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映像“は”美しい「散り椿」(2018)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、黒澤組の撮影助手からキャリアをスタートさせたカメラマン出身の木村大作監督初の時代劇『散り椿』ですよー!

たまには邦画も観てみようと棚を眺めていたら目に入った作品。
ガチ格闘マスターの岡田准一主演の時代劇ということでレンタルしてきましたよー!

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概要

永遠の0』などの岡田准一が主演を務め、カメラマンのみならず『劔岳 点の記』で監督もこなした木村大作と組んだ時代劇。葉室麟の小説を基に、誰にも恥じない生き方を貫こうとする実直な武士たちの姿を描く。『明日への遺言』などで監督としても活躍する小泉堯史が脚本を担当。『CUT』などの西島秀俊をはじめ、黒木華池松壮亮奥田瑛二らが共演している。(シネマトゥデイより引用)

感想

木村大作と「散り椿」とは

本作の監督、木村大作は御年79歳。黒澤組の撮影助手からキャリアをスタートさせ、「日本沈没」(73)「八甲田山」(77)「居酒屋兆治」(84)など数多くの作品をカメラに収めてきた大ベテラン…というか今や日本映画界の生き字引的存在です。

2009年「劒岳 点の記」で撮影兼任で監督デビューし、その後監督した「春を背負って」(2014)に続く監督3作目が、初の時代劇となる本作「散り椿」なんですね。

原作は葉室麟の同名小説で、藩の不祥事を追及し故郷を逐われた瓜生新兵衛が、亡き妻との約束を守るべく18年ぶりに故郷に戻るという物語。

V6の岡田准一が主演を務め、西島秀俊黒木華石橋蓮司富司純子奥田瑛二など、豪華キャストが出演していることでも話題になりました。

映像の美しさ

そんな本作、木村大作自ら撮影も兼任しているということで、自然の風景描写はとにかく美しいです。
これらの映像はセットではなく、オールロケーションで寺や建物など実際の建造物や自然の中で撮影されているのだとか。
彩光に関しても、自然光を活かして撮影したそうで、建物も自然も本物を使って自然光を活かして撮影したことで、あの映像が生まれたんですね。

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セリフ回しや話し方

また、監督と脚本家の年齢もあるのかもですが役者のセリフ回しや話し方も、ちゃんと時代劇してると思いました。

上手く説明は出来ないんですけど、時代劇ってセリフ回しや発声法、イントネーションに現代劇とは違う「型」みたいのがあるんですよね。

なので、時代劇をよく知らない監督や役者で撮られた時代劇って、時代劇のコスプレをした現代劇になりがちなのです。
その辺は1958年から映画に携わっている木村監督なので、しっかり演技の演出や指導をしてるのかなと思いました。

殺陣

そんな本作の見所と言えば、やっぱり岡田准一の殺陣なんじゃないでしょうか。
色んな格闘技や武道に精通していることで知られる彼は、殺陣師の久世浩の振り付けに武術の経験を活かしたアレンジを加えていったそうで、例えば「るろうに剣心」みたいな派手さはないけれど、動き一つ一つに理由があるリアリティーと緊張感溢れる殺陣は、見ごたえ十分。

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特に、実質的なクライマックスである西島秀俊との、散り椿の前で行われる対決は画の美しさも相まって素晴らしかったですねー。

作劇と脚本

対して、物語の作劇やキャラ造形、ストーリーテリングの方は首をかしげてしまうというか、正直上手くないなと。

まず、登場キャラが多い割に説明が少ないので、最初のうちは誰が誰かよく分からないし、物語が進んでからも各キャラクターの関係性や感情が少々分かりずらい。

亡くなった奥さんとの「自分の代わりに散り椿を見てきて欲しい」という約束を守るため故郷に戻った主人公。
でも、散り椿の時期は既に終わっていて、結局1年間義妹の家に居候するわけですよ。

いや、花の咲く時期に来いよ。

ってなるじゃないですか。

まぁ、その後奥さんとのもう一つの約束が分かるんですが、それにしても義妹の家に一年間も居候するって、中々のメンタルですよね。特に家にお金を入れてる風でもないし。

あと、メロウなシーンや無駄話は結構な長尺で見せるわりに、映画冒頭の主人公の境遇はサクッとナレーションで済ませたのにはビックリでした。

最初間違えて音声ガイダンス状態で観ちゃったかと思いましたよ。

西島秀俊演じる榊原采女は、小林薫演じる悪家老に恨みがあり敵対関係なんですが、仮にも上司に当たる人間ですから、普通なら腹芸的な感じで油断させるように会話していくじゃないですか。

ところが、この采女は最初から敵対心むき出しで隠そうともしない。
「あんたの悪事は全部わかってるからな」的な事を平気で言っちゃう。
悪代官の方も「若殿の命奪って弟を若殿にしてやるからな」みたいなテロ予告を(人前で)普通に話しますしね。

しかもこの悪家老はバカ丸出しで、主人公が住む京都までわざわざ刺客を差し向けたり(別に証拠を持ってるとかではない)、汚職の証拠を持ってる商人(石橋蓮司)を部下に襲撃させたり。
自分の悪事を隠す気がないばかりか、余計なことをしては墓穴掘りまくるのです。
まぁ、若殿が来るまでは実質トップだからやりたい放題なんでしょうけども。

ミステリー要素やサスペンス要素もあるんだけど物語的に機能してないし、アクセルを踏んだかと思うとすぐにブレーキを踏んじゃう感じの作劇で物語が一向に盛り上がっていかない。

多分、原作の要素を色々入れ込んだんでしょうけど、脚色として上手く整理されてない感じで、むしろ要素を抜いてラブストーリーメインに絞り込んだ方が良かったのでは? と思ったりしました。

あと、キャラ造形の方も正直今時ではないというか、昔の時代劇っぽいんですよね。
それも、もしかしたら原作通りなのかもですが、キャラの価値観や考え方が今の時代の観客にはフィットしないかなーと。

60代以上の人なら楽しめるかもですけどね。

興味のある方は是非!

 

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