ぷらすです。
今回ご紹介するのは、人気俳優の斎藤工が“齊藤”工名義で監督を務めたデビュー作『blank13』ですよー!
実は以前から気になってたんですが、若干の地雷臭もあって中々手が出なかった本作ですが、今回思い切ってレンタルしてきましたよー!
で、この作品は予告編の段階でほぼネタバレしてるので、今回はネタバレを気にせず感想を書いていこうと思います。
なので、これから本作を観る予定の人や、ネタバレは絶対に嫌!という人は、映画を観てからこの感想を読んでくださいね。
いいですね? 注意しましたよ?
画像出典元URL:http://eiga.com
概要
放送作家のはしもとこうじの実話をベースに、『昼顔』などで俳優として活躍する斎藤工が「齊藤工」名義で監督を務めた家族ドラマ。13年前に蒸発した父親が、余命わずか3か月の状態で発見されたことから再び動きだす家族の物語を紡ぐ。主人公をNHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」などの高橋一生が演じ、父親を『そして父になる』などのリリー・フランキーが好演。斎藤をはじめ、松岡茉優、榊英雄、金子ノブアキ、佐藤二朗らが共演している。(シネマトゥディより引用)
感想
コント企画からのスタートだった?
本作は最初、映像配信サービスひかりTVの配信用オリジナル映像として企画され、当初は「ブランクサーティーン」という読み方で40分程度のコント企画だったそうです。その後斎藤工の提案で、海外の映画祭へ出品することが可能な70分の長編映画になったのだとか。
その話を知ってやっと、“あの”葬式シーンの謎が解けましたよ。
あのシーンだけ、明らかに他のシーンとはトーンの違ってて、なんであんな事になっちゃったんだろう??って不思議だったんですよねー。
ざっくりストーリー紹介
ストオーリーは放送作家“はしもとこうじ”の実体験が元になっているそうで、リリー・フランキー演じるダメ親父とその家族の物語。
ギャンブル狂いでサラ金に400万の借金を残して失踪した父親、松田雅人(リリー・フランキー)のせいで、兄のヨシユキ(斎藤工/北藤遼)と弟コウジ(高橋一生/大西利空)と母親の洋子(神野三鈴)は長年苦労する。
借金も返し終えて大人になったヨシユキは大手広告会社に就職し、コウジは現金輸送車の警備員として働くようになってやっと平穏な生活を送れるようになったある日、3人は父親が胃ガンで入院し余命3ヶ月である事を知る――というストーリー。
母とヨシユキは無視を決め込むんですが、コウジは幼い頃に野球の練習をした楽しい記憶があり、複雑な思いを抱えたまま見舞いに行くんですね。
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ところが13年ぶりに会った父親はあいかわらず借金の取り立てにあっているクズ人間のままで、心が通わないままコウジは病院を後にするのです。
そして他界した父の葬式は弔問客も少なく、同日に行われた同性の葬式に比べると実にみすぼらしいんですが、集まった弔問客の証言でクズ人間だと思っていた父親のもう一つの顔が見えてくるっていうね、まぁ、正直よくある物語ですよ。
使い古された題材をどう料理するのか
となれば、この“よくある物語”をどれだけ新鮮に観せるかが監督の腕の見せどころになるわけじゃないですか。
本作はざっくり分けて、父親が失踪し残された3人が苦労し息子たちが大人になるまでの前半と、父親がガンで亡くなって葬式を挙げる後半に分かれます。
結論から言えば、映画好きで知られ自主制作の短編映画やミュージックビデオも手がけている“齊藤工”監督だけあって、かなり良かったんですよ。
前半までは。
野球を教えたりキャッチボールしたりする一方、雀荘での麻雀三昧でコウジが賞を獲った作文も読んでくれない父親。
昼となく夜となくやってきては金を返せと怒鳴る借金取りと、息を潜めて居留守を使う家族。
「タバコを買いに行く」と家を出てそのまま失踪した父親に代わり、朝は新聞配達、昼は内職、夜はスナックで働く母親。
やがて兄弟も新聞配達をしたり、兄は慣れない料理をしたり。
穏やかなシーンは柔らかな光で、辛いシーンは影を濃く見せるコントラストもいいし、細かいディテールも丁寧に描いていて、非常に好感が持てます。
13年ぶりに会ったコウジと父親との距離感や、恋人の西田サオリ(松岡茉優)との会話部分なども良かったんですよねー。
後半突然始まるコント
ところが後半の葬式のシーンになった途端、突然コントが始まってしまうんですよ。( ゚Д゚)ハァ?
葬式に集まってきた弔問客は、それまでの父親の人生を写すような曲者ばかり。
その面子を見て兄のヨシユキは「向こうの葬儀を見たら人の価値を教えられた気がして…」と呟くんですね。
同日同時刻に行われていた同姓の葬式。
向こうは立派な寺で執り行われ弔問客も多いのに、父親の方は(多分)公民館を借りて弔問客も数える程。
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そこまではいいのです。
ところが坊さんがお経を終えたあと、弔問客一人一人に故人である父親との思い出話を話すように即すんですね。
そんな葬式って見たことあります?
