での高評価も頷ける、見事なエンターテイメント作品でしたねー!

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概要

高校生たちによるカンニングを描いたクライムドラマ。天才的な頭脳を持つヒロインがテストで友人を救ったことをきっかけに、入試でトリックを仕掛けようとするさまを描き出す。監督はショートフィルムなどを手掛けてきたナタウット・プーンピリヤ。モデル出身のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンが主演を務めた。共演は、チャーノン・サンティナトーンクン、イッサヤー・ホースワンら。(シネマトゥディより引用)

感想

「世界」に通じるタイ映画

恥ずかしながら、僕がタイ映画と聞いて連想するのは現在ハリウッドで活躍しているトニー・ジャー主演のムエタイアクション映画「マッハ!!!!!!!!」とその関連作品くらいで、それ以外の作品でタイ国外でヒットした作品ってあまり印象にないんですよね。

世界的を驚かせた「マッハ!!!!!!!!」にしても、アクションは凄かったですが、ことストーリーに関して言えば国際基準の映画とは言えず、少なくともエンターテイメント作品に限って言えば、タイ映画は正直目立った作品がない印象。

そんなタイのエンターテイメント映画として世界に衝撃を与えたのが、本作「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」です。

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中国・韓国でのSAT試験カンニング騒動にヒントを得て、3人の脚本家が1年半かけたという脚本がとにかく素晴らしいし、ナタウット・プーンピリヤ監督のサスペンス描写にはずっとハラハラさせられましたねー。

カンニング」エンターテイメント!

カンニングを題材にした映画というと、僕くらいの世代の人はボンクラ学生たちがあの手この手で先生の目を欺こうとしてやっぱり失敗する的な、牧歌的な学園コメディーを連想するんじゃないかと思います。

実はこの映画も本質的にはそういう映画ではあるんですが、これまでのカンニング映画と違うのは、そのカンニングには彼ら彼女らの人生がかかっているということなんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /主人公リンの美人だけど取っ付きにくい感じがいい

主人公のリン(チュティモン・ジョンジャルーンスックジン)は、両親が離婚していて数学教師の父親とふたり暮らし。貧乏とまでは言わなくても、自費で海外留学などは厳しい、中の下くらいの収入。

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画像出典元URL:http://eiga.com /悪の道に引きずり込まれるバンク

そんなリンとは鏡像関係にあるもう一人の天才バンク( チャーノン・サンティナトーンクン)の実家はクリーニング店なんですが、壊れた洗濯機が一台あるだけでお母さんが毎日洗濯物を手洗いしているような極貧生活。

そんな二人が貧富の差が激しく学歴至上主義のタイ社会で成功するには、学業で名を挙げて海外に留学するしかないんですね。

幸い二人は非常に成績優秀で名門校に推薦入学しているんですが、そういう事情なのでその学校に在学・卒業することがいかに大事かが分かるようになってます。

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画像出典元URL:http://eiga.com  /文字通り「バカ」ップルなグレースとパット

それとは対照的に、リンの友人グレース(イッサヤー・ホースワン)の父親は、大手印刷会社の社長で、グレースの彼氏パットティーラドン・スパパンピンヨー)の両親はプール付きの豪邸に住む大富豪なんですが、二人はバカなので成績は最低ランク。

本作は、そんな対照的なふた組の男女が交わってしまうことで、最初は小さなカンニングだったのが、やがて国を跨ぐ大事へと発展していくという物語なのです。

ざっくりストーリー紹介

成績優秀なリンは進学校に特待生として転入する。
そんな彼女にできた最初の友達は、性格はいいが成績に難のあるグレース。
彼女は「テストの点数が悪いと演劇部の活動を禁止される」とリンに泣きつき、リンは一度だけのつもりで、グレースにテストの回答を消しゴムに書いて渡す。

そんなリンの話をグレースから聞いた恋人のパットは、リンにカンニングビジネスの話を持ちかける。1科目ごとに人数分の高額な報酬を払うというのだ。
最初は断るリンだったが、学校側が生徒の親から賄賂を受け取っていることを知り憤慨。だったら自分もカンニングビジネスで儲けてやろうと承諾。そして彼女は子供の頃に習っていたピアノの運指を使ったハンドシグナル式のカンニング方法を思いつき、次第に顧客を増やしていく。

