今日観た映画の感想

映画館やDVDで観た映画の感想をお届け

あまりに怖すぎて笑っちゃう「ヘレディタリー 継承」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ホラーに造詣の深い脚本家で、映画監督で、スクリプトドクターでもある三宅隆太氏をして「21世紀最怖!」と言わしめたホラー映画『ヘレディタリー 継承』ですよー!

劇場公開時、観に行こうか迷ったんですが、超ビビリなので「とても映画館の大画面&音響で最後まで観られる気がしない」と思い、レンタルが始まるのを待ってたんですよねー。(〃ω〃)>

で、この映画はネタバレなしではちょっと感想が書けないので、中盤からはネタバレありで感想を書こうと思います。
なので、これから本作を観る予定の方やネタバレは絶対に嫌! って人は先に映画を観てから、この感想を読んでください。

いいですね? 注意はしましたよ?

https://eiga.k-img.com/images/movie/89273/photo/3e0a7f9fec60e38e.jpg?1534813501

画像出典元URL:http://eiga.com

概要

家長の死後、遺された家族が想像を超えた恐怖に襲われるホラー。主演は『リトル・ミス・サンシャイン』などのトニ・コレット。ドラマシリーズ「イン・トリートメント」などのガブリエル・バーン、『ライ麦畑で出会ったら』などのアレックス・ウォルフらが共演。監督・脚本は、ショートフィルムなどを手掛けてきたアリ・アスター。『ムーンライト』『レディ・バード』などで知られる映画スタジオA24が製作している。(シネマトゥディより引用)

感想

今、最も信頼できる映画スタジオ「A21」が送る最怖ホラー!

本作を制作した映画スタジオ「A21」は、インディペンデント系でありながら「複製された男」「エクス・マキナ」「ルーム」「ムーンライト」「20センチュリー・ウーマン」などなど、話題作を次々世に送り出している、今、最も信頼出来る映画スタジオです。

そんなA21が、昨年6月に送り出したのが本作「ヘレディタリー 継承」なんですね。

監督・脚本を務めるのはなんと本作が長編デビューというアリ・アスター

低予算映画ながら、サンダンス映画祭でプレミア上映された直後から「直近50年のホラー映画の中の最高傑作」「21世紀最高のホラー映画」と大絶賛。

日本でも、前述した三宅隆太氏を筆頭に、多くの映画関係者や評論家、観客を恐怖のどん底に突き落とし、早くも「21世紀最怖」「今後ホラー映画のクラッシックとして語られる映画」など、最大級の評価を得ています。

由緒正しい“オカルト映画”を現代にアップデート

一口にホラーといっても、殺人鬼が人を殺しまくる「スラッシャーホラー」や人体破壊や大量の流血などの残虐シーンが見ものな「スプラッタホラー」。怪物に襲われる「モンスターホラー」などなど、特に80年代以降は多様性が進み、近年では「クワイエット・プレイス」や「ドント・ブリーズ」など、若手監督による新感覚ホラーが次々と作られています。

では、本作はと言うと70年代の「オーメン」や「エクソシスト」と言った、クラッシックな正統派“オカルト”映画の流れを汲みつつ、それを現代にアップデートしてみせた作品なんですよねー。
なので、いきなりワッ! と驚かされるような「お化け屋敷」的ホラーが好みの人には、あまり合わないかも。
この作品は、どちらかといえばじわじわと真綿で首を絞められ続けるような、観客を悪夢に引きずり込む系ホラーなのです。

ざっくりストーリー紹介

物語は、主人公でドールハウス作家のアニートニ・コレット)の母エレンの葬儀のシーンから始まります。

エレンは解離性同一性障害を患っていて、夫は精神分裂病で餓死、長男(アニーの兄)は極度な被害妄想が原因で16歳で自殺。
さらに年老いて認知症まで患った母を介護していたアニーは、エレンとかなり激しくぶつかることもあったらしい。

アニー自身も夢遊病であり、長男ピーター(アレックス・ウルフ)と13歳の長女チャーリー(ミリー・シャピロ)にも精神疾患が遺伝するのではと恐れている彼女は、夫ティーガブリエル・バーン)に内緒で行ったグループセラピーで、上記の身の上を語るのです。

一方、極度に内向的でおばあちゃん子だったチャーリーは、エレンの死後不安定になり、死んだ鳩の首を切り取って持ち帰ったり、エレンの幻影を追って裸足で外に出たりと奇行が目立つように。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89273/photo/751da5cb70900b13/640.jpg?1542099440

画像出典元URL:http://eiga.com  / チャーリー役のミリー・シャピロちゃん。この子を見つけた時点でこの映画は勝ちだよね。

そんなある日、チャーリーの身に起こったある悲劇的な事故を引き金に、それまで辛うじて家族の形を保っていた一家に、次々と恐ろしい事態が起こるようになる――というストーリー。