少なくとも僕は人生で一度も遭遇した事がないんですけど。
で、口火を切るのが父親と麻雀仲間役の佐藤二朗。
この佐藤二朗がビックリするくらい佐藤二朗。
普通に話してると思ったら突然笑い出す例のアレですよ。
ここから、別の映画と繋ぎ合わせたのかと思うくらいトーンが一変するんですね。
行きつけのスナックの店員や、父親から家族に当てた遺言を託された男、マジック仲間の老人、同居していたオカマなどなど。
佐藤二朗が司会役とになって、次々に話を振ったりツッコミを入れたり。
そんな彼らの証言から亡き父親の人柄と彼らに愛されていた様子が次々に明かされていくという設定なんですが、このシークエンスは全部アドリブなんだそうで。
つまり、設定だけを与えられて、あとは役者に丸投げ状態。
佐藤二朗を始めとしたキャストは当然それまでのトーンは分からないだろうから、このシークエンスだけそれまでのシーンから浮き上がったコント状態になっちゃうわけです。
「ここで笑いが入ることで話が重くなりすぎず良かった」的な意見もありましたけど、個人的にはアレはないわーって思いましたねー。
だって途中明らかに佐藤二朗が困ってたり、それを見た斉藤工が笑いをこらえてましたもん。
それまで丁寧に積み上げてきた流れがぶち壊しですよ。
それでも100歩譲ってそこは役者のリアルなリアクションを引き出す意図だったと目を瞑るとしても、途中で登場した野性爆弾のくっきー。
遅れてやってきた彼は、焼香しようとするも作法が分からず坊主にしつこく聞くというコントをして、「タクシーを待たせてる」とか言って父親の話をするわけでもなく帰っちゃうんですね。
それ、いる?
斉藤工とくっきーは深夜のバラエティーで共演もしてるので、その流れでゲスト出演って感じなのかもですが、(ただでさえ流れをぶっ壊してる)シーンの流れをぶった斬ってまで、彼を登場させる意味や必要あったのかと。
っていうか、この葬儀で弔問客が故人との思い出を語るっていうのが、設定のための設定で違和感しかない。
いろいろパターンはあるだろうけど、普通は通夜、通夜振る舞い、葬儀、火葬っていう順番ですよね?
だったら、通夜振る舞いで彼らが代わる代わる現れて思い出を語らせる方が自然だし、それならアドリブ演技でも、ある程度は不自然な感じにはならないと思うんですけどねー。(´ε`;)ウーン…
事のついでに言うと、映画の最初に流れる火葬の説明のテロップ。
何か火葬の宗教的意味を語るのかと思ったら、「土地が狭い国は火葬にしがち」(意訳)とか、「温度が高いので骨と灰だけしか残らない」(意訳)とかの説明。
それいる?
火葬場のシーンからセミを燃やす少女には何の意味が?
「ヘレディタリー 継承」のあの子みたいな事かと思ったわ。
いや、意図は分かりますよ?
でも、別になくても成立する無駄なカットだよなーと。
葬式のシーンに話を戻すと、ダラダラと繰り広げられたコントの最後に、友人役の神戸浩が「父親の死ぬ少し前に見舞いに行くと息子(コウジ)の作文を見せて嬉しそうに笑っていた」というエピソードでやっと本筋に戻るんですね。
ドラマや映画で100万回見た超ベタベタな展開ですが、序盤の雀荘での前フリもあり、神戸さん自身のキャラクターや不器用ながら全力な芝居も相まってここだけは思わずグッときてしまいましたよ。
まぁ、ある意味“実験的な演出”と言えなくもないけど、映画をぶち壊してまで役者にアドリブ演技させる必要があったかは疑問だし、合間に差し込まれる母親が喪服を着て葬式に行こうか行くまいか――のシーンと温度差がありすぎて、どんな気持ちで観ればいいのか分からないんですよね。
っていうか、演技プランを役者本人に丸投げするのは「演出」って言わないから。
弔問客役の人たちだってしっかり芝居の出来る役者ばかりなのに、(特に佐藤二朗は)あれだと何か損してる感じだしねー。
ほかのシーンが良かっただけに、この葬式のシークエンスは本当に残念でしたねー。
キャスト陣
ただ、それでも本作がギリギリ映画として成立しているのは、ダメ親父役のリリー・フランキー、母親役の神野三鈴、西田サオリ役の松岡茉優などなど、芸達者なキャストの力が大きいと思います。
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まぁ、リリーさんはいつも通りなんですが、特に神野三鈴と我らが松岡茉優は良かったですねー。
あとはやっぱり神戸さんが強く印象に残ったかな?
あのコントの最後に神戸さんを配置したのは、“齊藤工”監督のお手柄だと思ったし、映像で「言葉に出来ない空気感」を掴まえる演出にもセンスを感じましたねー。
興味のある方は是非!
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