しかし、成績優秀で品行方正なバンクの告発でカンニングが発覚。リンは父親にもバレて、学校側に奨学金と海外留学の資格も剥奪されてしまう。

そこに、パットとグレースがリンにSTIC(国際的な大学入試のテスト)でのカンニングビジネスをもちかけ、リンは画期的な方法を思いつくが、それにはバンクの協力が必要。
しかし、バンクには海外留学のための試験を控えているし、元より品行方正な性格から悪行に手を貸すような事はしないだろうと諦めかけるが、留学試験前夜、バンクはチンピラの暴行で怪我を負って留学試験を受けることが出来なくなり――というストーリー。

この作品で一番大変なのは、リンとバンクという成績優秀な二人が、なぜカンニングビジネスに手を染めていくのかの説得力ある理由づけだと思うんですが、本作のストーリーでは二人にしっかりした必然性を持たせ、繊細かつ丁寧なディテールの描写と、流れるようなストーリー運びで4人がチームになる様子を見せていくんですねー。

カンニングのサスペンス演出

とはいえ、所詮は学生のカンニング
 やってることは(最後のSTICを除けば)大したことないんですよ。
最初のカンニングは、リンが回答を書いた消しゴムを自分のローファーに入れて、後ろの席のグレースに蹴って渡し、グレースは代わりに自分のローファーを蹴って前の席のリンに。と、たったそれだけ。

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画像出典元URL:http://eiga.com /最初のカンニングシーン。余裕のないリンの表情にハラハラ

なのに、「ああ、バレるバレる…」とスパイ映画さながらのドキドキハラハラ感があるんですよねー!

それは、カンニングがバレて退学になったら……という前フリが効いているのと、カンニング自体を、スパイが敵の目を盗んで情報を盗み出すようなサスペンスフルな演出で見せているからなのです。

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画像出典元URL:http://eiga.com

次のカンニングシーンは、リン考案のハンドシグナルが軌道に乗った後。
なんと先生が、カンニング防止のために2種類の問題用紙を用意。
つまり、リンのハンドシグナルを妨害するという演出でそれまでとは違うサスペンスを作っているんですね。

そしてクライマックスのSTICでは、タイとの時差を利用しオーストラリアで試験を受けたリンとバンクが、予めトイレのタンクに隠しておいたスマホ(会場は通信機器の持ち込み禁止)のLINEで答えを送信し、その回答を鉛筆のバーコードに印刷するという大掛かりな展開に。

しかし、事はそう簡単には進まず……という3つのカンニングシーンで、それぞれ別のサスペンスを見せることで、一本調子にならず観客を飽きさせない工夫をしているし、ラストのSTIC試験ではチームでの大掛かりなケイパーもの的な作りにしているんですね。

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画像出典元URL:http://eiga.com /「夢が叶わないならせめて金を!」と、最後の大勝負に挑むリン

さらに、不正を疑われたリンと試験官(超怖い白人のおっさん)の息詰まる追跡劇もあり、もうずっとハラハラしっぱなしでしたよ!!

その上で、道を踏み外したリンとバンクが報いを受ける事になるラストのバランスも落としどころとしては見事だし、一度は成功する最後には身を滅ぼすという展開は、どこかスコセッシのギャング映画に通じるものを感じましたねー。

好き嫌いは分かれるかも

ただ、バンクがあまりにも不憫過ぎるとか、ほぼ首謀者のパットが劇中でハッキリとした報いを受けないなど、観る人によって好き嫌いが分かれてしまうかもしれません。特にパットのクソ野郎っぷりを思うと「コイツちゃんとひどい目にあってくれよ!」と思う人もいるかも。

でもね、リンを利用したパッドやグレースたちはこれから罰を受けるであろう事が劇中で暗示されているし、バンクは夢と引き換えにパットから大金をせしめクリーニング店をリフォームしたし、リンも罰を受け多くを失う代わりに大切なものを得るわけで、それなりにバランスを取ったラストは個人的に良かったと思いましたねー。

興味のある方は是非!!

 

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