(恐らく)前情報を入れずに観た人は「この話は一体どこに向かっているんだ…」と困惑し、映画が終わったら「え、じゃぁ“アレ”は一体いつから始まってたんだ!?」と、もう一度観返したくなってしまうのではないかと思いましたねー。

そういう意味ではリドリー・スコット監督の「悪の法則」に近い感じも受けました。
“仕掛け”に気がついた頃には既に終わってる的な。

斬新で美しい映像と神経を逆なでされる音

本作は、アニーの工房の様子から始まります。
自宅を模したドールハウスが置かれた室内をカメラがゆっくりとパンしていき、やがてミニチュアのピーターの部屋をゆっくりとズームアップ。
すると、そのミニチュアがいつの間にか本当のピーターの部屋に変わっていて――となるんですね。

同時に、アニーたちが住む家の室内は、普通では考えられない程の引きの画で撮られることで、まるでドールハウスの中でキャラクターが動いている様に見えたりするのです。

そして、映画全編を通してコリン・ステットソンによる、不吉極まりない音楽が流れ、観ているこっちの神経を逆撫でしてくるし、長女チャーリーの「コッコッ…」とう舌打ちの音が、非常に効果的に使われてどんどん恐怖が増していくという演出になっているんですねー。

 いやー、ホント映画館で観なくてよかったですよ。
明るくした自室のテレビ画面で観てるから耐えられるけど、映画館みたいな視覚的にも聴覚的にも逃げ場のない状態で観たらトラウマ確実だわー。

というわけで、ここからはネタバレしていきますよー!

 

 

 

悪魔憑きの家系?

タイトルの「ヘレディタリー(hereditary)」を直訳すると、「遺伝的」「親譲りの」「先祖代々」という意味になるんだそうです。

では、本作では一体何が遺伝するのかと言えば、一つは精神疾患
そしてもう一つ。
ラストではアニーの母エレンが悪魔信仰者だったことが明かされるわけですが、それだけではなくて、彼女は悪魔信仰教団の中でもリーダー的ポジションの人間だということも分かる。

日本でも、まだ精神医学が発達していなかった時代には、精神疾患を持つ人は「狐憑き」として忌避されたり、逆に巫女やシャーマンなど“神に通じる者”として崇められたりしてきました。

グループセラピーでアニーが語る家族の話を聞く限り、彼女の家系は先祖代々そうした家系だったのではないかと推測できるんですよね。

つまり、彼女の母エレンも恐らくはその母も、現世に悪魔を召喚する巫女的(というより生贄)な役割だったのではないかと。

そして、その家系に生まれた男子は召喚された悪魔が現世に留まるための「器」になる事が、先祖代々決まっているっていう。

アニーの兄は「母が僕の中に何かを入れようとした」という遺書を残して自殺しています。
つまり、母エレンは長男を悪魔パイモンの器にしようとしたけれど失敗。
ならば孫のピーターを――という思惑を感じたアニーは、エレンからピーターを引き離して育て、代わりに娘のチャーリーを差し出したのです。(それはそれで酷い)

さらに、夢遊病のアニーは無意識に眠っていたピーターとチャーリーを焼き殺そうとした過去があり、それが親子のわだかまりになっている。

しかしそれは、アニーが二人を母エレンから守るために、また呪われた血筋を断つ為に、無意識のうちにやったことなのではないかと思うのです。

ところが、そんなアニーの行動も母親や悪魔教団、もしくは悪魔パイモンの掌の上だったんですよねー。

チャーリーの悲劇

そして、起こったのがチャーリーの事故。
母の命令でピーターとパーティーに行ったチャーリー。
ピーターは好きな女の子に近づくため一緒に別室で大麻を吸おうと誘い、チャーリーにケーキを貰って食べるよう進めます。
ところが実は、チャーリーはナッツアレルギーで(エレンの葬式のシーンで分かる)、そのケーキには大量のナッツが入っていたのです。

発作を起こしたチャーリーを車に乗せ、猛スピードで病院に向かうピーター。
苦しさから少しでも逃れようと車の窓を開けて身を乗り出し、新鮮な空気を吸おうとするチャーリー。
その時、道路の真ん中には動物の死体が転がっていて、ピーターが慌ててハンドルを切ると、チャーリーの目の前に電柱が迫って――。ってういう。

そこで道路にチャーリーの頭部が転がっていく影は撮されるんですが、ピーターはチャーリーが乗っていた後部座席を見ることはなく、画面もピーターのアップを撮したまま、家に戻って無言のままベッドに入るんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89273/photo/570a77ab13e77311/640.jpg?1542099441

画像出典元URL:http://eiga.com / 事故直後のピーターの絶望に満ちたこの顔ね

そのまま朝になり、アニーが車で出かけようとしてチャーリーの首なし死体を発見し、

「ぎゃあぁぁぁあぁぁぁぁ!!」

と絶叫するまでの様子を、ベッドの中でもずっと目を開いたままのピーターのアップで見せるという演出は超辛いし怖いんですが、その絶叫に被せるようにカメラは道路に転がるチャーリーの頭部を撮し――って……結局見せるんかーーーい!!(;Д;)ギャー!

