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10年ぶりに更新された“遺書”「運び屋」(2019)

ぷらすです。

今回ご紹介するのは、ご存知、“映画仙人”ことクリント・イーストウッド最新作『運び屋』ですよー!

グラン・トリノ」感想で僕はイーストウッドの遺書”と評したんですが、それから10年後に再びイーストウッド監督・主演で撮られた本作は、10年ぶりに更新された遺書って感じの作品でしたねー。

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概要

The New York Times Magazine」に掲載された実話をベースにしたヒューマンドラマ。麻薬を運ぶ90歳の男に待ち受ける運命を描く。監督と主演を務めるのは『ミリオンダラー・ベイビー』などのクリント・イーストウッドイーストウッド監督作『アメリカン・スナイパー』などのブラッドリー・クーパー、『マトリックス』シリーズなどのローレンス・フィッシュバーンらが共演する。(シネマトゥディより引用)

感想

イーストウッド自身に近いキャラクター

2008年公開の「グラン・トリノ」で俳優業を引退すると言っていたイーストウッド
その内容は、朝鮮戦争で負った心の傷から人を遠ざけるようになり、血を分けた家族からも見捨てられた偏屈な男ウォルト・コワルスキーが、ひょんな事からモン族の隣人たちと交流を持ち、家族のような関係になるも――という物語。

この作品を観たとき僕は、1992年の「許されざる者」に共通する贖罪の物語であり、イーストウッドの遺書的な作品だという旨の感想を書きました。

それから10年後に撮られた本作で再び監督・主演を務めたイーストウッドが演じた老人アールは第二次世界大戦を経験した退役軍人で、退役後は園芸家として名を馳せた90歳の老人。

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家族を顧みず仕事一筋だった彼は家族に捨てられ、人生の全てだった仕事の方もインターネット化の波に押されて失敗。全てを失ってしまいます。

しかし、孫娘の婚前パーティーで知り合ったメキシコ系の男フリオ(イグナシオ・セリッチオ)から、車で荷物を運ぶだけの仕事を持ち掛けられ引き受けます。

ところが、その荷物の中身は大量の麻薬だった――という物語。

この90歳の“運び屋”アルのモデルはレオ・シャープという実在の人物で、本作は実話を元に劇映画として「グラン・トリノ」でも脚本を務めた ニック・シェンクが脚本を担当した作品。

それもあって、イーストウッドは引退宣言を撤回し俳優業に復帰したのかもしれません。

また「グラン・トリノ」のウォルトと本作のアルの境遇は非常によく似ています。
両者とも戦争体験者で、仕事一筋すぎて家族との不和を抱え、その事を悔いている。

その贖罪としてウォルトは擬似家族となったモン族の少年のため自らの命を投げ出し、アールは運び屋で稼いだ大金を仲間や愛する孫娘のために使います。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 「運び屋」の報酬で別れた奥さんや家族との関係を修復していくアール

そんな両者の大きな違いは、ウォルトが戦争のトラウマから人を避けているのに対し、アールの方は非常に外交的で人生を楽しんでいるということ。

鼻歌交じりで麻薬を運び、やがて麻薬カルテルのチンピラとも冗談を交わすようになり、挙句ボスに招かれてメキシコで若い女の子二人とハッスルハッスルする90歳。

その一方で、麻薬を運ぶ途中にパンクして困っているカップルを助けたり、お気に入りの店に寄って食事をしたり、フリオには麻薬カルテルを抜けるように勧め、彼を追う麻薬捜査官のコリン・ベイツ(ブラッドリー・クーパー)を相手に家族の大切さを説いたりもします。

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画像出典元URL:http://eiga.com / 麻薬捜査官のベイツに家族の大切さを説くアール

つまり、アールは麻薬の「運び屋」ではあるけど別に悪人というわけではなく、基本的にはお人好しの善人で事の善悪もちゃんと弁えてるんですよね。
その上で、“運び屋”はビジネスと割り切って長距離ドライブを楽しんでいるわけです。

飄々と撮りたい作品をサクッと撮ってサクッと公開しては、どの作品でも高評価をかっさらう映画仙人イーストウッド

一方私生活では、2度の離婚を含め5人の女性との間に7人の子供を儲けた彼なので、ある意味で本作の主人公アールには、イーストウッド自身の人生が反映されているようにも見えるんですよね。(アールの娘を演じてるのも実の娘だし)

 「グラン・トリノ」のウォルトを演じたときは、まだ大スターのクリント・イーストウッドを引きずっていたというか悪く言えばカッコつけていたようにも見えたんですが、本作ではアールとイーストウッドの境界線が曖昧というか、より素のイーストウッドに近い感じがしたりします。

10年ぶりに更新されたイーストウッドの遺書

だからこそ、末期ガンでベットに横たわる妻に告白する言葉にはより重みを感じるし、「グラン・トリノ」では“家族”のために命を差し出した主人公ウォルトに対し、最後まで“生きる”ことを選択した本作のアールに(もちろん実話だからってのもあるけど)この10年でのイーストウッドの心の変化というかある種の達観を見たような気がしました。

つまり、この作品は「グラン・トリノ」から10年ぶりに更新された彼の遺書であると同時に、もうすぐ90歳を迎えるイーストウッドから、これからを生きる全ての人へのエールでもあるんじゃないかと思いました。

興味のある方は是非!!

 

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