崩壊する家庭

このチャーリーの死をきっかけに、それまで辛うじて形を保ってきた一家の崩壊が始まります。
そして、それを加速させていくのがアニーがグループセラピーで出会った女性ジョーン(アン・ダウド)。

自らも息子と孫を同時に失ったというジョーンに、アニーは心を開き悩みを打ち明けるわけですが、そんなある日ジョーンは何故かウキウキした様子。
なんと、街にやってきた霊媒師に教えられた降霊術で死んだ孫の霊を呼び出したというのです。

最初は信じなかったアニーですが、ジョーンに半ば強引に付き合わされて降霊術をすると、目の前で信じられない事が起こります。
アニーは、チャーリーを呼び出せるかもしれないと、深夜、寝ている夫スティーブとピーターを叩きおこして降霊術を開始。
しかし、実はそれは悪魔パイモンを召喚する儀式だったんですね。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89273/photo/ac565d95a269ec12/640.jpg?1542099441

画像出典元URL:http://eiga.com / 現れたのはチャーリーじゃなく悪魔でした。

つまり、ョーンは母エレンと同じ悪魔教の教徒だったわけです。

ここから物語は一気に加速し、ピーターは授業中レギュラー(あるある探険隊)の西川くんみたいになったかと思ったら自ら顔面を机に強打しまくり、旦那はアニーの目の前で焼死。アニーはついにぶっ壊れてピーターを追い回し、ついには自らワイヤーで自分の首をゴーリゴーリと切り落とす

そんな狂った状況からピーターは何とか逃げようと屋根裏の窓を突き破ってダーイブ!!

3階から庭に落ちた彼はよろよろ立ち上がるものの目は虚ろで、彼の口からはチャーリーのクセだった「コッ…」という舌打ちが。

そのままチャーリーが使っていたコテージに上がると、そこには、頭のない、祖母エレン、母アニー、そしてチャーリーの遺体と、チャーリーが作っていた工作品が飾られた祭壇が。
その後ろにはピーターに傅く白塗りの悪魔教の信者たち。

そんな様子をぼんやり眺めるピーターに「パイモン様」と謎の女の声(ジョーン?)がして、彼の頭にはパイモンの証である王冠が被せられてエンドロールが始まるんですよねー。………うん。

 

怖ええええええよぉぉ!!((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ

 

つまりですね、最初は多分、祖母エレンによってチャーリーにパイモンが降ろされる
でも、正式にパイモンが降臨するには、ピーターの体が必要
で、悪魔教&パイモンはこの一家を追い詰めて追い詰めて、邪魔な“ピーター”を自殺に追い込んで、窓からの飛び降り自殺で空になったピーターの体にパイモンが入り込み、エレン、アニー、チャーリーの首なし死体という供物も用意され、降臨の儀&“継承”大★成★功!( *• ̀ω•́ )b グッ☆

っていう事なんですよね。多分。

この映画を観た人の中にはローズマリーの赤ちゃんを思い出した人も多いんじゃないでしょうか。両作はほぼ同じ構成…というか続編に近い感じんですよね。

で、冒頭のドールハウスや、超俯瞰で取られた家や部屋の様子は、悪魔パイモンの視点ってことなんですよ。

つまり、全ては最初から全て仕組まれていて、逃れることなんか出来なかったっていう……。

という事を踏まえて最初から観返すと、最初に観たときは意味の分からなかった伏線がそこかしこに張られていて、それがラストシーンに全て集約されているんですよね。

一方で、この物語には全てアニーの妄想と捉える事も出来ます。
アニーもまた両親や兄と同じく精神的に不安定な「信用できない語り手」として最初から描かれていて、劇中での彼女の異常な行動が「これ、全部このおばさんの妄想じゃね?」と思わせる余白のようなものを残しているからです。

その辺、アリ・アスター作劇や演出の隙のなさは、これが長編映画デビューとは思えない見事な手腕ですよねー。

まぁ、あえて言えば若干やりすぎ感はなくもないですがw

主演のトニ・コレットの顔芸は後半、怖いを通り越してちょっと笑っちゃうくらいだし、前述したピーターの西川くん化にも思わず笑っちゃいましたしねw

https://eiga.k-img.com/images/movie/89273/photo/e506365213cc1172/640.jpg?1538007862

画像出典元URL:http://eiga.com / 思わず笑っちゃうトニ・コレットの顔芸

正直、ホラー映画にはそれなりに慣れているつもりの僕でも、トラウマ級のシーンがいくつもあるし、全編通してじわじわと嫌~~~~なストレスをかけられまくるので、ホラーが苦手という人には決してオススメ出来ませんが、僕が近年観たホラー映画の中では間違いなくダントツに怖い作品でしたよー!

興味のある方は是非!

 

▼よかったらポチっとお願いします▼


映画レビューランキング

 

▼関連作品感想リンク▼

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com

aozprapurasu.hatenablog.com